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『ウルトラマンルーブ』感想・第4−5話

◆第4話「光のウイニングボール」◆ (監督:田口清隆 脚本:柳井示羊緒)
注目は、投球フォームで正体がバレるウルトラマン
高校時代からずっと見ていた恩師という事で一定の説得力はあるのですが、お兄ちゃん、兄弟タッチ以上の不覚……!
というわけで、その実力を評価され、かつては大学野球から多数のスカウトがあった高校球児だったカツミ回。大学に進学しなかった為に一度は野球も辞めたカツミだったが(なおアサヒはこの経緯を知らなかったものの、10歳前後の頃の事のようなので、不自然とはいえない程度の時期ではあり)、高校時代にカツミの才能を見出して育ててくれた恩師が監督をする商店街の野球チームに参加しており、その恩師の引退試合を勝利で飾ろうと、熱意を燃やす。
「勝てるかな……常北は強いし、こっちは厄年が3人も居る」
「勝ちます。その為に俺は、チームの鬼になる!」
……からのウサギ跳びランニングという、120%駄目な方向へ驀進したーーー。
「医学的見地から見てさー、ウサギ跳びは膝に悪いよ」
を、10秒で止めてくれた弟が、大変素晴らしかったです(笑)
ただでさえ生真面目で暑苦しいのに、高校時代の恩師の為にといつも以上に空回りのカツミはチームメイトとも雰囲気が悪くなってしまい、掴み合いの喧嘩になりかけた所でレッドキングが出現。立ち向かうロッソとブルはレッドキングに完敗するが、レッドキングは街へと降りていく事なく、姿を消す。
一通りの基礎情報が出そろった所でキャラエピソードが入り、真面目で責任感が強いが視野が狭い部分と自分への厳しさを他人にも要求してしまう面がある、というカツミの長所と短所が掘り下げられ、兄弟へ愛着を持ちやすくなったのは良かったのですが、物語の方は

いきなり訳知りな事を言い出す平泉成
おもむろにキーアイテムをくれる平泉成
何もかも理解して飲み込んでいる平泉成
トドメに目が光る平泉成

平泉成に全て押しつけて投げ飛ばした、みたいな事になってしまった上に、4対1で負けたのはいいとして、チームメイト皆帰ってしまってカツミと監督だけがわかり合って終わり、みたいなオチはどうにも納得しがたいものがあります。
出来すぎた話にしなくてもいいですが、ちょっといい話は否定しなくてもいいようなというか、そこせめて、負けたけど皆で監督を胴上げするぐらいしてくれないと、商店会における今後のお兄ちゃんの立場が大変不安になるんですが?!
目の光る平泉成は、マンガ的表現なのか真面目な伏線なのか図りがたい所ですが、やたら訳知りなのも思わせぶりなのも、先祖代々、光の巨人の関係者という方がまだ頷けるレベル。
そもそも今回、先祖代々の家宝が“何故かやたらてかてかとしたメダル”である必要はなく、古い石や飾りみたいなものを「餞別のお守り」として渡され、それが窮地で輝くと中からウルトラクリスタルが出てくる、とかでも良かったというか、そちらの方が劇的になり説得力高かった気がしますし……。
怪獣クリスタルの使用と回収が明確になった愛染社長は、わざわざ最終回にレッドキングを送り出すというド外道ぶりを見せましたが、前2作の黒い変態紳士達とは別の、白い変人路線で新たな面白さを出してくれるのは期待したいところです。とりあえず現状、意図的にウルトラマンの強化を望んでいるようですが、3作続けて似たようなパターンの中で、こちらも新味が出てくれるといいなぁ。
そしてウルトラ兄弟が戦闘中に、誰にともなく「ツーアウト満塁、クライマックスですね」と呟くアサヒの背後に、同じ観客席に座る愛染社長が首から膝の辺りまで映っているというカットが思わせぶりで、相変わらず怪しげな妹であった。


◆第5話「さよならイカロス」◆ (監督:田口清隆 脚本:安達寛高
「彼は、自分の翼を信じていました。私もそうです」
手作りの飛行機械で空を飛ぼうと実験を繰り返す、イサミの同級生・二宮ユウハ――あだ名はイカロス。ひょんな事から彼女に弱みを握られたイサミは、助手としてその開発と実験を手伝う羽目に。
一方、クワトロMに愛染社長が来訪し、前回の草野球を拾いながら“風来坊”っぽいジャケットを購入しつつ、小切手で庶民の脳を機能不全に陥らせた隙にしれっと盗聴器を仕掛ける流れは面白かったのですが、幾ら何でもクッキー型盗聴器は無理があるような……!(笑) 露骨に無理がありすぎるのでツッコミ待ちというか一種のギャグなのでしょうが、一応役には立っており、この辺りのコメディとシリアスのバランスは各話監督の裁量の中で試行錯誤中といった感。
それはそれとして、カツミはともかくイサミやアサヒの尊敬の眼差し他、愛染社長はこの世界ではカリスマ的人気者である、という描写はリアクションを積み重ねてしっかりと説得力を持たせており、ここは大変良い部分です。
度重なる墜落にもくじけず、改良と試験飛行を繰り返すユウハを手伝う内、資産家の家に生まれたが故に、翼を持たない彼女の事情をイサミは知る事となり、いよいよ、イサミも設計に手を貸した最新型の試験飛行当日――
「俺な……二宮の事、尊敬してる」
「私を? 理由をお聞きしてもよろしいかしら」
「ほとんどの奴らは、夢を持ってても、挑戦しようとはしねぇ。でもおまえはそうじゃねぇ。俺は……二宮から、勇気を貰ってる」
「…………二人乗りの飛行機を作れば良かったですね。一緒に空を飛んでみたかった」
目を合わせての微笑から、叶わぬ夢に視線を遠くに流し、ここのニュアンスが、とても良かったです。
今回はとにかく、ゲストの二宮ユウハ役の女優さん(須藤叶希)が大当たり。美人度の高さもさる事ながら役柄にあった顔立ちと雰囲気で、エピソードの説得力を高めてくれました。
前回がエピソードの説得力の8割をゲスト任せにした結果、ガタガタになった骨組みで胴体着陸気味だったのに対して、今回は組み上げたエピソードの完成度をゲストが3割増ししてくれた、という点で好対照。
「……そうだな」
だがいよいよ飛行実験の開始直前、今回も最悪のタイミングで愛染社長が嵐の怪獣を召喚し、踊りながら怪獣エキスパンダーををぎゅるんぎゅるんする社長の変人ぶりがニトロで加速。
それ以前の作品は知りませんが、『オーブ』・『ジード』・今作と、胡散臭い悪役が善玉サイドと同じアイテムで怪獣を召喚 → ウルトラマンに撃破される → 再びそれを回収、という酷似した構造を繰り返している関係で、悪の召喚者ポジションをどう描くか、というのが立ち上がりの重要なポイントになっているのですが、気取った美形悪役路線からの転換、というのは一つわかりやすい差別化に。
「俺たちの翼は簡単に折れない。そうだな、二宮」
怪獣の巻き起こす暴風に苦しむ兄弟だが、風にあおられて飛ばされたユウハが、イカロスの翼で持ちこたえている姿に勇気を得たブルの発案で、魔球・水蒸気爆発で地面を掘り返し、地中に反応のあった風のクリスタルを入手。
「纏うは風、紫電の疾風!」
「風のクリスタルぅ?! また先に使われたーーーー!!」
前回、ロッソがゼロクリスタルを発動した時に喜んでいるように見えたので勘違いしていたのですが、愛染社長はウルトラマンの強化を望んでいるわけではなく、クリスタルを先に使えなかったショックで興奮していた模様。
ティガの力で紫紺の巨人となったブル:ウインドは、怪獣の放つ嵐を切り裂いて懐へと飛び込み、主観に近いカメラによる低空飛行シーンや、思い切った至近距離にカメラを寄せての接近戦など、趣向を凝らした絵作りは田口監督らしい見せ方。
一度は主導権を奪うも再び怪獣の作り出した巨大な竜巻に飲み込まれ、カラータイマーも点滅してしまう兄弟だが、その暴風の中でイカロスの翼で鮮やかに風に乗るユウハの姿を目にしたブルは彼女の言葉を思い出し、風の向きを読んで逆回転で竜巻を消滅させる事に成功。最後はゼロスライサーとウインドビームで怪獣を撃破するのであった。
そして人々は、嵐の過ぎ去った後の青空を自由に飛ぶ――イカロスの翼を見る。
「彼女は風に乗り、長い時間、飛んでいた。……それから少しして、彼女は大学を辞めた。家の都合で、海外に留学する為だ。綾香市を出る時、彼女は笑顔だった」
一方、風来坊ジャケットを強引に身につけた愛染社長は、剣のウルトラクリスタルを磨きながら、あまり上手くない感じの口笛を吹くのだった……で、つづく。
前作『ジード』でシリーズ構成を務めるも、最終的になんだか坂本浩一監督に好き勝手やられてしまって個性を出し切れなかった印象のある安達寛高が参戦。翼を求める籠の鳥のお嬢様、という古典的テーゼをウルトラマンの飛行と繋げ、ウルトラマンの見せる夢と、夢へ向かって飛ぼうとし続ける者の強さがウルトラマンに与える勇気とが、くるりと一回転して綺麗にまとまった、好篇でした。
「ほとんどの奴らは、夢を持ってても、挑戦しようとはしねぇ」と意外に強く毒づくイサミは、恐らく家庭の為に夢を諦めたカツミの事が念頭にあるのでしょうが、恐らくはそのカツミに背中を押されて大学で母と同じ道を進むイサミが、夢を実現する為に超アグレッシブなユウハの姿に感銘を受ける、というのも立ち上がりの今作を貫く一つの軸を見せてくれて良かったです。
そんなユウハでもままならない家庭の事情がある、というのはカツミの鏡像でもあり、兄弟それぞれの要素を持つゲストキャラ、という事でもあったと思われますし、後はこの軸になりそうな要素が、全体通して活かされてくれると良いのですが(前2作からの不安点)。
余談:ウルトラマンゼロのナレーションによる、『ウルトラマンレオ』ブルーレイボックスのCMにて、
「あの厳しかった師匠も、こんなに努力してたんだなぁ」
と朗らかに語られる背景で師匠が明らかに殺人マシンと格闘しており、猛特訓の数々という白々しいテロップとの合わせ技で、大変面白かったです。