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金の寿司、銀の寿司

◆『帰ってきた侍戦隊シンケンジャー−特別幕−』◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子
「私とした事が……。危うく格好良く死ぬとこだった」
侍戦隊シンケンジャー』(2009)放映終了後の、番外編Vシネマ。先日、『仮面ライダーアクセル』で深傷を負いましたが……こちらはなかなか面白かったです。基本、キャラクターショーに徹した作りで、アヤカシの妖術にはまったシンケンジャーが様々なシチュエーションで様々なコスプレをして大騒ぎ、という内容なのですが、本編メインライターの小林靖子脚本な上で

・各シチュエーションはだれる前に早め早めに切り替える
・どのシチュエーションでも基本的に全員登場
・潔くお楽しみと割り切って変に本編と繋げない
・その上でとある要素がラストへしっかり連動する

という作りが統一したテンポの良さを生んでおり、特に「早め早めに切り替え」と「全員登場」という形式にしたのは大正解。1シチュエーション1人をシーン切り替えで繋いでいくとキャラ間の落差がストレスを生む可能性が出ますがそれを排除し、馬鹿馬鹿しいネタでも全員登場なら諦めがつく上で、一つ一つのシチュエーションにこだわりすぎない事で飽きさせず、アトラクション的な面白さを前面に出せました。
……まあ、一つ一つのシチュエーションは概ねくだらないギャグ寄りなので、早め早めとはいっても好みによってはどうしてもだれるとは思いますが、私はギリギリ、面白いに転がってくれました(そういう点では尻上がりに面白くなった)。
シチュエーション切り替えごとにタイトルが盛られていくのですが、
〔殿様評判記 → 殿様評判記荒野の握り → 殿様評判記荒野の握り情熱系 → ……〕
という、やや迷走を始めた映画シリーズのタイトルっぽさが、東映的に妙なリアリティ(笑)
個人的に特に面白かったシチュエーションは、動物戦隊シンケンジャー世界と、茉子アイドル世界。
動物戦隊は、シンケンジャーのスーツに各折神モチーフの耳などがつき、外見お遊び(と、あるプラスアルファ)なのですが、折り返しのアクションシーンになっており、動物の特性を取り込んだアクションが割と見応えあり。勢いで「ドラゴンファイヤー!」とか放ってしまうブルーが妙に格好いい(笑) そして、全身から触手を伸ばすイカゴールドは、どう見ても怪人であった。
茉子アイドル世界は、ぶりぶりのアイドル衣装の姐さんが一曲歌い、唯一、生身登場は茉子だけという例外的なシチュエーションなのですが、ステージで無表情に踊るシンケンバックダンサーズが、想像を絶する面白さ。
バックダンサーズ(赤青緑黄金)はスーツ姿なので当然表情は無いのですが、普段、戦隊のドラマとして無表情な仮面に感情を投影する見方に慣れていると、ドラマが無いので感情の投影しようがないスーツ姿の無表情がより強烈な印象になり、ムーディなイントロ合わせて如何にもな振り付けですっと立ち上がるダンサーズの動きで大爆笑。
戦隊ドラマの文法を逆手にとって、ドラマを排除する事で強調した無表情を笑いに変える、というのはこれは“ひっくり返しの戦隊”である本編の要素を汲み取ったといえるのか(笑)
ところでこのシーン、メンバーの線が妙に細いというか、ダンス本職の方に入って貰ったのか、スーツアクターさんがいつもと違うように見えるのは気のせいでしょうか。でも、ゴールドだけ凄く太めというか、普段より太い気がして凄く謎(次郎さんがゴセイナイト使用でウェイト増してた……?)なのですが、これは照明か、照明の影響なのか。
なお今作で、オール男性陣の女装がありました。
まあ、性別逆転学園物世界だったので、厳密にいうとこれも女体化……なのか?
ドタバタ劇で進行しつつ、最後はヒーロー物としてしっかり締め、これやっておけば大体収まる、というというのはスーパー戦隊の「型」の強さを感じますが、それを補強する仕掛けもバッチリはまり、柴崎監督の演出も良かったです。
あと、幻覚の中で苦しむシンケンジャーの姿を愉しむアヤカシの声を演じた陶山章央さんの、吃音多用の下卑た演技も印象的。本編では個々のアヤカシの存在感の弱さというのは短所の一つでしたが、尺の余裕もあって出番も確保され、面白い怪人となりました。
お楽しみ主体という事もあって時制は劇中で明確にはされないのですが、サムライハオーへの言及と6人の距離感を考えると、本編第35−38話の間ぐらいのエピソードでしょうか。
キャラクター強度を活かした割り切った作りが良い方向に転がって、ボーナストラックとして楽しい1本でした。