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『宇宙刑事ギャバン』総括

大葉健二バンザイ
一言で集約すると、それに尽きます。
作品の魅力の9割が、生身アクション及び蒸着後のアクションに集約される今作、やりきったスタッフと役者陣に拍手。
さすがに週2ペースで一気に見ていると魔空空間バトルには少し飽きもくるのですが、それでも、手を変え品を変え、遊び心と気合いの入った各種演出の溢れるパワーには感心させられます。そして、週2ペースで見ていても全く飽きの来ない一条寺烈の生身アクションは、とにかく素晴らしいの一言。
走り、叫び、転がり、飛び、後半ではよく、一人でもがく(笑)
めいっぱい、楽しませてもらいました。
一条寺烈ベストアクションは、なんといっても、ジープに上から乗る
文字にすると何だかよくわかりませんが、ドアを開けて乗り込む(普通)のではなく、何故か転がりながら、オープンになっている天井から乗り込む。ギャバンアクションの最高傑作だと思います(笑)
シナリオに関しては、書いてなんぼの時代でも、その最右翼といえる上原正三大先生がメインライター(44話中37話)を務めているという事で、1話1話のエピソードは何だかなーという話は多いのですが、それでも後半は、それほど大規模な時空間超越移動とかしないのは大先生なりに少し軌道修正があったのか。1話とか、勢い任せもいい所で、滅茶苦茶だったんですけど。
ところで今作、基本コンセプトが上手く出来ていて、特に、敵対組織であるマクーの設定は非常に秀逸。
「人類抹殺」や「単純な世界征服」ではなく、「地球の富を奪い、更には悪徳の栄える惑星とする事」。これにより、大規模な破壊作戦を行う必要性が無く、また組織の規模の割には細かすぎる作戦にも、一応の説得力を持たせる事に成功しました。70年代的〜80年代的なるものの過渡期にあった悪の組織の設定としては、非常に優れています。
途中で何度か、派手な作戦(及び派手な作戦に繋がりそうな策謀)を行って若干コンセプトからぶれますが、そのぐらいは、特撮ヒーロー物の年間構成では許容範囲。
また、頭脳労働はバード星に丸投げするというのも、地味に秀逸。情報の分析を基本的にコム長官&マリーンに任せる事で、シナリオが非常にすっきりしました。お陰でミミーさんが役に立たなくなりましたが(笑) あと、たまにギャバンが自力で情報収集する必要が出ると、「坂田くんはドリームバードの一員じゃないですか?」みたいに、無駄に直球で困った事になりますが。その辺りも含めて、余計な頭脳労働をさせない事で烈のキャラクターを崩さず、作中のアクション比率を高め、なおかつ一段上の立ち位置にあるバード星からの情報は正しい、という劇中におけるポジショニングを確立させる事で視聴者も必要以上に悩まなくて済む、というこれは実によく出来た構造。これ以前にも類似構造の作品はあったかもしれませんが、発明、といっていい。
全体の構成としては、いわゆるテコ入れ展開が、2回。
13−14話のダブルモンスター登場編と、30話のサン・ドルバ登場編。
それまで無双すぎたギャバンが、ダブルモンスター登場以後は、戦闘で少し苦戦するようになったというのは、作品通していい構成になりました。シナリオ的にも、ダブルマン−モンスターの二重構造より、実際、すっきりしましたし。まあ、ダブルマンのデザインが映えない、というのと、序盤は見ていても位置づけがわからない、とか諸処の理由もありますが。最初にもう少し、ダブルマンとは何か、というのをわかりやすく呈示しておけば印象がまた変わったかもしれません。
後半の問題児、サン・ドルバは、最初から駄目人間の予定だったのか、新キャラを強調して演出していたらやりすぎてしまって駄目人間として始末するしかなくなった、のかは気になる所(笑) まさか劇中でもはっきりと、駄目人間扱いされるとは思いもよりませんでした。結果的には、魔女キバが映えたので、むしろ魔女キバの存在が幹部テコ入れだった、という事になりましたが。
ハンターキラー好きだったので、サン・ドルバは一生許さない(笑)
もう少し対立構造をあおった方が盛り上がったのでは、というのは、後続の作品を見ているから思う事ではありましょうが、ハンターキラーとサン・ドルバ&魔女キバの対立構造をあおりつつ、サン・ドルバの胸へ芽生える父への叛心みたいな物を丁寧に描ければ、終盤もっと格好良くなったかも……とは思わなくもありません。あまりギャバンから焦点を外してしまうと、作品の長所が減じてしまうので、結果的には良くないかもしれませんが(^^;
この辺りは、構成上の考慮点、という形で後の様々な作品に活かされていく部分となるのでしょう。
上原正三については、色々と批判的な事を書いていますが、偉大な人物だと思っています。70年代〜80年代の特撮ヒーローを語る上で決して欠かせない脚本家ですし、偉大だと思っているからこそ、ツッコミも好き放題に書けるというか。良い意味でも悪い意味でも、大先生の系譜に連なる脚本家(曽田博久、高久進武上純希など)で、大先生ほど突き抜けた存在は居ないので。今更ですが、屈折した敬意だと思っていただければ幸いです。時代性を踏まえた上でも、シナリオ展開粗いのは事実ですし(笑)
しかし、サン・ドルバは最終的に、父を罠にかけようとした理由も駄目人間だからに集約されてしまったのはさすがに(笑)
ネタ幹部としては、ネタ道を走りきりましたが。
全話完結した所で何より惜しかったのは、やはり11話「父は生きているのか?謎のSOS信号」。
この回で初登場する月子がそのままセミレギュラーとなり、エピソード自体がクライマックスに繋がるなど考えても、この回が超ぐだぐだ回だったのは、実に勿体ない。
伏線自体は、拾うかどうかも別に見切りで引いている所はあったかと思いますが、月子をここでしっかり書いておけばその後のエピソードも色々な所で見方が変わってきたと思うので、実はこの回が(結果的に)超重要エピソードだったと思うのですが、魔空空間的演出はさておくとしても、脚本が酷すぎた(^^; 前話の次回予告が凄く盛り上げていたので、一応、重要エピソードのつもりはあったみたいなのになぁ……。
それでも、43話「再会」を盛り上げた、大葉健二千葉真一の熱演は素晴らしいの一言。
☆好きなエピソード・ベスト3

  1. 第15話「幻?影? 魔空都市」
  2. 第43話「再会」
  3. 第14話「愛と悲しみの別れ とどめの一撃!!」

演出の鬼・小林義明、入魂の15話は潔くストーリーを斬り捨て、全編ノンストップアクション祭で怒濤の如く最後まで展開した傑作回。これぞ『宇宙刑事ギャバン』という1本。素晴らしい出来でした。
43話はドラマ的集大成のエピソード。父と子、二人の宇宙刑事が遂に出会い、アクション重視だった今作が、それを削ってまで二人のドラマに焦点を絞った名作。この回で巧かったのはドラマ部分に時間を取った事により、ボイサーが「死ぬ」のか「助かる」のかを絶妙なラインで引っ張って、見る側の気持ちを揺れさせ、感情移入の気持ちを強くさせた事。千葉真一の存在感あっての技でもありましたが、見事。正直盛り上がりすぎて、直後の最終回が若干おまけっぽくなってしまいました。
14話は、ダブルモンスター登場の後編。ドラマとアクションのバランスの取れた回となり、潮健児の怪演も光りました。
番外として、第21話「踊ってチクリ大ピンチ ハニー作戦よ!」。女王・曽我町子の降臨により、全編通して唯一、大葉健二が“食われた”回。凄かった。卑怯だけど。凄かった。
☆好きなサブタイトル・ベスト3

  1. 第39話「学校から帰ったらぼくの家はマクー基地」
  2. 第3話「大変だ!黒星博士のベム計画を阻止せよ」
  3. 第7話「怪物がひそむ花びらに少女は口づけした」

39話の、タイトル聞くだけでとても嫌な感じ、は絶品(笑)
7話はサブタイトル詐欺の名作(笑)
ギャバンはとにかく、予告詐欺が多い。
番外として、43話「再会」。そこまでの長さを踏まえて、の名サブタイトルなので。
ちなみに、全44話と中途半端な話数の今作ですが、放映期間そのものは3/5〜2/25なので、特番なりで何話か潰れた模様。この頃はまだゴールデンタイム(金曜19:30〜20:00)にやっていたので、そういう事もありました。
☆好きな台詞・ベスト3

  1. 「(ギャバンを)社会的に抹殺してやろうと思います」(第8話/ハンターキラー)
  2. 「それが宇宙刑事さ……筋金入りのな」(第43話/ギャバン
  3. 「みんながおまえをチヤホヤしたのは、おまえがドン・ホラーの息子だったからじゃ! おまえが勘当されたとなれば、 誰も相手にしてくれまい」(第44話/魔女キバ)

社会的抹殺宣言は、大先生の味が最高に炸裂した一言だと思います(笑)
43話は、マクーの拷問に耐えたボイサーについて。44話は、最終回にして衝撃の身内からのダメ出し。
あと、台詞では無いですが、秘密結社“アルファ”(マクーの隠れ蓑)が日本政府に出した要求「富士山をアルファの所有物にしろ」(2話)も、突き抜けていて、振り返ると好き。劇中で見ると反応に困りますが。
おまけで、会話ならやはり、17話のこれ。


マリーン「ギャバンね、ミミーは恋をしたのよ」
ギャバン「ええ?! 恋!」
マリーン「春の目覚め」
ギャバン「なぁんだ、そういうわけだったのかぁ……(ぽむ!)……長官、ひとおもいに結婚させちゃいますか!」
コム「おいおいギャバン、いくらなんでもそいつは乱暴すぎるよ」
ギャバン「じゃあ、別れさせるんですね」
コム「待て待て。それじゃミミーが可哀想じゃないか」
ギャバン「じゃあ、どうするんですか?!」
傑作(笑)
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配信による約半年、楽しませていただきました。
率直な所、各エピソードの出来、という点においては楽しめたかどうかの平均値を出したらそれほど高くないとは思うのですが、全てを帳消しにする充実のアクション、それだけで満足感を得られるパワーに乾杯。そして43話であのドラマを見せられては、総合評価としては文句が出ません。快作でありました。
改めて、2011年にこの作品を堪能させてくれた「東映特撮 YouTube Officia」に感謝。
〔東映特撮 YouTube Officia〕
一応、『ギャバン』についてはひとまずこれで終了。HTML版のまとめに際して、何か付け加えたい事が出来たら、付記するかもぐらい。『シャリバン』はとりあえず、今週配信中の1・2話は視聴予定。