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『五星戦隊ダイレンジャー』感想6

◆第11話「磁石でガウス!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:荒川稔久
ランニング中に出会った女性・なつみとボクシングの話題でいい雰囲気になり浮かれる将児。リンにプレゼントを見立てて貰おうと、妹と称してなつみのバイト先に連れて行くが、将児が近づいた途端、なつみが吹き飛んでしまう。それはゴーマ怪人・磁石神父の能力によるものであり、二人は知らぬ間に妖力によるN極の磁性を帯び、お互いに反発しあうようになっていたのだった!
磁石神父を演じるのは、怪優・赤星昇一郎。語尾に「ガウス」をつけて喋り、奇妙な動作で街を練り歩く、キャスティングでわかる通りの、見事な変人。
……そういえば、ゴーマ怪人の人間体って、基本的に奇人変人なので、思えば鉄面臂張遼駄目人間だったのも、仕方のない事だったのかもしれない。
ゴーマの妖力を得るという事は、“人として大切な何か”を失うという事なのです。
磁石神父に立ち向かう将児とリンだったが、既にN極の磁性を帯びてしまっているテンマレンジャーは磁石神父に翻弄され、磁力拳・超伝導竜巻を受けて敗北。作戦遂行が第一らしい磁石神父はホウオウレンジャーを捨て置いて姿を消す。
なつみを探す将児は、街で車に追いかけられる彼女を発見。磁石神父によってS極の磁性を帯びた車は、N極に引きつけられ、運転手不在でも地の果てまで彼女を追いかけ続けるのだ!
そんな車から自分の足で走って逃げ続ける、なつみ。
毎朝のランニングは伊達じゃない。
バイクに乗った将児はなつみの代わりに車をひきつけ、突進してくる車を見事に回避して破壊に成功。
ここで意外な形でカー&バイクスタントを入れてきたのは秀逸でした。
反発しあうNとNばかりでなく、くっつき合うNとSの磁性を帯びてしまった人や物で、街は大混乱。高笑いする磁石神父の前に勢揃いするダイレンジャー
「敵ながら格好いいでガウス
だが、全員がN極の磁性を帯びてしまい、気力ボンバーを封じられる5人。そんな時、「磁石の力を逆利用するのだ」という導師のアドバイスを将児は思い出す。
「みんな、縦一列に並べ!」
そして炸裂する、人間リニアキャノン。
リニア拳・中央新幹線
テロップと説明も入りました(笑)
自らを弾丸としたテンマレンジャーの一撃を受け、磁石神父は巨大化。
「磁力だぁぁッ」
巨大磁石を投げつけ、大連王にダメージ……? と思ったのも束の間、
「こっちは気力だぁぁッ」
瞬殺でした。ありがとうございました。
事件は解決し、なつみに告白しようとする将児だったが……
「将児さんの一言で、告白する勇気が出ました」
なつみは、憧れのボクシング部の先輩に告白すると言って、走り去って行く。
見事な予定調和に落胆するも、ダイレンジャーに恋している暇はないっ、と空元気で立ち直る将児であった。
お約束のオチですが、途中で将児が、なつみのロッカーにかかった手作りっぽいボクサーの人形を見て勘違いを加速させた辺りが秀逸。
次回、苦節11話、遂に和さんのターーーン!!


◆第12話「豆腐で酔ったァ」◆ (監督:小笠原猛 脚本:高久進
いきなり投石を受ける豆腐屋
そして
美容室で出前してもらった豆腐を食べる男、和。
3食豆腐でいける、という和の意外な食の好みが判明したところで、騒がしい外の様子に気付く和と、豆腐を出前してくれた豆腐屋の娘、町子。そこでは、チャップリンぽい外見の大道芸人に先導された酔っ払いの集団が「こんな会社やめちゃおー」と大合唱しながら街を練り歩いていた。その中に父の姿を見た町子は駆け寄り、先頭の大道芸人が走ってきた車を蹴り飛ばしたのを見た和は、その後を追う。
「貴様をゴーマとみた」
大道芸人の正体は、ゴーマ怪人、豆腐仙人。
キリンレンジャーに転身する和であったが酔拳酔拳の対決に敗れ、豆腐仙人は姿を消す。
和さん、変身前でも素で酔拳使うのが判明し、割と謎。
背後からいきなり大道芸人に跳び蹴り食らわすし、意外とバイオレンス?
和と町子が豆腐屋のオヤジに事情を聞いたところ、投石の相手を追っていった父は、明らかに怪しい新顔の豆腐屋の集団に囲まれて、気がついたら酔っ払っていたのだという。
それを聞いて、「見つけてぎゃふんと言わせてやる」と飛び出していく町子。
ぎゃふんと来たか、高久さん(笑)
「こんな家庭、捨てちゃおー そーれそーれ」
豆腐を手に、主婦達も大合唱。
そこに文句をつけに乗り込んだ町子ちゃんだが、豆腐屋達の正体はゴーマ雑魚。和が町子を助け、大五と将児も合流するが、二人は豆腐仙人に酒をかけられ酩酊状態となり、仙人には逃げられてしまう。
導師、大五と将児に説教するも完スルー。
麒麟拳の使い手として豆腐仙人は許せない、と仙人を探しに行った和は、町子を人質にとられ、豆腐仙人と飲み比べ対決を行う羽目に。
仙人、飲み比べ対決に負けたら
「あの娘の命を助け、オレは潔く自爆する」
との事ですが……それって、巨大化するだけですよね?
(口紅歌姫の回を見るに、巨大化しても元に戻れるみたいですし)
酒を飲む人間を嘲笑い、この作戦で人間を堕落させるのだと高笑いする、どうやら下戸のシャダム事務長。
アルコール度90%のゴーマ老酒を巨大な杯に満たし、飲み干す豆腐仙人。対する和も見事に杯を空けてみせるが、酔っ払って倒れてしまう。その和に向けて、剣を振り下ろす豆腐仙人。だがそれは、仙人を油断させる為の罠だった! 和は仙人に反撃、更に何故か雑魚が同士討ちを始める……なんとその中の二人は変装して潜り込んだ大五と将児、和が飲み干したのはゴーマ老酒ではなく、二人がすり替えた、ただの水だったのだ。人質の町子の頭上に巨大豆腐が迫るが、リュウレンジャーとホウオウレンジャーが豆腐を断ち割り、見事に救出する。
事の成り行きをまとめると、

てっきり和さんが酒豪っぷりを見せつけるのかと思ったら、別に酒を飲んでいたわけではない。
隙をついて町子を助けるのかと思ったら、普通に戦闘になるだけ。
赤と桃に巨大豆腐からは救われるものの、土管の上から思いっきり突き落とされる町子ちゃん(痛い)。
もしかしたら和が作戦を立てたのかもしれないけど、そういう描写は一切ない(そもそも酒飲み対決自体が激しく成り行き)。

……つまり、特に和さんの活躍要素、一切なし。
敢えて言えば、勢いで一人称が「ミー」になった事。
最低限、隙を突いて町子を助け出すor(人質を助ける為に機転を利かせて)和の方から飲み比べを持ちかけるのどちらかの要素が無いと、物語的な意味が一切ないのですが、この辺りの本末転倒とぶん投げっぷりは、如何にもな高久クオリティ。高久進も80年代はそれほど悪くないものも書いている事がわかって少し見直したのに、90年代入ると本当にダメだなぁ(^^;
あと、実は予告とサブタイトルで強調しているだけで、劇中で「豆腐を食べて酔っ払う」描写が一切無いのですが、これは演出として入れなければいけなかったと思います(これは多分、脚本上ではさすがにあったと思う)。
豆腐仙人に炸裂する、キリンレンジャーの急性二日酔い頭痛拳(気力酒を飲ませて悪酔いさせた相手に乱舞攻撃を決める必殺技!)。
実はキリンレンジャー、まともな技のテロップが出た事がないのですが……初テロップ技がこれですか。
テロップ出ない為に、未だに「天チ星」の「チ」も不詳。聖麒麟の攻撃を見るに恐らく「地」だとは思うのですが、「知/智」という可能性も、無いとは言い切れないので、早くテロップ出してくれないと困ります。
巨大化した豆腐仙人は火炎放射と大連王の剣を奪っての攻撃で、大健闘。大連王が10秒以上ダメージを受けたのは、おそらく初(笑)
しかし大放電で剣からの電撃を浴びたところを疾風怒濤で、ざっくり両断。豆腐屋のラッパの音色とともに、大爆発。
やはり、戦闘らしい戦闘には、ならないのでありました……斬。
巨大ロボットは(格好いいけど)全てを瞬殺していくし、合体必殺武器は無いし、バンダイに優しくない戦隊だなぁ(笑) 銃とロッド以外の個人武器も、細かく玩具は出していたのかしらん……瓢箪、とか。
もっとも、“怪人が自ら自爆して巨大化する”というのは、常に合体必殺技を使う必要がない・怪人が致命的なダメージを受けなくてもロボット戦に持ち込める、ゆえに話の流れで一対一の戦闘を組みやすい、加えて、極端に言えば怪人の好きな時に巨大化できる、と、作劇の幅を広げて非常に良い設定だと思います。
かくて豆腐騒動は一件落着。和お気に入りの豆腐屋さんは再び団地で大人気となり、和はオープンカーの中で豆腐を堪能するのであった。間違いなく、マイ醤油持っていますよ、和さん……!
ところで今更ですが、大五さんの「さん」は尊称ですが、和さんの「さん」は、主に「和」だけだと文中の据わりが悪い為です。
ニュアンスとしては、
大五さんの「さん」は、「竜馬さん」と同じ「さん」
和さんの「さん」は、「流星さん」と同じ「さん」(笑)
正直ここまで扱いの悪い和さんの、本格的な活躍の日はいつだっっッ?!