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『激走戦隊カーレンジャー』感想23

◆第30話「衝撃のデビュー!はたらく車!!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:浦沢義雄
リッチリッチハイカー教授に完全敗北して茫然自失のカーレンジャーは、りんどう湖から恵美ちゃんがやってきても上の空。
まさかのゲストキャラ再登場にビックリしましたが(しかもメインライター以外の回)、存在を覚えていなくても「りんどう湖から来た」で、タイアップ回で出てきた過去ゲストか、とわかるので便利だ「りんどう湖」!
強奪したRVロボを解析中のボーゾックでは、教授が構成員の知力を上げようとしていたが捗らず、学習用のテキストを大量に入手しようと目論んだ教授は国際学習図書見本市を狙いブレーキングを出撃させる。
「勝てなくても…………たとえ、負けるとわかっていても……戦いを挑むのが、本当の勇気、本当の正義ってもんだろ」
違うよ恭介、それはただの無謀だよ!!
「そして、それができるのは、俺たち、カーレンジャーしかいない。みんな、そう思わないか?」
恭介の謎の説得力に頷いてしまう4人だが――
「勝手に思え」
「あ、あんた?!」
「敵か味方か、宇宙の一匹狼、VRVマスター」
5人の出端をくじく形でまたも姿を見せたのは、謎のフルフェイスことパチンコ帰りのVRVマスター。
「俺が宇宙から持ってきた凄いマシーンを使って、ボーゾックと戦う気はないか?」
「う、宇宙から持ってきた、凄いマシーン?」
「名付けて、VRVマシーン」
何故かペガサスの一般市民達がカーレンジャーの正体だと知るマスターは、怪しい・胡散臭いの大合唱を受けながらも全く動じる事なく、東京ドーム地下秘密ガレージに収納された、五台のビクトリーレンジャービークルを5人に見せる。
「これがお前達の乗る新しい車、VRVマシーンだ」
……これは……これは……これはまさかの、長官乗っ取り?!
「あ! そういえばダップが冬眠する前言ってたわ」
――「見知らぬ宇宙人の甘い言葉には気をつけるダップ。もしかしたら、ボーゾックかもしれないダップ」
だがダップは、先んじてこの危機に手を打っていた(笑)
「VRVマスター、俺たちカーレンジャーは、ダップの言葉に従う」
「どうしてもか」
「わけもわからず、いきなり消防車に乗れって言われたって、無理な話だ」
殺伐とした世紀末宇宙で新マシーン詐欺に遭って契約書にサインしたばかりにエリア88に飛ばされたり莫大な借金を抱える事になったりローストチキンにされてしまう危惧から申し出を断る5人だが、帰りがけにマスターがパチンコで取った景品の缶ドロップを渡された事から、洋子がまたもダップの言葉を思い出す。
「そういえばダップが冬眠する前に、こうも言ってたの」
――「ドロップ好きの宇宙人は、信用してもいいダップ。地球のドロップは、ハザード星の匂いがするダップ〜。懐かしいママの匂い、そしてパパの匂い……」
「VRVマスター、俺たちカーレンジャーは、ダップの言葉に従う」
先ほどと全く同じ台詞で、VRVマシーンに乗ることを決断するカーレンジャー(笑)
強化展開としては、敗北の次の回に正体不明の新キャラが新装備をくれる、という率直にかなり大雑把なのですが、その印象を酷いギャグで上書きするという物凄い力技。
カーレンジャーが判断基準をダップに丸投げ気味な事もひっくるめてギャグになっているのですが、広い宇宙は危険がいっぱいなので仕方がない。
気をつけよう、甘い言葉と契約書。
かつてはその手の詐欺の常習犯だったと思われる教授は国際学習図書見本市の会場ビルをブレーキングで襲撃し、そこに市太郎と恵美が取り残されている事に気付いたカーレンジャーは、改めて変身して揃い踏み。
「ゆけ、カーレンジャー
……やはり、司令乗っ取りでは(笑)
今作より約20年前を思い起こさせる、このネタの微妙なメタさ加減で、割と色々許せてしまう、駄目な私。
新たな行動隊長VRVマスターの指揮の下、ドーム地下から巨大トレーラーが発進。更にその中から5台のVRVマシーンが出撃していく。
「この勝負に勝ったら、甘くてほろ苦いアレを、俺がおごるぜ」
5台のマシンを送り出したトレーラーも縦に重なるように変形して何やら巨大ロボっぽくなり、指揮車輌も兼ねたそのブリッジで、マスターは悠然と足を組む。
「噂に聞いたお前達の激走、見せてもらうぜ」
一方、教授はブレーキングでビルを引き抜いてそのままバリバリアンへ持ち帰ろうとしており、激しく揺れるビルの中で恵美に抱きつかれて、胸のエンジンに火が点く市太郎。
「え、恵美ちゃん、大丈夫。何があっても、ぼ、僕は、君を守る。んー」
……キスを迫る(笑)
「やめて!」
「いいじゃないですか」
「やめて!」
「いいじゃないですか!」
「やめて!」
間近に怪獣が迫っている緊迫した状況でさいてーのシーンですが、浦沢先生は相変わらず、思春期の入り口に立った少年が勢い余って変態に道を踏み外すのを描くのが好きだなぁ…………(虚ろな瞳)
好き嫌いでいうと浦沢さんのこのノリは苦手なのですが、シグナルマン編で市太郎を純朴な少年として描きすぎた事への、浦沢先生の強い反省が窺えるような気がしてなりません。
色々あわやのその時、VRVマシーンが現場に到着。Vファイヤー(消防車/赤)が放水でブレーキングを後退させ、Vポリス(パトカー/青)が体当たりを仕掛け、Vレスキュー(救急車/桃)と足下を攪乱。Vダンプ(ダンプ/緑)が後部に積んだ大量のボールでブレーキングを転倒させるもビル上部が折られてしまうが、Vドーザー(ブルドーザー/黄)がそれを見事にキャッチ。
「助かったみたい……」
「助かった記念にキスしていい?!」
「どさくさに紛れて!」
市太郎、遂に辞典で殴り飛ばされ、K.O。
地上ではVレスキューが巨大注射器でブレーキングを麻痺させ、Vファイヤーが転がるガスタンクを放水で押し返すと、ブレーキングの股下にはまったガスタンクに引火して大爆発。ブレーキングは大気圏を突破するとバリバリアンまで吹っ飛んでいき、VRVマシーンは初陣で大勝利を収めるのであった。
当時の尺もあってか一気の新ロボではなくVRVマシーンの活躍がそれぞれ描かれ、大怪獣vs特殊車両のバトルは東宝特撮風味も出て楽しかったです。
「恵美ちゃんごめんなさい! ほんの出来心だったんですよ!」
生死の境目でなにやら開けてはいけない扉を押し開けてしまった市太郎は大人の非常階段を飛び降りていき、恵美に冷たい視線を浴びる事に。
「戦いの後と風呂上がりには、甘くほろ苦いこいつが、よく似合う」
パチプロマスターは5人にコーヒー牛乳を渡すと去って行き、ひとまず逆境を乗り越えるカーレンジャー
ラストは、いわゆるコーヒー牛乳を飲むポーズで5人が並んだ向こうの空に大きく夕陽を映す、という格好良い筈なのに格好良くない、絶妙なカットで、つづく。
エピソードとしてはかなり雑な展開なのですが、その雑さそのものをギャグにしてしまい、見ているこちらもいい加減、『カーレン』だしな……という気分になってしまっていて、良いのか悪いのか(^^; 長官乗っ取り展開をどう受け止めればいいのか困惑している内に市太郎爆弾で目を逸らし、後半は新メカのバトルシーンで走り抜けてしまう辺りは、堂に入った詐欺師の手腕を感じます(笑)
なお、ガイナモとゾンネットはパチンコ屋に貼られた住み込みのバイト募集に目を止めており……ガイナモがごく普通に街中を歩いているのが、実にあっさりとした突き抜けぶり。二人はこのまま、チーキュの片隅で新生活を始めてしまうのか?!
そして、Vポリスと正面から丸被りしてしまったシグナルマン(サイレンダー)は、もはやチーキュへの帰還はかなわないのか?!
次回――逆襲の改造ブレーキング。「大勢で広がって歩いたら、危ないでぇ」。