◆第5話「二重犯人の謎」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
思った通りではあるけれど、脚本変わったら、また雰囲気がけっこう変わりました(^^;
手がかり一つ残さない連続宝石強盗が発生し、芝刑事は、5年前に捕まえた凄腕の金庫破り・錠無しの松を思い出す。現場の痕跡から組織的な犯行に見えたが、自分の仕事に美学を持つ松なら、犯行は1人で行う筈。果たして犯人は誰なのか……それは、バドーの怪ロボット、七つ道具のナナツマン(見た目は黄色いドライヤー。モチーフはどうやら、懐中電灯か)の仕業であった。
ジャージーな音楽とともにコミカルに忍び込むナナツマンは、ラジオのノイズに苦しんで思いっきり見つかってしまい、警備員を抹殺して逃亡。
「昔の金庫破りは人殺しはしなかった。ひでぇ世の中になったもんだ」
と、芝刑事の変な昔気質が素敵。
金庫から盗まれたのは宝石だけであり、現金には手を付けられていないのも錠無しの松の手口に酷似。松の関与を疑う芝だが、50万ボルトの高圧電流が金庫破りに使われている事からKはロボットの仕業を疑い、赤外線サーチで現場に奇妙な足跡を発見する。しかし……
「K、これは人間の仕業だよ。落ちていた見取り図から、わずかだ指紋が検出された」
と、ロボットか人間か、残された情報で順々にひっくり返していく、というのは面白い。
新條は松を追い、Kは指紋の分析をしたがるが、すげなく芝に断られる(笑) Kがやっても鑑識がやっても指紋の分析に代わりはないのですが、どうしても、人間の手を通したいらしい芝刑事。
「はははっ。残念だった。ロボットじゃなくて」
「待って下さい。人間の仕業と決めてかかるのは危険ですよ。事件の本質を見失う事になります」
「何だと? てめえこの儂に意見しようってのか」
「いや、忠告ですよ」
K、逆撫で(笑)
「だって、あまりにも非科学的なやり方だと思うんです」
「てやんでいべらぼうめ。どうせこちとらポンコツよ。だからてめえみたいな鉄屑野郎と組まされてるんじゃねえか」
ここのやり取りは実に秀逸で、やはり今作の肝は芝刑事にあります。
松と接触した新條は、松が確固たるアリバイを持っている事を知る。そして松は、刑務所内部で作業中の事故で右手首を失っていた。自分で仕事が出来なくなった松が仲間を集めたのか……しかし松にはアリバイがある……ところが、現場の見取り図に残っていた指紋が松のものだと判明する。
一方、現場で見つけたタイヤの跡を追っていたKはナナツマンと遭遇し戦闘になるが、逃げられてしまう。やはり犯人はロボットなのか……Kには説得の材料として、録画機能をつけてあげてほしい(笑)
まあ、情報公開を求められた時に問題になる事を懸念してか、約20年後のソリッドスーツ(『特救指令ソルブレイン』)ですら、付かないけど。
事件の真相は、バドーと契約した松が、ナナツマンに金庫破りをさせているというものだった。そしてその本命は、ツタン王国の秘宝ブルームーンの輝く王冠。
見取り図の指紋の件から松を逮捕しようと2人の刑事が家へと向かい、松の娘が居るのが、いい所。
「あれほど約束したのに、もう真面目になるって」
だが父は逃亡し、一緒に居たチンピラを確保しようとした新條は、ナナツマンによって気絶させられてしまう。逃げ出した松の前に先回りした芝刑事にもナナツマンの飛び道具が迫り、その危機を救うKが、BGMも合わさって格好いい。
「このロボット野郎、逃げちまったじゃねえか。鉄屑野郎め!」
直後のやり取りがこれなのが素晴らしい(笑)
松とチンピラは車で逃走し、ナナツマンを追って再び全裸になったKも、目潰しを喰らって逃げられてしまう。だが、松の狙いが判明し、秘宝の展示される東都博物館で張り込む事にする3人。そこへやってきた地獄耳は、今回も役に立たず。
「そこらのロボット野郎と一緒にされてたまるかい」
「お言葉ですが、人間だけと決めて警戒していると、とんでもない事になりますよ」
「ホシをとっ捕まえりゃいいんだろ、とっ捕まえりゃ」
その頃、松と下っ端もロボットに愚痴っていた(笑)
「人殺しした上に、見取り図まで落としてくるなんて、全くドジなロボットだぜ」
だがそれは、ナナツマンの周到な計画の一部だった。敢えて松達を警察にマークさせた上で、美術館に忍び込んだ2人は警察に逮捕される……そして2人が故意に留置場に居る間に、ナナツマンが王冠を盗み出せば、アリバイは完璧。この作戦に則り、2人は見事に警察に逮捕され、事件は片付いたと機嫌良くおうちで一杯やろうとする芝と新條は、まだロボットが残っている、と主張するKを邪険に追い払う。
落ち込むKを気遣う長女は、当然のように新條さんとカップルになるのかと思ったら、予想外にも先にKとフラグ立てたぞ!(笑)
なんとなく海岸でマザーを呼んで黄昏れるK。
「マザー、いつも芝刑事を怒らせてばかりいるんだ。僕はロボットなので、人間とうまくやっていけないのだろうか」
無言でなんか指さすマザー。
「……んー、自分の思い通りの道を進め、マザーはそう言いたかったんだ」
あ、勝手に都合よく解釈した(笑)
「そうだ、僕は僕なりの、捜査活動をすればいいんだ」
改めて美術館に向かうKだが、時既に遅く、気球によって上空から美術館に侵入したナナツマンは、溶解液とロープを用いて、警報センサーに引っかかる事なく王冠を入手。気球を追ったKは、パトカーと気球で変な空中戦を演じ、最終的に気球に体当たりして地上戦へと移行。Kの回路にダメージを与えるナナツマンだったが、それによって生じたノイズで自らもダメージを受け、速射機関銃の藻屑に。
かくて秘宝は取り戻され……る寸前、Kに襲いかかる新たなバドー怪ロボット・コワシマン! と、思わぬ形でつづく。
ロボット刑事+人間の刑事の善玉側に対し、ロボットの盗人+人間の盗人の悪玉側、という二つのトリオを対比させ、人間のターンとロボットのターンがくるくる入れ替わるという構成が秀逸。
ややコミカルな要素が増えたものの、雰囲気は1−2話に近く、ロボットと一般社会の関係も少し巻き戻りました(笑) 芝刑事とKのやり取りも全編面白く、改めて今作の大きなポイントです。現状だと、芝刑事があまりに頭の固い頑固オヤジすぎるので、芝刑事の捜査方法が解決に繋がる展開も見たい所ですが、Kのヒーロー性との兼ね合いで、なかなか難しいのかどうか。
今回でいうと、すっと松の名前が出てくる辺りで、ベテラン刑事らしい存在感を見せてはいるのですが。今後どう転ぶかわかりませんが、芝刑事を如何にただの困ったおっさんにしないかという案配が、今作のミソだと思うので。
◆第6話「恐怖の死刑マシン!!」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
コワシマンに頭を叩かれ動きの鈍ったKは、鎖分銅とハンマーの攻撃を受け、固い装甲に大苦戦。最後はストンピングの連打を受け、6話にして完敗を喫してしまう。
壊しマンはKを放置すると王冠を奪って去って行き、バドーはプロフェッショナルとして、依頼以外の余計な事をしないという点で、非常に徹底しています。
孤独な戦いに敗れたKは、マザーの緊急補給を受ける事に。マザーを呼ぶ為には海岸まで行かないと行けないようですが、1話の戦闘シーンでも海上に浮かんでいたし、マザーには海の上縛りでもあるのか。まあ、登場が蜃気楼っぽいという、演出上の合わせというのが一番でしょうが。役割が明確になるまでは、Kの妄想で片付けられたけど、補給装置だと判明した事で、ますます謎の深まるマザー。……まあ、本当は日光浴していれば回復するだけで、“マザーに補給を受けている”事自体が、Kの妄想、という可能性も捨てきれませんが。
「儂もどうやら焼きが回ったような……歳かな」
王冠が盗まれた事を知り、いたく落ち込む芝刑事。そこへやってきた地獄耳は憎まれ口を叩くが、警備システムに捕まる(笑)
芝と新條は松を取り調べるが松は王冠盗難との関わりを否定。そして芝と下っ端を乗せた護送車が、壊しマンの襲撃を受ける。けっこう怖い物知らずに壊しマンに立ち向かう警官達。3・4話が入った事で、この世界における一般的な怪ロボットへの認識がぶれていますが、もしかすると、ロボットなどとは夢にも思わず覆面レスラーの一種ぐらいに思っているのかもしれません(^^;
身軽に飛び回る新條は脱走した松の前に凄いジャンプで立ちはだかって手錠をかけるが、それも壊しマンに砕かれた末に、遂にハンマーで叩かれて気を失ってしまう。
「バドーは契約を大事にする。あんた達は依頼者だ」
かつてここまで、アフターケアを大切にする悪の組織があっただろうか。
どんなジャンルでも、20年30年遡ると、一周回って新しく見える物に出くわしたりするわけですが、『特捜戦隊デカレンジャー』は正しく、〔東映刑事ヒーローの集大成+円谷テイスト+戦隊フォーマット〕だったのだなぁ(笑)
バドーボスから契約金を要求される松と下っ端だったが金が惜しくなり、行儀良く石垣に腰掛けて待機していた壊しマンを蹴落として逃走。バドー、3話ぶり2回目の裏切られですが、どうもバドーは人間が運営しているというよりも、もっと悪魔的なテイストが感じられるので、前金を貰わないのは、実はバドーにとってはどちらに転んでもいいからなのかもしれない。
松と下っ端を追い詰める壊しマンの前に立ちはだかるKだが、必殺の速射機関銃が通じず、逃走。その間にホテルに隠れ潜んだ2人だったがそこにもバドーの刺客が迫り、結局、2人は保護を求めて警察に出頭する。
その頃、王冠の盗難と新條の怪我に意気消沈した芝は、筆で辞表を書いていた。
「どうやら儂の時代は終わったように思うんだ。科学の前には、どうにもならん」
「そんな事ありませんよー」
そこへ朗らかにやってくるK。
「芝刑事は立派な刑事です。辞めてはいけませんよ」
お ま え (笑)
「馬鹿野郎! いやしくも刑事たるものが事件をほっぽらかしてどこ行ってたんだ。だからおまえは鉄屑野郎だっていうんだ」
KはKで捜査活動を真面目にしていたのだけど、芝刑事の目から見ると確かに、連絡も無しに行方不明になっていたように見える、のがポイント(笑) Kには色々、肝心な機能が足りません。
Kから、松が本庁に出頭してきた事を聞いた芝刑事はいつもの調子を取り戻し、取調室へ。王冠の隠し場所については知らぬ存ぜぬを通す松だったが、その夜、壊しマンが留置場の壁を突き破って侵入し、下っ端のチンピラを殺害。芝刑事が珍しいアクションで壊しマンから松を助け、立ち向かったKは怖しマンの弱点に気付く。
改めて、松を囮に廃工場で壊しマンと戦うKは、ダミーの人形を壊しマンに捕まえさせる。
「コワシマン! お前の負けだ。――今です!」
Kの指示で新條が何か電気のスイッチを入れると、ダミー人形ごとド派手に吹っ飛ぶコワシマン。
あまりに唐突で、面白展開に(笑)
「不死身のコワシマンにも、弱点はあったわけだ」
「でも、恐ろしいやつでした」
……え、何が、弱点だったのですか。
単に至近距離から大爆発させただけにしか見えなかったのですが(^^; この前のシーンで、留置場の照明から火花が散ってコワシマンが苦しんだ姿にKが何かを閃くのですが、それが何を意図してダミー作戦に繋がったのか、さっぱりわかりませんでした。前回のナナツマンも電子回路のノイズで苦しんでいたので、Kが苦戦するが相手の弱点を突いて知恵と勇気で勝利するパターン……が企図されていたのかもしれませんが、両方とも、正直よくわかりませんでした(^^;
バドーの刺客から逃れた松は、先祖代々の墓に中に隠していた王冠を、芝刑事へと返却。
「死んでも一緒にと思ってたんです……」
「どうして急に返す気になったんだ? 命より大事なものを」
「芝の旦那に負けたんですよ。このあっしを、身を投げ出してかばってくださった。悪党のあっしをね」
「てやんでぇ」
ベテラン刑事が犯人の心を揺り動かす、と、ようやくらしい形でポイントを得る芝刑事。
バドーが人の悪意につけ込む悪魔的存在とするならば、その悪意を正すのは人の心、という対比になっているとも見て取れます。
「良かったですね、王冠が無事に戻って」
「なんだおまえ、礼の一つも言えっていうのか。儂はロボットに下げる頭なぞ持っておらんぞ」
「僕はそんなつもりで言ったんじゃありませんよ〜」
「おいK……照れてんだよ」
芝は懐に収めていた辞表をこっそり破り捨て、ちょっぴり雰囲気の良くなった3人は、和やかに帰路に着くのであった……でオチ。
んー……なんか面白いなぁ。時制などはやっぱり、如何にも70年代的にすっ飛びまくるのですが、その上で比較的辻褄はあっているし、細かいディテールを描く所に力を入れた上で、意外ととダラダラしたシーンがなく内容が詰まっており、少なくともこの立ち上がり、伊上勝と上原正三は、2話セットの脚本に、力が入っている様子が窺えます。一方で3・4話が凄く“普通”だったのは、オーダーに対して書き手の意識のズレがあったのか(^^;
次回、「頭上の恐怖(づじょうのきょうふ)」というルビに、時代を感じる(笑)