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『コンレボ』第18話「セイタカアワダチソウ」感想

のんびりした次回予告に反し、ゲストライター2本を挟み、メインライターの手による前半戦と後半戦を結ぶエピソードで、内容てんこ盛りのぎっちぎち。
神化47年10月――妻を亡くし、娘と2人暮らしの平凡なサラリーマン若村は、護送車から脱走した犯罪超人のバスジャックに巻き込まれて命を落としかけた際、突如、筋肉だるまの超人に覚醒。その姿で愛娘を助けてバスジャック事件を解決した事で、正義の超人・ニンゲンマンを名乗る事になってしまう。
犯罪超人ジャックフラッシュは前回の話を拾い、地下世界のデビラ族が人間と合体した超人という事で、デビルマンバイオレンスジャックで、そこはかとなくザビタン。後、見た目微妙にウルヴァリンも入ってる? と思ったら、ウルヴァリンの初出が『超人ハルク』#180−181(1974年8月)だそうで、ニンゲンマンとデザイン的に対応させた形か(なおハルクの初登場は1962年5月)。
「おまえは……」
「人間だ。ただの人間だ!」
娘を守ってジャックフラッシュを叩き落とした若村の台詞は、今回の着地まで見るとかなり意味ありげですが、はたして爾朗は、ただの人間になれるのか。
自分が超人になってしまったという事態に戸惑いながらも、純粋に正義の超人に憧れ喜ぶ娘の姿を見て、素性を隠しながら超人として活動を続ける若村だが、その身辺に二つの影が迫っていた……。
一方、石川県では爾朗&アースちゃんとジャガーさん&大鉄くんが対峙し、本編8話と連結。
「あんたはクズになりましたね」
が繰り返されて、とても良かったです(笑)
最近、爾朗がガツンと言われるとちょっと爽快な気分になるのは我ながら若干どうかと思うのですが、今の爾朗が肯定されてしまうのはどうかと思っているので、そこには物語として向き合って欲しいのです。
爾朗の抱えている「正義」=「戦争の罪」であるがゆえに、爾朗はそれを受け止められずに歪んでいくしかない、という点に関してはしっかり描写されているので、爾朗個人が嫌いなわけではないのですが。
メカゴジラを繰り出す大鉄くんから逃げ、爾朗センパイ、アースちゃんをお姫様だっこするで、ますます激しくなる真ヒロイン争奪戦!
「重いな……!」
「失礼だな。色々新しくなったからだ」
そしてますます加速するセンパイの駄目さ加減!(GYAO!などの配信サムネイル画像がここのカットで素晴らしい(笑))
お姫様だっこ許すまじ、とアースちゃんを魔法で縛り上げた輝子の口から、大量に転がっていたヘルメットは怪剣クロードが装着していた物の後継モデルであり、超人の脳を直接刺激してパワーアップさせるものと判明。
「帝告はお金になる超人、公共保安隊は、兵士になる超人しか興味がありません。それ以外の超人を保護するには超人課が必要なんです。……なんて、ジャガーさんの受け売り」
「じゃあ……」
「だって超人課に居れば、爾朗さんに会えるでしょ」
「敵と味方としてだ!」
「それでもいい! だって他にないんだもん!」
「輝子……」
あー……今までずっと、きちんとお断りしないセンパイが悪いと思っていたのですが、今回のやり取りを見ていると、きちんとお断りしたのに付きまとってくる物凄くタチの悪い女に輝子がクラスチェンジした可能性もあるのか。
「昔私に言ったな! 人間は正しい事ばかり出来ないと! あれは魔女も同じか?!」
「魔女だから、そもそも、正しい事したら変でしょ」
一応正ヒロイン枠の割には、後半戦入ってからの輝子は「私の大切な人」「あの人」発言など、エゴイスティックな部分が隠さず描かれているのですが、現在空白の神化47年半ばに何かあった可能性も含め、以後、この問題に関して爾朗センパイを一方的に貶める発言は慎もうと思います(笑)
東京に戻り、ひとりジャッジメント・デカが囚人護送車にミサイル打ち込んだ事を知る爾朗とアースちゃん。
「被害がゼロだからって、こんな事許すのか、人吉」
「彼は、自分のしてきた事を償いたいんだ……ジュダス、君もそうだったろ」
「……超人病って知ってるかい? 最近流行ってるんだ。新手の公害病らしい」
「何が言いたい」
「爾朗、なんでもかんでも超人を護ろうとする君も、超人病みたいなもんじゃないのか?」
爾朗軍団(仮)が、そもそも軍団の様相を呈しているのか疑問になるレベルで一致団結からほど遠い状況というのは、これから終盤、人吉爾朗の在り方について物語としてしっかり向き合ってくれるサインと思われ、ホッとした部分。
ジュダスに関しては、改良再生したアースちゃん(ジュダスにとっての神)に何か仕込んでなかろうか、というのも気になる部分ですが。
ニンゲンマン若村が道を外れた覆面超人2人から銀行強盗の誘いを受けて断っている現場に行き会った爾朗は、覆面2人に向けて「もうかばいきれなくなる」と言葉をかけており、あらゆる超人は正義の超人になれる筈である(なるべきである)という爾朗の超人信仰は、ジュダスが遠回しに指摘したように、どうもより駄目な方向に進んでいる感じ。
「私の大切な人がね……超人が好きなんです。だから、超人になれて、ちょっと嬉しい」
「俺にも、居ました。俺の事を、まるで正義の超人みたいに思ってくれた人が。その人の前では、自分が正しい事、するべき事をしなければいけないって思わされた」
「その人、今は?」
「俺より先に大人になっちゃいました」
「正義は誰が決めるのか?」(君の正義の担保は何か?)というのは、今作において繰り返し浮かび上がるモチーフですが、ここでは若村にとっての娘と、爾朗にとっての輝子が正義の担保として重ね合わされ、若村が“純粋な子供の応援”を担保に正義の超人をしているのに対し、爾朗が自分の正義の担保を完全に失った事を悟る姿が残酷にえぐり出されています。
同時に、爾朗は自分の超人信仰が無垢なる子供の信仰だと自覚している様子も見えるのですが、爾朗の超人信仰と正義の味方願望とは突き詰めると、たった1人でもあらゆる超人の正義の担保になろうとする事――すなわち、「その人の前では、自分が正しい事、するべき事をしなければいけないって思わされ」る存在になる事、であり、輝子を通して爾朗が自身を解体しているというのがまた、悪辣な構図。
そしてこの構図から紐解くと、星野輝子というのはたまたま後輩の魔法少女の姿を取っているけど、爾朗にとってはこうありたいという自己実現の願望が目の前をうろちょろしていたわけで、輝子に対するこれまでの曖昧な態度が腑に落ちます。そしてそんな輝子の、目的を手段にする大人になった姿を見せつけられたら、初対面のサラリーマンに胸の内をぺらぺら喋ってしまうわけです(爾朗と同い年(※前回予告で言及)の若村が、娘の為にだけ力を振るう、最も純粋な正義の超人であるというのは、もう1人の爾朗という見立てでしょうし)。
会社の健康診断で超人病に罹患している事がわかった若村は治療法として超人因子抑制薬を渡されるが、それを飲まない事を選択。しかし、超人病の原因が超人因子を刺激するセイタカアワダチソウの突然変異種であり、家の近くの群生地が焼却処分される事を知る……。そして神化47年のクリスマス、若村はニンゲンマンに変身して群生地の焼却作業を妨害。
「変異植物は、公害病を引き起こす! それを守るならおまえは、人類の敵だ!」
今日もお仕事に勤しむ赤光が刀を抜いたその時、駆けつけて間に入る爾朗だが、続けてアースちゃんが飛来。
「そいつは悪い奴だ!」
前半戦の振りの時点から、爾朗とアースちゃんは思想的に合わないよなーというのがあったので、ここできちっと衝突が描かれたのも良かったです。
「私にはわかる。そいつは世界の平和や悪を倒す為に超人になったわけじゃない! 正しい心など持っていない」
娘の喜ぶ顔を見たい為だけに超人であり続けようとするニンゲンマンを、容赦なく攻撃しようとするアースちゃんを、躊躇なくGファイヤーで吹き飛ばす爾朗(おぃ) ところでアースちゃんは、サラリーマン忍者・赤光さんの、また超人マニアが邪魔しに来やがった! という胃の痛み辺りに反応して飛んできたのでしょうか。
強制的にでも焼却を執行しようとする行政&超人警備保障に対して、あくまでニンゲンマンをかばう爾朗。
超人病か……俺もそう言われたよ。この人のしている事は正しくないかもしれない。だけど――俺はこの人を護る」
「何故だ……?」
「子供の為に戦うのが、超人だからだ」
正義も、悪も越えて、誰かの願った幻想を護る為に――
「とうとう、ちゃんとした悪になりましたね」
大鉄くんがドンドン切れ味を増してきて、素敵(笑)
ゴジラ対メカゴジラ第2ラウンド開幕の寸前、群生地の中にあった石――実はタルタロス蟲人のサナギ――から成虫となったカムペが現れ、ここで「ハチのムサシは死んだのさ」は凄かった(笑) カムペがセイタカアワダチソウを全て吹っ飛ばして(?)ひとまずその場の事態は収拾されるが、以後も変異セイタカアワダチソウを原因とする超人病は日本全国に広がり、神化48年は後に超人大爆発期と呼ばれる事になる――だがその中にニンゲンマンが二度と姿を現す事はなく、ただ、手を繋ぐ父娘の姿があるだけであった……。
ラストで、現時点で最新の時制にあたる第2話ラスト(神化48年8月)に繋がるカムペが姿を見せ、光速エスパー以外の主要キャラがほぼ登場して前半戦と後半戦の諸々が一つの絵図を成していきつつ、超人とは何か? という根幹を問うた盛り沢山のエピソード。
ぎゅうぎゅう詰めの大盛り幕の内弁当でしたが、中心になっていたのは、ある日突然超人的な力を手に入れたらどうするか? というシンプルかつ普遍的な問いであり、第6話「やつらはいつでも笑ってる」と同テーマなのは、意図した所だと思われます。
その上で両エピソードの着地点は、「こんなに大勢が笑ってる。誰より凄い力じゃないか」と、ニンゲンマンが星になった後に繋がれた父娘の手、といずれも本当に大切な力は超人の能力とは別にある、という形で描かれており、当然これは、一切の超人的能力を持っていなかった正義の超人・天弓ナイトに繋がってくるわけですが、はたして爾朗は気付いているのか。
とはいえ爾朗は超人という存在に生き方を依存しているので、あらゆる人間と超人が区別されない世界(真の意味で超人が特別視されない世界)の到来を無意識に望んでいない(ある意味爾朗は、超人を「護る」事で、超人を「差別している」)のですが、そんな爾朗は世界に対してどう向き合うのか、今作のゴールをどこに持っていくのかは、引き続き楽しみです。
着地点といえば、今回かなり押し出された爾朗(ゴジラ)vs大鉄(メカゴジラ)ですが、『ゴジラ対メカゴジラ』の公開が1974年3月なので、物語は神化49年までは引っ張るのかなぁ……今作自体、昭和40年代をエンタメとして描く、というのが一つのコンセプトだそうなので、丁度収まるといえば収まりますが。
世相的には1974年は、長嶋茂雄の引退と、田中角栄内角の総辞職もあり。
あと、會川昇が思い入れ深いらしい『イナズマンF』が1974年なのですが、『ブレイド』で長石監督に怒られて止めたというメタ気味のネタを今作で仕掛けるみたいな事はあるのかなぁ……。
マジンガーZ』が1973−74年で、『宇宙戦艦ヤマト』の開始が1974年、ゴジラ映画と仮面ライダーシリーズとウルトラマンシリーズがひとまず終わるのが1975年、と、日本のヒーロー物の転換期という見方も出来そうですが、1975年(神化50年)まで引っ張ると、爾朗センパイ30歳になってしまうので、果たしてそこまで持っていくのかどうか(笑)
その他細かい所では、ジャガーさんが謎の多いエクウスは特別製と改めて言及。鷲巣メモリとの適合問題なのか、会話の途中で顔を歪める柴刑事、という辺りが伏線として気になる所です。
次回――密室で二人きりの柴刑事×ジャガーさん、という新たなカップリングが急浮上し、ますます激しくなる真ヒロイン争いに勝つのは誰だ?! というか少し歯車がズレていたら、今作の主人公はジャガーさんでヒロインが爾朗だったのだなぁと何だか余計な事に気付いた気がする今日この頃。分岐点はたぶんエクウス。