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『仮面ライダービルド』感想・第8話

◆第8話「メモリーが語りはじめる」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武藤将吾
「わかってねぇな。日曜の朝にシュワルツシルト半径とか熱弁しても面白くねーだろ」
どんどんノリが良くなっていくあらすじ紹介は第8話にしてここまでメタで、この先どうなってしまうのか。
なおシュワルツシルト半径とは、


 1916年、(ドイツの天文学者カール・シュヴァルツシルトアインシュタイン重力場方程式の解を求め、非常に小さく重い星があったとすると、その星の中心からのある半径の球面内では曲率が無限(以下略)
〔シュワルツシルト半径/wikipedia〕
だそうです!!
そして、説明に擬音が多いのは確かに天才っぽい(笑)
穏健派に見えたヒゲパパは腹に一物あるわけではなく(あるかもしれませんが)、スカイウォール事件でパンドラボックスからの光を浴びていない、という事が判明。光を浴びた側として、北都と西都の両首脳に強い警戒感を抱くヒゲ所長は東都の軍事力増強を推進、焦りを見せていたが、その為に父である首相との対立を深めてもいた。
一方、北都政府の兵士から匿われた戦兎と龍我は、葛城母から話を聞く事に。
ここで、万丈が自分の冤罪だけを主張すると、勝手な弁解だけしに来ているようで感情の落としどころが難しくなるのですが、戦兎が自身が真犯人である可能性を隠さず打ち明けている事で、戦兎−万丈サイドの誠意と本気さが葛城母に伝わる、というのは巧い流れ。
「葛城さんて、どんな方だったんですか?」
「あの子は……科学を愛して、科学を恨んでた」
葛城巧は、尊敬する父と同じ道を選んで科学者となったが、パンドラボックスの研究責任者だった父は、スカイウォール事件後に激しいバッシングに曝され、自殺。科学、パンドラボックス、そして大衆、に対する複雑な愛憎を抱いていた事が明かされる。
葛城母が毎日作っている、今は亡き巧の好物だった激甘の卵焼きを口にした戦兎は何故か涙が止まらなくなり、桐生戦兎の人格に、なんらかの形で葛城巧が影響を及ぼしている、という可能性はかなり高そうになってきました。……そういえば第2話で煙突コウモリがスマッシュ化した人間に関して「魂がうんたら」とか言っていましたが、やはりあれは伏線だったのか?
唐突さ加減が先の伏線らしくはあるけれど、あまりに突然のオカルトかつ面白い台詞で無かったので書き取りしなかったのですが、失敗したかも(^^;
葛城が殺害される一週間前、USBメモリを持って訪れてきた事を打ち明けた葛城母は、その隠し場所である東都へと向かうが、入国するや否やナイトローグによってさらわれてしまう。ヒゲ所長から葛城の遺書との交換条件を持ちかけられた母は貸金庫の鍵を渡すが、受け取った遺書は真っ赤な偽物。
「彼が、親に感謝する人間だと思いますか?」
そして葛城母は、記憶の消去も兼ねてスマッシュにされてしまう。
ヒゲ所長がやたら堂々と姿を見せると思ったら記憶消去前提でしたが、相変わらずこの辺りは適当な感じ(^^; まあ、人体実験を繰り返しているファウストとしては、ガス注入何分前までの記憶が綺麗さっぱり消えるとかデータがあるのでしょうが。
アジトで自身の不覚への怒りに打ち震えていた戦兎は、スマッシュ目撃情報からファウストの意図を正確に読み取り、葛城母を救う為に出撃。
「戦兎、忘れ物」
と美空から新たに完成した消防車ボトルを受け取り、
「サンキュ!」
と出て行く戦兎の後に黙って続く龍我が、
「万丈」
「あ?」
「忘れもんだ」
「サンキュー!」
とマスターから渡された紙袋を覗くと、中には作業員の変装セット、という出撃前のやりとりは、くどくないギャグがテンポ良く転がって面白かったです。
新たなベストマッチ、“レスキューケンザン”(「見参」と「剣山」を掛けている?)ファイヤーヘッジホッグにビルドアップしたビルドは、強制消化剤注入からのハリネズミナックルによる勝利の法則で、ゴリラスマッシュ2を撃破。
やればやるほどよくわからなくなっていくベストマッチですが、ハリネズファイヤーの色合いは好き。てっきりベストマッチの存在しないフルボトルもあるのかと思っていたのですが、どうやらこの感じだと全てのボトルにベストマッチが存在する?ようで、掃除機に何がベストマッチするのかは、ちょっと楽しみです(笑)
一方、貸金庫を開いた所長は、葛城母にしたのと同じように、空振りのメモを掴まされていた。
悪役が受けるしっぺ返し、の内容としても呼応が面白いですし、所長から見た時に「彼が、親に感謝する人間だと思いますか?」(これは本音だと思う)という葛城が、母にデータを託すに際してダミーを用意していた事で母を救う結果になる、というのが葛城の二面性を取り込んでいて、巧い展開。
話数を重ねて段々と、脚本の良い面が出るようになってきている感じです。
葛城母からメモリの本当の隠し場所を伝えられた戦兎と龍我は、今は封鎖されている、かつての葛城父の勤め先でそれを発見。だが仕事の雑なヒゲ所長と違い、しっかり尾行をつけていたらしいスタークによって横からメモリを奪われてしまう。
「ボランティア、ごくろうさん」
逃がしはしないと、ガーディアンどころスマッシュ、更にはスタークにまでボトル一本握りしめただけで生身で殴りかかる万丈は、いい感じにネビュラガスが脳細胞に染み渡ってきているようですが、やはり第3話において、ドラゴンボトルにドラマを乗せてくれなかったのが惜しまれます。
そこにスタークから連絡を受けたヒゲ所長がやってきて「蒸血」し、ギャラリー不在でも「ファイヤーーーーーーーーー」しながら登場するナイトローグ。
ヒゲ所長に、止めてくれる友達は居ないのか。
ビルドとローグがぶつかり合う間に、メモリを手に立ち去ろうとするスタークだが、それに拳で食らいつく万丈。さくっとやられるかと思われた万丈だったが、コブラはそのキチガイぶりに興味を示す。
「もうハザードレベル2.4とはな……少し遊ぶか!」
ビルドはロケット変身し、毎回のようにざくざく新フォームを見せていく今作ですが、
ラビットタンク(基本フォーム)・ゴリラモンド(パワー&装甲)・ホークガトリング(空戦&射撃)
ぐらいまでは良かったものの、ニンニンコミック(スピードというよりはトリッキー系?)辺りからだいぶ怪しくなってきた各ベストマッチの特性が、ロケットパンダになると何が強いのかさっぱりよくわからない、のは困った所。
それぞれのギミックが目立てばそれでいい、という部分もあるでしょうが、なまじベストでなくともビルドアップできる為に、ベストマッチの必然性が弱いというのは、ちょっとした短所になりつつあるので、今後の改善を期待したい点です。
「ハザードレベル2.5……2.6……2.7……。どんどん上がってゆく。こいつは面白いぃぃ、いいだろう。お前の成長を見込んで、こいつは――くれてやるっ」
万丈のキまり具合が面白くなってきたスタークは、まさかのメモリトス。相方の突飛な行動に慌てて万丈へ襲いかかるローグだが、更にそれを身を挺して阻止。
「早く行けっ」
何かと芝居がかったコブラの、一度は言ってみたかった台詞に背中を押され、ビルドは万丈をひっつかんでロケット脱出し、ロケットパンダの特性は、逃亡に便利という事になりました。
「貴様……どういうつもりだ」
「まあ聞けよ。俺たちの狙いはデータじゃない。データを応用して、アレを完成させる事だ」
空へ向かって一筋に伸びる、ロケット逃亡による白煙の航跡を見上げるスターク。
「桐生戦兎ならそれが出来る。万丈龍我ならそれが使える」
今後の布石・悪玉サイドの動機付け・戦兎と龍我という二人のキャラクターの意味づけ、と三拍子揃い、歯車の噛み合う音が聞こえるような、今後への高揚感募る非常に良い台詞。
メモリ入手に成功した戦兎達は、喫茶店で葛城母と合流し、そのメモリを託される事に。
「これは……あなたが使って」
「……いいんですか?」
「あなたなら、巧の考えをわかってくれそうな気がするから」
いっけん、戦兎の誠意が葛城母の気持ちを溶かした良い話なのですが、卵焼きのシーンを考えると、妙に意味深。
そんな葛城母に、戦兎は研究日誌にアナグラムで隠されていた葛城からの感謝のメッセージを伝え、前後編の中で散りばめた要素もピタッと収まり、ひとまず落着。安易に葛城母を酷い目に遭わせて悲劇で閉じるのではなく、母子の想いの交差と救済を描きつつ、葛城巧という男の実像は、輪郭を見せながらもまだ霧の中、と巧い形で収まりました。
「これで葛城巧の殺された理由がわかるかも」
「…………いいのか。おまえの知りたくねぇ真実かもしれねぇぞ」
そしてちょっぴり、万丈龍我は他者への配慮の気持ちを覚えた!
人間としてのレベルがほんのりと上昇した!
「俺が恐れるのは、何も知らない自分だ。たとえ、どんな真実があったとしても、受け止める覚悟は出来てる」
葛城巧の隠した研究データ、そこに記されていたのは――
〔PROJECT BUILD〕
で、つづく。