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『特捜ロボジャンパーソン』感想26

◆第31話「新型JPニュータイプジャンパーソン)誕生?!」◆ (監督:小西通雄 脚本:宮下隼一)
いきなり出てくる、目つきの悪い小型メカ。
それはかおるが国連時代、停戦監視用に開発していたロボット、アールジーコであった。
優れたレーダー機能を備えたアールジーコは、ジャンパーソンを「ジャンパー」、かおるを「マミー」、ガンギブソンを「ガンモドキ」と呼ぶなど、実に軽い口調で、いきなりガンギブソンと揉める。
「いい加減にしろ、二人とも。仲間同士のいざこざは敵に付け入る隙を与えるだけだぞ」
ジャンパーソンが仲裁に入り、仲直りをするガンギブソンとアールジーコ
ここまでの世界観と少々そぐわないマスコットメカに演出として困ったのか、なんか、変な芝居(笑)
「さすがジャンパーソンね。これで我がチームも一層のパワーアップがはかれそうだわ」
突然、委員長キャラと化すジャンパーソン、そして「我がチーム」とか言い出した悪の女教師・三枝かおるは、組織の更なる強化にほくそ笑むのであった!
ところで、ずっとガンギブソンのあだ名を悩んでいたのですが(悩まなくていい)、
ガンモドキ
これは参りました(笑)
もうこれだけで、アールジーコ登場の甲斐があったと言っても過言では無い!(おぃ)
ふわふわ動く小型マスコットロボ、というと某デミタスを思い出さずにはいられず、二の舞にならない事を祈ります。
その頃、バトルマシン計画も失敗に終わった帯刀は怒り狂いながら、これまでのジャンパーソンとの戦いを思い返していた。
「ジャンパーソン、ジャンパーソン、ジャンパーソぉン!」
編集の都合で、ジャンパーソンが殴ったら珍大光が爆発した感じに(笑)
「遊びは終わりだジャンパーソン、あのネオギルドが造り出すロボットを超え、あのスーパーサイエンスネットワークが造り出すバイオモンスターを超え、そして……貴様を超える最強の存在に生まれ変わるために、俺は俺自身を改造する。――究極の悪。絶対の悪。魔王の誕生だ」
ルーゴ回の伏線が発動し、不穏な決意を口にする帯刀。なんとそれは、自らの改造!
悪の組織のボスが実は怪人だったり謎の生命体でしたというのは割とある話ですが、悪の組織のボスがあまりに圧倒的なラスボスに対抗する為に物語中盤で自らを改造するというのは、なかなか珍しいシチュエーションでしょうか。
一方、ロボット刑務所の再建計画に携わっていた鳴海博士から「至急、見せたいものがある」と連絡を受けたかおるは単身待ち合わせに向かうが、鳴海の身柄は一足違いでマヤによって拉致されてしまう。現場に遺されていたフィルムの中身を確認したかおるは、そこに時実博士の姿を発見する。
時実小五郎(野口英世似)……それは、かおると鳴海の師にあたるロボット工学の権威であり、あの、MX−A1の立案者であった!
てっきり濁されるかと思っていましたが、ここで遂に姿を現す、殺意丸出しロボの生みの親。現状かおるがあまりにアレなので、責任を押しつけられるもっと酷そうな人を出してみた、という感もありますが(笑)
時実小五郎役は、洋画の吹き替えなどでも活躍する森田順平で、非常にい声。露骨なキチガ○ではなく、いっけん落ち着いている○チガイを好演。
いったい鳴海は何を伝えたかったのか……時実家を訪れたジャンパーソンとかおるだが、家の中は荒れ果て、無人になって久しい様子であった。時実博士はMX−A1の第二次プロジェクトを申請するが、それは機械と生体の融合により人間を超える存在を造り出そうとする禁忌の計画であり、政府はこれを却下。その反動も手伝ってますます研究にのめり込む内にとうとう妻に愛想を尽かされるが、娘を連れて出て行こうとした妻が、娘と共に事故死。その日を境に、学会からも姿を消していた……。
「人間としての心も、科学者としての心も、きっとその時捨ててしまったに違いないわ。……全て」
キチ○イ、キ○ガイを批難する。
時実博士をやたら断定的に詰るかおるですが、そのやっている事は正義を執行する審判者としてのロボットの作成であり、人間を超えるロボットが大好きなかおるが、人間を超える存在を造り出そうとする時実を否定する、というなんとも歪んだ構図です(笑)

ゴジラでもビオランテでもない。本当の怪獣は、それを造った人間です」
(白神博士/『ゴジラvsビオランテ』)

モドキの時もそうでしたが、かおるが“人間以上(外)”の存在にやたらに忌避感を示すのは、一般論以上に、歪んだロボット愛と人間不信の発露にしか見えません(^^;
国家予算のちょろまかしによる人類超越計画に失敗した上に、家族も失った時実に資金協力を申し出たのが、帯刀龍三郎であった。時実は帯刀の手術シーンを見せつけながら、第二次MX−A1プロジェクトに、さらってきた鳴海をスカウトしようとする。
手術しながらスカウトする、というのが実にマッド。
「断る! 私は科学者として、いや、人間として恥ずべき事はするつもりはない!」
「そう言うだろうと思ったよ。しょせん君などに、このプロジェクトの偉大さはわからん」
完全にイッてしまっている時実の言葉に、鳴海はなんとか縄抜けに成功して逃げ出すと、JP基地へ連絡。
……公衆電話でかかるのか(笑)
急ぎ鳴海の救援に向かうジャンパーソンであったが、時実による帯刀のオペも完了してしまう。

「成功だ……! 新しい歴史の幕開けだ! 人間を超え、ロボットを超え、あのジャンパーソンをも超える、まさに、魔王とでも呼ぶ他ない存在。バイオボーグ・ビルゴルディの誕生だ。――目覚めよ、ビルゴルディ!」

ビルゴルディはいきなりは全身を描かれず、鳴海に迫る鋼鉄の足音、逃げ出した鳴海を追い詰める黒い影、とまずはホラー調の演出。
鳴海の隠れている工場地帯に辿り着いたジャンパーソンとアールジーコは、手分けして鳴海を捜索。この展開で単独行動をとってしまうアールジーコ、いきなり大ピンチの予感(笑)
案の定、鳴海を発見した直後に撃たれる。
「俺が相手だ!」
そこへ駆けつけるジャンパーソンだったが、何者かの銃撃により、目の前で倒れてしまう鳴海博士。
「貴様は誰だ!」
暗がりから姿を現したのは、ジャンパーソンと似た意匠を持つ、赤+金配色の鋼鉄の存在――それこそが、バイオボーグ・ビルゴルディ!
2013年の今見ると、凄く、アイアンマン(笑) (※『アイアンマン』の初登場は1963年ですが、近年のメジャー化、という意味で)
「似ている……この俺に」
そう、
目には目を、歯には歯を。
ラスボスにはラスボスを。
すなわち
狂気の正義 vs 絶対の悪。
これぞまさしく
魔王頂上決戦!
にせウルトラマンに、にせライダー、キカイダーハカイダー、古来よりヒーローに対抗する為の偽ヒーローないしダークヒーローというのは数多いですが、ここで注目されるのは、悪玉サイドが正義のヒーローの姿を纏う事でそれに対抗しようとするという、逆『デビルマン』の構図になっている事。
まさしく己を捨てて悪魔の力を手に入れた帯刀=ビルゴルディ、連続回し蹴りからの飛び蹴り炸裂、その凄まじい戦闘力に、ラスボスまさかの滅多打ち。そして、腕も飛んだ!
更に、ニーキックミサイル!
そこへ駆けつけたガンモドキがミサイルを撃ち落とすが、合流した二人を吹き飛ばすデュアルレーザー!
実に徹底したパチモンぶりです(笑)
まあ、同じMX−A1をベースにしていると考えると、著作権は時実博士にありそうですが。
試運転という事か、ビルゴルディはそこで撤退。やってきたかおるは、虫の息の鳴海博士を抱き起こす。
「三枝くん、先生を……時実先生を止めてくれ」
鳴海はロボット刑務所再建の為に各方面に声をかける中で、時実が犯罪組織に協力、第二次MX−A1プロジェクトを密かに進行していた事に気付いてしまい、独自にその身辺を探っていたのだった。
「あの男に、先生はあの男に改造手術をほどこして、ビルゴルディという名の、悪の魔王を……!」
「ビルゴルディ、悪の魔王……」
同じMX−A1から生まれた、光と闇。
というか、闇と闇。
鳴海博士は、“その男”の名を告げる事なく絶命するが、ジャンパーソンには一つの心当たりがあった。
「おそらく、あの組織だ。<ネオ・ギルド>でもスーパーサイエンスネットワークでもない、もう一つの組織!」
……よく、知らなかった(笑)
まあ、帯刀コンツェルンは表社会のグループ名しか無くて、特に闇の組織名が設定されてないからなんですが。帯刀、自分の中では何か考えていそうだけど、発表する機会に恵まれていない。
「でも酷いよ、ジャンパーソンをコピーしてさぁ」
「なんという事を……なんという事を……時実先生!」
かおるの泣き顔のアップが力入りすぎて凄いことに。
そして会話の流れの関係で、鳴海の死に憤っているのではなく、私のジャンパーソンが汚された事に怒っているようにしか見えない。
MX−A1をベースに魔改造をほどこすという、やっている事は全く同じなんですが(笑)
かおるに自覚があるのかはさておき、同じだから余計に怒っているというか。
はからずも、ヒーローと最強の敵だけではなく、その背後に居るマッドサイエンティストの存在までが合わせ鏡になっている、というのが今作の恐ろしい所です。
再登場あえなく死亡した鳴海博士ですが、助けを求める人間をジャンパーソンが救えなかった描写は恐らく劇中初で(間に合わなかった、的にやや濁していますが)、戦闘ばかりでなく、ここに来て初の、ヒーロー完全敗北となりました。
ビルゴルディは装着変身タイプらしく、ヘルメットを外して、哄笑する帯刀龍三郎。
「ふふふふ、遺言を書いておけ、ジャンパーソン。ガンギブソンともども、今度こそ地獄へ送ってやる。貴様達にもう、明日はない。終わりだ、終わりだ、終わりだ!」
いい年したおっさんが悪の変身ヒーローと化して最強の敵になって立ちはだかるという、まさかすぎる展開。
スーツの赤金配色といい、中身が金持ちの社長な事といい、ビルゴルディのイメージモチーフは『アイアンマン』でしょうか?
くしくも今作の放映年(1993年)は、『アイアンマン』の初登場(1963年)から30周年にあたるのですが、まさかマーベル・コミックもスタン・リーも、かつてレオパルドンを生んだあの国で、そんなオマージュが捧げられていたとは夢にも思うまい。
いや、実際のところどうなのかは知りませんが。
今作自体が企画段階で『バットマン』を意識していたという話は耳に挟んだので、全く偶然とも思えない所ではあります。
今回は、途中で引用した台詞を借りるならば、まさに
「ジャンパーソンでもビルゴルディでもない。本当の怪物は、それを造った人間です」
というエピソードだったのですが……あっれー……もしかして、そういうテーマだったのかなぁ、今作。
そう見ると前回、細川兄弟が命あるロボットを「モンスター」と称したり、兄がジャンパーソンに叩きつけたヒーロー不要論も、また少し別の意味を持ってきたりも。
ゴジラvsビオランテ』の公開が1989年で、1990年代になると、環境問題なりその背景としての科学の発展への疑義、というのが様々な物語の中で大きなテーマとして扱われる事が多くなっていくわけですが、そう考えると、『ゴジラvsビオランテ』−『特警ウインスペクター』(レスキューポリスシリーズ)−『特捜ロボジャンパーソン』というのは、テーマ的に深く繋がっているのかもしれない……ジャンパーソンは、東映ヒーローと東宝怪獣のクロスする場所に居たのだ! とまで言うとまあ、与太話ではありますが(笑)
しかしここにきて、当初は問答無用かつ単純明快なヒーロー像で《レスキューポリス》シリーズとの脱皮・差別化を図られていた今作が、思ったよりも前シリーズを踏まえており、ジャンパーソンの狂った人間愛信仰を通して、むしろ、人間とは何か? をえぐり出す作風になってきたのは、非常に興味深い。
帯刀がMS化したのは、人間のままだとジャンパーソンがパニッシュできない作劇上の都合が主かとは思いますし、最終的に「悪」を捨てない人間と対峙したジャンパーソンの決断……という展開も見たかった気はしますが、これはこれで、面白い展開になって参りました、
さて後半戦、どうなっていきますやら。
なお筆者は『ゴジラvsビオランテ』を物凄い偏愛しているので、『ビオランテ』と絡めて何か語り出したら、話3分の1ぐらいで聞いて下さい(笑)