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『アーヴァタール』(ポール・アンダースン)、読了


アザーズ>と呼ばれる謎の種族により作られた、時空を繋ぎ超遠距離の旅を可能とする巨大装置Tマシン。宇宙のそこここに残されたマシンの一つを発見した地球人類はそれを使ってポイボス星系の開拓を始め、更に別の知的種族との接触に成功する。だが、ベータ星系より帰還した筈の有人探査船が消息を絶ってしまう。その背後には、地球政府の反拡大派の陰謀が見え隠れしていた……。
Tマシンは、地球人類の及びもつかない極めて高度な種族<アザーズ>が残した巨大な装置であり、地球人の科学文明があるレベルまで発達した時に初めて発見される位置に設置されていたというもの。それは縮潰星なみの密度を持ち超高速で回転する長さ1000キロの円筒であり、周辺を取り囲む9つの標識をあるパターンで通った上で通過する事により、宇宙のある座標へと一瞬で移動する事を可能にする。
地球人類が発見したTマシンに、<アザーズ>の残したメッセージにより指定されたパターンで飛び込んで跳躍した先にあったのは、もう一つのTマシンと、人類の移住に適した惑星。こうして地球人類はその惑星を開拓するとともに、他の跳躍パターンを探り出す為、多数の無人機を数多くのパターンで送り込む事になる……。
と、この極めて大がかりなガジェットを中心に展開する長編。
Tマシンは単純に言えば、極めて強力なワープ装置、ただし取り扱い説明書が1ページ目しかない、というもの。
地球人類は説明書の自力作成を目指しながら、<アザーズ>という存在が何者かを追い求めるが、その一方で、<アザーズ>という強大すぎる存在の発見により地球上は一度は無政府状態に近い大混乱に陥り、ある程度の落ち着きを取り戻した今も、政治体制の脆弱さは様々な影を落としている……とシンプルな宇宙冒険ロマンにはならず、政治的側面も物語の重要な要素となっています。
政治、宗教、歴史、科学、神話、その他もろもろの要素、更に陰謀劇、活劇、探検ロマン、とと詰め込めるだけのものを詰め込んだといった感じで、正直、ちょっと詰め込みすぎ。後半に行くにつれてスケールが大きくなっていくのは同作者の傑作『タウ・ゼロ』を思い起こさせる所もありますが、『タウ・ゼロ』に比べるとプロットが複雑な分、わかりやすい爽快さにはやや欠けます。
とはいえ、陰謀ベースの物語もテンポ良く展開できるのは、スペース・オペラもこなすアンダースンらしい筆の捌き。
後は主人公を格好良く思えるかどうかで少し印象が変わりそうなのですが、個人的に今ひとつだったので、その分、印象にマイナスが入っているかとは思います。言動と行動にもやもやしていたのが、終盤にたとえを思いついてスッキリしたのですが……戦国大名みたいな男というか。
後半そこそこ面白かったですが、全体としてはいまいち。