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『仮面ライダー電王』感想19

◆第33話「タイムトラブラー・コハナ」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
前回の流れは児童層にわかりにくいという意見が内部であったのか、オーナーのナレーションにより「桜井侑斗がゼロノスに変身するカードは、他者の中の侑斗の記憶を消費している事」が冒頭で説明。
そして全ての桜井侑斗の記憶が他者の中から消えた時、桜井侑斗は時間の中でその存在を保てなくなる。
土手で転がる侑斗(無職)は、手持ち全てのカードを使い切ってしまった事により今後のイマジン対策に頭を悩ませる事になるも、自分の存在をこれ以上消費しないで済む(したくても出来なくなった)事に関しては、“ちょっとだけ”の安堵を得ずには居られなかった。
最終的な目的は未だ不明の侑斗ですが、デネブと共に良太郎さのサポートに回る事に決定。モブ転落の危機に、徳俵いっぱいで踏みとどまりました。
その頃、ウルフイマジンの回に登場したかつての同級生・沢田と電話する良太郎は、沢田がかつて出会った「桜井さん」を覚えているか水を向けてみるが、沢田もまた、「桜井侑斗」の記憶を失っていた……一方、デンライナーは時の道程の中で、今まで見た事もない、捻れた線路を発見していた。
「ともかく、何か変化が起きてますよ……何か……」
それは、新しい時間へ繋がる線路なのか……?
そして、デンライナーから姿の見えなくなったハナと、同じ服装をした少女が、長石階段で鏡を見上げて叫んでいた。
「嘘でしょ…………うそぉぉぉぉぉ!」
長石監督、TVシリーズに帰還。
帰還早々、チャンプ小型化という、衝撃の新展開。
潜伏期間が長かったですが、モモタロスに続いて、遂に、チャンプも良太郎の不幸に感染した!!
野上姉弟に深く関わってしまった者の辿る運命は、
愛理さんのフェロモンに脳までやられるか
良太郎の不幸が伝染するか
二つに一つ!
「良太郎……あたし、ハナ……」
デンライナーにハナの姿が見えないとモモタロスに聞かされた良太郎、ちょうどかかってきた電話でハナに呼ばれた場所へ向かう途中、チンピラにからまれてしまうが、そこへ飛んでくる生卵。
「良太郎から離れなさい」
そして炸裂する鋼鉄の拳。
「良太郎、逃げるよ」
小学生ぐらいの少女に手をひかれ、以前、K本条がらみで空手部員に囲まれる羽目になった時の事を思い出す良太郎(劇場版で離れる前の長石監督回なので、脚本家の遊び心といったところでしょうか)。
「あの……まさかと思うけど……ハナさん?」
「わかってくれた?」
良太郎の中で、チャンプのアイデンティティ闘争にあるのだな、という事を改めて確認して、どんな顔をすればいいかわかりません。
ひとます小型ハナをミルクディッパーに連れて行った良太郎だが、そこへ愛理がぶんぶんまとわりつく羽虫ーズと一緒に戻ってくる。とりあえず、ハナの「妹みたいなもの」として紹介する良太郎。
「お名前は?」
「あ……ええと……」
「……こ、コハナちゃん」
咄嗟に良太郎が口にした名前により、小型ハナのコードネームは、コハナに決定。
不満そうなまなざしのコハナに、つねられる良太郎。
「駄目……?」
まあ、ハナタロスより良かったと思います。
ここは公開版の映画を見ていると、「小太郎」の絡みでもう一笑いできる所でしょうか。
ファイナルカット版では「小さい良太郎」=「小太郎」の名付け親はモモタロスなので……えー色々、これもタイムパラドックスなのか何なのか(笑) いったい誰が一番悪いのか。
しかしまあ、ハナタロスではなくて本当に良かった。
そこへこっそりと顔を覗かせ、良太郎を外へと連れ出す侑斗(住所不定電車・無職)。
愛理や羽虫ーズと顔を合わせなかった為、「桜井侑斗の記憶が消費された事」が、現在の侑斗の認識にどう影響を与えるのかは、わからずじまい。意識的に顔を合わせないようにこっそり顔を見せた感じには描かれていましたが。
街のあちこちでピアノを勝手に(しかし見事に)弾いてまわる謎めいた燕尾服の男がイマジンと契約したのを見た侑斗は、デネブに男を追わせつつ、良太郎に連絡しに来たのだった。良太郎はイマジンを追い、侑斗はコハナをデンライナーへ連れて行く事となる。
役立たずが露骨に役立たずに見えないように、必然性のある仕事を回してあげるのは、脚本家のちょっとした愛を感じます(笑)
あと子供とか拳骨一発で黙らせそうな感じの侑斗でしたが、意外と、態度が優しい。
アピアノを弾きながら街を彷徨い歩く怪しい燕尾服の男は、とある病院の一室を外から見つめていた。そこに入院しているのは、昏睡状態の元ピアニスト・奥村祐希。果たして二人はどんな関係なのか? 病院を離れた男の前に、「ピアノが欲しいのか、よしよし、かなえてやろう」と勝手に契約を決めたクラーケンイマジンが、他人の家から強奪してきたピアノを投げ落とす。だが、男の扉は開かない。
…………うんまあ、何も言っていないのに、目と目で通じ合って勝手に契約決めましたから、たぶん、間違っているんだと思うんですよクラーケンさん(CV:稲田徹)。
本当は、おでんとか欲しかった可能性も否定できない。
男に扉の開放を無理矢理迫るクラーケンに立ち向かうデネブ、そして駆けつけた良太郎はソード電王に変身。最初は押し気味だったS電王だが、クラーケンが銃を持ち出し、触手との合わせ技で苦戦。
しかし、デンライナーの面々は侑斗に連れてこられたコハナに驚いていて戦闘の事など完全に忘れていた。
触手に掴まれた状態でなんとかフルチャージ、反撃をはかるS電王。
「俺の必殺技ぁ! いくぞ――俺の必殺技パート……パート? ……何にすっかなぁ」
(迷ってる暇ないよ。……5でいいじゃない)
「よし、パート5!」
Mさん、そろそろ技増やしすぎて、自分で整理できなくなっている模様。
強引に放った俺の必殺技パート5はクラーケンを切り裂くがS電王も銃撃を受け、両者痛み分け。クラーケンは逃亡し、S電王も変身を解除。
デンライナーでは、オーナー、コハナ、侑斗が、先頭車両から、あの新しい線路を見つめていた。
「ハナくんの異変は、あれに関係しているとも……考えられます」
「どういう事ですか?」
「たとえば……あの路線が、ゼロライナーやハナくんの居た時間に、続いている、とか……」
ここで、燕尾服の男が弾くピアノの音色(「double-action」ピアノアレンジ)がデンライナー組に重なるのは格好いい流れ。
戦場を離れた所で休ませていたと思ったら、クラーケンが持ってきたピアノを無心に奏でている男を、呆然と見つめる良太郎とデネブ。
一心不乱にピアノを弾き続ける男は何者なのか……。
そして新しく生まれた路線の先には何があるのか……?


◆第34話「時の間のピアニスト」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
意を決して、ピアノの男に話しかける良太郎。
「さっきの怪物に望んだ事教えてもらえませんか。きっとまた、来ると思うんです」
「そう。じゃ、もう一度待ってみるか」
男は去っていってしまうが、デネブによると、男がイマジンに望んだのは確かに「ピアノ」らしい。しかし過去への扉は開かなかった……果たして契約の裏に隠された真実はいったいなんなのか?
前回のクラーケンとピアノの男のやり取りが、目と目で通じ合っているようにしか見えなかったのですが、思いの外、ちゃんと通じ合っていたらしい、心。
クラーケンイマジンには、伏してお詫び申し上げます。
それはそれとして、これまで数多の契約をイマジン流拡大解釈でクリアしてきたイマジンですが、今回、ピアノの男の扉を開けなかったのは、クラーケンさんの押しが弱いのか、男の精神力の問題なのか。
デンライナーでは、コハナをからかうリュウタロス。
オーナーによると、ハナの変化は「消えた筈の、ハナの居た時間が、戻ろうとしているのかもしれない」との事だったが、オーナーも良くわかっていないのかもしれない。しれない。
「おまえ、本当にあのハナくそ女か?」
あまりの変わりように、上から覗きこむモモタロスの顔面にクリーンヒットする、修羅の拳。
「間違いない。ハナくそ女だ」
モモタロスK.O.
修羅の本質とは器にあらず、心と拳にあり!
ピアノの男を見張る良太郎と侑斗は、彼がある病室を見つめている事に気付く。お見舞いと称して乗り込んだD侑斗が滑った所をU良太郎がフォローに入り看護師から聞き出したところ、入院している青年は、奥村祐希。少年時代から天才と謳われたピアニストだったが、3年前に事故で植物状態となり、以来ずっと眠り続けているのであった。病室をじっと見つめる燕尾服の男については看護師も知らず、すっかりナンパモードのU良太郎とそれにドギマギするD侑斗は、乱入したコハナによって回収されていく。
「珍しいね。ウラタロスがこういう地味な事を手伝ってくれるなんて」
「ハナさんのご使命……というより、ご命令?」
小型チャンプ、早くもデンライナーで覇権確立。
警備員に病院前から追い払われた燕尾服の男を追った一行は、楽器店でピアノを弾き始めた男に対し、U良太郎がナンパ道108の奥義の一つ・ピアノ演奏により接触を試みるも空振り。
「一緒に演奏してて思ったんだけど、あのおじさん。世界と繋がっていたくないって感じなんだよねぇ」
地道に情報収集する事になる。そしてその結果、わかった事は……
「何もわからない事がわかった」
男は再び病院の前に戻り、良太郎と侑斗は合流するが、燕尾服の男の目撃者を探した聞き込みの収穫は、ゼロ。各地でピアノを弾く男を目撃している者は居たが、誰も、彼の名前も素性も知らない。
「似てるね……桜井さんと」
忘れられた男。
「人の記憶がどれだけ大切か、何度も見てきたよ。たとえ過去が壊れても、人の記憶がもう一度、時間を作る……」
良太郎が思い出すのは、神の列車が喰らった時間と、その復元。
そして侑斗の言葉。
「人の記憶こそが、時間なんだ」
ここで劇場版の最重要ワードが、TV版にも挿入されました。また、ジークが消えかけた時の話/映像と繋げる事で、TV版しか見ていない視聴者にも、繋がりをスムーズに示唆。
「変身する為にその記憶を消費して、何でもない筈ないよね、君も、桜井さんも」
侑斗を問い詰めようとする良太郎だったが、その時、風を切るグランドピアノ!
良太郎は現れたクラーケンに対して、ロッド電王に変身。
「おまえ、僕に釣られてみる?
ロッド電王がクラーケンイマジン(広義の魚介類)と戦闘する中、ピアノに近寄った男は、それを奏ではじめる。その音色が届くのは――奥村祐希の病室。
男の望みとは、この病院の前でピアノを弾く事にあった。
過去への扉は開いてしまい、クラーケンは過去――2004年1月18日へ。それは、
「あの子と初めて会った日だ……」
3年前――ゴミ捨て場にうち捨てられていたピアノを、一心不乱に弾く燕尾服の男。
「自分とピアノだけの世界に居た私を、あの子は見つけ出した……」
かつて“奇跡のピアニスト”とまで言われながら、突如引退。誰かの為に弾くのではなく、自分とピアノだけの世界に居た燕尾服の男は、天才ピアニストと呼ばれる自分への重圧から壁にぶつかっていた奥村祐希と出会う。奥村のピアノへの想いは燕尾服の男にも繋がり、やがて二人は連弾をするなどピアノを通じて仲を深めていく。しかしある日――コンサートのチケットを燕尾服の男に渡そうと道路に飛び出して奥村は事故に遭い――植物状態となった。
ゴミ捨て場でピアノを弾く燕尾服の男の中から姿を現すクラーケンイマジン。そこにやってくるデンライナー
「一度釣り上げかけた獲物は、逃がしたくないんだよね」
ロッド電王、文字通りにクラーケンを釣り上げにかかり、多少の苦戦はあったものの、最後はバイクによる不意打ちから必殺技へのコンボ。
「塩辛にでもしますか」
必殺の蹴りがクラーケンを砕くが、クラーケンイマジンは暴走し、かつてない大量分裂が発生。次々とビルが壊され、数多くの人々が瓦礫の下敷きとなり、一緒に逃げていた奥村と燕尾服の男も犠牲となって、現在でもその存在は消失してしまう。
「お仕置きしなきゃいけないのは、あいつらの方らしいね――良太郎、行くよ」
この惨状に、ウラタロスも本気モード。劇場版ばりの電車大集合で、分裂した暴走イマジンを各個撃破していき、最後はぐるりと取り囲んでの、蒸し焼き集中砲火で暴走イマジンを壊滅させる。
久々の電車ですが、前段の良太郎と侑斗の会話を含め、ここでゼロライナー含めた電車による総攻撃(大連結はなし)を行う事で、物語及び演出面において、劇場版の内容を補完しきった、という所でしょうか。
かくて時の運行は守られ、人の記憶――時間の復元力により、現在で存在を取り戻す人々。
この、“過去でイマジンによって破壊されたもの”が、イマジンを倒した事で元に戻る、という描写は劇中初。
以前に一度、過去でイマジンに殺された事で現在の人が消失する、という描写は入った事があり、イマジンを倒すとその人はどうなるのだろうと少々気になっていたのですが、イマジンを倒せば人命の損失もリセットされる事が明確になりました。
もう一つこれでハッキリしたのは、イマジンは“現在”においては物理的な被害を及ぼせるけど、“過去”においてはあくまで記憶に被害を及ぼしているという事。記憶の連続性を破壊する、というか。
……と思ったのですが、そもそもイマジンは2007年(良太郎主観の“現在”)より未来から来ている筈であり、イマジン主観においては2007年も過去、となると、必ずしも2007年に物理的被害を及ぼしているとは言い切れない気もしてきました。
イマジンが2007年で及ぼしている被害も、もしかしたら記憶、という可能性はあり。
ただイマジンはあくまで2007年で暴れるのではなく、そこから更に過去へ跳ばないと時の運行を乱せないルールのようなので、2007年が“現在”という事については、時への干渉に関する未だ明かされないルールがあるといったところでしょうか(その辺りが「特異点」と絡んでくるのかとは思われますが)。
あまり突き詰めると流れる時間に対する主観や観測者の問題など出てきて非常にまたややこしくなるので、現状わかっている範囲ではそういうルールっぽいなぁ……程度の話で、脇に寄せておこうと思います(^^;
過去で瓦礫の下敷きとなった奥村も、当然、病室のベッドへと植物状態ながら戻り、そして――――路上に置かれたグランドピアノの前は、無人だった。
「あの人は…………?」
「消えた」
あああああああ、その為か!!!
す・ご・い
どうして今回に限って、ある意味では野暮な、再生シーンを入れるのだろうと思っていたのですが、なるほど、ここでこう繋げてきましたか。
誰にも知られず、忘れ去られた男は、戻る時間を持たない。
「おまえ言ったよな。あの男の事を覚えてる奴はいなかった、って。だから……戻らない。唯一、三年前のあの男の事を覚えている人間は眠ったままだ」
そしてそれは否応なく、良太郎に桜井侑斗を思わせる。
「そう、記憶がある限り、時は消えない。しかし、記憶にない時間は戻らない。イマジンが過去で暴れる度、ピアノの男のように忘れられ、零れ落ちてしまうものがあるんです。でも、大抵は、影響はありません。ただ、消えるだけです」
「そんな……」
「何もかも覚えているのがいい事とは、限りませんしね」
去って行くオーナー、燕尾服の男の事を思い、沈み込む良太郎。
「確かなのは一つ。僕は今日、一人、時間からこぼしてしまったんだ。守れなかった」
その時、停車したデンライナーに一人の男が乗り込んでくる。それはなんとあの、燕尾服の男。ナオミによると、時から零れ落ちた者は、いつか誰かがその者の記憶を取り戻すまで、時の中を旅するのだという。彼の記憶を持つ奥村が目を覚ませば、いつかは燕尾服の男も、現在へ戻る事が出来るかもしれない……。
オーナーの解説を聞いて皆が暗くなる中、ナオミが首をかしげるようなポーズをしていたのは、このシステムを知っているからだった模様。
実はこれまで存在理由が不明だったデンライナーですが、今回明かされた、時から零れ落ちた人のフォロー機能を考えると、時の運行を守る戦闘力(電王)付き救済システム、といった所でしょうか。
個人的にはどちらかというと今回の設定で一気に銀河鉄道っぽい雰囲気も出たような気がするのですが、ここは良太郎のように全面的に前向きに捉えておく方が吉か、吉なのか。
どうもこう、全面的に明るい話題という気もしないのですが(^^; これを明るいニュースぽく伝えているのは、ナオミがナオミなりにデンライナーの中の人間として、浮き世の人間とは感覚がズレているから、という気はします(もちろん意図的な描写として)。
当の奥村が、ピアノが聞こえてきた時も、消滅後に再生した時も、システムの解説時も、覚醒の気配をほんのちらっとでも匂わせない、というのは、如何にも、記号的な道具立てを嫌う白倉−武部ラインだなぁ、というところ。
なお、チャンプは、リーチと筋力こそ落ちたものの、修羅として余計な肉が減った分突きのスピードが増したのか、その拳の威力は以前より上との事(被害者の会代表・Mさん談)。
次回、ソード→ロッドと来てアックス回かと思いきや、大の字に倒れていましたが、キンちゃんの活躍や如何に?!
そして、色々な話が大きく動きそう。