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『仮面ライダービルド』感想・第6話

◆第6話「怒りのムーンサルト」◆ (監督:諸田敏 脚本:武藤将吾
チェーンスマッシュの後を追ってスカイウォールの足下へと辿り着く龍我だったが、今日もあっさりガーディアンらに囲まれた所をビルドに助けられ、段々と上昇していくヒロイン力。
打撃系ヒロイン枠狙いとは、狭い所を果敢に突いてきます、龍我。
忍びルドは、前回の《分身》《火遁》に続いて《風遁》《隠れ身》というニンジャ4コマ刀の機能を披露し、一時離脱に成功する2人だが、基地に戻って大もめ。
「なんで自分の事しか頭にねぇんだよ……」
「悪かったな! 俺は偽善で人助けなんて出来ないんだよ!」
戦兎と龍我は売り言葉に買い言葉からリアルバウトに突入し、ドラゴンボトルの力でいきなり素人のボディを殴りつける元格闘家。調子に乗ってたら素人に思い切りカウンターを喰らう元格闘家。まあ戦兎も生身でフルボトルの力を引き出せるようなので全くの素人扱いはできないのですが、この辺りは台詞に比べて映像描写がちょっと曖昧。
エキサイトした龍我は床に落ちていたベルトを拾って変身しようとするも、鯛焼きプレスに耐えられずに失神し、龍我は現時点ではビルドに変身できない、という事が明示されたのは良かったです。
戦兎の「簡単に使える代物じゃねぇんだよ」という言葉からは、変身に何らかの資格が要るのか、割と努力と根性で何とかなるのかはまだ判然としませんが。
翌朝――目を覚ました龍我は、戦兎がアフロを助ける手がかりを求めて研究所へ出勤した事をマスターに知らされる。
「あいつは、困っている人間が居れば、誰でも手を差し伸べる」
「神様仏様戦兎様、てかぁ」
これは今作の方向性を考えると、意識的な『オーズ』オマージュを感じます。
「そんなんじゃねえよ。あいつはただ……不安なんだよ。記憶を失って自分が何者かもわからない。それが不安でたまらねぇんだ。だから、自分がこうありたいという人間を演じてる」
立ち上がり、桐生戦兎とはいかなるヒーローか、劇中において仮面ライダーとはどんな存在なのか、を重視している今作ですが、“説得力のあるヒーロー像”を確立する手法として、記憶を失っているが故に、理想の自分(とはすなわち「ヒーローとは何か」である)にアイデンティティを依存しているというのは良いアイデア
こうなると、理想の戦兎をもってしても助けるかどうかギリギリのラインだったという事になる第1話の龍我ですが、まあ冤罪を確信してからは積極的に面倒見ているので、犯罪者は別腹です。
「勿論、そこで芽生える感情は本物だ。けど、あいつは喜びや慈しみを知る一方で、俺たちじゃ計り知れない、孤独を抱えてる」
桐生戦兎はヒーローを演じているヒーローだが、嘘からも生まれる本物がある、というのは今後の展開で面白くなりそうな要素。
一方、ファウストアジトの手がかりを求めてスカイウォールについて調べていた戦兎は、「どうした? やけに熱心だな」と朝一番からヒゲ所長に「君、仕事する気あったの?」的な厭味を言われるが、まるで気にしていなかった。所長はそんな戦兎に、スカイウォールの地下からは、地球上に無い成分で構成されたガスが湧き出ており、死んだ葛城がそのネビュラガスを研究していた事を説明。
所長に葛城の研究データを見せてもらった戦兎は、ネビュラガスこそがスマッシュ成分の正体であり、ガスの噴出状況から、ファウストのアジトに潜入可能な地点を発見する。
「指示通り、彼に研究データを見せたよ。桐生戦兎は本当に君を超える逸材になりえるのか。楽しみだ」
だがそれは、ヒゲ所長と何者かの思惑通りなのであった……。
まんまと踊らされているとは知らず、ファウストの地下実験施設への潜入に成功した戦兎と龍我は激しく記憶を刺激されるが、そこに煙突コブラが登場。
「おまえの体にも、スマッシュと同じ、多量のネビュラガスが注入されてる。何もせずに仮面ライダーのような力が使えるわけないだろぉ? お前達はガスを注入しても、スマッシュにならなかった、ひじょーーーーーーーーーーーーに、レアな、存在なんだよ」
悪の秘密結社・人体改造、に続いて、ほぼ確定はしていたものの、主人公(仮面ライダー)も怪人と同じ改造人間、というのが序盤から明確に打ち出され、古典『仮面ライダー』の平成的リビルドという今作の方向性がくっきり。
“どうすれば仮面ライダーというヒーローを現代に成立させられるか”を主眼にしていた『クウガ』では、「悪の秘密結社」「改造人間」という要素はオミット。そこに別の説得力を持った要素を組み込む事で物語の構造レベルで新生しており、その後の《平成ライダー》においては多くの場合、ヒーローと怪人が根を同じくするという改造人間テーゼはそれぞれの作品世界に合わせる本歌取りの形で取り込まれていたのですが、今作は古典『仮面ライダー』の構成要素をそのまま持ち込んだ上で、現代的な作劇を成立させる、というのが1つの狙いのようです。
「俺がスマッシュと同じだと……? そんなわけねぇだろぉ!!」
激昂した戦兎は、ウサタンクになるとコブラに躍りかかり、マウントポジションからパンチの嵐を浴びせる。
「誰だ?! 俺の体にガスを入れたのは! 記憶を奪った奴は誰なんだ! おまえか?! ローグかぁぁ?!」
この緊迫した場面で割とどうでもいい話なのですが、「ナイトローグ」を「ローグ」と呼ばれると、「佐藤太郎」を「太郎」と呼んでいるみたいに聞こえて、いつの間に下の名前を呼び捨てにする関係に?! と少々動揺します。
「はははは、ぬはははははははは」
「何がおかしい?! 俺の体を返せ! 記憶を返せぇ!!」
「記憶の核心に触れると、見境をなくすのは欠点か」
戦兎の怒りは当然にしても、1−4話で戦兎のヒーロー性を優先して強調してきた関係で、記憶に関してここまで我を失う事にスッキリ飲み込めない所があったのですが、コブラの台詞の解釈次第では、これもスマッシュ成分の副作用の影響、とも取れる所ではあるでしょうか。
「おまえにはがっかりしたよ。そろそろ、お開きにしようか。楽しい宴を、ありがとう」
ラッシュ攻撃を浴びながらも余裕の態度を崩さないコブラは零距離射撃でビルドを吹っ飛ばすと、続けて天井に銃弾を撃ち込んでアジトを放棄し、悠々と退場。
「逃がしてたまるか!」
「人質はどうすんだよ?! 立弥だってまだ見つかって」
「うるせぇ! チャンスは今しかねぇんだよ! 離せ! 離せよぉ!」
「目ぇ醒ませよ!!」
変身が解除されるもコブラを追いかけようとする戦兎を龍我が必死に止め、冒頭とまるっきり立場が逆転。
「前に聞いたよな。自分の記憶と人助けのビルド、どっちが大事か。迷わずビルドって答えたお前に、生まれて初めて、嫉妬したよ。……こいつには勝てねぇって。……今のおまえはどうなんだよ。自分の記憶と、ビルド。どっちが大事なんだよ」
自分を失ったからこそ“欲望のまま好きにする”のではなく“理想の自分であろうとする”戦兎の在り方に心を打たれた龍我が戦兎を諭そうとするやり取りも、危うい暴走を繰り返す龍我となんだかんだそれをフォローする戦兎、という構図がクライマックスで逆転する展開も、どちらも綺麗に収まって悪くなかったのですが、2人が座り込んで話し合っている間、それに見向きもしないガーディアンが背後で被験者を連れ出そうとしている、という場面設定がすっっっごく間抜けで、もう少しどうにかならなかったのか(^^;
この、手前でかわされているやり取りは悪くないのに置かれている状況から生まれる絵がすっっっごく間抜け、というのは第3話の倉庫シーンと同様なのですが、脚本と演出がまだ互いの呼吸を掴めておらず、あるシーンからあるシーンへの接続に無理がある状況で、とりあえず脚本がやりたい「語りのシーン」を優先している感。
それを上手く映像に落とし込めないと良い映像作品とはいえないわけで、早めに歯車が噛み合ってほしいところです。
過去の自分を求める事と、今の自分らしくある事と、大事なのはどちらか……座り込んで龍我の言葉を聞いていた戦兎は立ち上がり、口元に笑みを浮かべる。
「………………決まってんだろ。ビルドだよ」
「上等だ」
「足ひっぱんじゃねぇぞ」
「それはこっちの台詞だ」
2人は自分たちを眼中に無いガーディアンへと向き合い、戦兎はフルボトルをしゃかしゃか。
「さあ、実験を始めようか――変身!」
龍我の転機を、龍我だけが一方的に反省するのではなく、戦兎が足を踏み外した時に龍我がそれを引っ張り上げる、という形でまとめたのは良く、結局似たもの同士の2人が改めてベストマッチする姿に、大事なものを見つめ直した戦兎の変身を合わせる、という焦点の重ねも良かったのですが、場所が暗くて狭すぎて、この後の戦闘はあまり面白くならず(^^;
ガーディアンを撃破して被験者を逃がすもチェーンスマッシュが立ちはだかるが、忍びルドの竜巻斬りでネビュラガスを抜き取り、崩れるラボからなんとか脱出に成功。3人の見つめる中、大爆発したラボは炎と共に崩壊していく……。
同刻、その光景をモニター越しに見つめていたヒゲ所長は、ブラッドスタークへと連絡をつけていた。
「随分派手にやってくれたな」
「あのラボでビルドの出自を語る事は、ひじょーに意味があった。奴らに代わって礼を言うよ」
「いつまで泳がせておくつもりだ?」
「そう焦るな。これからもっと、面白くなる」
新たなラボに到着したコブラは嘯き、いよいよヒゲ所長とファウストの繋がりが明確になる一方、戦兎と龍我は助けたアフロから、サトウ・タロウが蒸発した日、新薬の実験バイトに向かった先が、葛城の部屋であった事を知らされる。その時間は、龍我が葛城の死体を発見する1時間前……。
「俺が、葛城を殺した……?」
2人の意識が同じ方向を向き始めたところで、龍我の冤罪を晴らすと戦兎が真犯人である可能性が浮上する、という棘を突き刺してくる展開は面白いのですが、本当に「サトウ・タロウ」なの?!
まあ、焼き肉ウェーイでツナ義ーズなサトウ・タロウが、生まれ変わってヒーローになる物語でもそれはそれで良いのですがさすがに可能性は低いと思われ、とするとアフロがはこの上まだファウストの指示で偽情報を流していると考えた場合に物凄く邪悪な面の皮なのですが、ハムスター一家でも人質に取られているのか。