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『特捜ロボジャンパーソン』感想33

◆第39話「地獄の美人秘書」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
スーパーサイエンスネットワークに所属していそうなアズマ博士の研究により、遺伝子合成で誕生した人間の赤ん坊……その泣き声はなんと破壊音波となり、研究所を爆破し、巻き込まれた博士は死亡。炎上する研究所へ向かったジャンパーソンの目の前で、その赤ん坊はビルゴルディによってさらわれていく。
「これこそ悪魔からのプレゼントに違いない。となれば貰うにふさわしいのは、この俺しかあるまい」
この二人はやはり、日本全国の怪しげな研究所の動向を逐一監視しているのでしょうか(笑)
「あの赤ん坊からは……邪悪なものが感じられてならないんだ」
酷い偏見を口にするJPさん。
一方ビルゴルディはヘッドホンをつけると、赤ん坊を泣かせて街を破壊して回っていた(笑)
ところが駆けつけたジャンパーソンとガンギブソンの前で、突然赤ん坊は小学生ぐらいに成長。ビルゴルディをジャンパーソンと誤認して攻撃すると走り去って行く。
果たしてその子はいったい何者なのか……? いぶかしむ帯刀のもとへ届く、ビデオテープ。
悪玉から主人公サイドへのビデオメッセージはよくありましたが、悪玉の元へビデオが届くのは、新機軸。というかこれ、再生したらジャンパーソンの説教とか始まったら、物凄く嫌だ!
「このビデオがお手元に届いている頃には、私の生まれ変わりが誕生していると思います」
メッセージの送り主はなんと、帯刀の初代秘書・セーラ。
セーラは死を覚悟した早撃ちガンマン大作戦の最終フェイズの出撃前夜、帯刀に役立つ為の一つの秘策を実行していた。それは自分の遺伝子を、アズマ博士に預ける事。アズマ博士の研究が成功すれば、自分は超能力美少女として生まれ変わり、帯刀の戦力となる事だろう。はたして、アズマ博士の研究は成功し、セーラは生まれ変わりを果たしたのであった。
……て、この情報はもっと早く総裁に教えておくべきだと思うんですが(^^;
ビルゴルディが赤ん坊拾ったの、完全に偶然みたいですし、総裁好みのお茶目なドッキリのつもりだったのか。
一歩間違えると、JP基地に拾われてましたよ!
まあ、それはそれで内部からJP基地を破壊できたかもしれず、ピンポイントで策略が大成功する可能性もありましたが。……あれ? むしろ、総裁、余計な事した?(笑)
そこへあの少女が訪れ、帯刀は自分が大魔王を倒すべく、自らの体を魔王へと改造した事を説明。好物のキャンディーを少女――二代目セーラに手渡す。
本邦初公開、総裁のペロペロキャンディーは、机の引き出しに剥き出しに入っている事が判明。
魔王見習いは何故か、二代目セーラを正面からJPさんに紹介。JPさんはサーチしてみたら「人間」だったので説得を試み(「バイオノイド」とかだったら、瞬殺されていた)、組み合ったまま二人はいずこかへと移動する。そこで更に成長したセーラは、セーラだけにセーラー服姿の女子高生となるが、同時に、超能力がうまく発動しなくなってしまう。
どうやら肉体の成長とともに超能力が弱まっているらしく、このままでは恐らく普通の人間になるだろう、とセーラにしつこく迫るJPさん。
「セーラ、ビルゴルディはもう、人の心を捨て去った男。途方もない悪魔なんだぞ」
なんだろうこの、他人の女に言い寄っている感じ(笑)
あと、バイオボーグのカテゴライズがはっきりしませんが、帯刀=ビルゴルディは、「人の心を完全に捨て去った悪魔だからジャスティス執行してもOK☆」という前振りを微妙にしている気がします。
戦闘不能に陥るセーラだったが、そこにマヤ、シンディ、ビルゴルディが次々と現れ、身柄を回収。
マヤは成り行きで、どんどん強くなっていますが、いいのか(^^; 既にガンギブソンとか、一対一でなら勝てそう。また、シンディは対ロボット用兵器なのか、今回からスタンボウガンを使用。
帯刀コンツェルンでの調査により、二代目セーラの超能力が減退している事がハッキリするが、セーラは自分の体がどうなろうと総裁の為に力を尽くすと告げ、帯刀も超能力が残っている限り、セーラを利用し尽くそうとする。
「望み通り、たとえその体がどうなろうと、力を貸してやろうではないか」
「総裁……」
「セーラ」
総裁がセーラの手を取って唇を寄せるのが、大人の雰囲気で素敵。……まあ、セーラの見た目が女子高生なので、だいぶ変態な感じなのですが。
というか今回は何故ひたすら、昔の男(ちょっと駄目な人)の為に尽くそうとする女を「あんなやつ、捨てろよ! 君には似合わない!」という構図なのか(笑)
セーラは謎のヘッドギアをつけてジャンパーソンに再挑戦。ジャンパーソンは駆けつけたガンギブソンがセーラを撃とうとするのを制止し、ひたすら超能力攻撃を受け止める。やがて限界が訪れ、一回り成長して(完全に以前の姿になって)気絶するセーラ。ジャンパーソンはセーラのヘッドギアを破壊すると、彼女を静かな川岸へと運ぶ……。
しばらく後、成長時に自動的に身に纏う謎の白タイツから、お洒落服に着替えた姿で目を覚ますセーラ。
「その服、アールジーコが選んでくれたんだ」
問題は、誰が着替えさせたのかだと思います!
というか今回、かおるさんが冒頭の会話以降出てこないのですが、今頃、物凄い顔で、基地のあちこちに五寸釘を打ち込んでいるのではなかろうか。
警戒するセーラを安心させようと語りかけるラスボス。
「もう大丈夫だ。今度こそ本当に、普通の人間になったんだ。セーラ、今この一瞬から、君の本当の人生が始まるんだよ。さあ行け、行くんだ。もし一人で行くのが不安なら、俺も一緒に行く」
そもそも初代セーラは普通の人間だけど帯刀の為に働いていたわけで、善意を押し売るラスボス。
「なぜ、なぜそこまでして私の事を?」
「俺も生まれ変わったからだ。生まれ変わって、第二の人生を歩んでいるからだ」
なるほど、ラスボス的には、二代目セーラはあくまで初代セーラからは独立した存在であり、せっかく新たな生を得たのだから、初代の魂に縛られる事なく生きて欲しい、と。
ここは“内なる正義の声”に悩まされた経験のあるJPさんの自己投影がうまく繋がりました。
「昔の俺は、ただの破壊ロボットだった。不要になって、処分されそうになった。その時、俺は生きたいと思った。その願いが通じて、今の俺があるんだ。お陰で俺は、生きる喜びを知った。ロボットの俺でさえ知ったこの喜び、人間の君にわからない筈はない。さあ、踏み出すんだ。勇気を出して、さあ、セーラ」
生きる喜び フォージャスティ はまあさておいても、
全体としてはどうしても、ナンパにしか見えない(笑)
今頃、JP基地でかおるが(以下検閲)
「初代セーラの魂」視点で見ると、人の人生の喜びを外から勝手に判断するな的な押しつけがましさがあるのですが、「二代目セーラ」としては思う所があったのか、このロボット怖い、と思ったのか、歩き出すセーラ。だがそこへ魔王一味が姿を見せ、ビルゴルディは新たなヘッドギアをセーラへと投げつける。
「戦えセーラ、戦え」
強化ヘッドギアによって強引に超能力を引き出されたセーラは再び破壊音波を発し、ビルゴルディの指示のもと、ジャンパーソンとガンギブソンを激しく攻撃する。反撃をためらい、追い詰められていくJPとGG。しかしセーラもまた限界に達し、急速に老化と若返りを繰り返すのだった。もとよりその肉体は常人より急速に加齢しており、その寿命は短い。冷酷に、最後の最後までその力を自分の為に使い切れ、と迫るビルゴルディ。
「総裁……」
「セーラ、最後のパワーを振り絞れ、戦うんだ」
だが、セーラは最後のパワーを、ビルゴルディへと向ける。
「総裁、貴方は恐ろしい人でした。でも、夢を語る時の貴方は、子供のような無邪気さがあった。でも……でも、今は! 総裁……」
「寝言を言うな、この死に損ないが!」
「総裁、もう貴方は私の総裁ではない。悪の魔王よ!」
再攻撃を試みるセーラだったが一瞬早くマヤの光線銃がその体を貫き、ビルゴルディのデュアルレーザーがその体を吹き飛ばす。
ここでマヤが、ビルゴルディがセーラに攻撃を強要する時とセーラを撃つ時にちょっと悲しげな顔だったのは、良かった。
魔王一味は適当にJPとGGを撃ちまくると、撤退。この辺り、出入りの激しいシナリオになってしまった為に、むしろチャンスなビルゴルディの撤退理由が無かったり、全体的にアクションシーンが雑で残念(^^;
ジャンパーソンはセーラを抱き起こすが、その体からは命の灯火が消え去ろうとしていた――
「ジャンパーソン、私、生まれ変わったわね?」
「ああ、生まれ変わったとも」
ジャンパーソンの腕の中で、二代目セーラは絶命、その短い生涯を終えるのであった。しかし彼女は死んだのではない、確かに、自分の人生を生きたのだ……。
セーラさん割と好きだったので復活は嬉しかったのですが、さすがにレギュラー復活はできず、単発で終了。もうちょっと総裁とラブしてくれても良かったのですが、まあ、魔王と大魔王の間で千々に乱れるという、これまでの今作の女性キャラの中で、もっともヒロインらしい扱いを受けたので良しとすべきか(笑)
総体としては、見せたいポイントだけを優先しすぎてしまい、流れの雑さが目立ちました。
ただ、自己投影も含めて、JPさんが「生まれ変わったんだから、悪い事したら駄目だ」と、一方的に良い事しているつもりなのに対して(「二代目セーラ」だけを見れば、これは善行とは言えましょう)、なんだかんだで最後の最後までセーラは「“私の総裁”の為なら死んでも構わない」というニュアンスであり、そこの所で「JPさんの考える生きる喜び」と「セーラの魂の喜び」がズレているのが、渋い。
キーキャラクターの立ち位置を二重構造にする事で、単純な善良さをたった一つの正解にしなかったというのは、今作の曽田脚本の冴えている所です。
セーラからすると、無理に強要しないでも自分を信じてくれれば戦うのに、という所があって、そこが見えなくなっている帯刀はもはや“私の総裁”ではない、というのは私がセーラさん割と好きなので読み込みすぎかもしれませんが、JPさんのわからない「男と女の関係」を取り込んで面白い部分だったと思います。
また、自分の遺伝子から分身を培養してでも帯刀の戦力にしようというセーラの狂気は、つまりは「DEDICATE MYSELF TO TATEWAKI」であり「セーラ・フォー・帯刀」であり、ジャンパーソンの自己投影以上に、その存在は鏡面であったのかもしれず、だとすれば、ジャンパーソンは自分が本質的に何を否定しているのか、最後まで気付いていなかったのかもしれない。
シリーズの流れとしては、途中でも触れましたが、人間抹殺を一応のタブーにしている今作において「帯刀は救いようが無いから仕方がない」という布石を置いているように思えます。と見ると、帯刀のキャンディーが“最後の一つ”だったのは、最後の人間的部分、のメタファーだったのか。最終的に重要な布石の回だった、という事になるのかも。