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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第26話

◆Task.26「ガラスの靴」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:會川昇
「いいこと二人とも、王子様のハートを、ゲットするのよ! アタック!」
冒頭から、菜月による『シンデレラ』妄想で繰り出される、物凄くごつい女装(笑)
……おかしいな、前回、考えさせられる話だったのにな…………。
「美しいお嬢さん、踊っていただけますか?」
そして菜月姫に手をのばす、さくら王子。
シンデレラ:菜月 意地悪な母と姉:不滅の牙・真墨・蒼太 王子:さくら
という配役で、余ってしまった映士が、謎の侍従演技(^^; なんだか役者さんも、投げっぱなしにされた感が漂います。……おかしいな、前回、考えさせられる話だったのにな…………。
「なんの努力もせずに幸せになるなんて、教育的にいい話とも思えません」
さくらさんが『シンデレラ』を真っ正面からぶったぎっている頃、夜の街でまるでパートナーが居るかのように一人で踊り、そして倒れるという不審な女性を映士が発見。そして映士が女性を解放している間に、謎めいたフードの女が現れて女性が履いていたガラスの靴を持ち去っていく……という、ミステリアスな導入。
「私の……ガラスの靴」
映士からの報告を受けて情報を集めたボウケンジャーは、若い女性が踊り続けて倒れ、そのまま昏睡状態になって目覚めない、という奇妙な事件が多発している事を知り、調査を開始する。ステージで踊り狂う正気ではない女を発見して保護するが、今度はゴードム兵が現れてその履いていたガラスの靴を奪っていき、一悶着。
「げに恐ろしきは、人間の女の執念、だな」
ガジャ様はそれが、シンデレーラの呪いがかかっている靴だと説明すると、特にこだわる事なくさくっと退場。ゴードムロボを持ち逃げされたショックを引きずっているのか近頃どうも精彩を欠きますが、そろそろ南の島で隠居を考え出しそうで心配です。
果たしてこのガラスの靴は、今に伝わる童話の元になったプレシャスなのか? ボウケンジャーは靴と被害者周辺の調査を同時進行し……
少々余談に逸れますが、この、“伝説や物語そのものではないが、それを生む元になったプレシャス(俗に言えば、「元ネタ」)”というのは今作にしばしば出てくる要素ですが、神話・伝説の類いをかじっているとすんなり納得できる扱いであると共に、私たちが今楽しんでいる物語というのは、古代から連綿と積み重ねられてきたものの先端にありまた、人間の想像力が同時多発的に同種の物語を生む事があるという示唆にも思え、本歌取りや古典のアレンジ、メタ構造の取り込みを好む會川さんらしさであると共に、古代からの“物語”そのものに対する敬意の表現なのかな、とも思うところです。
そして『ボウケン』世界の神話伝承やお伽噺が、プレシャスという超常の宝から生まれたかもしれないというなぞらえは見方を変えれば、我々の現実に存在する物語というのはプレシャス――人類の大切な遺産――である、という裏返しが潜んでいるのかな、と。
先達への敬意と感謝を凝縮したのが以前の香川先生のエピソードであったとすると、今作全体に、
今あなたが(わたしが)紡いでいる物語は、いつかどこかで誰かのプレシャス――自分だけの宝――になるかもしれないのだ
という、物語に携わる人達への100%のエールが内包されているように感じます。
……話は戻ってその日の深夜、ガラスの靴がひとりでに動き出すと映士が目撃したフードの女が姿を現し、呪いの力によってさくらは強制的に靴を履かされてしまう。気がつくとさくらはドレス姿で舞踏会の会場に立っており、周囲には存在しないパートナーと独りで踊り続ける女性達、そして王子様が姿を見せる。
「ようこそ、シンデレラ」
「私が、シン……デレラ?」
「女の子は誰でもシンデレラだよ。王子様をずうっと待っている」
「私は……」
躊躇いながらも引き込まれるように笑顔になったさくらは王子へと手を伸ばして踊り出す。
「君の求めるものはなんだい? なんでもあげるよ」
さくらと王子は幻の舞踏会場で踊り続け、時計の針が12時を指そうとしたその時、現実世界のチーフがさくらの踊りを止めた事で、現実に引き戻されるさくら。周囲で踊っていたのが、昏睡状態の女性達である事に気付いたさくらは、ガラスの靴の呪いの意味を知る。
「あなたたちは……幸せなんですね、あそこで……」
――「君の求めるものはなんだい?」
「……私の、求めるもの」
幻の舞踏会場の事を思い浮かべながら、さくらはボウケンジャーへの勧誘――もしかしたら王子かもしれない駄目男かもしれないあれが王子というのはやはりどうかどうなのだろう私の趣味って……な人との出会いを思い返す。
「西堀さくら、俺たちは君を必要としている」
「正式にお断りした筈です。宝探しに、興味はありません」
冷たい態度のさくらさんの横で、何故かしれっと銃を撃つ不滅の牙(笑) ……まあ『ボウケンジャー』世界は《レスキューポリス》世界と限りなく隣接しているので、(一応)民間人がばんばんピストル撃ったり手榴弾投げてもふつー、ふつーです。
「何不自由ない西堀家のお嬢様が、家を飛び出して、過酷な自衛隊の特殊部隊に入ったのは、何のためだ?」
真っ直ぐ体当たりといえば聞こえはいいですが、そのデリカシーの無さが、どうかと思うんですよチーフ!
「家は関係ありません。私は、私の本当にしたい事を見つけたかっただけです」
「それは見つかったのか?」
ボウケンジャーとかになれば、私の求めるものが見つかるんですか?」
「……誰にでも自分だけの宝がある。それは誰にも与える事はできない。自分で見つけるしかない。……俺も探している。見つけてみないか、一緒に」
不滅の牙の、必殺《俺は既にいい事を言った! このボウケン(びしっ)レッドが!》(久々)。
チーフ、「誰にでも自分だけの宝がある」はこの当時からお気に入りのフレーズだったようですが、まず間違いなく、香川先生の小説の引用だと思われます(笑)
でもそうやって、人も世界も積み重ねられながら、より良い道を探そうとする者達の標として物語があるんだ、というのが『ボウケンジャー』なのかな、と。
「私はまだ、自分の宝を見つけられていない。でも……」
事件の調査を続けたさくらは、暗躍するフードの女の正体に目星を付けると、敢えてガラスの靴を手にしてその女――物語の中では悪役であるシンデレラの義理の姉・クロリンダを呼び出す。
「私は可愛いシンデレラじゃない。でも、新しいシンデレラを届けている限り、私のような可愛くない女でもあの人の側に居られるんだ」
「あの人? やはり……。私も可愛くない女ってよく言われます」
物陰から見守る男達を思い切り殴るさくらさん(笑)
「でも、シンデレラになれない女の子は、みんな不幸せだなんて……誰が決めたんですか?」
他人を犠牲にして、命令されて与えられるだけの幸せを本当に欲しいのか? クロリンダに問いかけたさくらは、あえて自ら靴を履く。
「誰にでも、自分だけの宝はあります。……それは、誰も与えてはくれない」
そして再び、さくらはドレス姿で幻の舞踏会場に招かれる。
「やあ。やっぱり来てくれたね。君の辛い旅はもう終わりだ。君の宝は、ここにある」
「昔から不思議でした。シンデレラの魔法が解けた後も、ガラスの靴だけはどうして残っていたのか。それは、あなたのせいだったんですね?」
真に靴に呪いをかけていたのは、シンデレラではない。ガラスの靴の正体は、シンデレラという生け贄を求め続け、その魂を弄ぶ王子の呪い――。
「僕のものになれば、幸せなんだよ」
「私だって女です。素敵な王子様には憧れます。でも、あなたはタイプじゃない!」
ダンスを中断して首根っこを掴んで王子を放り投げつつ、王子様への憧れ自体は否定しないのが物語としてのバランスでしょうか。
「幸せは、自分の宝は、自分で見つけます!」
西堀さくらの、自己肯定力が上昇した!!
「ここは僕の世界だ……君には何もできない」
自己肯定力により呪縛を打ち破ろうとするさくら相手に、立ち上がった王子様は手からビーム(笑) そしてクロリンダに命じて、さくらを捕まえさせる。
「さあ、シンデレラ。幸せにしてあげよう」
両手を広げたポーズがとても嫌な感じで、王子フィールドに亀裂を入れられた王子様が弱体化するのかと思いきや、ここから加速をつけて面白くなっていくのは、個人的に今回ポイントの高かった部分です(笑)
「私は……外の世界と、こちら側を、自在に行き来できる。物を持ち込む事も!」
だが王子に唯々諾々と従うのかと思いきや、さくらの言葉に変心したクロリンダは、サバイバスターをさくらへと渡す。
「クロリンダ、おまえにも、僕と居るという幸せを、くれてやったのに!」
「私の欲しかったものはここにはない。幸せは、人から貰うものじゃなく、自分で見つけるもの。……この人が教えてくれた」
さくらが王子の仮面を撃つと幻想の舞踏会場が崩れ、自ら呪縛を脱したクロリンダの姿はドレス姿になると消えていき、目覚める女性達、砕けるガラスの靴、そして実体化する呪いの怪物。
「可愛い可愛いシンデレラ達、さあ! 僕のもとにおいで」
不屈の王子様はしかし弱る事なく手を伸ばし、生理的に嫌だったのか、速攻で全員変身して、頭を光らせつつ揃い踏み。
「いいかいシンデレラ、君たちが夢見る幸せなんて本当はどこにもないんだ。だから僕が、幻を与えてあげるのサ!」
妙にいい味を出すガラスの王子様怪人はフェンシングで6人を切り払うと、王子ラブファイヤーを放射。
「僕の愛の炎で、燃え尽きろー!」
高い、自己肯定力が高い。
自己肯定力に対抗できるのは、やはり自己肯定力なのか。ボウケンジャーを苦しめるガラスの王子様だが、自己肯定力を上昇させたピンクが、ハイドロシューターで押しつけられる愛の炎を消火。
「幸せも、夢も、宝も、幻ではありません!」
二丁拳銃からボウケンジャー連携攻撃を浴びせ、トドメはデュエルクラッシャー! だが……
「僕の、僕のシンデレラぁぁぁぁぁ!!」
高い、自己肯定力が高い。
ガラスの王子様は愛のパワーで巨大化すると、ダイボウケンとサイレンビルダーもフェンシング攻撃で苦しめる予想外の強敵ぶり。
「さあ、僕と一つになろう」
更にダイボウケンにぶちゅーと迫ると直接エネルギーを吸い上げるという荒技を見せる、大・活・躍。
「どういう趣味してんだよあいつ?!」
「女の敵は、絶対に許しません!」
だがそれがピンクのリミッターを解除させ、ダイボウケン怒りの鉄拳が王子に炸裂。ピンクは強引にサイレンに消化剤を強制発射させ、激しい水流を浴びながらもむしろ喜ぶ王子だが、それは前振り。いつの間にかゴーゴーマリンに乗り移ったピンクは、消化剤の水流に乗っかりマリンを敵目がけて発射する必殺「マリンロケットライド!」で王子を撃破し、ボウケンジャー屈指の戦闘力を見せつけるのであった。
「――そして二人は、いつまでも幸せに暮らしました。……あーあ……」
「ま、王子様なんて居ないって事だよな」
と混ぜっ返すのが、むしろ王子様になりたそうな真墨である事に、何やら虚構へのジェラシーを感じます(笑)
「そんな事ないよ! あれは悪い王子だったけど、幸せにしてくれる、素敵な王子様はきっといるもん!」
「やれやれ。さくらさん、なんか言ってあげてくださいよ」
「私も居ると思います」
「「「「え?」」」」
「……おまえも待ってるのか、王子様を」
驚愕する全員、けっこう失礼。
「待ったりしません。自分で――捕まえるだけです」
整備中のワイヤーをじゃきっと鳴らすさくらの姿に皆が顔を引きつらせ、さくらさんが微笑んでオチ。……恐らくさくらさん的には場を和ませる冗談のつもりだったのでしょうが、さくらさんのミリタリー冗談はどこかズレている、というのは小林脚本の題12話を受けた感じでしょうか。
ちなみにラストのドタバタ、わざと音声を被せているのでしょうが、地味に背後で映士が「(王子様は)いるんじゃないのか」と発言して真墨と菜月に驚かれており、背景でヒロイン力を上昇させています(あれ?)
夢見るだけでも待っているだけでもない、射撃系ヒロインさくらさんのエピソード。甘い誘惑をしてくるガラスの王子様が「求めるものを与えてくれる」存在なのに対して、回想シーンの不滅の牙が「求めるものは自分で見つけるしかない」と描かれると共に、王子を慕うクロリンダの気持ちにさくらさんが気付く、というのがポイントでしょうか。
まあ、「見つかるんですか?」と聞かれて、「自分で見つけるしかない、というか、俺もまだ見つけてない」と返す不滅の王子様は、ある意味、何も解決せずに投げっぱなしなのですが、そんな不滅の王子様の言いっ放しが胸に突き刺さってしまう人もこの世には居るのです。この後、暴走の後始末や不始末の後始末や単独行動の後始末を色々やらされる羽目になりますが、慣れてくると段々、良い所ばかり目に入るようになるので、人間って不思議ですね。
あと、自立した強い女であるさくらさんですが、その強さで他者の生き方を殴り飛ばすのではなく、クロリンダや被害者達への優しい視線があるのが、さくらさんの良い所だと思いました。
次回――ショウ司令みたいなのが出てきて、チーフがアンラッキーで大ピンチ?!