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『SF九つの犯罪』、読了

ミステリSFアンソロジー
収録9編中、「とどめの一撃」(ジャック・ヴァンス)、「マウスピース」(エドワード・ウェレン)、「予定犯罪者」(ウィリアム・テン)、が特に面白かった。
「とどめの一撃」は、閉鎖空間のステーション内で発生した殺人事件の犯人を捜すという、典型的な筋立て。様々な異星人の特性から論理的に辿り着いた犯人像は……と、毒のある笑いの効いたオチが秀逸。
「マウスピース」は、人格を持ったプログラムと大学生が挑む、暗号もの。ギャングの隠し財産に迫るミステリと、暴走するコンピュータに関わるサスペンスが同時進行し、際だったアイデアなどはないものの、合わせ技で読ませる1作でした。
一番面白かったのは、「予定犯罪者」。“これから犯罪を行いたいと思う者”が、自らそれを申告する事で、減刑の上で先に刑罰を受けられる未来。しかし、犯罪者に科される流刑惑星での勤労は極めて過酷で、ほとんどの者は途中で死亡するか、刑罰の先払いを断念し、予定していた犯罪を諦める。しかし今、奇跡的に2人の囚人が、7年間の懲役を生き延び、地球に帰還した。彼等が手にしたのは、最高刑である殺人罪の先払いによる、“人を殺す権利”。果たして2人は、誰を殺そうとしているのか――。
よくあるディストピアものかと思わせて、その逆を突いたともいえる、タイトルの妙。
殺人の権利を得た主人公の周囲に起こる出来事、というこの物語そのものも面白いですが、この設定から、また違った物語が幾つも作れそうだなぁ、という設定の広がりも素晴らしい。今アンソロジーの収穫でした。