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黄昏のプリンセス登場――はじめての《プリキュア》感想9

◆『GO!プリンセスプリキュア』#13◆
学園の敷地内でバイオリンを弾くエルフ耳の黒衣の黄金仮面を目にして、「なんて綺麗な人……」と陶然と呟く主人公のネジの飛び具合(と高精度すぎる美少女サーチャー)が相変わらず心配です。
美少女とバイオリンの組み合わせに大興奮したはるかは、「バイオリンってプリンセスぽい」と持病が発動し(きららの若干苦笑気味のリアクションが細かい)、みなみと一緒にバイオリンの工房へ行く事に。そこで工房の職人からバイオリンを譲られる事になり、最初は恐縮して断って、押し切られる時も少し申し訳ない様子になるのは、いい表情の付け方でした。最終的に貰う事になった際、はるかだけでなく、横のみなみ様も一緒にお礼を言う、というのも細かく2人の性格が出た上で、他人の親切に無頓着におんぶにだっこしないが、厚意はむげにしないという一線がある程度描かれたのも良かった。
この後、仕事帰りのきららと合流する2人、寮への帰り道はしゃぐはるか、部屋で眼鏡にバイオリンを見せる、という一連の流れを、台詞無しでBGMだけにして見せたのも、好演出。
はるかは早速ミス・シャムールを召喚し、バイオリンのレッスンを依頼。
今回も超有能なミス・シャムールは、本来グランプリンセスになる為のレッスンをつける教師だった筈なのに、すっかりはるかのやりたい事をレッスンするという、助けてド○えもんのような扱いになっていますが、その使い方では極めて便利すぎる存在なので、忘れない内に自らレッスン内容を主導するエピソードを入れてほしいです(笑)
と思ったら、
「バイオリン……?」
なんかちょっと、嫌な顔したゾ(笑)
本当は、この小娘は私を何だと思っているのか、ぐらいの事は考えているのか。
ミス・シャムールの内心はさておき、そのレッスンと、再び出会った黄金仮面の手ほどきを受けたはるかは、バイオリン職人に上達を披露。だがそこにシャット、そして黄金仮面が現れる。その正体は――大魔女ディスピアの娘にして、その正統な後継者、プリンセス・トワイライト!
プリンセスプリキュア……わたくしは、貴女がたをプリンセスとは認めません。プリンセスは、努力などでなれるものではなくってよ。身の程を、わきまえなさい」
トワイライトは黒いキーを取り出すとシャットを強化し、シャットがバイオリン職人を素体に作り出したゼツボーグも、鍵の色が赤銅色になり、これまでよりもパワーアップ。
「夢など、哀れなものが信じる幻。気高く・貴く・麗しく、全てを手にした、本物のプリンセスであるわたくしには不要なもの。幻にすがる偽りのプリンセス、目障りね」
トワイライトに追い詰められるフローラだがマーメイドとトゥインクルがゼツボーグを投げ飛ばして救援に。
「生憎、貴方達がどんなに強くなろうと」
「夢を馬鹿にする人になんか、負けてられないんだよね、あたし達」
「うん。夢は、幻なんかじゃない! だから、私達は――強く」
「優しく」
「美しく」
「「「みんなで夢を守ってみせる!」」」
と、プリンセスの新たなキャッチコピーを唱えるトワイライトに対し、プリンセスプリキュアの信条を叩き返して、3人はゼツボーグを撃破。余裕を見せて引き下がったトワイライトは、黒いキーを手に微笑むのであった。
「暮れない一日がないように。夕闇が空を包むように。この黒いキーとわたくしが、世界を、絶望で染めてみせますわ。ふふっ」
なお一瞬、「くれない」という音に過剰反応した事を正直に告白します(笑) バイオリン……くれない……ううっ、バブルが……。
というわけで、OPに印象的に存在していた黒衣の少女――トワイライト登場編。真紅の瞳にエルフ耳の人間離れした美貌、というデザインになっており、事あるごとにシャットが「美しい……!」と身悶えする事で、ついでにシャットの個性が少し付きました。
クローズがあっさりリストラされた事で不安視された三銃士の残り2人ですが、指揮系統がディスピア−トワイライト−三銃士、となった事で、間にクッションが挟まったので、多少延命しそうか。……まあ、あっさり捨て駒にされる可能性もなきにしもあらずですが。今後はトワイライト(既に濃い)とのやり取りでキャラを立てられそうなのは、期待できそうな部分です。
さて……初期から薄々気になっていたのですが、ディスピアの娘が本物のプリンセスを名乗り、血統主義を掲げる事で浮かび上がってくるのは、今作、「闇の勢力に魔法王国が支配されて異世界にも危機が迫る物語」ではなく、「身内の権力争いに異世界の女子中学生が巻き込まれる物語」なのではないか、という疑惑(笑)
それどころか、
父:? 母:ディスピア 兄:カナタ 妹:トワイライト
という一家で、
ディスピア様「あなた? また浮気をしたのね――(ゴゴゴゴゴ→大魔女化)」
父「ま、待て! 話せばわか――カナタ、後は任せた!(逃亡)」
カナタ「は、母上、落ち着いて下さい。ハーレムは男のロマ……じゃなかった、父上にもきっと事情が!」
トワイライト「お兄様……最低」
壮絶な夫婦喧嘩だったりしそうな気も。
まあ、一口にプリンセスの血統と言っても、数代遡ると王家に連なる傍流から、ディスピアが王位簒奪したのでこれからは我が家が正統主張、まで色々考えられますが……ミス・シャムールの「バイオリン……?」という反応は、過去にトワイライトにレッスンした事を思い出したのではないかという想像が働き(カナタにレッスンした話を持ち出したのもそこから連想が働いたと考えると自然)、ある程度、王家の関係者である可能性は高いかな、と予想。
その場合、シャムールがトワイライトについて触れなかったのは(昔レッスンをつけたお姫様が居た、とか)、政治的背景があるのではないかとも勘ぐれるところで、トワイライトが何らかの事情で王位継承権を剥奪された“忘れられたプリンセス”である、という可能性もありそうです……一気に血なまぐさくなってきて素敵(笑)
血統に強いこだわりを持って他者を見下す→考えを改めて仲間に(なるのか知りませんが、純然たる敵役という感じでもないので)、のパターンとしては、後々「実はおまえは私の娘ではない」「……?!」と、拠って立つアイデンティティを破壊されるというのが定番ですが、そういった展開よりは、血統から排斥された反動を抱えた、捨てられたプリンセス、とかの方が個人的には盛り上がります。その場合、ディスピア様は実母ではなく、そそのかした人、というポジションでしょうが。
3人では無くなったけど“三銃士”が居るし、つまりトワイライトは“鉄仮面”ポジションなのではないか説(カナタとは似てないけど)。
さて、とりあえずトワイライトについては本人と周囲の自己申告を素直に受け止めておくとすると、今作2クール目に入って
トワイライト:王族

みなみ:ブルジョワジー(みなみ個人は、精神的貴族)

はるか:庶民
と、階級闘争の様相を呈して参りました。芸能の要素が押し出されているきららは多分、漂白者ポジション。
こう見ると今作の着地点は……共和政バンザイではないのか。
思えば今作、そこはかとなく『少女革命ウテナ』へのオマージュらしきものが盛り込まれております……つまり、『GO!プリンセスプリキュア』とは“革命”の物語……プリンセスを夢見た少女がプリンセス不要論に辿り着いて革命を起こし、憧れの王子様をギロチン台に送る物語なのだっ!(待て)
そういえば、パワーアップフォームがキュア“ローズ”だ……!
ジュテーム!
……勢いの赴くままに書き散らしているので、何がどうしてそうなるのは聞かないで下さい。
ただ、「誰もがプリンセスになれる」ではなく「プリンセスなんていらない」という物語は、ここから何がどうしてそうなるのかさっぱり予測が付かないので、見てみたいといえば見てみたい(笑) そして、今作における「プリンセス」がここまで、「ヒーロー」とほぼ同義である事を考えると「誰もがヒーローになれる」ではなく「ヒーローなんていらない」物語、と置き換えてみると何だか行けそうな気がしてきた!
「プリンセス」に関しては未だぼんやりとした今作ですが、それとは裏腹に「夢」についての各自のスタンスは丁寧に描き分けられており、トワイライトが加わってこんな感じに。

はるか:ふわふわした夢に向かって我武者羅に突き進む。
みなみ:大抵の物事を能力ある者の責務として捉えている為、自分の目標を夢と呼んでいいのかわからない。
きらら:具体性を持った夢に向かって、現実的なステップを着実に進めている。
トワイライト:全てを手に入れた私に夢などいらぬ! もちろん愚民どもは夢など見ずに24時間働き続けるがいい!

構図としては、はるかの夢に対して、トワイライトが現実の壁をぶつける、という流れになりそうですが、そこを突き抜けていくのか、それとも現実にぶつかった所で何らかのターニングポイントになる出来事が起こるのか。トワイライトの登場で、はるかと「夢」の関係性も変化していきそうで、注目したいところです。


#14
時々疑問になるけど、ノーブル学園はやはり「名門」でいいらしい。
OP、クローズはまだ居るけどトワイライトの仮面が外れるという、細かい仕様。サブキャラの増加などもやっているだけに、クローズだけそのままなのが、復活の目と見ていいのかどうか、気になる所です。凄く動かしてしまったので、勿体なくて外せないだけかもしれませんが(笑)
家族を招くファミリーパーティの準備に浮き立つノーブル学園1年生達。
きららとゆいの
「妹?」
「はるはる、妹いたんだ」
という際の、「え? 妹いてコレなの?」という隠しきれない反応が誤魔化されずにしっかり作画から伝わってくるのは、今作の優れた所だと思います(笑)
妹大好きのはるかだが、同じくはるか大好きの妹・ももかは、はるかが好きすぎる為に、全寮制のノーブル学園でよろしくやっている姿に言いしれぬ苛立ちを感じ、こじれて学園を飛び出してしまう。みなみときららの仲立ちもあり、無事に和解する姉妹だが、その時シャットが現れて春野一家をまとめてゼツボーグにしてしまう。
「娘の夢がかなうのが夢だというのか。今まで多くの夢を見てきたが、これほどくだらぬ夢はない」
ドレス姿のはるかを祝福してどら焼きが乱舞している(春野父は和菓子職人)という絵につい笑ってしまったのですが、“自分が勝ち取る夢”ではなく“他者を応援する夢”というのは、いみじくもシャットの言う通り、今作において珍しいものであり、春野一家の夢を通して、他人の夢を守る為に全力を振るえるキュアフローラ/はるかの背景・特殊性を補強する、という構造。
……ああそうか、最終的に、トワイライト(?)の夢の為に、はるかがプリンセスを諦める話、になる可能性はありそうだなぁ。「プリンセスなんていらない」ではなく、はるかが「プリンセスにならない」を選択する、という着地点はありそう。
「夢は……自分の力で頑張ってかなえるものだと思ってた。でも……支えてくれる人が居るから頑張れる。応援してくれる家族がいるから、私は夢を思いっきり追えるの!」
このエピソードでフローラが、ヒーローとして一つ階段を昇ったのも、意味ありげ。
どら焼きゼツボーグを倒して春野一家は解放され、トワイライトは撤退。ラストはバレエのお披露目会、と綺麗にまとめたエピソードの中で、ノーブル学園らしい部分として、序盤に用いたきりだったバレエを拾ってくれたのは良かったです。
なお今回、黒いキーが何かに反応している描写やトワイライトに「キーが絶望を欲している」という台詞があり、黒いキーは黒いキーで何らかの意志めいたものを持っている模様。