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15年ぶりの『クウガ』メモ#29−#30

「どういう男だ、五代という青年は」

「いつも笑顔を絶やさない、強い青年です」
 (EPISODE29「岐路」)
◆EPISODE29「岐路」◆ (監督:長石多可男 脚本:荒川稔久

  • 蝶野再び……がナイフを見つめている所だけで終わるアバンタイトル。まあ近作はアバンタイトル長すぎというか実質Aパートになっている作品があったりしますが(^^; 一方、2015年現在最新作の『ゴースト』が今のところ、中のパート分けが複雑な関係で、アバンタイトル抜きでOP入っていたりするというのも面白い所。
  • 蝶野再登場という事は井上回だったっけ……と思ったら、井上敏樹がいつまで経っても出してくれないので責任を取る事になったのか、荒川さんでした(笑) いや、スケジュールの問題などもあるでしょうから、実際どうなのかは知りませんが……下手すると井上敏樹の中では、蝶野の話は終わった扱いだったりしかねませんからね!
  • #13−#14の事件を経て生きる事に少し前向きになった蝶野は、CMのイメージイラストコンテストに応募する為の絵を描いており、ナイフは鉛筆を削るのに使用。と、世をすねて生きる事に怯える男を示していた小道具が、夢を掴む為の道具になっている、というのは時間による蝶野の変化をうまく示した演出。
  • 夏休みなので、実加ちゃん、東京へ。さすがにもう、出てこなくても何の問題もないキャラクターだと思うのですが、敢えて使い続ける所には今作のこだわりを感じます。この辺り、旧来の特撮作品におけるゲストキャラの扱い方に対して、一石を投じたいという意識もあったのかもしれませんが。
  • 実加ちゃんが4号の正体を知っているという話に続き、ジャンが榎田さんから4号=五代について聞いていた事が判明。科警研の方面から、情報ダダ漏れです! まあ、当の本人がほぼ隠していない為、科警研でゴウラム見ていると嫌でも気付く羽目になるので、むしろ知りたくなかった職員の人とか居そうです。
  • この辺り、「4号」を「五代」と言いそうになって訂正する実加ちゃん→「五代さんでしょ?」とさらりと訂正を入れるジャン→「知ってたの?」と驚く桜子さん→榎田さんから聞いたと説明するジャン、と情報の共有と開示を会話の流れの中で視聴者に見せていくのが、今作の上手い所。
  • そしてジャンは、先日のペーパークラフトの件以来、榎田さんと気まずくなって科警研から足が遠のいていた……という情報を遠回しに入れてくる辺りも、細かい細かい。
  • 続けて、さすがに本部長は4号の正体が人間(五代雄介)であると知っている事が、榎田さんとのやり取りでさらりと。
  • 露骨に一条さんが4号と共同歩調を取っている事に他の刑事達が言及しないのは、上層部含めた暗黙の了解事項である、という後付けエクスキューズではありましょうが(^^;
  • そして、そんな本部長が敢えて五代と顔を合わせないのも、その下への情報が一条さんによってせき止められているのも、最悪の場合、一条さんに詰め腹切らせて後は知らんぷりしようという、権力の闇。
  • で、そうやって切り捨てられる可能性も、せめて自分の出来る事、の範囲に入っているであろう所が、一条さんの組織の中のヒーローたる所以。
  • 強化トライチェイサーの伏線。
  • 一方、椿の診断では、五代の肉体や神経に対して、アマダムによる変化が早まっていた。
  • 「このまま進むと、確実に…………戦う為だけの、生物兵器だ」
  • 同時に、急激な肉体や神経系の変化で強い痛みがある筈だ、と指摘する椿だが、五代は平然とした調子で特に痛みは無いと言い切り、これが事実のなか五代のやせ我慢なのかについては、明確に描写されず。
  • しかし同時に、「なるべくポレポレを手伝いたい」と五代が足早に帰って行き、五代自身も自分の変化とその先に待っているものについて自覚している、という描写。
  • 果たして五代の体は本当に大丈夫なのかどうか……考え込む一条と椿。
  • 椿「俺は信じる事にするぜ。あいつの……これをな」(サムズアップ)
  • バランスを取る為に、女性関係に軽かったり、ちょっと変態だったり、で少し下げられているものの、椿先生は基本的に男っぷりがいいのですが、特撮ヒーローもので、メインできちっと描かれている医者、というキャラクターは割と珍しいでしょうか? 五代の主治医で一条の親友というおいしいポジションに加えて、捜査パートで重要な検死官であり、今作の重視する「生と死」を象徴する役割を担っている、と非常に重要人物。
  • 亀怪人が、ルーレットで決定した場所に鉄球を放り投げまくるという、これまででもトップクラスに大雑把なゲゲルを開始(^^; 数える戦目付が大変そうです。
  • 亀怪人の居場所を推測して向かう五代と一条……戦闘前の盛り上げてもいい所で、少し寂しげなBGM、というのが前後編のテーマと繋がってくる部分。
  • 激突するクウガvs亀。ビルから蹴落とされる亀を、根城にしていた部屋から他のグロンギ怪人が見つめる、というのは今作これまで無かったシチュエーション(他のグロンギの戦闘を見るグロンギ)で、ちょっと面白いカット。
  • 完成したイラストを直接出版社に持ち込もうとしていた蝶野だが、この戦闘による交通規制に巻き込まれてしまい、警察の非常線を強引に突破しようとする……ここで、橋を横からロングで撮ったカットになるのが、長石監督だなぁ。

◆EPISODE30「運命」◆ (監督:長石多可男 脚本:荒川稔久

  • 通常のタイタンのガードを打ち破る亀の攻撃に、クウガライジングタイタンで反撃するとその腹部を突き刺すも倒しきれず、エネルギー切れ。負傷した亀も一時撤退。
  • 無敵タイタン、初めて押し負ける。同時に、ライジングするとタイタンの防御力も上がるなど、明確な強化形態である事が敵の攻撃と比較する形で現されました。
  • 科警研では、実加ちゃんが榎田さんに挨拶し、ジャンが手紙に榎田さんの事を「若く」「美人」と書いていた事を空気を読まずに暴露してしまい、ライジング気まずい。
  • 榎田さん、撃ち返したい所が多すぎる上に、女子中学生の前で、ライジング気まずい。
  • ジャン、自分を慕ってくれる女子中学生に「空気読めよ!」と言えず、ライジング気まずい。
  • 椿から、五代の体の状態について聞かされる桜子。「つまり……みんなで頑張らなきゃって事ですよね」
  • 病院に運び込まれていた五代は、急激な負傷からの回復による痛みと苦しみを見せようとはせず、回復するとすぐに病院を出て行く……と序盤以来久々に、明確な五代の「痛み」の描写。
  • そこへ、イラスト応募に向かう途中で、亀男と正面衝突して倒れた蝶野が運ばれてくる。イラスト応募は締め切りに間に合わず、体調を気遣ってくる椿にも、やさぐれた苛立ちをぶつける蝶野。
  • あいつだ……4号のあいつが、とっとと未確認をやっつけてれば今頃……。どうせあの調子でへらへらしてやがったんだ」「……本当にそう思うか? ……あいつがただ、へらへらしてる奴だと思うか」「だってそうだろ! 4号とか言われてどんどん強くなって、未確認をやっつけて、何やってもうまく行きゃ、誰だってあんな風に、明るくなれるさ。……俺は何やったってうまく行かない。ずっとそんなだ」
  • この蝶野の台詞をバックに、変身した五代はゲームを再開した亀男へと挑む。
  • 苛立ちを世の中にぶつけ、他人のせいにする蝶野を、甘えるなと椿が一喝し、蝶野は思わず椿を殴る。
  • 「俺を殴って、どんな気がした? やな感じがしただろう。それをあいつはずっとやってるんだよ。体が自分の物じゃなくなるかもしれないっていう、恐怖の中で。弱音も吐かず、みんなの笑顔を、守る為にな」
  • ヒーローは決して好きで悪を殴っているわけではなく、そこには常に痛みが付きまとっている……裏を返せば、その痛みを感じられる者こそがヒーローである。結局ヒーローは暴力で物事を解決する、というヒーロー物の抱える永遠の命題に対する今作なりの一つの解答。
  • 五代の「他者に暴力を振るう事への痛みと恐れ」は序盤から繰り返し描かれており、この解答を物語の中に収め、出来る限りメタにしないで描く為に、丹念に仕込んでいた事が窺えます。
  • 同時に、根を一つにする正義のヒーローと悪の怪人が居て、やがてそれが同じものになっていこうとする時、“それを分けるものは何なのか”というのを今作では「嫌な感じ」と置いており、椿の蝶野への言葉は「おまえがちゃんと人間なら、嫌な感じがする筈だ」という希望にもなっています。
  • ヒーローの戦いを通して、コミュニケーションの成立する真っ当な社会はそれを蝕む社会悪に打ち勝てる筈だ、というメッセージも今作のテーマの一つ。
  • クウガは亀に挑み、援護射撃を行った一条は、亀が手に付けた鉄球を全て打ち落とすという荒技を披露。
  • 負けじとクウガも、ゴウラムバイクで亀を人気のない郊外まで引きずっていくという荒技を披露。
  • そして廃工場で放たれるライジングマイティキック。その威力は、事前に不穏な予感を覚えていた五代の予測すら上回り、視聴者の度肝を抜く大爆発で、つづく。
  • 五代雄介の心と体の“痛み”を真っ正面から描き、中盤の一つの山、後半戦へのターニングポイントといえるエピソード。テーマ的にはかなり、やる事やった感もあります。