中位以下は割と混沌としてくるので3つに絞ってみると、今はこーいう感じかなぁ。
新潮社がプッシュしてくれないので地味な存在ですが、『魔術はささやく』は傑作です。
1位 『魔術はささやく』
2位 『長い長い殺人』
3位 『蒲生邸事件
深夜、道路に飛び出してきた女性をひき殺してしまったタクシー運転手の叔父。一人の男の証言によりそれが事故であった事が証明されるが、事件の裏にはもっと恐ろしい意図が隠されていた。知らず知らず、事件の真相に近づきつつあった主人公は、“魔術師”を名乗る一人の老人と出会う――。
途中で、現在ではかなり眉唾と言われているサブリミナル効果とが出てきたり、催眠術が主要なファクターの一つだったりする辺りが、今ひとつ評価の高くない理由なのかしらとも思うのですが、“悪意”とか“罪”とか“裁き”とか、宮部みゆきの主要なテーマを軸にしつつ、ミステリと社会派テーマと主人公の少年(高1)の成長物語を全部入れて、なおかつ家族テーマもやった上で周囲の人々の人間的変化も取り込むという豪華特盛りした上で、話にブレが無い、という、宮部みゆきの卓越した技量が光る逸品。
とにかくもう、ラストが凄い良いです。結局、良い作品というのはだいたい、ラストが凄い良いわけなのですが、そこに持っていって、そこでそう落ちるのか! という傑作。宮部入門としては、これか次のか『パーフェクト・ブルー』をお勧めしています。長さも手頃ですし。
『長い長い殺人』は、章ごとに様々な財布が語り手をつとめ、最初はバラバラだったパズルのピースが全て繋がった時に一つの事件が姿を現す、という作品。これも読みやすいので入門作としてお勧めであると同時に、話も面白いです。
『蒲生邸事件』は、大学受験の為に上京した主人公が、タイムスリップによって二・二十六事件の夜の東京へ飛んでしまい、そこで一つの殺人事件に巻き込まれるというもの。実は話はあまりよく覚えてないのですが、これもラストが凄く良いんですよ。そればばっかりだな、という感じですが(^^; SFだとかミステリだとか、そういうものさえもガジェットとして、物語を創る宮部みゆきの、作家的凄みの垣間見える作品。
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/01/28
- メディア: 文庫
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