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ようやく『模倣犯』(宮部みゆき)を読んだ

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯1 (新潮文庫)

きつかった。
正直、精読できずに部分部分でちょこちょこ流しながら読みました。
しばらく前の体調が微妙な頃に読んでいたというのもありますが、犯罪の非道っぷりと、それを更に非道に演出する犯罪者達と、その犠牲になっていく人々と、とにかく随所で正視するにはきつい展開が目白押しで、読む方にもかなりの覚悟を強いる作品となっています。
特に今回は主要登場人物の一人に、報道に近い側の人間として、フリーライターの前畑滋子が居るのですが、意図的なえぐみとして計算尽くで入れられているとはいえ、個人的には好感も共感も持ちにくい立ち位置で、彼女主観のシーンがかなりきつかった。
あと、多くの登場人物の主観が入り乱れながらやがて重なり合っていくという多層構造をしている為、最初の方のつかみが弱いです。なかなか盛り上がってこない。しかも、描かれている事件は物凄く重苦しいのに、その解決まではあと4冊(文庫版)を要するのだという物量的な圧迫感に、珍しく萎えました。それでも、3巻目に入る頃にはこの行き着く先を見定めなくてはならないと本腰入って、ラスト2冊は一気読みしましたが。劇薬めいた作品。
不満点としては、ピースの内面描写がほとんどされない為に、結局、彼がどこまで考えてどこまでは考えてなかったのかがはっきりしない所。ある所ではかなり高度な犯罪者のように描かれる一方で、ある所ではかなり行き当たりばったりであり、その二面性がピースであるとはいえ、その割には警察の捜査は後手を踏みまくりだし、警察どうなの? みたいな所に行き着きかねないバランスの悪さというのは少し感じました。
もっとも、ピースを必要以上に描写しない、という事自体は作者の意図通りであって、一応の背景みたいなものを見せながらも、ピースそのものは語らない、つまるところ、「ただの薄汚い人殺し」なのだ、というのは作品の描きたかった一つの部分ではありましょうが。
読み応えはありますし、基本の小説力が圧倒的に高い作者なので水準以上の出来ではありましょうが(第3部における“正しいけど間違っている”多層構造などはまさに見事)、『模倣犯』全5巻読むなら、『魔術はささやく』『パーフェクトブルー』『長い長い殺人』『蒲生邸事件』『ステップ・ファザーステップ』辺りの方がお勧めです(笑)
これはあくまで宮部みゆきが“行く所まで行ってみた作品”であり、最高傑作ではない。
まあ逆にこういうのは作品を多数読んでいるファンの立場だから思う事であって、作品単独として読む分には、関係のない事ではありましょうが。ただとりあえず、宮部みゆきを読んでみようかと思うなら、『模倣犯』は後回しにする事を推奨します。
最近、『このミス』ベストオブベストに選ばれた『火車』なんかも、結構きついんですよねー。あれは確かに凄かったけど。『模倣犯』は、『火車』と『理由』の先、という感じで、一つの頂点ではあろうが、宮部みゆきにはもう少し手前で書いてもらいたい、というのが個人的な好み。