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『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第43話

◆修行その43「ハピハピ!メリークリスマス、押忍」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林雄次
「いいっすね、クリスマスって。世界中のみんながハッピーになれる、一年に一度のイベントじゃないっすか」
「そうだな。俺たち激獣拳の願いは、こんな風に、みんなが毎日笑顔で暮らせる世界を、造る事なのかもしれないな」
ミニスカサンタに目を細めるケンに、荷物持ちに駆り出されていたガゼル師匠が頷き、そういうのは、2クール前に言っておいて下さい!
その上、この期に及んで「かもしれない」なのが大変不安を誘うのですが、ジャンが第1話で行動によって示した「正義」が、導き手である筈の拳聖達によってズタズタに引き裂かれているのが、THE『ゲキレン』ワールド。
そんな二人は「クリスマスなんか嫌いだ!」と叫ぶ少年・カールと行き会って、一方通行の親切心からスクラッチへ連れ帰る事に。
その頃、臨獣殿では浮き世の行事にメレ様が一人で盛り上がっていた。
「理央様、今宵、世界はクリスマスイブ! メレが理央様にプレゼントを差し上げますわ! 何がいいかしら……悲鳴? 絶望? それとも、メレの愛? いやーーーーーん!」
相変わらず、声のトーンの切り替えから、語のテンポまでキレのいいメレ様の台詞回しですが、リズムが良すぎて、『ブレイド』の前期OPを思い出してしまいました(笑)
何がいいかしら悲鳴?絶望?
ここにあるものは希望?絶望?
Round Zero始まってるメレ様を放置して、キメラ拳士の部下であるハヌマーン拳士が出撃し、大量の分身猿を放って街中で悪戯。これを止めようとするゲキレンジャー(赤青黄紫)と、クリスマスツリーをひっくり返して走り去ったカールを追うケン&チョッパーが同時進行で描かれ、バトルサイドでは久々にゲキトンファーが登場。
一方、昨年のクリスマスイブに母親を事故で亡くしたというカールの事情を知ったケンは、母親に会わせてやると宣言し、戦隊史上最低レベルの女装を披露。
前作の不滅のシンデレラに匹敵あるいは凌駕する酷さで、せめてヒゲを剃って、それからマスター三条に弟子入りして一からやり直すように。
根はお人好しだが色々と底が抜けて脳汁が漏れ気味の為、むしろメガトン級のトラウマをカール少年に与えてしまったケンは、自分もまた、幼い頃に母親を亡くしている事を語り、何となくそんな雰囲気のあった久津家の事情を回収。
それはそれでスッキリしたのですが、主要キャラそれぞれの「家族」に関わる要素が触れられているのに、連動した横の繋がりがほぼ生じない為、いつまで経ってもキャラクターの関係性や「家族」というテーゼそのものが立体的にならないのが、大変残念な部分。そして、単純に仕事なのかもしれませんが、妻と娘がよその家のクリスマスパーティーに参加して全くその存在を顧みられない真咲夫は、つくづくネタで画面に映さない方が良かったな、と。
これが画面に一度も映っていなかったり、ジャンと家族の問題を掘り下げている真っ最中でなければ全く気にならないのですが、前回までジャンと父、ジャンと家庭、というテーマをやっていたのに、閑話休題エピソードとはいえ劇中の要素がてんでばらばらのまま、その場その場でしか処理されない、というのが非常に勿体ない。
「獣拳が、俺に教えてくれたんだ! 前へ、進めってな!」
言葉は通じないながらも真心を持って接するケンは、以前のバット師匠スキャンダル回も含めて、他人を思いやる男ぶりが良いのですが、結局、カールの心を開くのはチョッパーへの変身になってしまい、それこそがヒーローの役割とはいえるものの、散りばめたパズルのピースが全く一つの絵にならないまま、一部分だけ取り出して「これで完成です!」と持ってくるので、ちっとも美しくなりません。
このエピソードにおける最も劇的な瞬間とは、「カールが如何に心を開くのか」であり、パズルのピースはそこに向けて配置され集約されてこそ美しいのですが、床のあちこちにちらかっているばかりで見向きもされず、クライマックスにおけるピースの拾い方が、凄く雑(ちょうど先日の『ウルトラマンルーブ』第7話もそういった感じだったので、小林雄次脚本の技術的難点なのかも)。
「見てろよカール……これが俺の、ゴーイングマイウェイだ!」
テーマ挿入歌に合わせてチョッパーが猿と戦っているところに、猿を追いかけてきた4人が何の盛り上がりもなく合流してスーパーチェストで一刀両断。超回避力を誇る巨大猿は凍結させてから轢き殺し、最後はサイ大王の新技で湖を凍らせたチョッパーが、巨大な母親の彫刻を作ってカールにプレゼントするのであった、でオチ。
…………翌日以降、日光を浴びて少しずつ解けていく巨大な母の彫像ってホラー以外の何ものでもありませんが、強く生きろ、カール!!
色々物足りない出来の中でひときわ目を引くのが、ケンとずっと同行していたガゼル師匠の個性がさして掘り下げられないし何のキーにもならないという事実なのですが、
・ノせられていいようにこき使われやすい
・比較的いい人
…………て、サメか!!
あのぶつかり稽古を考えると
・自分基準の頑丈さを他者にも要求する
ところまでそっくりで、「体」担当の基本スタンスを見るところですが……つまり、ガゼル師匠もきっと、パシリ体質……!
絶対、ペンギンにいいように玩具にされていた(涙)
引きネタとしては、一人クリスマスパーティの準備をせずに筋トレに励むゴウ兄さんが不穏ですが、次回、ジャンと白虎、いよいよ激突?!