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『仮面ライダー電王』感想15

◆劇場版『仮面ライダー電王 俺、誕生!』◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
(※視聴したのは、カットシーンなどが追加されて公開されたものより10分ほど長い《ファイナル・カット》版)
27話で侑斗/ゼロノスが、泥棒・池を追い、ブラッドサッカーイマジンに翻弄されている間、良太郎は宝石店を襲撃した加藤/モレクイマジンと戦っていた。
敵方のイマジンが人間に憑依した状態で超人的な力を振るうという描写は珍しく、遡ると……(厳密には敵ではないけど)本条/キンタロス以来でしょーか。
宝石店のバトルでは、良太郎に次々と、ウラ、キン、リュウ、モモと憑依し、4パターンの良太郎を出しながら追いつ追われつと、掴み&サービス。リュウタロスダンサーズも何故かセクシーレオタードの女性陣という劇場版スペシャル。
M良太郎からソード電王への変身シーンは背景をデンライナーが駆け抜け、バッチリ決まりました。
この変身シーンは非常に格好よく、これを掴みで決めるのが、監督の味。
だが……U良太郎がかすめ取って逃げた筈の、加藤が契約で望んだ宝石が、いつの間にやらモレクイマジンの手の中に。モモタロスもといソード電王が気持ちよく「俺、参上!」のポーズを決めた時、下に落としてモレクイマジンに拾われていたのである。
鉄板で役に立たないMさん(チンピラ)……というか、何度か触れてますが、ここで確信を持って断言しましょう。
Mさんはもはや、良太郎の不幸属性に感染した。
これはもう、パンデミックです、治療不能です。
契約は完了し、2000年5月8日――加藤が強盗事件を起こすも警官隊に囲まれた過去へとモレくイマジンは跳び、それを追うS電王。ちゃんちゃんばらばらの末、炸裂するのは……
「今日は特別に幻の技を見せてやる。行くぜ必殺――俺の必殺技パート1」
1話でM良太郎モード時に良太郎に発動を止められて以来、封印されていたパート1、劇場でまさかの解放(笑)
またここで、背景の空に飛行機を合わせているのは過去の演出を考えると恐らく意図的に入れていて、これがまた格好いい。
モレクイマジンをずんばらりんして気分良くデンライナーに戻ったモモタロス……だがそこで待ち受けていたのは、ナオミを人質にデンライナーを占拠した謎の男と、その配下のイマジン達であった!
一方、ハナと一緒にデンライナーへの帰途を行く良太郎は、イマジンと戦っていたその場所が、子供の頃によく自転車で通り過ぎた道であった事に気付く。両親を失い、祖母の家で暮らしていた7年前の良太郎は、しばしばその道を通り、誰もいないミルクディッパーで時間を過ごしていたのであった。
「そういえば良太郎って、デンライナー乗ってるのに、行きたい時間とか、言わないね」
「あるよ。もし行けるなら行ってみたい時間、僕にもある」
ここの会話シーンは公開バージョンではカットされていたそうですが、珍しい良太郎の背景語りで、勿体なかったところ。
そういえば(そこは後でも触れられますが)、良太郎の両親についてハッキリ言及されるのは初でしょうか。詳しくは覚えていませんし、姉と弟の二人きりの家族、みたいな描写はあった気はしますけど。
デンライナーの近くまで戻ってきた良太郎とハナ……ところが、二人を2000年に残したまま、走り出してしまう列車。慌てて追いかける良太郎の前に、車両の扉を開いて姿を見せる壮年の男。

デンライナーは、もらったぜ」
「君、だれ?」
「俺は、牙王だ」

その男、時の列車を狙う強盗、牙王!
演技は微妙!
ここで物語は27話ラストと繋がり、いよいよ劇場版の本格スタート。
炸裂する牙王のキック、吹き飛ぶ良太郎。デンライナーはそのまま時の線路を走り去り、やむなくハナは、気絶した良太郎を“2000年のミルクディパー”へと運び込む。
全ては、2000年にデンライナーを誘い込み、列車から電王を引き離す牙王の罠だったのだ。まんまとデンライナーのハイジャックに成功した牙王はイマジントリオを檻に閉じ込め、オーナーからマスターパスを奪い取ると、数千数万年の時間さえ移動できるという、“神の路線”へと乗り入れる――! その目的は、路線の果てに存在する、あらゆる時間を支配する神の列車!!
一方、2007年のミルクディッパーでは、店にやってきた羽虫Aと羽虫Bが、本棚の奥から、古びた空の写真立てを発見していた。それはかつて、両親の死のバタバタで失われてしまった野上家のアルバムの中で、唯一残った両親の写真が飾ってあったもの……しかし写真は良太郎が頻繁に持ち出している内になくしてしまい、野上家から両親の写真は失われ、空虚なフレームはいつしか忘れ去られていた。
再び2000年――ミルクディッパーに良太郎を運び込んだハナは、店を訪れていた11歳の良太郎と出会う。
まあこの際、不審者なのはチャンプなのですが!
勝手知ったる他人の店という事でか、気絶した良太郎にコップに汲んだ水を飲ませている辺り、さすがチャンプ、自由!
なんとか良太郎(11歳)に警察を呼ばれずに済んだチャンプは事情を説明しようとするが、そこで更なるトラブル発生。なんと、目覚めた良太郎(18歳)は、ハナの事を――電王としての戦いの日々を全て忘れていた!
「あの……どちらさまでしょうか?」
どうやら牙王の蹴りを食らったショックで一時的かつ部分的な記憶喪失になってしまったらしい良太郎。そこへ、ウラタロスとキンタロスの力を借りて、デンライナーの壁を気合いですり抜ける事に成功したモモタロスが飛び込んでくるが、良太郎の体に憑依したかと思ったのも束の間、金色の光に弾き出されてしまう。
金色の光の正体は……まさかのジーク降臨!
「姫、久しぶり」
とりあえずハナにボディタッチしようとして、先制の平手打ちを食らう(笑)
ヒロイン扱いしてくれる相手だからか、正拳でない所が、チャンプのジークへの優しさ。
TV本編では、キャラのアクの強さに対してエピソードはバタバタして終わった感のあったジーク編ですが、ここでこう使われるとなると、色々と納得(リアルタイムでは、CMなどで、ジークは映画の前振り前提というのはあったのでしょうが)。
にしても1997年に下車した後3年、普通に浮き世を彷徨っていたのかと思うと、割と面白いというか何して暮らしていたのだろう、ジーク(笑)
一方、気合いと根性と友情かもしれない何かでデンライナー大脱出に成功するも、肝心の良太郎に弾き出されたモモタロスは、11歳の良太郎に憑依してしまう。
掴みのバトル→衝撃のハイジャックと来て、この辺りは力を抜いてテンポ良くコミカルに展開。
ひたすら混乱していく状況に、ハナはとりあえずジークとモモタロスを追い出すと、二人の良太郎に事情を説明(なお、砂状態のモモタロスを見て、一回揃って気絶)。そしてそこへ現れる――桜井、侑斗。
牙王の野望を阻止するべく、良太郎(18歳)にはジーク、良太郎(11歳)にはモモタロスが憑依し、一行はゼロライナーに乗って神の路線へ強行乗り入れ、奪われたデンライナーを追う事に。
「僕も、時を超える電車に、乗りたい!」
物語本編(TVシリーズ)の要素とは別に、単純に“子供の憧れとしての時間旅行”という要素を取り込んでいるのが、この劇場版の非常に秀逸な所。
良太郎(11歳)のモチベーションと劇場の視聴者(子供)の楽しみが綺麗にリンクし、物語も路線に乗り出します。
派手なアクションで神の路線に乗り込む事に成功するゼロライナーだったが、背後からデンライナーに攻撃を受けて弾き飛ばされてしまう。辿り着いた昭和初期?で、牙王が変身した仮面ライダー牙王と戦うゼロノスだったが敗北し、ゼロライナーごと時空の果てへと飛ばされてしまう……。
仮面ライダー牙王の変身シーンは格好良く、ここまで本編で圧倒的だったゼロノスを蹴散らして強さもアピール。
演技は微妙ですが!
時空の果てへ吹き飛ばされたゼロライナーが辿り着いたのは、なんと恐竜時代。恐竜に歓声をあげる良太郎(11歳)、そして何故かデンライナーの外でも実体化するモモタロス。どうやら良太郎が記憶を失ってしまった事により、良太郎とモモタロスの繋がりが途切れ、イメージは固定されつつも独立した存在、という中途半端な状態になってしまった模様。
ジーク編で明確になった「イマジンの基盤は人の記憶」という設定が、改めて登場。
なんとか体勢を立て直した、侑斗、デネブ、W良太郎、ハナ、良太郎(11歳)、実体化したモモタロスは、先行したデンライナーを追い、ゼロライナーで時間の旅へ……。
ところで、チャンプがいつの間にか、子供の目線に合わせて話すスキルを習得している!!!!!!!!
かつて、小学生の腕をがしっと鷲掴みにしていた頃から、驚愕の進化です。
ここから物語は、デンライナーを追って神の路線を行く時間の旅へ。恐竜時代→西部開拓時代→ピラミッド→明治日本、と小刻みにシーンは移り替わり、最初は見ただけで気絶していたのが、その中で徐々に交流を深めていく良太郎(11歳)とモモタロス。……そして、ひたすらデネブの給仕を受けるW良太郎(笑)
明治日本ではチャンプによりMさん(不幸)がゼロライナーから突き落とされる事故があったものの、怪我の功名、お土産に持ってきたシュウマイをきっかけに、良太郎(11歳)とモモタロスはすっかり打ち解ける。
そして良太郎(18歳)との呼び分けが面倒くさくなったモモタロス
「ちっちぇえ良太郎ということで、小太郎だ。これならわかりやすいだろう、な、小太郎」
良太郎から名前を貰ったモモタロスが、過去の良太郎に名前をつける、という凄くいいシーン。
人間とイマジンは記憶で繋がっているのだけど、この二人は名前でも繋がっている、という意味を含んでいるのかと思うのですが、一連のモモタロスの、馬鹿で暴れん坊だけど悪い奴ではない、という描写は実に絶妙で、モモタロスというキャラクターの造形はTVの流れも含めて本当に冴えます。
こうして幾つもの時代を通り抜けて辿り着いた場所――そこは大阪夏の陣を目前に控えた、江戸時代の初期であった。牙王一行は真田幸村の陣中にあり、神の列車が封印された時代に行き着くため、砦の一角の岩山を爆破させようとしていた。
えー……真田幸村、この真田幸村が、えー……つまるところまあ大人の事情枠で、主にお笑い芸人を生業としていらっしゃる陣内智則さんが演じてらっしゃるのですが、一千歩譲って演技はさておくにしても、どうして真田幸村なのだろう、と。
脚本家は真田幸村を嫌いなのか。
或いは、好きすぎて屈折した思い入れがあるのか。
短時間でキャラクターの深めようがないので、それなりに知名度がある、かつ、配下に忍者が居てもおかしくなさそう、という辺りで選ばれたのでしょうが、別に有名武将の名前付けずに、現地の戦国武将A、で良かったレベルの役回りと存在意義。
真田幸村」にしてしまっただけ、反応に困るレベル(笑)
……って、あれ、このシーンで、牙王が竹串(大きな棒)に突き刺した焼き魚を頬張っているのは、何か深い意図が込められているのでしょうかもしかして?!
なお、長石多可男監督によるオーディオコメンタリーでは、渡辺裕之の演技にもほしのあき(この後登場)の演技にも触れるのに、陣内智則には一言も触れない、という凄絶な結末が。
まあ、大人の事情枠なので、けっして本人が悪い、というわけでもないのですが、多分。
事情枠は事情枠でうまく使うのも作り手の腕、ではありますし。
さて、デンライナーに追いついたハナ達であったが、ここで侑斗がゼロライナーと共に離脱。そして相変わらず唯我独尊なジークも良太郎から憑依を解いて姿を消してしまう。取り残された4人の前に現れるのは、真田麾下の忍者軍団。
炸裂するチャンプの、パンチ、パンチ、パンチ!
モモタロスは良太郎に憑依しようとするが、記憶のリンクが途切れている為か、その体をすり抜けてしまう。やむなく、小太郎に憑依してベルトを装着。
「俺、参上!」
小太郎サイズの、ミニソード電王、誕生。
アクションシーンは短いものの、ここはちゃんと、着ぐるみを作ってやりきったのが素敵。
「このサイズでも、クライマックスだぜ」
忍者軍団を蹴散らしたその夜……
「おい良太郎……ほんっとに何も思い出せないのか? この姿も、モモタロスって名前も、全部おまえが考えたんだぞ! こんなセンス悪いの、おまえぐらいなもんだろ。思い出せよぉ、あんだけ一緒に戦ったじゃねぇか。ええっ」
良太郎に憑依/変身できないのが大ショックだったMさん、良太郎に詰め寄るが、やはり良太郎の記憶は戻らない。
「……ごめん」
「……しょうがねぇ。そのうち、思い出せるだろ」
足取りも力なく、いじけてその場を去って行くMさん、背中に哀愁。またこのシーン、モモタロスの顔が夜間照明を受けてテカりまくった結果、いつも以上に瞳がつぶらに輝いて、なんとも寂しげで泣かせます。
「悪い事しちゃったな。早く思い出さないと」
「……でも、忘れちゃう事って、あるよ」
「え?」
「凄く大切な事でも、忘れちゃうんだ」
「……父さんと、母さんの事?」
屋根の上、並んで会話する、良太郎と小太郎。
「あの頃、よく父さんの店に通ったっけ。懐かしかったんじゃなくて、思い出したかったから。父さんと母さんの事。父さん達がどんな声でどんな風に喋っていたのか、顔も思い出せないのが寂しくて、不安だった」
「僕が、写真なくしちゃったから」
「いつも持って歩いていたからね。今でも後悔してるよ。姉さん泣かせちゃったし」
と、良太郎の、“もし行けるなら行ってみたい時間”を暗示。
「今も、父さん達の事、思い出せない?」
失ったよすが、薄れていく記憶、けれど。
「でも……寂しくはないよ。お婆ちゃんもまだ元気だし、姉さんも居るしね。今は辛いかもしれないけど、ちょっとずつ変わるから」
人は前に向けて歩いていけば、ちょっとずつでも変わっていける。
初期から一つのキーとして置かれている、良太郎の“喪失”というものへの強い思い。それが愛理からみの話だけではなく、良太郎自身の経験も加味していた事が語られる事に


「やっぱり、そうですよね……辛くても、忘れたくなんかないんですよね。大切な事を忘れてしまうのって、きっと……凄く辛い」
物語全体に、より厚みが増しました。
この屋根の上での良太郎と小太郎の会話シーンは非常に良いのですが、最後、二人を背中から映したカットで、良太郎と小太郎の後ろに手を置くポーズが自然と重なる、というのは全編通しても白眉の一つ。こういった“静”のシーンをきちっと造れる、というのは監督の腕。
良太郎と小太郎は、砦へ乗り込んでデンライナーを奪還しようとするハナとモモタロスに一緒に行く事を宣言。戦いの中で記憶が戻るかもしれないし、いざとなれば小太郎が変身する。そう告げる二人に、喜色全開のモモタロス
「なんだよぉ〜、おまえらしい顔になってきたじゃねえかよ、良太郎!」
「そうなのかな……」
「このやろぉ! 小太郎もさすが良太郎の子供だ。そっくりだぜ!」
「それちょっと違う……」
声優の演技とスーツアクターの演技と、いじけモードから打って変わって心底嬉しそうに見えるという、着ぐるみ芸の極致。
翌日、4人はなんとかして砦へ乗り込もうと考えを巡らせるが、そこへ近づく人の気配……
はい、大人の事情枠パート2です。それを無視した場合、この映画で唯一といっていい大穴で、フォローできないシーン。近づいてきたのは、大阪城の戦意高揚の為に、城を離れる事となった千姫と、それを護衛する真田配下の一行。これに納得いかない千姫ははばかりと言って強引に独り駕籠を降りたところでハナと接触。ハナに入れ替わりを頼み込まれるとあっさり承諾し、いざ自由の野に――……
って、自由数時間後に賊に襲われるか数日後に野垂れ死んで地味に歴史変わりそうな気がするのですががが。
千姫役は、後に一世を風靡する事になる、ほしのあき(当時:星野亜希)。ハナ役の白鳥百合子と事務所が同じ縁での出演だったそうで、「お姫様を本気でやりたい」と千姫の役作りを自ら願い出て、お任せしたとの事。
役作りがどうこうというよりもシナリオのレベルで、とにかく何もかもいきなりすぎるのと、さすがに入れ替わって砦潜入は発想も行動も無理がありすぎて、大惨事になりました。
誰が悪いのかといえば、大人の事情を処理しきれなかった作り手が悪いのです。そう言わざるを得ません。しかしここは、くっ、もう少し、もう少しだけでも何とかならなかったのか……!
そんなこんなで、まんまと千姫になりかわり、砦の潜入に成功したハナ。不審な動きを忍者軍団に怪しまれ、着物を脱ぎ捨てると何故か下の洋服も衣装チェンジしているという、早替わり(ヒロインゲージ2消費)を披露。
そして、打撃戦に突入。
アソビハオワリダ、さあこれからは、修羅の時間だ!
このハナの動きを陽動に、正面から突撃するモモタロス。一応良太郎も参戦し、真田砦で忍者軍団とのバトルスタート。この騒動に合わせて、牙王一味の出払ったデンライナーでは、怪しげなオーナーの助力もあってウラタロスとキンタロスが脱出に成功。「面白いものを見せてやる」と丸め込まれていたリュウタロスも、待ち時間に飽きてデンライナーサイドで参戦し、大乱戦となる。
なおこの劇場版ではリュウタロスの台詞がそれとなく少なめなのですが、脚本/撮影のスケジュールを考えると、TV本編に登場していない時点から映画を撮り始めていたのではないかと思われ、リュウタロスの動かし方がまだ不明瞭な時期だったのでは、と推測。余計な事をしている時間もないとはいえ、キンタロスも「泣けるで」ネタがなく、迷惑度がだいぶ低いですし(笑)
あと、実体ウラタロスが蹴り技主体なのは、本編では特に強調されていませんが、本来そういう設定なのでしょうか。ロッドフォームは最後に蹴り入れますし。デンライナー内部だと蹴りは使いにくいので、消えていった(使われなくなった)設定ぽい(笑)
イマジンと忍者とチャンプと良太郎が入り乱れる混戦の中、牙王配下のスネークイマジンが、良太郎を襲撃。助けに行こうとした小太郎の手からパスを奪う、白い影。
「待っていたぞ、この時を」
宿で寝ていたジーク、良太郎に憑依。そして――変身。
「降臨――満を持して」
TV本編では前振りに終わったW電王、万全の睡眠を取って、全開モード。トマホーク&ブーメランでスネークを撃破する。
「これで恩は返した。有り難く受け取れ」
なんと、ジークがはるばる2000年から今回の旅に付き合ったのは、23−24話の出来事に対する、彼なりの恩返しの為だった。
というか文字通りに、“良太郎がピンチになる”のを「待っていた」ぽいのが、ナチュラルにタチが悪すぎるぞ王子。
忍者軍団も壊滅し、一息つく一行だったがその時、強烈な一撃が背後からウイング電王を切り裂き、変身解除、良太郎とジークが分離してしまう。そこに居たのは、時間を食らおうとするもの、牙王!
「来るぜぇ……唯一、時を支配できる列車が」
牙王の号令により、仕掛けられていた火薬が岩山を吹き飛ばし、遂に、神の列車が作られた時代に繋がってしまう神の路線。その奥から姿を現すのは、巨大な口を持った恐竜のごとき先頭車両の、異形の列車!
まあわかりやすく言うと、顔の怖いパックマン!(おぃ)
「手始めに、特異点から消してやろうと思ってな」
神の列車を手に入れた牙王は、良太郎にカードを当てると、表示された日付――1988年12月26日――へ向けて列車を走らせる。それは、野上良太郎がこの世に誕生した日。連れ去られた良太郎を追い、列車に食らいつくモモタロス
もう今回は、Mさんが全編で大活躍で、それだけでなにか泣けてきます(笑)
というか、劇場版で上げるの前提でTV本編で丹念に下げてたのかと思うと、それはそれでなんか酷いよ! 劇場に行かない子供達だっているんですよ?! 傷つきやすいピーチさんの代わりに強く遺憾の意を表明したい。
走るところ全てを食らいながら突き進む神の列車によって、灰色の廃墟と化していく1988年12月26日。神の列車の力とは、時を支配し、食らう事。食われた時間は消失し、空っぽになる。つまり、牙王が神の列車によって1988年12月26日を食らい尽くすと、歴史の中から、その一日だけがすっぽりと抜け落ちてしまうのだ。
時の流れの中でその日に起こった全ては無かった事となり――結果、野上良太郎は生まれない。
たった一日……消しても特異点を消すぐらいの意味しかない。
時間に飽き飽きし、それを食らい尽くそうと考える牙王は、そんなちっぽけなものでしかないとうそぶく。
だが、その“たった一日”は、様々な人々の大切な思い出である。
牙王の言葉に静かな怒りを燃やし、良太郎は身を起こす。

「たった一日でも、一瞬でも、忘れたくない時間はあるんだ。
 無くしたくない時間が。
 なんで忘れてたんだろう、僕の、もう一つの時間。
 ――モモタロス

1988年に停車した際の衝撃で吹き飛んで気絶したモモタロスに良太郎は呼びかける。
「……モモタロス…………モモタロス

「まあモモタロスってのはセンスねぇけど……センスねえよな。センスねぇけど……呼びたきゃ勝手に呼べよ」
「……そうするよ、モモタロス
その名前は、二人の繋がり。
「良太郎! 思い出したか!」
記憶を取り戻した良太郎の声に、目を覚ますモモタロス! イメージ状態に戻ると、大ハッスルで周囲を飛び回る(笑)
ここで良太郎が記憶を取り戻すのは少々唐突なのですが、江戸〜1988年にかけて何度か牙王に蹴られたので、そのショックでしょうか(^^; ここはもうちょっと、きっかけを明確に描いても良かったのでは、と思った所。牙王の発言に対する怒りで、何らかの回線が繋がったのかもしれませんが。
まあしかし、それぐらいの事は些細なもの、と流してしまえるぐらい、格好いい所。
「俺は大人しく待ってろって言った筈だ」
「悪いけど時間は消させない」
不敵な表情になる良太郎、格好良く変身……しようとして牙王の配下に邪魔される(笑) だが、そこへゼロライナーが飛び込んでくると、ゼロノスがバイクで敵イマジンを蹴散らす。
「元に戻ったらしいな。助っ人連れてきてやったぜ」
ここで物語は、25−26話のゼロノスさんの地道な努力とリンク。こういう流れで見ると、25−27話は、ゼロノス(侑斗)フォロー編でもあるのだなぁ、と(笑)
そしてゼロライナーから降り立ったのは、侑斗とデネブがかき集めた様々な時間の良太郎に、ウラタロス、キンタロスリュウタロスがそれぞれ憑依した、3人の良太郎。U、K、Rの良太郎は次々と各フォームの電王に変身し、真打ち登場、モモタロスの憑依した良太郎も、ソード電王へと変身する。

「俺、参上!」
「おまえ、僕に釣られてみる?
「オレの強さに、おまえが泣いた」
「おまえたち倒すけどいいよねぇ、答えは聞かないけど」

今ここに、時空を超えた4大電王、まさかの揃い踏み。

「今日は全員まとめて、クライマックスだぜぇ!」

対するは、変身した牙王と、配下のトカゲ系イマジンズ。
「あ〜あ、馬鹿の揃い踏みだな。いいぜ、全員オレが、食ってやる」
「上等だ、食えるもんなら食ってみな! 行くぜ行くぜ行くぜ!!」
ぶつかり合う、電王ズvs牙王軍団。
そしてゼロノス&デネブは……
「最初に言っておく。俺は――」
「馬鹿、電車に向かって何言ってんだ。早く止めろ!」
「了解!」
電車を担当していた(笑)
4vs4&ライダーvs電車、の大規模マッチ。ここは各フォームの見せ場という事で、敵イマジン軍団にはさしたる健闘の機会は与えられず、各電王が圧倒。次々とフルチャージが炸裂し、弾け飛ぶ敵イマジン。ゼロノス@ヴェガフォームの一撃も神の列車を一時停止させる――だが、そこへ吹っ飛んでくるS電王(モモさんだから仕方ない)。
しかし、牙王の強さは本物。凄まじい力で4電王とゼロノスを蹴散らすと、フルチャージ。その必殺剣が、5人のライダーを切り裂き食らい尽くす!
激しい爆発の後、1988年にデンライナーで辿り着いたハナと小太郎が目にしたのは、死屍累々、力なく地面に倒れ伏す電王達とゼロノスであった。余裕綽々の牙王は5人に背を向け、1988年12月26日を食らい尽くすべく、神の列車へと歩みを向ける。
――だが。
モモタロス、立つよ。負けるわけには、いかないよ)
「わかってるよ、ちょっと昼寝してただけだ」
やや傾ぎながらも、立ち上がる一つの影。
「そういうの、往生際が悪いって言うんだが、知ってるか?」
「ああ、最後までクライマックスって意味だろう?」
モモタロス、次回のTV本編で燃え尽きて死ぬのではないかという勢いの、ド根性。
「行くぜ、必殺、俺の必殺技――特別編!」
フルチャージ2連発の末に放たれた剣閃はしかし牙王にかわされ、懐に踏み込んだ牙王の一撃がソード電王の胸甲をえぐる! だが、ソード電王はそのままの状態で牙王の腕を抱え込むと動きを封じ、地中を潜行していたソードの切っ先が、真下から牙王を切り裂く!
まさに、肉を切らせて骨を断つ。
テクニックとド根性を融合した特別編が大ダメージを与え、よろける牙王は神の列車へ。立ち上がった電王達とゼロノスはそれを追撃し、今ここに、全ての列車が大連結!
電車戦も劇場版スペシャルという事で、デンライナー、ゼロライナー、各フォームのオプション車両が、大合体。
壮絶な砲撃戦の末に、念願のドリルが炸裂し、神の列車はぐしゃぐしゃに崩壊。牙王は列車から投げ出され、正真正銘のクライマックスは、廃墟の上でソード電王と牙王の一騎打ち。
力も技も超え――両者はただそれぞれの存在を賭けた一撃を放って擦れ違い……勝ったのはソード電王。牙王は砂となって崩れ落ちる……。
オーディオコメンタリーによると、この最後の一騎打ちシーンはシナリオには存在せず(シナリオでは牙王は列車とともに消滅)、監督が追加したシーンとの事。
同オーディオコメンタリーで
「台本がよく出来ていますからね、台本の通り撮れば間違いないんですよ」
と最大限の賛辞を送っている監督が敢えてこのシーンを追加したというのは、単純にカタルシスの効果を考えたという事なのかもしれませんが、このシーンの持つ意味を考えると、もう少し深い意図があるようにも思えます。
それは、“イマジンではなく一応人間?を、憑依/変身しているとはいえ、電王/良太郎が、直接倒す”シーンであるという事。
ここで主導権はモモタロスにあるとはいえ、良太郎は表面的には人間と変わらない所の牙王を、切り倒しています。
電車対決で大爆発して終わり、とするのではなく、生身と生身が対峙して明確な意思を持って倒す事、敢えてそれを描く必要がある、と、監督が考えて踏み込んだ、という部分は、あるのかもしれません。
牙王は倒れ、神の列車も消滅した。
それを契機に、修復されていく1988年12月26日。
「人が覚えていれば、その時間は存在するんだ。今日のこの日を覚えている人間が、明日や明後日や、その先に居れば、時は消えない。人の記憶こそが、時間なんだ」
全てが食らわれる前だった事で、人々の記憶により、1988年12月26日は再生されたのだった。
と、ここで「時間」と「記憶」という二つのキーワードを繋ぐ、『電王』ワールドのかなり重要と思われる設定が判明。
それが、侑斗の口から語られた(なぜ知っているのか?)という事も含め、今後の展開に大きな意味を持ちそうです。
かくてデンライナーのハイジャックに端を発した神の列車に関する事件は無事に解決し、まずは小太郎とジークを元の時間へ戻す為、2000年へと向かうデンライナー。その途中、祝勝モードの車内でオーナーに、「小太郎が両親の写真をなくした時間に立ち寄ってほしい」と頼むハナだったが、オーナーはいつものように、「例外は認めません」とにべもない。
その時、車外をちらつきだす雪に、乗降口に出てそれを見つめる小太郎と良太郎。
雪の降りしきる中、夜の街を駆け抜けるデンライナーは、ある産婦人科の前を通り過ぎていく。
ちょうどその入り口から出てきたのは、赤ん坊を抱きかかえた夫婦と、一人の少女。
目を見張る良太郎と小太郎。
それは、生まれて間もない良太郎を連れた、両親と愛理だった。
両親の姿を少しでも目に焼き付けようと、窓にかぶりつく二人。
懸命に持ち上げた足の裏の1カットを挟んで小太郎の心情を表現しているのが、実に長石多可男で、実に巧い。
また、良太郎と小太郎とは別の所にハナを置いて、その表情も挿入する事で、良かったなぁと思いつつもハナはハナで自分の“消えた時間”について、思う所あるのだろうなーという見せ方も、秀逸。
で、目の前の道路を走っていく電車を見て、「まあ、電車よ」とか平気で言う所を見るに、愛理さんの天然は、両親譲りか。
一瞬の幸せな邂逅を生んでデンライナーは1988年を走り去り、2000年に――。ジークはちゃんと最後までチャンプをヒロイン扱いしながら舞い散る翼とともに自分の存在できる時間へと戻り、小太郎は2000年のミルクディッパーに。扉の鍵を開けようとしたその手が止まり……離れると、小太郎は笑顔を見せて走り出す――明日へ。
2007年、現在のミルクディッパーへ帰ってきた良太郎を笑顔で迎える愛理さん。
よく考えると、泥棒騒動で泊まり込んでいた筈がいつの間にか居なくなって、丸一日経ってようやく帰ってきた、という状況か(笑) にも関わらず、愛理さんは平然と晩ご飯を差し出し、それを受け取った良太郎は、ふとカウンターの写真立てに目をとめる。
良太郎が写真をなくした事で、空虚になった筈の写真立て。
その中に飾られていたのは――あの夜の野上家を描いた一枚の絵。
姉弟は、それを笑顔で見つめるのであった……。



という、素晴らしいラスト。
いやぁ、面白い、そしてこのラストがなんとも絶品!
前半からキーアイテムとなっていた“野上家両親の失われた写真”が果たして戻るのか戻らないのか何らかの形で戻るのだろうなぁと引っ張った末、写真そのものは戻らないけど、それに変わる「記憶」が手に入って、それを埋める――という、チケット無しに好き勝手な時間にはいけない・過去の物品をみだりに現在に持ってきてはいけない・いたずらに過去を変えてはいけない、という設定した劇中のルールを守った上でカタルシスに繋げる、小林靖子の真骨頂。
またそれを汲んだ長石多可男の演出も、お見事。
特撮系の監督はどうしても、“動”のシーンは問題ないけど、会話の続くシーンなど“静”のシーンで途端にテンポが悪くなるという場合がしばしばあるのですが、そこでテンポが崩れず、むしろ良太郎と小太郎の会話をしっかりと名シーンに仕立て上げるなど、さすがの腕。
ラストの見せ方も素晴らしく、ここに、長石多可男が居て本当に良かった。
私が長石監督が好きで演出のテンポが生理的に合うというのもありますが、全編通して非常にテンポよくまとまっており、コメディシーンとアクションシーンのバランスも取れ、脚本・演出ともに、完成度の高い作品。
名作。
堪能させていただきました。
そして、物語は再びTV本編へ――。