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『特救指令ソルブレイン』感想16

◆第27話「お話し植物の秘密」◆ (監督:小笠原猛 脚本:鷺山京子)
やっぱり鷺山さんだった。
冒頭、
轢く?!
と思ってドキドキしたのは私だけではないと思いたい。
ガードレールの外側に落ちてしまった犬のぬいぐるみ・ポメを拾おうとしていた少女チカコと知り合った増田は、彼女を父親の勤め先だという松本バイオ研究所まで送っていく。父親を迎えにやってきたチカコだが、妙に警戒厳重な研究所で働く父親、手塚博士は何かの実験に夢中で娘への態度は素っ気ない。
その研究室で巨大な培養槽の中に入っていたのは、人の頭部ほどもある巨大な藻、ネオレラ。博士の研究に投資し、研究を商業ベースに乗せるようにせっつく人相の悪い所長に、
「私はこの研究を商売に使うつもりはない」
と断言してしまう、研究バカ・家族無視・経済観念なしと三拍子揃った、典型的困った博士。そういえば前作第18話「超能力!孝行少女」も駄目学者と健気な娘の話で、定型的な設定といえば設定ですが、同じ鷺山脚本。
博士と助手がお話し合いの為に所長室に向かった後、ひとり残ったチカコに話しかけてくる、藻の声。手塚博士が研究しているその植物ネオレラは、知能を持ち、人間と会話する事さえ出来るのだ! ネオレラが電圧実験などを受けている事に心を痛めていたチカコは、一晩寂しくないように、と大事なぬいぐるみポメを置いて研究所を去る。
その夜――ネオレラを盗み出そうと研究室に強盗が侵入するが、ネオレラの放った電気ショックで気絶。ネオレラは近くにあったポメのぬいぐるみの中に身を隠す……。
強盗二人組のおっちゃんの方が、警棒で襲いかかってきた警備員を身軽にのして気絶させるとか、やたらに強い(笑)
翌日、違法な遺伝子組み替えを行っていた為に、ソルブレインの捜査に口をつぐむ所長と博士。そしてネオレラはポメの中に入ったままチカコの家に連れ帰られ、彼女に話しかける。博士さえ知らぬ電撃能力を持っていたネオレラであったが、自分を気遣ってくれていたチカコには懐いており、ポメに偽装したままの生活を送る事になる。だがそこに迫る黒い影……研究所に忍び込んだ強盗は手塚博士からネオレラを奪おうとする松本所長の手引きであったのだ。それに失敗した事から博士がネオレラを隠したのだと疑い、ちんぴら達と共に家捜し。そこへ帰宅したチカコを追いかける。
一方、病院で意識不明の強盗Aから遺伝子改造の産物と思われる植物の組織が発見され、博士に追い込みをかけたソルブレインは、“知能を持ち、考え、声を出す”遺伝子組み替え植物ネオレラの真実を聞き出す。研究所から姿を消したネオレラはどこへ……その時、増田が研究所から唯一外に持ち出された物の存在に気付く……それは、ポメ!
この辺りは、視聴者に対してチカコに懐くネオレラの描写さが提示れる一方で、ソルブレインはあくまで“危険な植物”を追いかけている、という複数の視点が入っているのが良いところ。
そして倉庫街に追い詰められたチカコ&ポメに襲いかかるちんぴら達を相手に、ネオレラ大暴れ。銃弾を受けて細胞分裂したネオレラは次々とちんぴら達を気絶させていくが、チカコの「やめて」という声を受け入れる。彼女たちに迫る松本所長……恒例の、化学薬品にピストル。
あまりにピストルが日常化している為かと思うのですが、この世界の住人達は、もう少し火器を使う場所を考えてほしい。
薬品に火がつき、激しく爆発炎上する工場……倒れてきた鉄骨に飛びついてチカコをかばうポメ!
この後、駆けつけたソルブレイバーが炎にまかれたチカコを助け出すのですが、ポメさんが格好良すぎて全て持っていかれました。
ブレイバーは続けて、ギガストリーマーで倒れてきた鉄骨を吹き飛ばしてポメを助けると、松本所長とちんぴら達も全員御用。ショック死?したかと思われたネオレラだったが息を吹き返し、再びポメの姿を借りて喋りだす。ぬいぐるみを抱きしめる娘の姿に、深く反省する手塚博士。

手塚「私は、一度としてネオレラを、命あるものと考えたことはなかった。だから真実はなにひとつ見えていなかったんですね」
増田「手塚さん、これからのチカコちゃんに必要なのは貴方なんじゃないですか。科学者ではなく、父親としての」
手塚「私は罪を償います。そしてもう一度ネオレラを、生き物として、人間の友達として研究してみたい。……チカコと一緒に」

家族の絆と科学者としての倫理、命や感情を大事にする事と、いきすぎた科学への反省、と作品に散りばめられたテーマをうまく絡めて、なかなか綺麗なオチ。博士も実刑判決、という程にはならなそうですし。
……まあ、たまたま娘に懐いていたからいいものの、割と危険な生物なのは確かなので色々と前途多難は予想されますが。
ある意味で、子供+動物のいわゆる無敵の組み合わせなわけですが、ゲストの少女チカコちゃんも好演。
それにしても、小笠原監督はもうちょっと、演技のつけ方を考えた方がいいよなー……とはしばしば思う。特に変な事もしないかわりに特に面白みもない、良く言えば安定、悪く言えば平凡な演出ラインが持ち味ですが、時々、キャラクターの立たせ方が適当にすぎます。
本来は演出話は好きなのですが、画面がYouTube(画質・大きさの問題)なので一連の感想ではあまり触れていないのですが、それにしても今回は目立って適当でさすがに気になりました。
クライマックスの工場炎上シーンでひたすら棒立ちで「ブレイバー!」と叫んでいるだけの増田とか、ラストで博士が“これから喋りますよ”という感じでわざわざ大樹の前まで出ていってから喋るとか(動かなくても声の届く位置なので非常に不自然だし、大樹に近づいた意味も特になく、顔アップでも問題なかったと思う)、もう少し工夫が欲しい。
あと今回、本部の勢揃いシーンで無言棒立ち、強引に台詞が一つあっただけの亀さんは、何とかもう少しうまく使えなかったのか(脚本・演出、両面で)。一つ台詞があるのが、いっそ不憫。ここ数話、けっこう盛り返している『ソルブレイン』ですが、増田が目立つと亀が空気、亀が目立つと増田が空気、は改善されないなぁ……。
そして次回、
本当に占拠されたーーーーー!!!