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『レゴ・バットマン・ザ・ムービー』感想(ややネタバレ)

 「ルーレットでは、いつでも、黒に賭けろ」


 ゴッサム・シティの平和を守る、正義のヒーロー、バットマン。今日も今日とてジョーカー率いるヴィラン軍団の悪事を阻止し、市民の喝采を受けながらホームへ帰還した彼を待っていったのはヒーローとしての充足……よりも深い孤独と、胸に抱える恐怖であった。忠実なる執事アルフレドに指摘されたその恐怖から目を逸らしながら、盟友ゴードンの退任祝賀パーティに足を運ぶバットマン――ブルース・ウェインだが、彼を待っていたのは新任署長の宣言、そしてジョーカーの予想外の行動による、思いもよらない危機であった――!
 アメコミ三大ヒーローの一人バットマンを主人公に、縦横無尽のアクションと抱腹絶倒のギャグが矢継ぎ早に繰り広げられながら、ヒーローとは何かを問い、バットマンという存在の心奥に迫る、ハチャメチャでハイテンションなノンストップ・アクション・コメディ。
 タイトル通りに世界やキャラクターはレゴブロックによって構築されており、たとえば“ズボンを履き替える”際は“下半身のパーツごと取り替える”など、レゴならではの要素が随所にユーモアとして盛り込まれており、いっけん子供向け玩具をベースにした子供向けアニメ……という印象を与えるのですが、その実態は迫力の映像に緻密な脚本が織りなす、非常に贅沢な一作。
 《レゴ》ブランドとしてはTVシリーズやゲームなどの蓄積があり、以前に『レゴ・ムービー』を見ていたので甘く見ていたわけではないのですが、ここまで出来るのか、という脱帽の物凄さ。
 ユーモア溢れる脚本の切れ味とハチャメチャ具合も凄いですが、それを支える映像が非常に良く出来ており、“レゴならでは”の要素を随所に取り込んだアクションは、CGアニメーションゆえに、VFX全盛時代の実写作品に対する遜色の無さが光ります。
 バットマン、という非常に強度の高いキャラクターを中心にしているので、細かい説明は不要、という利点はありますが、物語は非常にテンポ良く進みながら、バットマンとジョーカーのただれにただれた関係が、こじれにこじれてドンドンとんでもない方向に。

 「一番のライバルは誰? って聞かれたらなんていうー?」
 「スーパーマン
 「おまえ本気で言ってるのか?!」
 に始まって、いかにジョーカーが自分にとって特別な存在ではないかを立て板に水と語り続けるバットマン、それを聞かされて愕然としながら絶望の涙を流すジョーカー、というシーンは最高でした(笑)
 そこから色々あるのですが、クライマックスのバットさんがまた、男として実にさいてー。
 このクライマックスは、レゴ×バットマンバットマン×ジョーカー、という今作の軸になる要素がトンデモない形でクロスする凄まじい展開なのですが、ここまで来てそのネタやるのか?! と思わせておきながら実は序盤にある伏線が提示されているので納得せざるを得ない、というのが本当によく出来ています。
 凄くバカなのに、凄く緻密。
 ヒーロー物としていうと今作の着地点ってかなり意図的に邪悪なのですが、変態コウモリ男を法の秩序に組み込もうとしたヒロインがその試みに失敗し、自ら超法規的処置を用いてしまった上で気がつくと自警団ヒーローに飲み込まれてしまうというのがさらっと描かれているのは割と恐ろしい(なお元凶はそのコウモリ男なわけですが……)。
 ちなみにヒロインの声が沢城みゆきでバットコンピューターの声も沢城みゆきで昨日見た『パワーレンジャー』の悪役の声も沢城みゆきで、沢城みゆきゲシュタルト崩壊しそうになりました!
 割と大胆なメタネタがあったり、レゴ世界そのものが好き嫌いの分かれそうな要素ではありますが、『レゴ・ムービー』で一度体験していた事ですんなりと世界とノリに入れた事もあり、大変面白かったです。