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『輪るピングドラム』19話〜20話感想

15話も凄かったけど、19話がまた凄かった。
なんと、冒頭から兄さんと一緒に高倉両親登場。
これまでの物語の大前提だった“高倉家の両親は不在”という1話から貫かれていたキーが崩され、“兄が両親と繋がっていた事”が発覚。
無論ここまで、兄がどこからか大金を入手している事、そこについている謎のペンギンマーク、どうやらそれは父親の関わる組織らしい、と順々に匂わせてはいたのですが、ストレートに繋げてきたのは、自然であるが故に盲点でした。
主にミステリーの手法なのですが、「○○は○○である筈だ」という前提情報を受け手に出来る限り当然のように誤認させておいて、それをひっくり返す。
その、前提崩しの手法が絶妙。
何が巧いかというと、例えばシンプルに「死んだと思った○○が生きていた」という前提崩しを行う場合、“○○が死んでいた事による影響”をしっかり書けば書くほど、その前提を破壊するという事が効果的になる。
ここまで丹念に両親不在で3人の兄弟妹で懸命に生きている高倉家というのを描いてきて、その心性が納得するレベルで語られていたからこそ、その前提の破壊が衝撃的となり、もはや騙された事そのものが、気持ちいい。
兄さんどれだけ役者なんだ、という話ですが。
後半に入って、「既に死んだ人物」として強調される(リンゴちゃんが遺産である日記にこだわればこだわる程、モモカそのものは過去の人物という印象が強くなっていく)事で物語のフレームから外れていたモモカがキーキャラクターとなり、
15話で「世界は堅固である」という常識的前提が崩され、
19話では「高倉家の兄弟妹は両親の行方を知らない」という作品の背骨であった前提が崩され、
そしてとうとう20話では、「家族」という全ての前提が破壊される。
次々と出てくる変態ネタや、ぶっとんだ演出などで攪乱してきてはいるものの、核は凄く良質なミステリーの構造。
ただ崩せばいいというわけではなく、崩す為には積み上げなければいけないんだ、という部分が凄く丁寧。
監督の方向性もあって、色々はったりや仕掛けの多い作品ですが、ここぞという所で真っ当に切り込んでくるのはお見事。
18話に続いて、20話は非常にストレートにいい話でした。
19話の演出で、どうやらヒマリちゃんの本命はむしろ弟っぽいというのは見えてくる(ので19話ラストに綺麗に繋がる)のですが、まあ、あんな事があったら、それは惚れても仕方ないとして、最近めっきり、可愛い所だけが強調されていたリンゴちゃん、危うし。
兄弟の方も、もはや兄弟であるという前提が怪しくなってきていますが。
父が工場で子供が産まれたという電話を受けた時、「男の子」とは言っているけど、「双子」とは言ってなかったしなぁ。
ところで、秘密結社が子供が生まれたのをきっかけにテロを決行したりすると、産まれたのはもしかして世紀王かなんかなのだろうか、とかつい思ってしまう特撮脳。ゴルゴムの仕業だ!
リンゴちゃんもですが、ここに来てこれまでフレームから外れていたタブキ先生とユリさんの関係性が物語の中に入ってきて、遺された者達は如何にして救済されれば良いのか? という部分にも踏み込んでいきそうな気配が窺えます。この辺りは、どう着地させるか素直に楽しみ。
しかしナツメさんは毎度、暴れるだけ暴れてハチャメチャにして、成果も出せず反省もせずに帰っていくなぁ(笑)