◆第17話「怪談 悪夢の復活祭」◆ (監督:折田至 脚本:伊上勝)
ここ数話、低調でしたが、いや今回面白かった……! 町内の肝試し大会に参加する子供達、という如何にも夏休みエピソードで始まって油断していたら、そこから怒濤の展開。見所も盛り沢山というか盛り沢山すぎて途中で勿体なくなってくるレベル(笑)
「俺はコウモリ奇械人よ。この町内の人間は、みんな死んでもらう」
と、お化けに混じっていたコウモリ奇械人が言い出した時には真面目にどうしようかと思いましたが。
そんな大雑把なコウモリ奇械人ですが、今回面白い部分の一つがそのデザイン。よくあるコウモリマークぽい意匠を顔面と後頭部にあしらい、胴体と腕に黄色いライン、背中の翼はアクションを考慮して軽量化したのか、テニスラケットのような網目という、コウモリ怪人としてはかなり奇抜なデザインで、顔に赤、胴と腕に黄、ベースは黒、という色彩も鮮烈。難点は自己申告が無いとコウモリだとわからない事ですが、シルエットも格好良く、今作ここまでの中でもかなりの傑作怪人だと思います。
そこへ城茂、シャドウ、ユリ子が次々と現れ、珍しく茂とユリ子がバトルで連携アクション。新BGMから新挿入歌を用いてのスピーディーな殺陣でストロンガーが変身し、コウモリと激突。
「さあ言え! シャドウのアジトを!」
ストロンガーはコウモリの背中を踏みつけながら金網に押しつけ、口を割らないと見るや投げつけからのエレクトロファイヤーで電流爆破デスマッチ。弱った所に得意の小キック連打を浴びせ、腕を捻りながら、
「もっとパワーアップしてやろうか? コウモリの丸焼きが出来るぜ」
とノリノリで、70年代という事を考慮しても、やはり城茂は鬼畜度の高いヒーローだと思います(笑)
たまらずコウモリが撤退し、シャドウのものと思われるトランプを見つけた茂とユリ子は、『ヘンゼルとグレーテル』よろしくそれを追っていくと、怪しげな教会に辿り着く。
モーニング姿の奇械人達が棺を運び込んだ教会の中に入ると、そこでは何故か困ったおじさんがオルガンを弾いており、棺の蓋を開くと、中にはなんと、爆死した筈のタイタンおじさんの遺体が! そして棺の中に敷き詰められていた花に触れた茂の血がタイタンの上にこぼれると、それを口にしたタイタンが、甦る!
「城茂、岬ユリ子、タイタンは百目タイタンとして甦った。必ず貴様等二人の命は貰うと約束する」
巨大な一つ目の周囲に小さな幾つもの目が増えたニュータイタンは、パワーアップがわかりやすい上で、グロテスクさが非常に秀逸。
タイタン蘇生に関しては首領の声で、殺した者の血を吸う事で甦るブラックサタン悪魔の復活祭の儀式の効果であると説明されるのですが……もしかして、科学力よりオカルト技術の方が優れているのではないか、ブラックサタン。
茂は藤兵衛をユリ子に任せて教会を走り去った車を追うが、乗っていたのはタイタンではなく囮のコウモリ奇械人。車から身を乗り出したコウモリがわざわざ車の屋根の上に登り、走る自動車の上で取っ組み合う、というアクション。……さすがにまあ、ゆーっくっり走ってますが(笑)
そして茂はコウモリを車から投げ落とすと、走る自動車の上に仁王立ちして変身!
変化球として非常に決まり、ここ数話が嘘のように、密度の濃い展開が続きます。
ストロンガーとの一騎打ちを望むコウモリだが、タイタンおじさんは実は教会に隠れている、と口を滑らせたばかりに、当然のように路傍に置き去りにされる(笑) ストロンガーがユリ子達を助けに急いでバイクで戻ろうとしている頃、教会では藤兵衛が正気を取り戻し、如何にして洗脳されてしまったかを丁寧に説明…………スタッフは、このおじさんの使い方に、本気で困っていませんか。
従来の藤兵衛の役割は、いわば人間関係の中継ターミナルだったわけですが、物語をロードームービー形式にした事でターミナル機能が消失した結果、神出鬼没にして心神喪失、幾つかの役割がユリ子と被っている、その上で目立った特殊能力は無い、と使い勝手が悪いどころか使い道が無いキャラクターになってしまいました(^^;
コメディリリーフとしては不自然すぎて、8割方笑えない領域になっているのも困った所で、これなら、茂とユリ子の掛け合いに力を入れてくれた方が良かったのではないかとも思う所。
世界観を繋ぐシンボルとしての必要性はあったのでしょうが、いっそ3話に1回ぐらいの登場だったらまだ良かったのですけど、そういうわけにも、行かなかったのか……。
もはやブラックサタンにも持て余されている雰囲気の漂う藤兵衛を連れて教会を脱出しようとするユリ子だが、その前に、今の今までじっと物陰に体育座りしていたタイタンおじさんが登場。
タイタンおじさんはユリ子の攻撃を片手で軽くあしらい、更に電場投げ完全無効。
「俺が休んでいる間に少しはマシになったと思ったが、少しも進歩してないようだなタックルくん」
変身した百目タイタンはデコピン一発でタックルを一蹴し、相手がタックルにしても、やたら格好いいぞ(笑)
「俺が留守中、たるんでおらんかったろうな」
そして捕らえたタックルをアジトに運び込むと、いきなりの嫌な上司モードを発動(笑) 毒薬入りの海水で溶けて大爆死したのが、有給取って温泉旅行でリフレッシュしてきたみたいな扱いになっており、ここに来て、意外と凄いぞブラックサタン。
「大きな口を叩くな」
そこに何故か、藤兵衛を運んでくるシャドウ。さっそく険悪な雰囲気になった二人はお互いの人質を取り合って口論になり、大首領に止められる。
「ブラックサタンの大幹部二人が争ってなんになる。戦う相手は、仮面ライダーストロンガー、ただ一人。二人のどちらがストロンガーを倒すか、それを競争してみろ」
最後の「競争してみろ」が、冷酷な上司の至上命令というより、仲裁に入った物わかりのいいおじさんの「やってみなさい」みたいなイントネーションになっており、大首領が、凄く、人格者みたいです(笑)
……いや大首領、海で溶けた幹部の死体を回収してわざわざ人と金を割いて復活作戦とかやってくれるので、無能だけどいい人という疑惑がどんどん上昇しておりますが。無能だけど。
既にコウモリ奇械人に策を与えてある、と抜け目なく作戦の主導権を奪ったタイタンは、大首領命令で人質二人を使っていい事に。……うんまあ、そのおじさんの方は、そのままダストシュートに捨ててしまっても問題ない気はしますけど。
「シャドウ。ストロンガーは、今日限りであの世行きだ。はっは、悪く思うなよ」
「ふん……カード占いによれば、ストロンガーの運命は、おまえの手では死なないな」
絶対、占い、してない……!
幹部の対立というのも色々ありますが、この二人、いがみ合いのレベルが低すぎて面白い(笑)
独自の美学を持った新幹部みたいな形で鳴り物入りで登場した後、あっという間に不意打ち・人質上等の卑怯者に転落していたシャドウですが、同じレベルで罵り合う対象が登場した事で、急角度で思わぬキャラが立ちました。
タイタンは教会へ戻ってきたストロンガーに音声で人質の場所を告げ、荒野へとバイクを走らせたストロンガーは、その眼前に花畑を目にする。
「おや……綺麗な花だ」
そんなストロンガーを高い所から見下ろすタイタンおじさん。
「コウモリ奇械人が撒き散らした花とも知らぬストロンガーよ、荒れ地に乗り入れろ。地獄の口がぽっかり開いて待っている」
ストロンガーとタイタンの言動から、てっきり、花畑をよけたら卑劣な罠が発動する……のかと思ったら、
オートバイに乗ったまま
躊躇無く真っ正面から
「綺麗な花」を踏むストロンガー。
ちゅどーん!
その途端、大爆発が起こり、ストロンガーは空中ジャンプでこれを回避するも、着地した際に踏みつけた花が爆発し、思わず笑ってしまうレベルの連鎖大爆発の煙に飲み込まれる……。
ここ、背後で爆発→前転で回避→続けて左右で爆発→更に続けて前方(回避した方向)で爆発、しているのですが、編集のブレがなく、物凄く至近距離で爆発していないか(^^;
「はっはっはっはっははは、花畑だ、地雷の花の。ふふふふふふふ」
ストロンガーは多分花を避けない、という城茂の鬼畜ぶりを読み切った恐るべきタイタンおじさんの罠!
ヒーローの鬼畜さが、劇中で悪の組織によって実に見事に利用された、素晴らしいシーンです(笑)
ユリ子と藤兵衛を縛り付けたジープも地雷原へ向かって発進させられ、藤兵衛、目隠しされながらも必死にハンドルを操って地雷原を回避する、とちょっと活躍。しかしそれでも地雷原に突っ込みそうになるジープだったが、スキル《爆破無効》により復活したストロンガーがギリギリでそれを止め、二人を救出。
この光景にタイタンおじさんは余裕綽々で立ち去って、ストロンガー達はコウモリ&戦闘員とバトルになり、戦闘員をもぎ離す藤兵衛は、もしかして自動車に乗っている時は全てのステータスがUPするのか。
そして期待に違わず、次々と地雷花畑に投げ捨てられ、次々と爆死していくブラックサタン戦闘員。
火薬って、本当にいいものですね。
前半に続いて、新挿入歌の効果もあってかスピード感のある殺陣が秀逸。コウモリ奇械人の鋭い翼に多少苦しむストロンガーだったが、電タッチで翼を破壊してから、電キックで爆殺。
「しくじったなタイタン……ふはははははははは」
アジトでは、暇なので占いをしていたシャドウが、低いレベルで喜んでいた……!(笑)
第13話で突然の退場劇だったタイタンが、わずか3話のインターバルで復活。話数的には織り込み済みの復活だと思われますが、一度退場させる事で、新幹部と復活、両方のインパクトを作る事に成功。難点は、肝心の退場エピソード含め、ここ数話の出来がやたら雑だった事ですが(^^;
第13話はあまりに酷かったので、タイタンの強化復活自体は、割と嬉しいです。急速に微妙な感じになっていたシャドウも、張り合う相手が出来て生き生きとしてきましたし。
にしても、シャドウの勝手で駄目になった第14話のタイタン葬式にわざわざストロンガーを呼んでいたのって、本来あそこでタイタン復活させるつもりだったのか(笑) それは、大首領も、ちゃんと仕事してよ! と怒るわけです。
次回も引き続き怪談シリーズで、「しかしそこには、沼は存在せず、一人の、痩せた老人が立っているだけであった」という予告ナレーションが凄く謎。
ウルトラマンシリーズに何かこういうのがあったような……と思って調べたら、『ウルトラマンエース』に<夏の怪奇>シリーズと<冬の怪奇>シリーズがあり、『ウルトラマンタロウ』には<日本の童謡から>がありました。