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『侍戦隊シンケンジャー』感想22

◆第三十五幕「十一折神全合体」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
かつて流ノ介が親友・新太郎と企画した若手歌舞伎会の公演が近づき、歌舞伎に打ち込んでいた過去を思い出す流ノ介。
(すまん……)
流ノ介が侍の招集を受けて歌舞伎界から姿を消した事で企画が中止になりかねなかった事から、流ノ介はその場へ顔を出す事ができず、遠くから楽屋へ向けて頭を下げる。
「恨まれて当然だな……」
形になった自分の夢を前に、置き捨ててきた物を今更ながらに改めて実感して沈む流ノ介は、ベンチや自転車などを次々と平らげる大食いアヤカシら逃げ遅れた人を助ける際に、取り落とした書道フォンを食べられてしまう。
駆けつけた5人の攻撃でアヤカシは一時撤退するが、変身できなくなってしまう流ノ介。皆が書道フォンを取り返す算段で盛り上がっている中、
「流ノ介……どうかした?」
何やら暗い様子の流ノ介に、天使センサー、超反応(笑)
やはり、姐さんは姐さんのままでした。
その頃、川で焚き火とかしていたぼんくら傭兵コンビの元を訪れる雇い主。
「十臓さん、200年のご無沙汰。どうでしたか外道は? その器、多少満たされておればよろしいのござりますが」
「折角だが……底が、抜けたらしくてな」
十臓がアクマロを知っているらしいという言動がありましたが、十臓に裏正を渡したのはアクマロだと判明。
「この裏正で外道を見せたおまえが、次は何を見せる」
「さぁ……何が見えまするやら」
アクマロは修理の為に折れた裏正と太夫の三味線を預かり、ぼんくら傭兵コンビは改めてアクマロの指示で動く事に。
前半、悪側のパンチ不足があった今作ですが、十臓が面白くなってくる、太夫の退社、アクマロと十臓・太夫が繋がる、と単純に組織化されない状態でそれぞれの思惑で動いている、というのが良い感じに転がり出しました。
演目が巧くいかずに悩む新太郎の稽古をこっそり見つめる流ノ介@現在役立たず。
「流ノ介さんが居てくれれば……」
「あいつの事は言うな。いねぇもんはいねぇんだ! ちっ、あの野郎……あいつは俺たちを……いや、歌舞伎を裏切ったんだ!」
舞台からカメラを戻すと、既に消えている流ノ介の姿。
屋敷に戻るも、ナイーブになって千明にあたる流ノ介は屋敷を出て思い悩むが……翌日、大食いアヤカシが再び出現。
「流さん、まだ帰ってきとらへん」
「……行くぞ。俺たちが踏み込む事じゃない。流ノ介なら、自分で決着をつける筈だ」
「だね」
「それまでに取り戻そうぜ、あいつの書道フォン」
青の代わりに金が入る変則5人並びで、アヤカシの前に立つシンケンジャー。流ノ介の書道フォンに電話をかけるという奇策により、書道フォンがアヤカシの右腕の中に引っかかっている事を突き止めて切り落とそうとするが、それを邪魔する傭兵コンビ。十臓は前々回と同じく青竜刀タイプの剣、太夫はアクマロから受け取ったアーミーナイフを振るい、アヤカシに食事をさせる為に足止めをする。
その頃、公演を間近に控える舞台では、新太郎が演技の壁にぶつかり倒れ込んでいた。
「なんで……なんでできねえんだよ!」
そこに、衣装をまとった翁面の男が現れ、無言で舞い始める。
「これは……」
その舞を見る内にいつしか新太郎もイメージの中で演目を舞い始め、かなりの尺を取って、イメージの中で2人で演じられる三番叟。互いの呼吸が重なり、新太郎と翁面の男は見事にそれを舞い終える。
「……できた」
壁を乗り越えた新太郎の表情が、役者の中ですとんと何かが落ちた瞬間、が見事に表現されていて非常に秀逸。
翁面の男は無言で首だけを新太郎に向け、離れた距離で無言で見つめ合う2人……この映像の距離感がまた絶妙。翁面の男は舞台袖に立ち去ろうとするが、
「……流ノ介」
という新太郎の呼びかけに、一瞬、足を止める。
「いつか……戻ってこい」
新太郎は男の背にそっと呼びかけ、男は無言のまま舞台袖に消えていくのであった。
流ノ介と新太郎が、歌舞伎を通じて無言の会話をする、という実にいいシーン。
以前の源太ストーキング回で、流ノ介が肉体の鍛錬とモヂカラの修行の他に、自室内とはいえ歌舞伎の稽古も欠かさず行っている事が描かれているので流ノ介の踊りに説得力が生じ、そして新太郎はその演技を見る事で、何よりも雄弁に「流ノ介が歌舞伎を裏切ったわけではない」事を確信する。
ご都合で新太郎も並んで演じさせてしまっても良さそうな所を、あくまで2人の共演はイメージの中に留め、“本当の共演はいつか「未来」の為に取っておく”というのも、美しい。
仮面劇の要素を持つ戦隊の中で、古典の仮面舞踏を通じて心の繋がりを描く、と非常に綺麗に収まりました。
また、私事(私情)と使命(任務)の二律背反、というのはヒーロー物の一つの命題であり、特に今作は構造上、私を捨てる事を重視しているのですが、書道フォンを失って流ノ介を思い切って役立たずにする事で、他の事を優先して構わない状況を作り、これも思い切って歌舞伎シーンに尺を取りました。
前半ややテンポが悪い感じがあったのですが、このシーンに全てが集約されるという尺のバランスも綺麗な着地。
一方、赤がスーパー化するも5人は十臓と太夫の壁を突破できず、アヤカシは満腹に。途端、十臓と太夫はクロスラッシュでアヤカシを斬殺し、スーパー赤は何とか書道フォンを回収するも、アヤカシは巨大化してしまう。そして満腹状態での二の目になる事で劇的な強化を遂げる事こそが、大食いアヤカシの真価であった。
なお冒頭でアクマロが「人の世に焦熱地獄を作る」と言っているのですが、両腕に生じた盾が凄く強い、以外の特性はよくわかりませんでした(^^; 一応、盾からビームを出したので、それで市街地を灼き尽くす予定だったのかもしれませんが、そこまで描写されず。見せる物の本命が控えていた都合かとは思いますが、少々、噛み合いませんでした。
「殿ぉぉぉ! お待たせ致しましたぁ! 池波流ノ介、只今推参!!」
そこに、伝えるべき事を友に伝えた流ノ介がハイテンションで復活し、回収された書道フォンで変身。6人揃ったシンケンジャーは大海真剣王でアヤカシに立ち向かうが、その攻撃はアヤカシの巨大な盾に全て防がれてしまう。
「殿! 例のディスクを使いましょう!」
陽気なア○ちゃんラーメンでも食べてしまったのか、テンション高く、源太が考案していた全合体を強行しようとする流ノ介。
「殿ぉ! 例のディスクを! 行けますって! 早く奴を!」
「わかった。やるから落ち着け。どうせいつかは使うんだしな」
構って欲しくて跳ね回る犬のような流ノ介の勢いとテンションに面倒くさくなった殿、全・侍合体ディスクをシンケン丸に装着。
「そうです、こういうのは勢いです!!」
流ノ介、勝手に回す。
「全・侍合体!」
……ここでとうとう、今作におけるメカギミックの扱いが言明されました。
すなわち、「こういうのは勢い」(笑)
全・侍合体ディスクの発動により全折神が集結し、光線を浴びせてアヤカシをひるませた隙に、合体シークエンス開始。…………えー、凄すぎて、一時停止しながら見ても複雑怪奇だったのですが、なんとなくわかった限りでは、
〔立ち上がった牛の背中に、折神大海砲っぽいものが付く → 海老のハサミも付いてバックパックを形成 → 大海真剣王ベースのロボに猛牛大王の腕が取り付き、更に虎ドリルを装着 → 胸に烏賊足と「全」マークの装甲が付く → 頭部に牛の角とディスクがはまる → シンケンオーがバックパック乗る! → 大海真剣王の背中から外れた天と土は台の下の方に申し訳程度にくっつく(笑) → 火はどこ行った?
猛牛大王の制御ディスクは「王」のディスクだと思っていたのですが、「全」のディスクだったのか(^^;(それとも、片足が「王」で片足が「全」?)
なんというかこう……玩具を設計した人、凄く頑張った!
撮影した人達は、物凄く頑張った!
2号ロボが1号ロボの背中にっくつく形式や、要塞変形の上に乗る形などはこれまでもありましたが、まさかの巨大バックパック方式。要塞型+合体ロボの融合案として、これは面白くど迫力。
青「サムライハオー、天下統一!」
緑「サムライハオーって、なに?」
青「侍たるもの、備えあれば憂い無し!」
……つまり、常日頃から新兵器の名前を考えておいて、先に言ったもの勝ちである、と。
大海真剣王@アサルトパック、ならぬシンケンハオーは腕のドリルに背中のハサミ、そして雷神剣・覇王斬りで連続攻撃。トドメは全員のモヂカラを集中し、11折神の力を解放して放つ究極破壊光線もといモヂカラ大団円。
圧倒的な防御力を誇るアヤカシであったが、その盾ごと、金色の粒子に呑み込まれて消滅するのであった。
ひーーーかりーーーになれーーー!!(CV:檜山修之)、みたいな(笑)
「これにて、一件落着」
…………恐竜は?
究極破壊光線は、剣の動きに合わせて円を描くようにしてシンケンハオーの前に折神の名前が並んで発動するので、むしろ12体の方が綺麗になったと思うのですが、恐竜は、恐竜は家出中なのか。
とにかく凄かったですシンケンハオー(^^; ここまでやられると、細かい事はどうでも良くなるというか(笑)
公演の日、新太郎の楽屋には誰が送ったのか、青い花
ナレーション「侍になる為に捨てた世界に、今一度背を向ける流ノ介」
の所で、人混みの中を歩く流ノ介。
「しかし、その心は明るく」
雑踏の中に立ち止まり、迎えてくれるのは5人の仲間。
「その目に映るのはいつか戻れる晴れ舞台。シンケンジャー第三十五幕、まずは、これまで」
このラスト、雑踏の中で撮ってしまったのは、実にお見事。
もっと色々緩かった頃には、繁華街をやや俯瞰で撮ったり、ヒーローの孤独さや、逆に社会に潜む見えない悪の表現などで、雑踏の中を行くヒーロー、というのはむしろ定番の絵図ではあり、6人それぞれをアップで映していく所なども含めて意図的にちょっと古くさい絵として撮ったと思うのですが、2009年にもなって、本当に人混みの中で、良く撮れたなぁ。
そしてそれが、今はまたかつての日常とは別の道を行くけれど、そこには同じ志の仲間が居て、その先にはいつか日常に戻るという希望も見えて……という描写を際立たせてとても良かったです。今作定番の帰り道エンドの亜種として成立しているのも美しい。
私とにかく長石多可男監督のファンなので、ひいき目もありますが、歌舞伎シーンからこのラストは良い物を見させていただきました。
というわけで明らかに長石多可男スペシャル回に狙い澄まして、2話続けて、メンバーの背景と内面に切り込む重量感のあるエピソードが続いたのですが……次回……カレー……? そして、そんな回で、ことは、スーパー化? 黄色いからか、黄色いからなのか?! 源太も一緒で、ゴールデンカレーなのか?!
……いやまあ、蓋を開けたらいい話かもしれませんが(笑)