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夏の似鳥鶏祭2

◇『まもなく電車が出現します』

まもなく電車が出現します (創元推理文庫)

まもなく電車が出現します (創元推理文庫)


 「壁男事件」により芸術棟が封鎖され、行き場を無くした文化系クラブによる領土紛争が構内各地で勃発。速やかに美術室に退避して事なきを得ていた美術部の葉山くんだったが、鉄道研究会と映像研究会による、開かずの間をめぐる領土争いに巻き込まれてしまう。ところがその開かずの間に、鉄道模型が突然出現して……という表題作他、市立高校で起きた奇妙な事件を描く、全5編の学園ミステリ短編集。
シリーズ前作『さよならの次にくる』は1つの長編を為す連作短編の形式でしたが、今作は独立した5短編。中編といっていい長さの5本目を除くと軽めの短編が続き、出来としてはそこそこ。ここまで読んだ限りでは、どちらかというと長編型の作家なのかなぁという印象です。5本目はなかなか面白かったですが、これも短編としての切れ味というよりは、キャラクターの連続性に基づいて面白い、という内容でしたし。
◇『いわゆる天使の文化祭』
いわゆる天使の文化祭 (創元推理文庫)

いわゆる天使の文化祭 (創元推理文庫)


 夏休みも終わりが近づき、文化祭の準備で騒がしい市立高校に突然、大量の<天使>が現れる。目つきの悪いペンギンのような姿をした<天使>のイラストが、様々な部活をモチーフにした姿で各部室に貼り付けられていたのだ。始めはただの悪戯だと思われていた<天使>だが、二学期に入ると化学準備室で不審な事件が発生し、文化祭に暗雲を投げかけ始める。果たして<天使>は誰に何を訴えようとしているのか?
文化祭を題材にしたかなりトリッキーな長編。今作、劇中で割とざくざく時間経過していく分、主人公の葉山くんも明確にLVアップしていくのですが、前作でかなりの経験値を稼いでLVを上げた葉山くんのターン、が見所。
◇『昨日まで不思議の校舎』

 超自然現象研究会の会誌<エリア51>が学園七不思議を取り上げた数日後、その七不思議の1つを思わせる犯人不明の悪戯が放送室で発生。更に美術部、演劇部、吹奏楽部などで、別の七不思議を思わせる悪戯が連続した事から、葉山くんは事件の真相を解明しようと動き出す。だが放送室の鍵の出入りは厳重に管理され、音楽室に残されたフルートも容疑者の誰もが持ち出す事は不可能だった。更には用務員室で次なる悪戯が。
学園ミステリに都市伝説の要素を持ち込み、論理とオカルトが交錯する長編で、シリーズとしては1つの“答え合わせ”的な内容。ミステリとしては、一連の事件に一貫したテーマ性が存在しているのが秀逸。……というか考えてみると、このシリーズの謎解きにおける基本的なテーマなのかもしれず、それをわかりやすく連続させる意図があったのかも。
今のところシリーズ第2作『さよならの次にくる』<卒業式編>・<入学式編>が一番面白かったですが、作風もキャラクターも好きで楽しく読めるシリーズ。
ところでこのシリーズ、主人公の葉山くんの高校生活を中心とした学園ミステリでありながら、探偵役たる伊神さんがその箱庭的性質を歯牙にも掛けない、というのが1つ特徴になっているのですが、語り手たる葉山くんの方は箱庭的性質へのこだわりを随所でそれなりに見せる、というのはメタ的に考えても面白い所なのかも。


◇『ゼロの日に叫ぶ』
ゼロの日に叫ぶ: 戦力外捜査官3

ゼロの日に叫ぶ: 戦力外捜査官3


 白昼堂々、東京都下で死者3名の銃撃事件が発生。被害者の中に暴力団関係者が居た事から、警察は抗争と怨恨の両面から大規模な捜査を進めていくが、その過程で凄腕の殺し屋「名無し」の名前が浮上する。一方、アパート火災を追っていた設楽と海月は、重要な証拠品を発見するも捜査中に床を踏み抜いて、またも落下。放火現場が隠しカメラで監視されていた事には、いったいどんな意味があるのか……?!
◇『世界が終わる街』

 大規模テロを目論むも失敗に終わり教祖が逮捕、大幅にその規模を縮小したカルト「宇宙神瞠会」だが、内部の過激派が活動を開始。密かにその監視に回される設楽と海月だが設楽の周囲に怪しい影が出没し、かつてない危機の中、東京を遅う「恐怖の8日間」の幕が開こうとしていた……。
《戦力外捜査官》シリーズ、3と4。
このシリーズは、現実に起こった事件を劇中に取り込みつつ、現代的な要素を事件の中心に据えて少々バイオレンス風味をふりかける方向性のようですが、3巻のクライマックスは、成る程今度はそう持ってくるか、と面白かったです。
個人的には、設楽刑事が不遇すぎてなかなか思う存分本領を発揮する機会が回ってこない事に少々ストレスを感じるのですが、基本腕っ節で物事を解決するタイプの設楽が、思うようにならない状況に追い込まれ、それでもやるべき事をやらなくてはいけないという構造自体が、物語として狙いではある様子。
4巻を読んだ感じでは、巻を重ねるごとにスペックの上昇していく海月警部が手腕を発揮できない状況に追い込まれる時がいずれ来て、その時こそ設楽の見せ場になりそうな感じではありますが、その時はいつになるのやら(現在、既刊4巻まで)。