◆第23話「地底王国の魔王!!」◆ (監督:加島昭 脚本:鈴木生朗)
毛虫奇械人もろとも繭の中に閉じ込められたストロンガーは、タイタンにより超エネルギー爆薬を仕掛けられて大ピンチに陥るが、その時、導火線を切ってしまうトランプの人。
「シャドウ! 邪魔立てすると許さんぞ」
「邪魔はせん。ただ、ちょっと聞いておきたい事があってな」
どんな矛盾した発言でも力強く言う事で押し切る、それこそが男の美学。
「この繭の中にはライダーストロンガーが居るには違いないがケムンガも居る筈だ。一緒に殺す気かね?」
まさか、悪の幹部からそこにツッコミが入るとは(笑)
「それがどうした。ブラックサタン大首領の至上命令とあらば、部下の命などものの数ではない」
「成る程――それがブラックサタンのやり方か」
シャドウは嫌がらせをするだけして姿を消し、タイタンおじさんは導火線に再び点火。一方繭の中では、ケムンガがじわじわとストロンガーの息の根を止めつつあった。
「これでいい。間もなくストロンガーは窒息して死ぬ」
私てっきりケムンガ承知の上の自爆作戦だと思っていたのですが、ケムンガは違う方法でストロンガーを倒そうとしていた事がわかり、シャドウの台詞に意味が出る事に。
そして今度こそ大爆発が起こり、超エネルギー爆薬の説得力として、火薬の爆発に加えてユリ子達を映したカメラを揺らして土砂の巻き上がりを表現したのは、好演出。
……ところが。
歓喜の万歳を決めたタイタンおじさんにもたらされる衝撃の情報。
ケムンガの繭は電気だけでなく高熱や圧力も無効化する無敵の防御力を誇り、超エネルギー爆薬でも傷1つ付ける事が出来なかったのだ!
てっきりいつものストロンガーは最高級の改造人間だから無敵である理論かと思ったら、むしろ敵の怪人の繭が無敵だった! というのは意表を突かれて面白かったです(笑)
仕方が無いのでタイタンは、繭を処刑場から地下数千メートルの奈落の底へたたき落とし、ユリ子と藤兵衛は磔放置プレイにしてアジトへと帰還。ところが日が落ちて寒さに震える二人の元に、通りすがりの占い師ゼネラル・シャドウが現れると藤兵衛にカードを引かせ(ここで磔の藤兵衛が口でカードを引くのも好演出)、ハートのエースが出たので二人の縄を切断。いぶかる二人に、シャドウはその理由を語る。
「理由は、3つある。第一、占いが助かると出た」
待て。
「第二、俺は人質を取るようなやり方は好かん」
おい待て。
「第三、俺はストロンガーを倒せればいい。そしてそのストロンガーは、生きている」
……これまでも言動・行動・美学の全てにおいて色々と疑問の多かった占い将軍ですが、この人あれだ、物事の前後や因果関係を都合のいいように入れ替えた上で、入れ替えた事そのものを完全に忘れて改変した脳内事実を心の底から信じ込める完全無欠のサイコパスだ。
恐らく第15話−第17話において人質を取っていた件に関しても、「あれはブラックサタンの流儀に合わせてみただけ」という後付けの論理武装が、本人の中では確固たる事実にすり替わっており、毎度確信的に「ストロンガーは生きている」と言うのも根拠はなくて、自己中心的な思い込みがたまたま正解だっただけだ……!
そんなシャドウから茂が奈落の底へ落とされた事を教えられた二人は懸命に崖を降りようとしてユリ子が藤兵衛を叱咤するのですが、いやもう貴女、変身して一人で行きなさい(笑) そして二人は足を滑らせて真っ逆さまに落ちていき……映像的には完全に死亡。
一方、アジトで首領にストロンガー抹殺報告を行っていたタイタンおじさんだがそこにお邪魔虫シャドウが現れ、二人はストロンガーの死を確認する為に、タイタンが支配する地底王国へと降りていく。
なんと、サブタイトルの「地底王国の魔王!!」とは、タイタンの事だったのだ!
謎のサブタイトルだと思っていたら本編でしっかり回収されてビックリですが、タイタンを大物扱いする事でそのタイタンが忠誠を誓うブラックサタンの株も押し上げるという力技です……遅かった気はしますが。
なおここで、地底行きエレベーターの中で豪華な椅子にふんぞり返ってタバコをくゆらせるタイタンと、その横でトランプをシャッフルするシャドウという絵が、無駄にコンビ感溢れていてやたら格好いい(笑)
色彩が対になっているので並ぶと栄えるというのはあるのですが、それにしてもポーズまで決まりすぎで、今回の白眉。
その頃、地底王国の氷の谷に転がる繭の中で、ストロンガーはケムンガと抱き合っていた。
「ん? ……暖かくなってきた。そうか、こいつを暖めれば蛾になって繭から出るに違いない」
今回、謎の面白さだな!
茂は電気ストリュウムで毛虫を暖め、サナギから羽化した毛虫怪人は繭を割って毒蛾の怪人に超力招来! エネルギーを消耗して変身できない茂は氷柱落としで毒蛾を生き埋めにする事に成功するが、戦闘員に追い込まれてマグマの谷へ。そこへ現れたシャドウに地底湖へ誘導された茂はユリ子と再会するが、それは毒蛾怪人の変身……と毛虫(毒蛾)奇械人の特殊能力なのか、普通に人間に変身するのですが、憑依路線は諦めるのか。
毒蛾をふりほどいた茂は、奇跡的に生きていたユリ子と藤兵衛に今度こそ再会。
「何やってるんだ! 早く、助けてくれ〜」
「何度か騙されてるからな……本物なんだろうな?」
緊迫した展開の中にギャグが1つねじ込まれた後、茂は二人を救出すると、
「宇宙からエネルギーは貰った。行くぞ!」
と謎の供述をして変身。盗電はともかく、水が砂に染み込むショックとか、宇宙線(太陽光線?)を浴びたからとか、もしかして茂も、思い込みで自家発電しているのではないか。
そもそも自分の説明書を読んでいない筈ですし……信じる力は超能力!
久々の主題歌バトルで反撃スタートし、羽化したら《電気無効》が消えたらしい毒蛾奇械人は電キックであっさり爆死。繭から出たら氷の谷に蹴落とされていた件、について特に恨み言を述べるわけでもないので前半のシャドウのくさしは意味を失い、その上で弱体化、とあらゆる意味で毛虫のままで良かった(笑)
もはや弱点を克服したという30倍パワーのアピールなのか、何故か湖の中から百目タイタン@ガンマンスタイルが登場し、ストロンガーと決戦スタート。
(30倍だと……? 無理にエネルギーを入れている。どこかに裂け目があるはずだ)
苦戦するストロンガーだが、ダブルキックで肩の弱点を攻撃し、エネルギーを抑えきれなくなって自壊ダメージを受けたタイタンはマグマの谷へと逃亡。
「マグマの谷で勝負してやる! 来い!」と煽っておきながら、辿り着いた途端に苦しみ呻いて「ストロンガー……私の負けだ。君は、強い……」とか言い出すので罠丸出し過ぎる詰めの甘さが命取りになるのが、実にタイタン(笑)
「ストロンガー……最後の、握手を……」
百目タイタンは敢えてそれを受け入れたストロンガーをマグマに落として玉砕しようとするも、失敗。
「ブラック、サタン……ばんざーい……!」
そのまま爆発するのではなく、頭部がぐにゃっと潰れて体中からエネルギーが噴出した状態でマグマの中に落下、となかなか衝撃的な最期。第13話のリタイアは余りに余りでしたが、お約束の断末魔も含め、今回は大幹部らしい散りざまを見せました。
「いかん、マグマが噴出する。急いで地上へ逃げるんだ」
どうやって逃げるのかと思ったら
凄い普通にジャンプで脱出しました。
地底王国は大爆発したマグマに飲み込まれて消え、かくして因縁の敵・タイタンおじさんは今度こそ還らぬ人となるのであった。
(タイタン……敵ながら大した奴だった)
ノーサイドの精神!
そしてシャドウも、いつの間にか脱出していた。
「シャドウよ。タイタンも所詮はそれだけのものだったな。やはり信頼するのはおまえだけだ。誓ってストロンガーを倒せ」
適当な事を言ってシャドウも手のひらの上で転がしているアピールする大首領ですが、信頼できるのは臨時雇いのフリーランスだけって、どこまで悲しい組織なんだブラックサタン……!
「はっ。そのお言葉、有り難く承ります」
タイタンの形見(?)の目玉を手にしていたシャドウが最後に剣を抜いて一回りするので、タイタンの目玉を切り裂く演出かと思ったらそういう事でもなく、ポケットにしまっていたとしたら、更なるコンビ復活はあるのか(笑)
前半、良い感じに無理を通して道理を引っ込める展開で突き進んでいたのですが、後半、地底湖に移動する辺りで作り手が正気に返ってしまった感があり(撮影順は勿論違う筈なのですが不思議な事に)、やや失速。そのまま突っ切ってくれたら1つ上のステージに行けた気がして、惜しい(笑)
いっそユリ子と藤兵衛は磔のままで最後に助け、地底王国からのジャンプ一番大脱出はストロンガー1人の方が説得力が増したとも思うのですが、さすがにそういうわけにはいかなかったか(^^;
突然の酷すぎるリタイア→まさかの復活→急速にブラックサタンが面白くなる、と大活躍だったタイタンおじさんは、最終的にかなり好きなキャラになりました。ありがとう、タイタンおじさん! さらば、タイタンおじさん!
◆第24話「怪奇! 無人電車が走る!!」◆ (監督:折田至 脚本:鈴木生朗)
藤兵衛は再び東京−松阪間のフェリーに乗り、茂とユリ子はバイクで移動中。3人の合流予定地点は鳥羽、といういきなり困惑する展開(^^; 鳥羽湾ロケで2話しか消費しないと勿体ないという事情があったのでしょうが、やたらに地名を強調する事も合わせて、凄く謎移動になっています。
その道中、線路上に無人の電車を発見した茂とユリ子は、やたらテンションの高い奇械人の襲撃を受ける。
「俺こそブラックサタンのエース、ハサミカニだ!」
電車の乗客は、蟹の幻覚泡(微妙に尺稼ぎを感じる、踊り狂う奇械人達の絵がしばらく流れる)を浴びて気絶した所を、ブラックサタン要塞島建設の為の奴隷としてさらわれていたのだった。
「天が呼ぶ!」の所で空を映し湖を映しまたストロンガーに戻るという変化球演出が入り、タックルも「えい、やー、とうっ!」と変身するが、蟹の泡を食らって戦闘不能になってしまう両者。自称エースは伊達ではなく、奇械人がまさかの大金星。
その頃、ニュー美しまホテルでくつろいでいた藤兵衛は占い将軍の接触を受け、お互い知らない間にブラックサタンの作戦が進行している事を知る。怒りのシャドウはアジトに戻って抗議するが、それを撥ね付ける大首領。
「ブラックサタン直系の幹部でもないおまえに、口出しは許さん」
「それが大首領の本音か。今までまんまと俺を操ってきたつもりだろうが、そうはいかんぞ」
多分この一週間の間に、社員食堂のメニューを占いで決めるとか、次の作戦担当を占いで決めるとか、ブラックサタンの活動資金を投入する株を占いで決めるとか、好き勝手やっていたシャドウにプレッシャーをかけようと自前の戦力を動かして釘を刺してみた所、勢い余って叛旗を翻されてしまう、大首領、安定の裏目ぶり。
某役立たずさんとの血縁関係の究明が待たれます。
社長シンボルにトランプショットを決めたシャドウは、密かに藤兵衛を助けて蟹のアジトへと向かわせる。アジトでは蟹が捕らえた茂を首ちょんぱしようとしていたが、そこに大首領が「新たな最高指揮官が赴任するから茂の始末はその指示を待ち、おまえは要塞島の建設を急げ」と横槍を入れ、その間にやってきた藤兵衛が茂達を救出してしまうという、大首領、本日2回目の裏目。
世の中、金も口も両方出そうとするとろくな事が無いようです。
タックルと藤兵衛が子供達を逃がし、ストロンガーは要塞島建設現場(実際に海辺のやたら広い工事現場で撮影しており、良いロケーション)で蟹と再戦。電キックで凶器のハサミを吹っ飛ばされた蟹は、逃げ出した所でシャドウと遭遇する。
「ゼネラルシャドウ様! 助けて下さい!」
だがシャドウは、「誰に断ってストロンガー襲ってんの?」と逆に蟹を詰問。
「俺は、あんたの部下ではない」
と強気に突っぱねる蟹だが、迫ってくるシャドウを前に、「新しい最高指揮官が来るから仕方ないんスよ」と言い訳をし、数秒の間に変わり身が早すぎます(笑)
「最高幹部だと? 誰だそれは」
「知りません。俺は本当に知らないんです。は?! ストロンガーが来る! 助けてくれ!」
「ふん。俺の知った事か」
「ゼネラル・シャドウ! くぅー」
シャドウが姿を消し、背後の山の上にストロンガーが登場した所で再び戦闘用BGMが流れ出し、ヒーローの鬼畜ぶりがいやが上にも盛り上がります(笑)
「ハサミガニ、逃がさんぞ!」
トドメの電キックを受けた蟹は、だだっ広い工事現場で泡を吹きながら景気よく大爆死。
「新しい最高幹部とは誰だ……? 大首領が俺を必要としないならば、俺の方にも考えがある」
そういう時こそ占えばいいと思うのですが、当たらないとわかっている占いは美学として最初からやらないシャドウであった。そしてブラックサタンのアジトでは、謎のシルエットが……。
2クール目も終わりが近づき、タイタン殉職→シャドウ退職?→新幹部就職、と立て続けの急展開でなかなか盛り上げます。
次回――予告時点で捕まっているユリ子と藤兵衛!
「そして、救出を試みた城茂も、サタンの陰謀にはまって、遂に、電気椅子に縛られてしまう」
え? 効くの?!