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『特救指令ソルブレイン』感想31

先週分。
◆第50話「希望を生んだ魔犬」◆ (監督:小笠原猛 脚本:石山真弓/宮下隼一)
いやホント、この連名祭は何なのでしょう。
ジョギング中に倒れて念のために入院させた患者が、一晩で体内の血液が失われてミイラ状態の死体となる、という怪事件が発生。死体の外傷は、犬のものと思われる噛み跡のみ。血液免疫学の世界的権威である岡本博士に傷跡とこの奇妙な血液の症状について調査を依頼するが、実は事件には岡本博士そのものが関わっていた。
博士の研究所には、政情不安に揺れるラザニア共和国の反体制派から資金が流入しており、博士は彼等が切り札とする細菌兵器の抗体の研究を行っていたのである。事件の被害者は、この抗体作成の為に微量の細菌を投与された犬に噛まれたものであり、研究所に入り込んでいる反体制派のエージェント、Mr.Xとその部下は、研究所から逃げ出した犬を捜し出すべく活動していた。
物語後半で研究所を怪しんだソルブレインの調査で、あっさりと資金の流れが割れるのですが、そんな肝心な事があっさりバレるのは、反体制派が日本を舐めていたのか、クロス2000が優秀すぎるのか。
検体となった犬は外で子犬を生んでおり、それを捨て犬と勘違いした博士の息子ショウタに、餌を与えられていた。ところが、子犬を攻撃する敵と勘違いされたショウタは、母犬(検体)に噛まれてしまう。細菌によるミイラ化が進行し、病院で緊急輸血を受けるショウタ。連絡を受けた博士は、検体と子犬、ショウタの関係に気付くと、研究をまとめたディスクを胸に、Mr.Xの目をかすめる為に、(最低でも)2階から窓の外へ大脱出。
ショウタの命を救うべく抗体を持った犬を探すが、犬の親子を見つけたところでMr.X一味に捕まってしまう。
拳銃を持った相手に体当たりとか、割とアクティブな博士であったが、一味の投げた手榴弾で犬は消し飛んでしまう。駆け付けたソルブレインによってMr.X一味は逮捕されるが、ショウタを救う抗体はもうない……だがその時、検体の犬が生んだ子犬が博士の目に留まる。抗体は無事に子犬に遺伝しており、博士は子犬から抗体を検出して息子の命を救うとともに、反体制派の作り出した細菌兵器を無効化する新薬を作り出すのであった。
ソルブレインが犬の救出に間に合わないのは衝撃展開なのですが、只でさえ低水準のヒーローポイントを削ってまで、犬を吹き飛ばさなければならなかったかというと、甚だ疑問。ショウタ少年が飼いたがって世話をしていた子犬が少年の命を救うというドラマ性を強調したかったのかもしれませんが、子犬がいかにもキーすぎて「そんな手が!」的なインパクトもなく、いたずらにヒーロー性を落とすと同時に、犬に酷い事をしただけになったと思われます。
酷い事したほどの効果はない。
全体的に話のテンポも悪いのですが、何がどう悪いのかというと複合的な問題なのですが……シンプルな点を一つ挙げるとすると、物語の展開がのっぺりしている。正味20分のエピソードの中にリズムが無くて、ただダラダラと起きた事件を追っているだけになってしまっていて、つまり演出も脚本も両方悪い。
例えば増田がショウタ少年と割と絡み、博士の机の上の写真立てで二人が親子だと気付くのも増田なのですが、それなら最初から最後まで増田とショウタくんを連動して絡めさせ、ついでに増田のキャラクター性を出す所までやれば、いい脚本。それが出来ないのが、つまらない脚本。いい脚本というのは、散りばめたネタが有機的に絡んでいくのですが、それが無い。そしてそんな流れの脚本をそのまま撮ってしまうから、演出も平板になってしまう。
犬を見せるタイミング、増田と少年の出会い、Mr.Xの登場、色々、リズムをつけるやりようはあったと思うのですが。
そんなこんなで事件は解決し、
子犬はショウタくんに
お父さんは刑務所に
変に明るい音楽を流していますが、全然明るくありません。
宮下脚本におけるレスキューシリーズ的リアリティ(犯罪に関わったら基本的に逮捕)というのは前作から通して基本的に一貫してはいるのですが、今回、明確に逮捕を描く必要があったかというと、疑問が残ります。親子の背後にパトカーの大樹が立っている事で、伝わる人には伝わるわけで、ふんわり匂わす程度で良かったのではないでしょうか。
というのも今回の場合、“外国の反政府組織に協力して細菌兵器の抗体を作っていた”というのは明らかに高度な政治的問題であり、事件は複雑な外交問題を孕んで展開すると思われ、博士が「罪を償って帰ってくるよ」と言うほど単純に逮捕して裁判にかかって刑務所でお務めしました、という話で片付くとも思えず、子供の視点としても大人の視点としても、必要以上にすっきりしないラストになってしまった気がします。
日本政府がラザニア共和国に対して博士の身柄を引き渡す可能性はかなり低いと思われますが、世紀末ディストピアの外交情勢その他によっては、博士、ラザニア共和国に送られて帰って来ないのではないかなぁかなぁかなぁ。
で、敢えてそういうリアリティを押し通すなら、それが物語と連動して効果を発揮しなければいけないのですが、とってつけたようにナレーションで大樹が親子の想いにどうのこうのと言われてもそんな前振りは劇中に一切無かったわけであり、どうにも、ちぐはぐ。
途中式を省いて解答だけ書いてまとめても、いい話には、なりません。
次回、
「それが、崩壊へのスタートだ! ふっはっは、はっはっはっはっは!」
相変わらずいい声の貴公子の高笑いで、いよいよ、最終章の幕が開く!