今更気付いたけど、オールドとテラーは同属性なので、古代の神官風というイメージが共通しているのか。
◆第46話「Kが求めたもの/最後の晩餐」◆ (監督:諸田敏 脚本:三条陸)
園咲来人は5歳の時に死亡し、今居るフィリップは、地球意志によって形成された、データの塊にしか過ぎなかった。
「僕は物じゃない!! 翔太郎! 変身だ」
何とか翔太郎が変身してエクストリーム化するダブルだが、恐怖による支配を物理的に具現化するテラーの力により、当て身一発で派手に吹き飛び、変身解除。
「君はもう終わりだ。一生、恐怖の中で生きる」
照井は怪獣にぺっと吐き出され重傷、翔太郎は再起不能の廃人、フィリップは園咲家へ連れ去られ、かつてない危機に陥る仮面ライダー。
園咲家ではフィリップが目を覚ますと、お父さんの手料理で夕食の席が設けられていた。そしてそこには、琉兵衛からの招待状を受け取った、冴子とシュラウドの姿が。
(これが……家族の、食卓)
園咲家の象徴として、頻繁に登場した食事シーン。徐々にその食卓に座る人々が減っていく姿を描き、最後の最後でそこにまた家族が集う、というのは良い構成と絵でした。
だが、その食卓は……黒ずくめで顔を隠した母、敵意全開の長女、2人の態度など気にせず楽しそうに家族の思い出を語り出す琉兵衛……重い、空気が重い! 若い頃の母さんとダンスをした思い出をいきなり語り出す父とか、一般家庭でもハードル高いのに、目覚めたばかりのフィリップに、人生がベリーハード!!
「これを機に、争いをやめるべきだ!」
だが、自分自身のよすがを「家族」に求めるフィリップは、そんな暗黒園咲家にも和解を願う。しかしそれは冴子さんの胸のエンジンにガソリンをガロン単位で注ぎ込み、ナスカV3とクレイドールが戦闘開始。シュラウドも引き留めるフィリップに
「おまえの家族は、もう園咲ではない、左翔太郎よ。忘れないで。切り札は――左翔太郎」
と言い残してその場を去ってしまう。
だが、その混乱に乗じて、屋敷に忍び込んだ轟響子がイービルテールを盗み出していた(おぃ)
ゲストキャラがまさの潜入任務。亜樹子の「行動力の人」という台詞で強引に理由を付けていますが、この人、博物館の学芸員というのは表の顔で、実は博物館お抱えの女怪盗では?! でりんじゃー。
ナスカV3はクレイドールに完全敗北し、X土偶に踏まれて逃走。
最後の晩餐を終えたフィリップは翔太郎に電話をする事を若菜に許され、自分が地球の御子たる若菜の生け贄になって消滅する事を告げる。
「でも忘れないでくれ相棒。僕は消えない。君の心に……悪魔と相乗りする勇気が、ある限り」
園咲琉兵衛のガイアインパクト――それは、《泉》と連結した若菜に地球の記憶の全てを流し込み、フィリップをその制御プログラムとして組み込む事。風都におけるガイアメモリ流通は、地球の記憶の一部と融合する事でドーパント化した人間を実験台とした、制御プログラムの為のデータ集めであった。
そして今、若菜は地球の御子――生きたガイアメモリ製造器となろうとしていた。
「貴方はそれでいいんですか? 僕が、消えても」
「おまえは一度死んだ。もはや、救えない」
「僕は貴方を救いたい………………父さん」
ここはただの情や綺麗事ではなく、今作のテーマとして「罪と罰」が積み重ねられてきたからこそ、「許しと救い」というのが大きな意味を持ち、良い台詞になりました。
「二度目の、お別れだ。さらばだ来人」
だが琉兵衛はもはや足を止めず、それでもフィリップの肩を抱き、そして《泉》へとその体を突き落とす。フィリップを呑み込み、《泉》から迸る、地球の記憶――!
「エクストリーーーーーム!!」
《泉》直上の部屋に控えていた若菜もクレイドールエクストリーム化し、神の器たるその身に、地球の記憶を宿していく。だがそこへ、亜樹子に肩を借りながらも乗り込んで来る翔太郎。ほんの僅かな物音にすら怯えて、恐怖に身動き取れなくなっていた翔太郎をここまで辿り着かせたもの、それは、響子が持ち出してきたイービル・テール。
それは、発掘に用いる刷毛だった。
「返せ! 私の家族だ……!」
園咲一家の名前がそれぞれ書かれた、お守りの刷毛を目に、初めて動揺を見せる琉兵衛。
「あんたは自分の道を誤り、家族を犠牲にし続けてきた。でも、そうなっていく自分が恐ろしかった。だから幸せだった頃の象徴であるこの刷毛を、家族自身とすり替え、自分の気持ちを誤魔化したきた。違うか?」
「貴方にも、怖い物があったんだ」
「馬鹿を言うな。そんな事は無い」
恐怖の帝王が内に秘めていた恐怖の揺らぎ。それは、己の計画の為に全てを踏みにじってきた筈の男が、心の底で守ろうとしていたもの――家族。
他人から見たらなんてことの無い物が、冷酷非情な悪魔に人間の部分を取り戻させる、というのはまあ悪くない流れなのですが、実は、“園咲琉兵衛が如何にして全てを犠牲にしてガイアインパクト計画を推進するに至ったか”という背景が劇中で描かれていないので、やや、パンチ不足になりました。
地球意志との接触ポイント《泉》を見つけた事、来人が死んだ事、ガイアインパクトが人類という種を永続的に存在させる為の計画である事、という起こった出来事と計画の概要は説明されているのですが、「どうしてガイアインパクトを計画するに至ったか?」という部分が描かれていないので、翔太郎の台詞を借りるなら何故「道を誤った」のかがわからず、
家族を犠牲にしてでも完遂したいガイアインパクト と 幸せだった頃の家族の象徴である刷毛
の意味のバランスが劇中で取れませんでした。
この後の話の都合があったのかもしれませんが、ここで刷毛をキーに使うなら、琉兵衛の理由が先に置かれないといけませんでした。
もしかしたら45話の、人類種を永遠に存在させたい、というガイアインパクトの説明でそれを済ませたつもりだったのかもしれませんが、今作における「家族」の重さを考えると、あのシーンだけでは弱くてやはりバランスが悪い。
琉兵衛はテラーへ変身し、その姿に震える翔太郎だが、フィリップの言葉を思い出す
――でも忘れないでくれ相棒。僕は消えない。君の心に……悪魔と相乗りする勇気が、ある限り――
「そうだった……あいつが俺を相棒と呼ぶ限り…………俺は折れない。約束だった」
(※ビースト回後編のコメントでいただいた「降りない」の方が意味が繋がって格好いいけど、今回聞く限り、「折れない」か)
「さあ来い……相棒!!」
翔太郎はドライバーにジョーカーメモリを突き刺し、フィリップに呼びかける。そして……その呼びかけに応えて、サイクロンメモリが転送。若菜に制御プログラムとして組み込まれようとしていたフィリップの意識がベルトへと移動し、2人は仮面ライダーダブルへと変身する。シュラウドの言い残した「切り札は左翔太郎」とは、ダブルの変身システムを利用したこの裏技の事だったのだ。
「街を泣かせてきた諸悪の根源、園咲琉兵衛! 「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
ダブルとテラーは外へ転がり出し、怪獣を放つテラーだが、そこに劇場版で出番のカットされたリボルキャリーが駆けつけ、中からすっかり存在を忘れていたアクセルタンクが出撃。
「俺が操り人形? 上等だ! それで悪を砕けるなら、人形でもなんでも構わん!!」
照井、振り切りすぎだ(笑)
タンクを撃破されたアクセルバイクは飛行メカを換装し、怪獣と空中戦を展開すると、更に上半身だけ人間形態に変形するという超絶アクロバットを披露。上半身・人間、下半身・飛行メカ、という、ガンダムMAモードみたいな姿に。
「絶望がおまえの、ゴールだぁ!!」
アクセルスカイハイは、加速忍法・火の鳥を発動して、怪獣を撃破。まさかすぎる合体変形でしたが、照井の脳の振り切れぶりが凄すぎます。
映像的には、タンクだとフルCGの撃ち合いになってしまうので、アクセル上半身のアップ(実物)を挟みつつの空中戦から、アクセルバードアタックというのは、勢いと盛り上がりがあって良かったです。
インストール中の不正な処理でエラーを起こして藻掻き苦しんでいたX土偶から、エクストリームメモリがフィリップの肉体データを回収し、制御プログラムを完全に失ったX土偶は遂に大爆発。ダブルはエクストリーム化し、フィリップは完全に自分の姿を取り戻すと、再び一心同体となった2人で1人の仮面ライダーは、テラーとの決戦に挑む。
相棒との約束で絶対の恐怖を乗り越えた翔太郎は、テラーの打撃を無効化し、激しい殴り合い。
ダブルの魅力とちょっと違う、というのはあったかと思うのですが、どうも演出陣がプリズム剣と盾を気に入ってない節がありましたが、この決戦は素手ごろで、非常に良かったです。
落ち着いて考えると、若いチンピラが中年男性を一方的に殴りつけているのですが、深く考えない方向で。……テラーの打撃が多少効いていればまだ良かったのですが、完全無効化されているので、妙に絵面が酷い(笑)
完全にテラーを上回ったダブルの放ったダブルエクストリームにより遂にテラーはメモリブレイクされ、X土偶の爆発と、怪獣の落下により、炎上し崩壊していく園咲家と遺跡。
「やっと……やっと悪魔のメモリから、みんなを引き離せたのに」
屋敷に近づこうとするフィリップを翔太郎は止め、燃え盛る屋敷の中へ入った琉兵衛は、そこで緑色の光に包まれた若菜の姿を目にする。
「若菜! 若菜はまだ……そうか、今、地球の未来は、確かに、女王に託されたのだ! ははははははははは! 私の人生に、後悔はない。踊ろう、母さん、あの日のように。ははははははは、はははははははは……」
琉兵衛は崩れ落ちていく屋敷の中で笑顔でダンスのステップを踏み、その姿は炎の中に消えていく……。
お父さん、遂にリタイア。
見事な高笑いと深みと貫禄、寺田農の演技が素晴らしく、いい悪役でした。最終的に反省しないまま死んだのは少し気になりますが、琉兵衛の背景、そして贖罪あるいは救済は、残りの物語で描かれるのかどうか。最後のダンスシーンはとても良かったです。
かくて園咲琉兵衛は斃れ、フィリップは事務所へと帰還。しかし……
(地球の記憶を巡る一つの家族の愛憎劇は、幕を閉じたかに思えた。だが、事件はまだ終わっていなかった。若菜姫が焼け跡から見つからなかったのだ)
財団Xの加頭が若菜を抱きかかえ、ミュージアムの地下施設を静かに歩んでいた――。
さすがに死ななかった?けど、ボスキャラ撃破のあおりを食って大爆発した若菜姫が割と可哀想(笑) フィリップと同じ状態(データ人間)になっている可能性もありそうですが、琉兵衛の言葉を聞いて急に豹変した理由なども明かされていませんし、フィリップにとって残された若菜の救済が、クライマックスの鍵となりそう。
加頭は琉兵衛と並行したボスキャラぐらいかと思っていましたが、一躍、ラスボス候補に。ちゃっかり生き残っている冴子さんも加え、物語の結末がどうなるのか、楽しみです。