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劇場版『仮面ライダー電王 俺、誕生!』感想

敬愛する長石多可男監督の映画作品という事で、いつか見たいなぁと思っていた作品を、ようやく視聴。
5年前の作品という事でラストまでネタバレありますので、ご留意下さい。
視聴したのは、劇場公開作品より10分ほど長い、<ファイナル・カット>版。


宝石強盗と契約したイマジンを追って2000年に飛んだ電王は無事にイマジンを倒すが、それは、時の列車を専門で狙う列車強盗・牙王の罠であった。牙王の一味はナオミを人質にデンライナーを乗っ取ると、オーナーからマスターパスを奪い、デンライナーで神の線路に乗り入れる。その目的は――神の列車を手に入れる事。
一方、牙王に食らった蹴りの後遺症で電王として戦ってきた記憶を失ってしまった良太郎は変身不能になり大ピンチに。負傷した良太郎を過去のミルクディッパーに運び込んだハナは、そこで11歳の良太郎と遭遇する……。
まずはイマジンとの戦いで各モードの良太郎を見せつつ、一暴れ、と劇場版らしいサービス満載でスタート。
2000年でのイマジン撃破後、良太郎はそこが、両親を失って間もない自分が、よく祖母の家から誰もいないミルクディッパーに向かっていた途中の道のりだと気付く。
現代ではミルクディッパーの常連が、本棚の隙間に隠れていた写真の入っていない写真立てを発見。それは両親死後のドタバタでアルバムが散逸してしまった野上家で、唯一残っていた両親の写真が入っていたものだった。だが写真は、頻繁に持ち歩いていた良太郎が紛失。以後、写真立ては空っぽのまま、いつしか忘れ去られていた。
一方、ひと足先にデンライナーに帰ったモモタロスは他のイマジンともども牙王の一味に捕まり、檻の中へ。自分たちを置いて出発しようとするデンライナーに駆け寄った良太郎は、牙王の蹴りを受けて気絶し、ハナは良太郎をミルクディッパーへ運び込む。
と、ハナと良太郎の会話で伏線を張りつつ、牙王一味の顔見せ、デンライナー内でのモモタロス達のやり取りなど、テンポ良く展開。
そして過去のミルクディッパーに辿り着いたハナは、両親の記憶を求めて店内に入り込んでいた過去の良太郎と遭遇する。そこまでは良かったものの、目を醒ました良太郎が、一時的かつ部分的な記憶喪失である事が判明。デンライナーから脱出に成功したモモタロスは良太郎に取り憑こうとするが、そこにジークが闖入。大人の良太郎にはジークが入り、モモタロスはなんと、子供の良太郎の中に入ってしまい状況は大混乱。困り果てるハナのもとへ姿を見せたのは、桜井侑斗。
数千、数万年もの時を超え、時間を支配する事が可能な神の列車を手に入れる、という牙王の野望を阻止するべく一行をゼロライナーに乗せた桜井は、強引に神の線路に乗り込んでデンライナーを追う。
と、ここで電車バトルから、ゼロノスvs牙王。
牙王は演技はともかく、仮面ライダー牙王への変身シーンは格好いい。
渡辺裕之は昔からだけど、どうして自分の演技に、あそこまで自信たっぷりなのだろう。
ゼロノスは牙王に敗れ、ゼロライナーともども、時空の果てへと飛ばされ、辿り着いたのは恐竜時代。ここからしばらく、デンライナーを追って、西部開拓→ピラミッド→明治日本?と、時間旅行。めまぐるしい時間旅行で飽きさせない展開にしつつ、合間合間に、デネブの給仕で黙々と食事をする良太郎(ジーク入り)の姿が入る、というのが実に秀逸。
やがて、最初は顔を見る度に脅えていたのが、なんとなく仲良くなるモモタロスと小さい良太郎(以後、劇中では略して「小太郎」)。
そしてデンライナーに追いついたのは、江戸自体初期、大阪の陣の頃。牙王は神の線路の終着地点へ繋がる封印を解くべく、真田幸村を脅して岩山に爆薬を仕掛けさせようとしていた。
この真田幸村が、真田幸村である必要性が全くない脇役で、脚本家が嫌いなのか、或いは、好きすぎて屈折した思い入れがあるのではないかと疑いたくなるレベル。ごく単純に、配下が忍者軍団でもおかしくなさそう、というだけの選択だったのかもしれませんが。
幸村配下の忍者軍団は、牙王の命令で白昼堂々、黒尽くめで良太郎達を襲撃してきたり割とおかしいのですが、多分、予算の都合。着物とか具足より衣装が揃えやすいしアクションも融通が利くので忍者にされたのではという気がします。ハナさんにぼっこぼこにされるのはともかく、良太郎や小太郎すら仕留められない、雑魚忍者軍団だったりしますが。
ハナに「寂しい町ね」と台詞があるのですが、ほとんど人が歩いていないのも、地味に予算を節約している気配。
桜井と別れた後の忍者軍団との戦いでは、変身できない良太郎に代わり、小太郎がミニ電王に変身して大暴れ。『電王』は当時の着ぐるみ芸の極致を志向している感がありますが、憑依後の人格変化と声優吹き替え、というのを巧く使った面白いネタ。わざわざミニスーツを作って、しっかりアクションさせるのも、さすがという他ありません。
記憶を失い断たれた良太郎とモモタロスの絆→旅の中で育まれる小太郎とモモタロスの絆→ミニ電王、参上! と来て、その夜、なかなか記憶を取り戻せない良太郎に落ち込むモモタロス、良太郎と小太郎の会話、戦いの記憶を失いがらも自分の意志で一緒に行く事を決意する良太郎、モモ「おめえらしい顔になってきたじゃねえかよぉ」という流れも巧い。
また、良太郎と小太郎の会話シーンで、効果的に背中のシーンを入れるのは、監督の腕。最後に、屋根の上で二人が同じポーズを取る所など、実にいい。
そして翌日、デンライナーを取り戻すべく、砦への潜入方法に頭を悩ませる一行。その時、砦に駕篭が近づいてきて……。
ここはこの映画でほぼ唯一、どうしてこうなってしまったのかわからない部分(^^; 駕篭の中には秀頼の出馬を仰ぐ為に大阪城から身柄を一時移された千姫が乗っていて、ハナが千姫と入れ替わる、という流れなのですが、潜入方法としても無理があるし、それを思いついて通りすがりの姫に頼み込むハナも、それを承諾する千姫も、ぶっ飛びすぎ。お陰で千姫は、はっちゃけた我が儘姫、みたいな描写になっておりますが、それにしても無理がありすぎるというか、そのままどこへなりと飛び出した千姫はどこかで野垂れ死んで、地味に歴史が変わらないか(^^;
どちらかというと諸般の事情で、ある女優さんにそれなりに出番と台詞のあるシーンを用意しなくてはならず、その為にでっちあげたシーン、という方が納得がいきます。
(※でキャスト確認したら、全然わからなかったけど、千姫役は当時:星野亜希の、ほしのあき。なので、どうもそういう事らしい。まあ、理想としては、そういうシーンも巧く物語に組み込まないといけないわけですが)
そんなこんなで砦内部に侵入する事に成功したハナが内部から引っかき回している所に、正面からモモタロスが突撃。更に牙王一味が外へ出払っている隙にオーナー達も脱出成功で、忍者軍団vsイマジンズ&ハナの大バトル。そこへ牙王配下の蛇イマジンが現れ良太郎がピンチに陥るが、ジーク降臨、満を持して。
微妙にスーツの金色部分がハイレグカットに見えるW電王の見せ場で蛇イマジンを撃破し、デンライナーを取り戻そうとするが、そこに牙王が現れ、W電王を粉砕。そして、用意していた爆薬が岩山を吹き飛ばし、神の列車を作り出した時間への線路が開く!
ここの、古代のお祈りシーンは要らなかったなぁ(^^;
妙な祭壇で、神の列車を作った人達?がお祈りしているのですが、人数が少なすぎて迫力が出なかったし、シーンとして面白くなりませんでした。無くても問題なかった。
牙王は遂に神の列車を手に入れると、手始めに特異点の存在を消してやろうと、良太郎をさらったまま、彼の生まれた時間――1988年12月26日へと、時間を喰らいながら列車を走らせる。外に掴まって、それに強引についていくモモタロス。時間を支配する神の列車の力により、崩壊していく12月26日。時間に飽き飽きし、大した事はないがまずはこの日一日をまるまる歴史から消してしまう、という牙王の言葉に、立ち上がる良太郎。

「たった一日でも、一瞬でも、忘れたくない時間はあるんだ。無くしたくない時間が。
何で忘れてたんだろう、僕の、もう一つの時間――
モモタロス。…………モモタロス。……モモタロス

記憶を取り戻した良太郎が、列車停止時に吹き飛ばされて気絶していたモモタロスに呼びかけるここは、文句なく格好いいシーン。
唐突な記憶の取り戻し方(一応、神の列車へ繋がる時間の封印が解かれた時にはっとした表情のシーンがあるので、そこで記憶を取り戻した?っぽいのですが、理由は不明)ですが、まあいいか、と流せるレベルで格好いい。
もともと、モード変更ごとに性格と仕種が変わるという無茶な事をやらせているわけですが、それに応えているだけの事はあるし、今売れているのも納得な表情の力。
さて格好良く変身……しようとした所で牙王の配下イマジンに襲われて逃げまどう羽目になる良太郎だが、そこに駆けつけたのはゼロノス! そしてゼロライナーから現れたのは、ゼロノスが様々な時間から集めてきた野上良太郎
U、K、R、の良太郎にM良太郎が加わって、今ここに、4大電王(&ゼロノス)揃い踏み。
まさしく劇場版スペシャル展開で、牙王&配下イマジンとそれぞれ戦闘開始。ゼロノスは電車担当(笑)
各自が必殺技を決めて配下イマジンを倒すものの、牙王に叩きのめされるM電王。更に牙王の必殺技が炸裂し、追いついたデンライナーから駆け寄るハナと小太郎の前で、倒れ伏す5人のライダー。……しかし、M電王だけが立ち上がる。

「そういうの、往生際が悪いって言うんだが、知ってるか?」
「ああ、最後までクライマックスって意味だろう?」

2段チャージによる「俺の必殺技・特別編」が炸裂し、大ダメージを追った牙王は神の列車へ。デンライナーとゼロライナーが大連結で、全弾発射&ドリルで神の列車を打ち砕き、最後は電王が牙王を撃破。神の列車の消滅と共に人々の記憶によって1988年12月26日は復元されていき、時間を好きなように喰らい尽くす、という牙王の野望はここに潰える……。
戦いは終わり、小太郎をあるべき時間へ戻す為に走るデンライナー。ハナはオーナーに、小太郎が両親の写真を無くした時間へ立ち寄ってほしいと頼むが、オーナーは例外を認めない。
1988年から走り去ろうとするデンライナー、その時、雪が舞い落ちはじめ、良太郎と小太郎が窓に目を向けると、列車はとある産婦人科医院の横を走りすぎる。
病院の出入り口に立っていたのは、生まれて間もない良太郎を連れた、両親と姉の姿。
オーナーの粋な計らいか、はたまた偶然か、良太郎と小太郎はデンライナーの窓から、その姿を瞳に焼き付ける……。
小雪舞う中、夜の街を一瞬の幻として走り抜けるデンライナーの映像は美しい。
そして窓にかぶりつく小太郎の心情を、懸命に伸ばした足の裏のカットで描くのが、実に巧い。
良太郎達に協力する事で恩返しを果たしたジークは姿を消し、小太郎もあるべき時代へ。ミルクディッパーの鍵を開こうとした小太郎だが、思い直し、笑顔で走り去る。
そして――現代、姉の待つミルクディッパーへ戻ってきた良太郎。カウンターには、何も入っていない筈の、写真立て。良太郎が目をやると、そこに入っていたのは、あの雪の日の野上家を描いた、子供の絵。
前半から物語のキーとして伏線を引いた、良太郎が無くした両親の写真……タイムリープもののお約束として何らかの形で写真が戻るのだろうなぁと思わせておいて、写真の代わりに(小太郎の描いた)絵が飾られている、というのが実に素晴らしいラスト。
失ったものを取り戻す事は出来ないが、忘れないでいる事は出来る。
そして覚えている限り、時間は、失われない。
作品そのものの設定・テーマと繋げつつ、都合の良すぎるファンタジーにする事なくしかし実に爽快に落着する、非常に素晴らしいラストシーン。
設定したルールを守った上でカタルシスに昇華する、というのは脚本・小林靖子のこだわる所ではありますが、お見事。
映画全体としては、非常にテンポとバランスが良いのが特徴にして長所。アクションに偏りすぎる事なく、会話シーンでだれる事もなく、変に盛り上げようとしすぎて滑る事もなく、戦闘、会話、シリアス、コメディ、敵、味方、それぞれの見せ場、諸々が非常にバランスよくまとまっており、特に“静”のシーンでの絵作りの安定感は、さすがの力量。
構成のよく出来た完成度の高い映画で、面白かったです。
−−−−−
以下、長石多可男監督によるオーディオコメンタリーを聞きながら、追補。
ロケ地にこだわりのある長石監督らしく、
「ロケ場所がどこであるか、というのを中心に」
との事。
冒頭のアクションシーンなどを見ながら
「格好いいとか、面白いとか面白くないとか、よくわかならい」
と衝撃発言(笑)
まあ、自分の撮ったものを見ながらコメントするというのも、なかなか気恥ずかしい部分もあるのでしょうが。
あと恥ずかしいのか、聞き役に誉められると、終始他人事っぽい監督(笑)
小太郎がミルクディッパーに向けて自転車を走らせるシーンは、台本の設定では山奥だったのが、時間の都合で街中になったとの事。祖母の家から遠くて危ない、というのは、まあ小学生だし、と思っていたのですが、そういうレベルの話だったのか。
ここで、ハナが良太郎に「行きたい時間は無いの?」と聞くシーンは劇場版ではカットされていたそうで、これは勿体ない。オーディオコメンタリーは、ファイナルカット版の復活シーンを教えてくれるのは有り難い。
「台本がよく出来ていますからね、台本の通り撮れば間違いないんですよ」
とは経歴考えると、凄い賛辞。
やはり思い入れがあるのか、率先して、蛇イマジンの声(友情出演:萩野崇)に触れる監督。もう『シャンゼリオン』て言いたいだけにも聞こえますが!
ゼロライナーによる時間旅行、明治時代は、明治村太秦のハイブリッドとの事。
時代劇は好きですか? と聞かれて
「こういう番組は時代劇ですから」
千姫役のほしのあきは、「姫様を本気でやりたい」と自分で役作りを願い出て、お任せしたとの事。ハナ役の方と事務所が同じ縁らしい。
砦バトルで蛇イマジンが出てくるシーンで、またも「『シャンゼリオン』の萩野くん」、と好きすぎて仕方ないらしい監督。
問題の古代神殿のシーンはロケ日が悪天候の為に暗い地下洞窟のようになってしまったたものの、ロケハンの時は晴れていると上から木漏れ日が入ってくるような場所だったそうで、それなら場所として、使いたかったのはわかる気がします。
しばらく、ロケ地が遠い話。
大泉を5時に出ても、2時間半かかると着くのが7時半で準備している内に〜など。
4大電王揃い踏みのシーンでは、
「全部変身見せるので、テンポがどうしても。嬉しいのかなぁ」
聞き役に「嬉しいですよ」と言われて、ほっとした様子。
この後の壁破壊シーンでもデジタル合成の迫力について、聞き役に聞いたり。
監督お気に入りは、ラストの神の列車vs合体ライナー激突で、崩壊する神の列車のシーンとの事。これはまあ、他の人(特撮班)の仕事なので、素直に好きと言えるのでしょうが。なおシナリオではここで列車と共に牙王は消滅しており、ラストの一騎打ちは監督が追加したシーンとの事。
ラストシーン、写真立ての中の絵が小太郎の描いたものとわかるかな? とやたら不安そうな監督。
大ベテランがこれだけ、演出が通じているのかについて自信なさそう、というのは驚いたのですが、この辺りは、児童向け番組に長年携わっているが故に、わかりやすさと表現のレベルをどこに置くのか、を常に課題としているゆえか。
実はオーディオコメンタリーというものを初めて聞いたのですが、なかなか面白かったです。
にしても、ゲスト俳優について、渡辺裕之ほしのあきも演技について誉めたのに、監督にも聞き役にも、一切触れられなかった陣内智則……。
オーディオコメンタリー含めて、3回見たけど、大満足。
素晴らしいラストカットでした。