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はじめての『プリキュア』感想13

◆『GO!プリンセスプリキュア』#18◆
はるかのバイブル『花のプリンセス』の作者・望月ゆめの原画展&サイン会が夢ケ浜えほん美術館で行われる事になり、テンション高くそれに向かうはるかとゆい(忘れそうだが夢は絵本作家)&それに付き合うきららとみなみ。
「うっわーーーーー、すっごい人気!」
とわざわざ俯瞰で見せた割には、駐車場狭っっっ!
や、本来別にツッコむ所ではないのですが、個展が盛況であるという表現をするにはここで微妙な広さの駐車場を俯瞰で見せる必要が全く無いので、どういう演出意図だったのだろう、と(^^; むしろ美術館周辺が広大な緑地で気になります。
道中、「郊外」という台詞がありましたが、馬が放牧とかされているし、ノーブル学園、けっこう田舎にあるのか。
ただその割には、きらら周辺の描写が明らかに主要都市圏なので、どういう設定の摺り合わせをしたのかちょっと気になります(^^; まあ基本、ファンタジー時空でどうでも良いといえば良いのですが、 最後に出てくる田舎感溢れすぎるバス停といい、やたらに画で強調されるので、何かの伏線を勘ぐりたくなるレベル(笑)
さて今回遂に、第1話から提示されていた禁書『花のプリンセス』の物語が明かされましたが、これは特に捻った内容は無し。
花畑に降臨した一個の修羅が壮絶な死合いの末にプリンセスとして頂点に登り詰める話だったらどうしようと思いましたが、そんな事は全くありませんでした。
『花のプリンセス』を大好きなはるかだが、一つだけ気になる事があった。それは物語が旅の途中で終わり、プリンセスが王子様と出会えたのか、その結末がわからない事。
この絵本の結末はどうなるのか、続きは書かれないのか……
割と作者に聞いてはいけない質問を直球でするはるか。
挙げ句に出待ちをするはるか。
品の良い老婦人であった望月ゆめは、警備員を呼ぶ事もなく、絵本に結末の無い理由をはるかに諭す。
「想いの数だけ物語はある。そういう本でいいと思ったの。あなたの中にも、プリンセスにはこうなってほしいという、未来があるのでしょ?」
「それは……」
「それがきっと、あなたにとっての『花のプリンセス』なのよ」
「私の……『花のプリンセス』……」
いい話から一つ学ぶはるかだがその時、美術館の上に立つ黒い影。
あれは、誰だ?!
「どんなに美しくとも、しょせんは作り話。真のプリンセスであるわたくしから見れば、虚しいだけですわ」
あれは、とうとう絵本にまで難癖つけ始めたトワイライト様だーーー!
ゼツボーグを用いず、自ら最前線に降り立ったトワイライトが魔法のステッキにキーを填めるとトワイライト空間が発動し、周辺に居た人々が次々と額縁の中に閉じ込められてしまう。
「――さあ、宴の時間よ」
トワイライトは額の中に閉じ込めた人々から絶望のエナジーを吸収し、ステンドグラスに囲まれたような閉鎖空間の中に突き立つ、無数の黒い十字架。
「冷たい額に閉ざされた夢。――返していただきますわ。お覚悟は、よろしくて!」
「高貴な者への振る舞いを知らぬ、愚か者たち。その罪、その身でしっかりと味わうがいい!」
から、凄まじく力の入った作画で展開する、時間無制限高圧絶望デスマッチ。
「気品と立ち振る舞いはなかなか。だけどわたくしには、勝てない!」
と精神的貴族であるマーメイドは蹴り飛ばされ、
「その才能の輝きも、わたくしの前には星屑も同然よ、キュアトゥインクル
と、トゥインクルも一蹴される。
遂に直接対決、という事で気合いの入った舞台装置に加えてスピード感溢れる肉弾戦が展開し、トワイライトが短評と共に次々と一騎打ちで撃破していく、という流れも格好いい。
……にしても、相手が意思疎通可能かつ少女の姿を取っていても、一片の躊躇もなく拳と拳で語り合いに行けるプリキュアの肉体言語への信仰は、ちょっと引くレベル(笑)
OPのトワイライトとフローラもそうですが、清々しいまでに、殴り合って最後に立っていたものが偉いのよ、という価値観を感じます。
マーメイドとトゥインクルを次々と屠ったトワイライトはフローラに迫り、フローラ気合いの一撃を逸らして懐へと入り込む。
「貴女よ、キュアフローラ。気品も才能も持ち合わせない貴女のような存在が、プリンセスの名を汚す」
至近距離からの一撃を受け、壁に叩きつけられるフローラ。
「高貴なる者は、生まれた時から高貴な者。わたくしは絶望を統べる母、ディスピアの娘。ディスダークの黒きプリンセス。――貴女は違う。終わりね。全ての夢はここで消え去る」
高みから3人のプリキュアを見下ろすトワイライトだが、夢を守る者達は簡単にはくじけない。
「そうはさせない! 私達は、夢を守る!」
「そうよ! 絶望のエナジーなんて、ぜっんぜん通用しない!」
「うん。あなたが何を言おうと、私達は、プリンセスプリキュアなんだから!」
立ち直ったマーメイドとトゥインクルが加わり、バブル・シューティングスター・ローズ、で一斉攻撃を放つが、それを受け止めるトワイライト。
「偽物どもがっ!」
「偽物じゃない……私の夢は!」
「プリンセスとは、わたくしのような唯一無二の存在! いくら努力を重ねた所で、届きはしない!」
トワイライトは一斉攻撃を受け止めきると逆に弾き返し、吹き飛ぶプリキュア達。そしてトワイライトは、物陰に隠れていたアロマ達が守っていた『花のプリンセス』を手に取る。
「可哀想に。こんな物があるから、報われない夢を見てしまったのね」
ここは、凄く良かった。
トワイライト様は、物凄く血統主義に凝り固まって、高貴な血に価値を見いだし生まれによって人を差別しているわけですが、その蔑みが、プリンセス僭称に対する“怒り”として主に表現されていた為、絶対者の余裕、というものに少し欠けている所があったのですが、ここで“憐れみ”が出たのが非常に良かったです。
トワイライトからプリキュア達に向ける視線として、不愉快、よりも、可哀想、の方がより強烈で凶悪であり、トワイライト様に欲しかった要素がここで入ってくれました。
「夢から覚ましてあげますわ」
トワイライトの手による暗紫色の炎が絵本を包むが、懸命に立ち上がったフローラは必死にそれを取り戻す。
「トワイライト……確かにあなたは凄いよ。私、あなたと出会ってから、プリンセスってこんな人の事を言うんだ、って思ってた」
……え? そうなの?
突然のはるか爆弾発言(^^;
トワイライトがこれまではるかの前で見せた姿というと、「美少女」「どこでも平気でひらひらドレス」「ヴァイオリンが弾ける」「下僕が居る」「高圧的」「血統へのこだわり」という所だと思うのですが、はるかのプリンセス像ってそういうものなのか(笑) ついさっきまで、夢への信念で戦っているような事を叫んでいたのに、どうしてこの子は、あっちこっちにネジを落とすのか。
「でも、望月先生の話を聞いて、それだけじゃないかもって……同じプリンセスでも、みんなの中に、いろんなプリンセスが居て……私にも……私だけが目指せるプリンセスがあるかもしれないって思ったの!」
「私、だけのプリンセス……? 何を言っているの」
トワイライトはマジカルステッキから絶望の波動を鞭のように繰り出すが、フローラはそれをガード。
「それは、わたしの理想! 魔女を恐れぬ、強さ! 相手を思いやる、優しさ! そして、世界に花咲かせる心の美しさ! 小さい頃からずっと憧れてきた、花のプリンセス。それが私の目指す、プリンセス!」
ここで、『花のプリンセス』の物語と、魔法王国のキーワードであった「強く・優しく・美しく」が重ねられ、はるかの目指す「プリンセス」が示される……という流れでやりたかった事はわかる、わかるのですが、この展開なら物語の一番最初に『花のプリンセス』の内容は見せておいてこそで、少し構成失敗した感じだなぁ……(^^;
このエピソードにおける、はるかのトワイライトの部分的肯定を見る限りでは、全体として

〔はるかが自分なりの「プリンセス」像を持っている → トワイライト様にそれを砕かれる → もう一度、自分の「プリンセス」像を取り戻す〕

という流れを組みたかった(組んでいるつもりだった)ように思えるのですが、実際には
はるかの「プリンセス」像が全くわからないまま進行し、
トワイライト様までプリンセスぽいと思っていたにも関わらず、
子供の頃からの憧れとして力強く理想のプリンセス像を語る為、
不明瞭だった信念が明確になる、を通り越して、もはや人格が分裂した感じに(^^;
やはり、『花のプリンセス』は、触れてはいけない禁忌だったのか……!
なお、「美しさ」がこっそり、「(心の)美しさ」にすり替えられている辺り、勢いに見えてはるかも割と巧妙です。解釈、解釈ですよ王子!
トワイライトの杖にヒビが入り、絵本からは新たなミラクルドレスアップキー・リリーが生じる。
謎の発生をしていたミラクルドレスアップキーですが、以前にコメントでいただいた通り「各人の夢が生まれた場所」に潜んでいた、という事でいいようです。
「あぁ……こんなに近くにあったなんて」
と、夢と理想を、原点に戻って掴み直して信念とするフローラ――この台詞と言い回しは凄く良かったです。
というか今回は、あちこちで微妙にちぐはぐなやり取りを、声優の演技でカバーしてもらっている所が多数。勿論、それもまた、作品の力の内ではありますが。
フローラの放ったリリービーム(もう少し、ローズと差別化できなかったか(^^;)がトワイライトの杖を砕き、立ち上がったプリセンスプリキュア達はミラクルドレスアップ! バブルドレスは人魚姫のイメージなのでしょうが、どことなく夜の蝶な感じで、ちょっとけば(以下略)。
「勝てるつもりかしら? おまえたちの夢は、ここで潰えるのよ!」
「私は、私のプリンセスを目指す!」
青白い炎を放つトワイライト目がけて、ミラクル三色王冠バスターが炸裂。辛うじて持ちこたえるトワイライトだったが、髪留めが砕けて膝をついた自分の姿を鏡で目にしてちょっと涙目。
「この、わたくしが……こんな…………。キュアフローラ、わたくしは、絶対に認めませんわ! プリンセスは、このわたくしだけよ!」
可哀想から、髪を下ろした姿で涙目撤退まで、トワイライトは幅が出て良かったです。
それにしてもトワイライト様としては、正統なる血統の者だけがプリンセスになれる、という至極正論を言っているつもりなので、自分の好きに「プリンセス」って自称したっていいじゃない! というのは前提を共有できずに凄く論点ずらされている気分だと思うのですが、殴り合いで負けたら引き下がるのがルールなので仕方がありません。
トワイライト様視点だと、私は私の勝手でプリンセスを名乗る、というキュアフローラは、
凄く、戦国脳。
こうして3人は強敵トワイライトを退け、学園への帰路、はるかは自分の夢を改めて胸に抱く。
(そうか……強く、優しく、美しく……。同じなんだ。花のプリンセスも、グランプリンセスも。私の夢が、グランプリンセスに繋がるんだ)
……と、キーワードが美しく重なりました…………となれば良かったのですが、これまでのはるかのプリンセス像があまりにふわふわしていた為、グランプリンセスのキーワードに合わせてはるかが絵本を解釈したように見えてしまい、あまり素直に飲み込めなくなってしまいました(^^;
逆に、はるかの中に確固たる理想のプリンセス像があるなら、これまで重ね合わせに至らなかったのが不自然ですし。
総じて、物語構造としては、都合が良すぎて据わりの悪い感じに(実際、はるかが無意識に解釈を曲げている可能性を考えるとますますスッキリしない)。
これを避ける為には、『花のプリンセス』の物語だけは先に(第1話で)視聴者に提示しておき、“今まではっきり言語化できなかったけれど、絵本の影響によりはるかの中に確かにあった理想と信念が、数々の戦いや望月ゆめの言葉を経て明確になる”という形で、はるかの気付きと視聴者の気付きをシンクロさせるという仕掛けが必要だったように思います。
狙いはわかるけど、受け手の印象の悪い構成になってしまったかな、と。
そして、最後にさらっと明かされる学園長の正体=望月ゆめ。「ノーブル学園を開いて50年」だそうですが、今、何歳なんだ。絡め方としてはあまり面白くは感じないのですが、これが布石として活きるのかどうか、保留。
力の入った激しいバトルにフローラとトワイライトの感情もしっかり乗って盛り上がり、憧れの絵本作家との出会いからトワイライトとの激突そしてはるかの成長までを1話に収めた物語も濃厚、単独で見れば充分面白い出来なのですが、色々な部分が少しずつズレていて、見終わった後に表現しにくい引っかかりが残るという、困ったエピソード。
次回、戦え1人レジスタンス――僕が斬るから君も斬れ!