◆第9話「Dragonをぶっとばせ!」◆ (監督:諸田敏 脚本:高橋悠也)
見所は、ブレイブ、剣を奪われる。そして乱暴に投げ捨てられる。
最初からわかりやすい見せ方ではあったのですが、CRを視察に来るという衛生省の日向審議官が、16年前にエムを手術した医者と判明。第1話のエム回想ではわざわざシルエットにしてぼかしていた割に随分早く明かされましたが、役者さんの若作りに限界があって不自然な画面だったりしたのか……と思ったら、今回のエム回想では普通にそのままの顔で登場。……これ、本当はもっと引っ張るつもりだったのに、急な予定変更でもあったのでしょうか。
ちなみに野村宏伸というと、なよっとした優男風で脳内イメージが止まっていたので、久々に見たらすっかり普通の丸い中年になっていて隔世の感あり。
その日向がグラファイトによりゲーム病に感染してCRに収容され、命の恩人を自分の手で助けなければ、といつも以上に患者の病気を治したいスイッチが入りっぱなしになるエム。
現在、勝手に改造手術疑惑の最有力容疑者である日向審議官は、自分の抱えているストレスは「ゲーム病が世に知られて社会に大パニックを巻き起こすかもしれない事」と自己申告するのですが、「ゲーム病の事を世間に対して秘密にしている事」ではないのがポイントで、
自分の隠蔽工作は社会正義の為だ!
と信じ込んでいるとするならば、かなり危ない人の匂いがします。
「必ず救います。……今度は僕が、先生を」
復讐と切除しか興味のない鏡がエムの制止を振り切ってオペを開始し、患者の事を一顧だにしない身勝手な医者として強調されるのですが、ゲーム病の性質を考えると「患者の容態を確認してから」というエムの主張も意味はよくわからないので、相変わらずどっちもどっちで困ります。
今までと異なるドラゴン型のバグスターウィルス、そして黒いガシャットの力でブラックドラゴンと化したグラファイトに敗れた二人はウィルスに逃げられてしまい、激昂して鏡につっかかるエム。
「僕は絶対……先生を助けたいんです!」
「また私情か」
「飛彩さんこそ……敵討ちだって!」
人間として認めないレベルの扱いとはいえ、鏡の極めてデリケートな部分に至近距離から鉄アレイをぶつけにいくエム先生は、ホント、患者の容態以外はどうでもいい人で凄く困ります。
正直、エムが劇中で他人を思いやるような発言しても、これら諸々のお陰で1ミクロンも信用できません。
「心を一つにしなければ、グラファイトは倒せない」
そこにしれっとやってきた社長は、黄金のLV5ガシャットを二人に見せるが、それはまだ未完成。何やら思惑のあるらしい社長は、ドラゴンバグスターを倒してデータを回収しなければ力を発揮できない、と二人をあおる。
「グラファイトは俺の敵だ!」
「先生を救うのは僕だ!」
先に鏡は「また私情か」と言っているのですが、これまでのエムが患者に「理想の医者としての対応」をしていたのに対して、今回は「宝生永夢個人としての執着」であってその内実は大きく異なります。ここまで、まがりなりにも「医者として」動いてきたエムが、それを離れた個人的な目的の為にガシャットを欲しているのですが、なにぶん私怨だらけの物語なので、主人公までその輪に突っ込んでしまうと、率直にくどいような(^^;
結局エムがガシャットを奪って去って行き、ケーキを頬張りながらクールダウンする鏡。
「俺とした事が、研修医ごときと同じ土俵に乗ってしまう所だった」
うん、というか、エムが向こうから降りて来ましたね。
「ドクターたるもの如何なる時も冷静でいなければ」
鏡先生はもう、ツッコミ待ちなのか。
さすがに適合手術の事は知っていた鏡は病院長にエムについて問いただし、病院長はエムが適合手術を受けていない事を知っていたと発覚。そしてなんだか、凄く後ろ暗い事がありそう。
なお今回説明された適合手術とは、微量のバグスターウィルスを投与する事で体内に抗体を作り出すというもので、どのぐらい人間を辞める事になるのかは不明。ゲーム病への対策として大々的にワクチン投与が行われていないという事は、それなりのリスクか手間がかかるという事ではあるのでしょうが。
なお鏡は5年前に手術を受けていたという事ですが、5年間ずっと、誰もライダーゲージについて説明してくれなかったのか。
金のガシャットを手にしたエムは、市街地で大規模なアウトブレイクを引き起こしたグラファイトと再戦。そこにモヒカンと前髪も加わり、ドラゴンバグスターも混ざって乱戦に。
「俺じゃなきゃ……駄目なんだ! 先生を救うのは、俺じゃなきゃ!」
ガシャットを渡すふりをしてスナイプを殴るなど、いつも以上に荒っぽい行動を繰り返すエグゼイド。主人公の強烈な動機付けに関わるエピソードで私情に囚われたエムが暴走しているという意図なのかと思われるのですが、エムはいつも基本「患者の為に暴走」しており、普段から同僚の話を聞くわけでも慎重に行動するわけでもないので、「命の恩人の為だから暴走している」というより、度合いの差にしかなっていないのが困った所。
その上で、強いガシャットにこだわる・自分の目的の為に他人の事はお構いなし、というのは要するにエムが鏡や大我と同じ事をしているという描写なのですが、合わせると結局、いつもと同じ事をしているだけなので、それ自体がまずあまり面白くならず。そしてその姿をネガティブに描くという事は、鏡と大我を間接的にぶん殴っているわけですが、いったいどこまでの覚悟があって殴っているのかが、今作はどうも不安(^^;
例えば『龍騎』の浅倉ぐらい思い切れば“悪のライダー”として成立するわけですが、どうにもその辺りの腹が据わっていないように見え、発言のゴロツキ化が進む大我はまだともかく、鏡は初登場からずっと言行が不安定になっているわけです。
“仮面ライダーである事”と“物語からのネガティブな扱い”のバランス取りがとにかく中途半端になっていて、キャラクターとしての足を大きく引っ張っているのですが、早めの改善を祈りたい。
エグゼイドはブレイブの剣を奪うと二刀流でドラゴンバグスターを撃破し、『モンスターハンター』モチーフのゲームで、ドラゴン型の敵を出してさえ、相変わらず致命的にゲーム感の薄いバトル(^^; 弱点部位攻撃とか、ゲームらしさを出す手段は色々あると思うのですが、とにかくアクション監督がずっと苦戦したまま、そろそろ話数二桁になるのに戦闘シーンのピントが合わないのはいかがしたものか。
ドラゴンバグスターのデータ回収に成功したエグゼイドは金のガシャットを起動し、LV5に大大大大変身。
……なんだこの、溢れる着ぐるみ感(笑)
ところがドラゴンアーマーを装着したエグゼイドはガシャットを制御しきれずに大大大大暴走。辺り構わず攻撃を放った末、グラファイトの必殺攻撃を打ち破るパワーを発揮するも、変身が強制解除されてゲームステージから弾き出されてしまう……。
一方、エムの過去を調べていた九条はエムが唯一受けた16年前の手術を担当していたのが日向だと知り、CRを訪れる。
「先生って……本当にあいつの命の恩人?」
エムはなぜ仮面ライダーになれるのか? 仮面ライダー達はグラファイトを倒す事が出来るのか? 次回――チーム・仮面ライダーの栄光?!