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『ズートピア』感想(若干ネタバレあり)

普段、特撮かバカっぽいアクション映画ばかりの私ですが、家族が借りてきたのを折角なので視聴。


 肉食動物が他の動物を捕食する“野生”の時代が遠い昔に終わりを告げ、進化した動物たち(二足歩行)が共に暮らす世界――警察官になりたいという夢に向かって努力を続けたウサギのジュディは、小さな体のハンデを克服して警察学校を首席で卒業し、遂に史上初のウサギの警察官として認められる。だが、様々な種類の動物たちが共存する巨大都市ズートピアに配属されたジュディは、バッファローやトラやサイなど大型の動物がひしめく警察の世界で一人前の警察官としては扱ってもらえず、交通違反の取り締まりに回される事に。挙げ句にキツネの詐欺師にいい具合にカモられてしまったジュディだが、ひょんな事から転機が訪れて……。
大まかに言うと、動物たちが擬人化された世界での刑事バディものなのですが、大きな特徴は、それぞれの動物が元になった動物の体格差を引き継いでいる事。故にネズミやハムスターはとても小さく、主人公のジュディもかなり小さく、キツネは一回り大きく、トラや熊はかなり大きく、ゾウやキリンは更に大きく描かれた上で、それら様々な体格の動物たちが共存している社会というのが、掴みの一つインパクト。
動物別に様々な大きさの車があったり、電車の扉が大・中・小あったり、とこの大小の動物が共存する世界が、環境別に14のエリアに別れた巨大都市の姿でテーマパークめいて描かれていくのは夢一杯。
……ところが、意気揚々とズートピアの警察署に赴任したジュディを待ち受けているのは、声をかけるのも一苦労な高さの受付のデスク、座ると顔が隠れてしまう大きすぎる椅子などなど、ジュディの体格には合わない設備の数々。
小柄なジュディがキリンやサイの足下をかけずり回ったり、逆にネズミの街では巨人になったり、という面白おかしい描写からは一転、大型の動物が大半を占める警察の世界では、小動物であるジュディは除け者であり、元来ふさわしくない存在である、という描写が繰り返し突きつけられていきます。
か弱くて小さいウサギに警察官は無理、ずる賢いキツネは世間に受け入れられなくて当然、と動物というクッションを通して描かれる、生まれによる差別の問題はかなりストレート。
なにぶん、開始3分で幼少期のジュディが両親から「警察官になるなんて無茶な夢はやめなさい。私たちが今幸せなのは、夢を諦めたからなのだから」と言われてしまう世界なので!
勿論、主人公は負けん気と夢への意思でそれを跳ね返していく立場なのですが、最初にずばっと入れてくるのが、なんというか親切。
その上で、全体のトーンはあくまに軽妙に、冷遇されるお荷物新人・暴走する熱意・相棒は詐欺師・与えられた時間は48時間! と刑事サスペンスの王道を突っ走り、各種アクション要素も余すところなく盛り沢山で、エンタメとして見事な作り。必要な伏線がしっかりと張り巡らされ、サブキャラクター達もきちっと拾い、絶妙な重ねネタ、と万事隙なく、ディズニーの力に唸らされました。
前半、主人公の言行と話の成り行き(交通違反取り締まり関係)に一つ納得の行かない所でがあったのですが、結果的にはしっぺ返しを受けましたし、その辺りのバランスへの配慮も許せる範囲。
公平理想のユートピアの現実……というオーソドックな舞台装置の中に、映像的面白さと繋げて差別の問題を積極的に取り込んでいる作品ですが、もう一つ、全体を包み込む仕掛けが、「理性」と「欲望」という形で織り込まれていて、なぜ今作が動物擬人化ものなのか――裏を返せば、“人間性”とは何か?――という真の意味がそこにあるのであろうな、と。
単純に娯楽映画としても面白かったですし、着地も綺麗で良かったです。
次作があるなら、必要なのは時限爆弾航空アクションだな!