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15年ぶりの『クウガ』メモ#45−#46

「――しかしあいつは、絶対に大丈夫です」 (EPISODE45「強敵」)
◆EPISODE45「強敵」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久

  • クウガ、カブトムシを思いっきり背中から撃つも無効。逆にボウガンを撃ち返される。
  • カブトムシは武装チェンジの度に目の色が変わり、完全にクウガと対比する形での戦い。
  • 結局、授業参観へ行けず、科警研から家へ電話をかけた榎田は、冴が登校しなかった事を知る。
  • 「また出たのかい! 未確認が」「あんた未確認の担当なのはわかるけど、冴の母親でもあるんだからね!」
  • 家庭というのも一つの“社会”――それも、子供にとっては大きな世界――であり、不特定多数の人々の“社会”を守る為に戦っている榎田さんが、自分の大切な最小単位の“社会”を巧く守る事が出来ずに苦悩する、という重いテーマ。
  • 90年代から東映が強く意識していると思われる、二世代向けの作品作り、というのが強く出た部分。
  • 今日もドラゴン大ピンチでタイタンに変わるが、カブトムシも紫にチェンジ。タイタンソードを腹部に突き刺すも通用せず、逆に剣を奪われてしまうクウガ。圧倒的な力を見せるカブトムシにクウガは追い詰められ、遂にタイタンの肩アーマー切断。
  • 必殺のライジングマイティキックを放つも堂々と真っ正面から受け止められて通用しないという、絶望感は強烈。そしてカブトムシは金色になると、ビートルスピントルネードキックでクウガを吹き飛ばし、クウガは白から更に五代の姿になってしまい、完敗を喫する。
  • クウガとカブトムシが戦っている頃、やって来た一条は戦闘を見つめる戦目付に気付いて銃撃した結果、ソロバンを破壊。
  • 戦目付はコンドル怪人に変身するが、これが実に格好悪く、今作、鳥は鬼門なのか……。
  • コンドルに突き飛ばされ、あわや落下しそうになって鉄塔からぶら下がる一条さん。……アクション系の刑事物を愛好していた葛山さんは、この撮影が凄く楽しかったとかなんとか(笑)
  • 一条は何とか自力で足場に戻るが、そこに一生懸命やってくる杉田。救助に役立つわけではないのですが(映像的に難しかったのでしょう)、「一条が大変だ!」と息を切らして階段を駆け上ってきた杉田の姿で、工場のキャットウォークから落下したら大変、という“常人の視点”が入っているのは良いところ。
  • カブトムシに散々に敗れた五代は意識不明で病院に運ばれるが、一条はコンドルにマーキング弾を撃ち込む事に成功。五代が倒れた中、警察は未確認生命体を追い込む為に闘志を燃やす。――「あいつの力が借りられない今は、我々の力で頑張りましょう」
  • 一方グロンギ側では、ソロバンが壊れた事でゲゲルのやり直し指令が下され、「貴様には死んでもらう」「応じよう」と、カブトムシvsコンドルの、腹立ち紛れの身内バトルがスタート。
  • 遊び半分に人間を殺しているように見えるゲゲルも、グロンギにとっては一種の儀式的要素を持ち、命や誇りがかかっている事が最終回間近ながら補強。これはやりすぎるとグロンギの“怪人”らしさが薄まってしまう為に、タブーとして踏み込みすぎないようにしていたのでしょうが、クライマックスという事で、グロンギという種族の在り方、を少しばかり深めてきました。
  • つくづく、『クウガ』はこの辺りのバランス感覚――地雷の回避が巧かったと思います。この方向性に関しては《平成ライダー》としてはその後、『555』が敢えて重戦車で踏みに行く事に。
  • コンドルはトンファーを使い、カブトムシは青い瞳で棒も振り回して、フォームをコンプリート。
  • 科警研では神経断裂弾が完成するが、息子との約束を守れない自分に沈み込む榎田さん。そこへ、研究資料を返しにジャンがやってくる。
  • 関東医大病院では、意識不明の五代からの頼みとして、桜子が椿に五代への更なる電気ショックを依頼。その時、五代の体に異変が発生する――。
  • 絶対安静の五代の容態の急変・マーキング弾の反応を追ってやってきた一条の気配に気付く薔薇のタトゥの女・家庭の問題に悩む榎田さん、と3つの場面が交錯しながら、つづく。ここで榎田さんの問題を未確認vsヒーローの迫真の戦いの中に、並列して置いて物語をきちんと成立させるのが、今作の優れた所です。
  • 大きな社会も小さな社会も、それぞれに様々な問題を抱えているけれど、「いつか、みんなが笑顔になる日の為に」これは、“立ち向かう”人々の物語。
  • てっきり出番終了かと思われた恵子先生、臨月姿でポレポレに来店。新しい命を宿した人、というのを映像的に描きたかったのか。またポレポレでは、店に飾られた雪渓の写真が前回に続いてクローズアップ。

◆EPISODE46「不屈」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久

  • 「それじゃ五代くん、自分で一度心臓を止めちゃったって事ですか」……五代の体の異変。それは突然の心停止だった。五代の覚悟に応え、椿は再び、五代に電気ショックを行う。
  • 一条はカブトムシとコンドルが喧嘩するスケート場の内部で、二体の戦闘を目撃。珍しく引き返す(笑)
  • けっこう強いトンファーコンドル。
  • ポレポレの写真は、戦場写真家であった亡き五代の父親(おやっさんの先輩であった)が撮ったもの。
  • 五代父が取材先から送ってくる手紙に、「いつか、みんなが笑顔になる日の為に」という言葉が必ず書き添えられていた事が明かされ、五代雄介のもう一つのルーツが判明。
  • ここでこれまで語られてこなかった五代父の話だけをするのではなく、榎田家の問題と繋げ、エピソード全体で“家族”の話、幾つもの単位が重なり合って出来る“社会”の話になっているのが、今作の巧い所。
  • 「冴がね、学校で笑わなくなったって先生が言うの」「でも、どうしていいかわからなくて」「私母親失格だね……」
  • 科警研では、榎田さんがひたすらジャンに愚痴っていた。
  • ここまで仕事の出来る強い女として描かれてきた榎田さんが、母親として弱い面を見せ、それを聞くのが主人公でも一条でもなくジャン(まあ一条さんに話しても絶対に何も解決しないけど!)、というのは人と人の関係が繋がって力になっていくという今作の構造を象徴しているといえ、真骨頂。
  • 「やっぱり私は駄目母だよね」「……冴くんがそう言いましたか? 冴くん、ひかりさんの事、駄目で嫌いって、言いましたか?」
  • 幼い頃、両親が共に忙しくて、ひとりぼっちの時間が多かった自分の過去を語るジャン……「でも僕は、寂しいと思ったけど、駄目な両親と思った事は、一度もなかったです」
  • 「ちょっとだけ無理して頑張ればいいと思います。ひかりさんに出来るだけでいい」
  • ジャンの励ましに、前向きになる榎田さん。……ジャン、今の所なんとなく“便利な男”扱いな気はするけど、頑張れ、ジャン。科警研に来る前に、色々もっと駄目そうな桜子さんにエールを送られている辺りが、複雑な気持ちになります。
  • 神経断裂弾が到着し、一条、杉田、桜井の3人はスケート場へと突入。
  • 「リントの、戦士の匂いがする」……薔薇のタトゥの女に、匂いでキャッチされる一条さん(笑)
  • カブトムシに片翼をもがれたコンドルが逃走して桜井と杉田はそれを追い、一条は一人で中へ……結局そうなるのか(笑)
  • 一条はカブトムシの不意打ちを受けて階段落ちしながらもカブトムシに断裂弾を撃ち込む事に成功し、倒れるカブトムシ。そこへ薔薇のタトゥの女が現れ、例の音楽でまたも見つめ合う二人(笑)
  • 「リントもやがて、我々と、等しくなりそうだな」
  • その音楽のまま場面は変わり、逃げたコンドルは手負いとはいえ、杉田と桜井によってまさかの射殺。
  • 立ち直ったカブトムシに投げ飛ばされた一条は、携帯電話も鳴っていないのに今までで一番死にそうになるが、そこへ走ってくるビートチェイサー。スケートリンクを走ってくるバイク、という絵が非常に格好いい。
  • そしてここで、初期の曲でクウガ変身! 電気ショック盛りの成果により、常にライジング状態のスーパーびりびりタイムが発動。
  • クウガの左足にもライジングシャチハタが生じ、更にボディが黒色に変化。ここで顔アップの際、暗闇の中で瞳が赤くのがまた格好いい。
  • 金色vs金色、ダブル金色キックの打ち合いの末、カブトムシ、ハンコ2つで大爆死。
  • この戦闘の合間に、バイク(ハーレー仕様)で榎田さんを送っていくジャン、の映像が挟まれるのが、凄く『クウガ』。
  • ヒーローの戦いと、人と人の繋がりを等価に並べて見せるという意識と演出は物凄い。ただこれは今作がびっしり書き込んでいるからこそ成立するのであって、下手に表面上だけ真似ると大惨事案件ですが。
  • 今作だから成立するといえば、ポレポレでの語りシーンの挟み方などは本来ならあまり褒められた作劇ではないのですが、ここまでびっしりサブキャラ達も書き込んでいる事により、散りばめられたモザイクが1つの絵になっていく集大成として、断片を切り取って見せていく手法が成立しており、お見事。
  • クウガvsカブトムシの対決はBパートの5分ほどで先に終了し、その後に榎田さんパートが来るという構成で、拗ねて閉じこもり中の息子・冴に語りかける榎田さん。
  • ハジメくんちのママみたいに、毎日おやつ作ってあげられないかもしれない。カっちゃんちのママみたいに、遊園地にも連れてってあげれないかもしれない。でも母さん、冴のお母さんにしかできないこと一生懸命探して一生懸命やるから。今までみたいに逃げたりしない! だから出てきて……お母さんに顔見せて」
  • 岩戸が開いて、抱擁する母子。ひとしきり泣きじゃくった後、ペーパークラフトの本を見せ、笑顔を取り戻す冴。「一緒につくろ」
  • 心配して玄関ドアの外に立っていたジャン、いい話なのにちょっと変態(笑)
  • 「笑顔」という作品全体を貫くキーワードを軸にして、「世界」−「社会」−「家族」という、マクロからミクロを繋げて描き、クライマックス直前に、非常に良く出来たエピソード。そしてサブタイトルが「不屈」と、見事に決まりました。
  • スケート場の方では、カブトムシを倒した五代が戻ってきて、正面から向き合って一条とサムズアップをかわす。そして、最後に残ったのは――「究極の闇を、始めるよ」
  • ダグバの言葉に、雨の降り出す音がかぶさって、つづく。そして降りしきる雨の中、圧倒的な力で第0号が全てを蹂躙していく、というかつてなく暗い次回予告へ。
  • 一条に向けた言葉や、ダグバとの会話などで、仲間が次々と殺されているにも関わらず、薔薇のタトゥの女がむしろ嬉しそう、というのはゲゲルの本質を示しているようでもあり、面白い所。
  • クウガ追い電気で強化、というのは割と無茶ではあるのですが、そもそもカブトムシも発電所で強化しているので、より強い電力で強化可能というのはカブトムシの凶悪さそのものが伏線になっており、何とかまとめています。また、電気ショックを要求する為に自ら心臓を止める(椿解釈)五代の姿など、“意志の力”こそが何より根幹である、というのは貫かれている所。
  • クウガの強化が電気エネルギーになったのは、超古代でも、雷などの自然現象で偶発的なパワーアップの可能性が存在しうる、という辺りも考慮されていたのかなぁ。