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『仮面ライダービルド』感想・第14話

◆第14話「偽りの仮面ライダー」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武藤将吾
ハァハァ……なんで走りながらあらすじ紹介しなきゃなんねぇんだよ、仮面ライダービルドで……天才物理学者の桐生戦兎は……ハァ……万丈に罪を着せたのが、スタークだった事を知る。ヘッ……その正体は! 今追いかけているあの男だった。ハッさあ、どうなる、第14話!」
以前に一度、シリアスな引きの影響か、あらすじが無しだった事がありましたが、ビルドは基本的にこのノリでいいと思います!
そんなわけで、唐草模様の風呂敷抱えてトンズラしたマスターを、桐生戦兎は若さでなんとか追い詰めていた。
「なんであんたが!」
「俺には壮大な計画があってね。やむを得なかったんだよ。だから見逃してくれる?」
「出来るわけねぇだろ」
「だよな。あとボトル2本、回収しなきゃならないし」
息を切らして座り込んでいたのも演技だったのか、余裕で立ち上がったマスターはコブラボトルを取り出し、戦兎の目の前で堂々変身。
「蒸血」
変身キーワードも登場時の花火も、ヒゲの好みではなく、葛城の初期設定かーーー!! 戦兎はそろそろ、葛城巧に対する好意的解釈を、諦めた方がいい。
「俺がブラッドスタークだ。……馴染みのあるのはこっちの声か?」
金尾哲夫さんの胡散臭い演技が好きな身としては、お役御免にならず良かったのですが、マスターほんと最低(笑)
覚悟を決めた戦兎はタコライトに変身し、深夜の公園で戦闘開始。
「厄介なボトル残しやがってぇ……俺タコ嫌いなんだよ!」
あくまで軽い調子を崩さないスターク/マスターを、ビルドは今回も目つぶしからの電球パンチで殴り飛ばすが、スタークがパンドラボックスを突き出すと放たれた謎の光により変身が強制解除され、タコボトルと電球ボトルを奪われてしまう。
「これで、ミッションコンプリートだ。ちゃーお〜」
マスターは陽気に走り去り、店に戻った戦兎は万丈と紗羽に状況を説明。とりあえず美空には隠したまま、マスターの過去を調べると共に、対スターク用の強化装備の開発を急ぐ事に。
「この中には、パンドラボックスの残留物質が入っている」
謎の光を浴びた時、戦兎の携帯していた空のボトルの中に吸い込まれていった、光の粒子……。
「こいつを使って、ビルドのパワーアップアイテムを作る」
前回、全て計画通りの罠なのだから、スタークはなにも本物のパンドラボックスを置いて待ち構えていなくても良かったのではと思ったのですが、今回の諸々を考えると、ここでビルドにパンドラボックスの光を浴びせる事も、目的の一環だったという可能性が高そうでしょうか。
「会長は、この箱を開けてどうするつもりですか?」
どうやら20本のフルボトルを揃えるとパンドラの箱が開くようで、内部に秘められた強大なエネルギーを利用して核兵器を越える軍事兵器を作成するのが目的と語る難波会長だが、パネルにボトルをはめると、それは真っ赤な偽物。前回冒頭の仕込みは、戦兎による偽ボトルの作成でした。
戦兎は実験室で強化装備の開発を始め、しばらく爆発ギャグで、割と酷い目に遭う万丈。地下に入ってきた美空を誤魔化す為、プロテインで魂を売った万丈は美空をデート名目で外へと連れ出し、今回、個人的な好みからは少々ギャグがくどかったのですが、全体の情報量がいつもより少なめだった事を考えると、劇場版を視野に入れた上での年末展開の調整で、やや尺が余り気味だったりしたのか。主人公と親しい人物の悪意が明かされるという重い展開なので、いつも以上に緩急の意識を強めた所もあったのでしょうが。
戦兎は紗羽の調べてきたマスターの過去について確認し、どう考えても東都政府に追われる身ながら、マスターの経歴にまつわる印刷された資料を揃えてくる紗羽も、マスター=スタークと同様、むしろ某国エージェントだった方が面白いという領域に入りつつあります(^^;
正義感が強く、気さくな人柄で慕われていたという宇宙飛行士・石動惣一――だか彼は10年前、スカイウォールの惨劇を引き起こし、錯乱状態でそのまま入院。その病院には、同日、パンドラボックスが保管されていた部屋で意識不明で発見された石動美空も入院していたが、惣一は一ヶ月後に病院を脱走してしまう。……そして7年後、突然パンドラボックスの特別顧問に就任した惣一だが、その手引きによって箱はファウストに奪われ、長く昏睡状態だった美空もボトル浄化の為に病院から拉致される。ところが惣一=マスター=ブラッドスタークは、今度は美空を連れてファウストを抜け、今に至るのであった。
戦兎と紗羽が美空の過去について情報を共有すると共に、カラオケデート中の二人では、ファウストがボトルを悪い事に使っていると知った途端、浄化の為の精神集中が出来なくなった事を美空が語り、実に嫌な前振り……。
「おまえを拾った場所、覚えてるか?」
戦兎の元にはマスターから連絡が入り、また実に嫌な場所を指定してきて、前回からの徹底ぶりが素敵。
……――そしてあの日と同じ雨の中、因縁の場所で向き合う戦兎とマスター。
「懐かしいな。おまえとここで出会って、ホント、濃密な一年だったよ」
「……俺や万丈にしてくれてた事は、全部嘘だったのか? ……美空の事だって。……俺たちが過ごした時間は、全て偽りだったのか?」
「全部が全部嘘ってわけじゃない。たまに感動してうるっとしたし? 騙して悪いなーとも思ったよ」
清々しいほど最低だ!(笑)
「…………ふざけるな」
怒りの戦兎はビルドに変身し、マスタークと再び激突。ドリル剣に忍者ボトルを差しての分身ドリル剣は応用技として格好良く、スタークを的確に追い詰めていくビルドだが、その脳裏をマスターとの思い出が走馬灯してしまう。

――「おまえは、過去にとらわれすぎなんだよ。大事なのは、今だろ?」
――「この男なら、ボトルの力を正しい事に使ってファウストを倒してくれる。そう思った」
――「戦い終わったおまえにお帰りっていうの……好きなんだよ。なんか、家族って感じがしてさ」

視聴者にもマスターのこれまでの外道働きを存分に振り返って噛みしめていただいた所で、思わず攻撃の手を止めてしまったビルドはスタークの反撃を受け、連続攻撃で切り刻まれている真っ最中に

――「おかえり」
――「ただいま」

を重ねる、実に外道な脚本と演出で素晴らしかったです!
連続射撃を受けたビルドは変身解除に追い込まれ、がっくりと倒れ込む戦兎の姿に、溜息をつくスターク。
「……できねぇよ。……できるわけねぇだろ。…………今の俺を作ってくれたのは、あんただ。あんたのお陰で、俺は人間らしく居られた。……あんたを信じて、あんたに救われて! ……なのに……倒せるわけねぇだろ!」
記憶喪失という設定もあってか、どこか感情がぽかんと抜けたように読めない部分のあった戦兎(今考えると、ボトル完成時などの急な反応の変化には、未発達な人格ゆえの条件反射、という意図もあったのか)が、“理想のヒーロー”というフィルターを通さずに、生の心情を激白。
キャラクターの内面を深く掘り下げる事で、役者さんの幅も良いタイミングで広げていく形になったと思います。
「勝負あったか」
つまらなそうに戦兎に向けられるスタークの銃だが、横から不意に飛び込んできたがしゃこんブレードがそれを叩き落とす!
「だったら……俺がぶっ倒してやるよ!」
桐生戦兎が膝をついた時、それを支え手を伸ばす、或いは頬をはたく、という、良い形で万丈の位置づけが機能。今後も色々あるかとは思いますが、戦兎と万丈という軸がしっかりしているのは、今作の長所です。また今回、スパイ紗羽には戦兎と一緒に情報を整理するという役割が与えられており、散りばめられていたキャラクターの立ち位置も少しずつ定まってきています。
ライダーの人数的にも、次の新展開でぶっ飛んだ波乱を巻き起こす劇薬的な新キャラとか登場するのかなぁ……。
「俺が、あんたを許せねぇのは、はめられた事じゃねぇ! 戦兎や、美空の想いを、踏みにじった事だぁ!!」
万丈はダッシュで変身し、これまで自身の冤罪を晴らす事が第一だった万丈も、仮面ライダークローズとして今一緒に時を過ごす人達を思いやる気持ちが出るように。
つまり、プロテインは正義。
だがやはり大胸筋の鍛え方が足りなかったのか、スタークに躍りかかったクローズは零距離コブラミサイルで吹っ飛ばされ、敢えなく変身解除。
「万丈!」
「なぁ……不思議だと思わないか。なぜ俺が美空を連れてファウストを抜け出したのか。なぜお前をビルドにしてスマッシュと戦わせたのか。美空にボトルを浄化させる為だ」
ファウストの悪行を知り浄化を拒むようになった美空に、“正しい理由”を与える事。それこそが、マスターの目的であった。
仮面ライダービルドが悪い怪人を倒す事で、美空はそれが正義の為だと信じてボトルを浄化する。……つまり、おまえはそれだけの為に存在してたんだ。おまえは正義のヒーローを演じていたにすぎない。仮面ライダーごっこをしていただけなんだよ」
全てはマスターの思惑による、虚像のヒーローの芝居にすぎなかった……と戦兎に突きつけ、これまの展開を綺麗にまとめつつヒーローの存在していた理由を足下からひっくり返し。というのはスれたファン目線では衝撃度より納得感が強くて、前回の流れのおまけという感じになりましたが、スタークの正体判明よりもパンチが弱くなりそう、というのはスタッフも織り込み済みだったのか、以前に戦兎自身が
「あたしが浄化したボトルがあるから、仮面ライダーは正義の味方として、たくさんの人の明日を作ってあげられるんだ、って」
美空に正義の理由を与えていたというのが、痛烈な仕掛け。
「これでわかったろ? 如何に自分たちが踊らされていたのか。おまえ達じゃ、俺には勝てない」
「…………最悪だ。こここまで虚仮にされてたのは。けどな――」
心身ともに追い詰められ、地面に転がっていた戦兎はしかし半身を起こすと、真っ直ぐにスタークを見据える。
「俺たちが信じた想いは、幻なんかじゃない。俺も、こいつも……誰かの力になりたくて戦ってきたんだ。誰かを守る為に、何度も立ち上がってきたんだ。……あんたが居なくても、俺には守るものがある。俺は、自分が信じる正義の為に、あんたを倒す!」
たとえ始まりは悪意によって紡がれた筋書き通りだったとしても……生まれた想いは、確かにそこにある。誰かを救えた事も、決して幻ではない。
徹底的に絶望に追い込まれる事で、逆に“自分の中にある本物”を見出した戦兎は、演じているヒーローから一歩を踏み出し、己の中にある正義の為に、今、自らの足で、立ち上がる。
ここで戦兎だけだと、自己肯定による一人芝居めいてしまうのですが、万丈龍我――仮面ライダークローズという男の存在が、戦兎に自分自身を信じさせる助けになる、というのが非常に上手くはまりました。名前は出ていませんが、翻心して協力してくれている紗羽の存在も励みになっていると思われ、やや荒っぽかったものの、紗羽のエピソードを詰め込んでおいた事も効果的に。
戦兎はニューアイテム、ビルドの缶詰を取り出して振り振りするとベルトに装填、両手を広げてからの新しい変身ポーズで、シュワッと弾けるラビットタンクスパークリングが誕生。
突然の炭酸水は凄く謎ですが、これまでの丸みのあるフォルムから一転、稲妻状のギザギザが全体を覆い、体にも白いギザギザのラインが入っているという姿は、強化モードとして格好いい。
炭酸弾けるニュービルドは、スタークを正面から圧倒。多分、炭酸ジュースを振りまくって缶の蓋を開ける瞬間のスリルが背水の陣的なエネルギーを与えているのです。ライダーシステムは究極の防衛システムなので、このラインより後ろに下がる事は許されないのです。すすめすすめライダーすすめ、と瀬戸際のパワーを発動するビルドは二体のコブラを払いのけ、空中反転炭酸キックでコブラもろともスタークを撃破。
「馬鹿な……この俺が……」
腹を押さえて膝を付くマスター、それ絶対、「言ってみたかった台詞」シリーズですよね……。
「たった今、俺の中で石動惣一は死んだ」
「言ってくれるねぇ。そんなものを作っていたとは。おまえなら、アレを完成させられるかもな」
ほらまた、1ミリの反省もなく思わせぶりな事言ったよ!(笑)
「最後に、一つ教えてやる。氷室幻徳には気をつけろ。奴が本当の、ナイトローグだ。パンドラボックスはくれてやる。いつでも取り返せるからな。それより大事なのは、お前達の成長だ。せいぜい頑張って強くなれよ。チャオ!」
マスターは生身のまま驚くべき跳躍力を見せて姿を消し、如何にもな捨て台詞ではあるのですが、戦意喪失した戦兎にわざわざ石油を注いで火を付けていたので、真意はこちらであろう、という説得力があります。そして、アレの示唆とか、重要な情報を面白半分気味に与えて撤収するのが実にスタークで、きちんと正体判明の前と後の印象を繋げているのは上手い。
勝った筈なのに勝った気がしない戦兎と龍我は、叩きつけるような雨の中に立ち尽くし……次回、BGM無しによる雰囲気を変えた予告で、対峙する戦兎と幻徳、そして明かされる戦兎の正体?! と畳みかけてきます。
前回がこれまで積み上げてきた布石に濃厚なえぐみを振りかけて狙い澄ました一撃だったのと比べると、今回は終始その答え合わせ編という感じで盛り上がりはやや弱くなってしまったのですが、真の年末クライマックスはここからだ! という繋ぎのエピソードでもあった模様。あちこち情報の出し方に残念な点はあるものの、引きの巧さは今作の大きな魅力です。
ところで以前(第10話)の科学批判の時にちらっと思ったのですが、スターク=マスターと確定した事と今回ラストの大ジャンプで改めて思うのは、石動惣一は、火星探査プロジェクトの為に改造手術を受けた、宇宙開発研究所改造人間第1号なのではないか、という事。今回出てきた資料の、《プロジェクト極》という名前もやたら怪しげですし(笑)
つまり、
「メガール、悪いのはドグマの心だ!」
(『仮面ライダースーパー1』第22話)