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『ビーファイターカブト』感想2

若干、先読みの要素も含めた余談から。
余計なノイズを無くして物語にスッキリ入れるようにとちょっと調べてみたら、メルザード一族が眠りについたという2億年前は、地球の地質代区分でいうと、中生代三畳紀(約2億5千万〜2億年前)。
一つ前にあたる古生代ペルム紀(約3億〜2億5千万年前)の末には、地球史上最大規模の大量絶滅があったと考えられているそうで、これを意識した設定でしょうか。
……まあ、マンモスが生息していたのが約500万年前〜約1万年前頃だそうなので、眠りについていた間の動物もチャージしてあるのがやはり謎ですが、生物種が絶滅すると自動的にメルザード保管庫にDNA情報が送られてきて記録されるシステムなのでしょうか。
……深読みするとなんか怖い。
そういえば前作で7代前の昆虫界の長老が残したメッセージでは、約6500年前(中生代白亜紀)の大絶滅の際にセントパピリアが飛来して地球に新たな命をもたらしたという事でしたが、2億年前にも同じような事があった……という形で前作と繋がるのかなぁ。
こういった大絶滅は地球史上でこれまで5回起きているそうで、もしかしたら、その度にやってきているのか蝶々。……なんだか、余興を見てから帰りたくなった気分もわかるようなわからないようなわかってはいけないような。
ついでに気付いた事として、第1話の甲平の
「自然と人間が調和している地球を、破壊する事は許さん!」
という台詞が、あくまで甲平視点ではありますが、前作では存在していた環境問題に対する意識を示さず、調和している前提で重要な決め台詞にしてしまう事にちょっと首をかしげていたのですが、「コスモアカデミア」という名称に、「アースアカデミアの発展系めいた雰囲気+コスモポリタン」に加えて「コスモス(調和・秩序)」がかかっているとすると、「調和」というのを、今作のキーワードにするつもりで台詞にしたという事だったのかも。
そして5年の間に世界は、科学と昆虫魂が手を組んだ力により、着々と作り替えられているのかもしれない。
つまりコスモアカデミアの真の目的は、全人類に昆虫魂を注入する事で意のままに制御する新帝国ビートルの建設だったんだよ!!
……オチがついた所で、本編感想。
◆第3話「目覚めよ!! 新(ネオ)マシン」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
「誰だ! 人間が作り出した、驕れる都市文明を破壊するのは、誰だ!」
マザーメルザードが生み出した新たな怪人、ディノザーラはティラノ顔が三つ頭という、なかなか面白いデザイン。あと今回気付きましたが、魚次男は顔のサイドに魚眼があった上で、正面は人間の顔に似た目鼻口があって異形ぶりが面白い。
にしても、「儀式だ! マザーが新たな兄弟をお産みになる!」はどうしても、エゴス(『バトルフィーバーJ』)を思い出してしまいます(笑) マザーメルザードが兄弟を生み出すというのも、サタンエゴスの御子として生まれるエゴス怪人、となんとなく雰囲気重なりますし。
「今こそ、地上を原始の姿に戻してやる。人間どもが信頼するコンピューターだの、ネットワークだの、その全てを破壊し尽くしてやるのだ!」
2億年眠っていたという割にはリサーチの早いメルザード一族ですが、この人達の言う眠っていたって、海底に引きこもって食っちゃ寝していた(封印などで外に出られなかった?)という事でしょうか。そして地上侵攻の動機は本当に、怠惰な生活を満喫している間に見覚えのない生き物がデカい顔していて不愉快! レベルなのか?(笑)
地上に出現したディノザーラは都市地下に張り巡らされたネットワーク回線をズタズタに引き裂き、交通インフラが大混乱。
「私のプログラムが!」
警察や官公庁などにも協力して様々なプログラムを提供している天才プログラマーにして、カリスマゲーマーでもある蘭は、信号機の故障などで引き起こされた街の惨状を目にして公衆電話に駆け込むが、その際に助けを求める少女の叫びを聞き逃してしまう。
公衆電話のISDN回線を用いてプログラムを修復しようとするのが時代を感じますが、回線が切断されるとプログラムが異常を起こしてパーキングチケット発券機が爆発するって、いったい蘭は、交通管理プログラムに何を仕込んでいたのか。
これも、コスモアカデミアによる新帝国ビートル建設の為の陰謀なのか。
日本の交通インフラは、既にコスモアカデミアによって意のままにされていた!
今回も割とド派手に市街地が破壊され、そこに姿を見せる兄者とカマキリ。
「我らは、マザーの偉大なる力で、人間以前の絶滅種より、甦った。今こそ、地上に生きる全ての生命を、絶滅させてやる」
「ふざけるな! 誰がさせるか!」
ビーファイターが、この地上の生命たちを守る!」
メルザード一族の位置づけが補足され、命を守るビーファイターと、「有り難く思え。絶滅タイムだ」のメルザードという対立軸も明確になりましたが、これはマザーは、種を絶滅させる事で支配下における――甦らせて意のままに出来る――、つまりメルザード的には、絶滅させる=マザーの支配下に置く、という目的意識と見ればいいのか。
兄者が言うところの「人間」を「現生人類(ホモ・サピエンス)」とすると、その発生がおよそ25万年前とされており、マンモス(約500万年前〜約1万年前)といきなり矛盾している気がしたのですが、兄者の台詞の要諦は「人間以前に絶滅」ではなく、「人間以前に発生(して後に絶滅)」という事でしょうか。究極的には、「この世界では……」論法で、何とかなりますが(笑)
そして、「人間以前の絶滅種」と明確に区切られているので、メルザードが人間にこだわるのは現在の地上の支配種である、という以外の意味もありそうですが、〔Wikipedia:人類の進化〕によると、


7万年前から7万5千年前に、インドネシアスマトラ島にあるトバ火山が大噴火を起こして気候の寒冷化を引き起こし、その後の人類の進化に大きな影響を与えた。
(中略)
現生人類も、トバ事変の気候変動によって総人口が1万人までに激減したという。かろうじて生き残った現生人類も人口減少によってボトルネック効果が生じ、その遺伝的多様性は失われた。現在、人類の総人口は70億人にも達するが、遺伝学的に見て、現生人類の個体数のわりに遺伝的特徴が均質であるのはトバ事変のボトルネック効果による影響であるという。
だそうで、この影響により気候が寒冷化し、ヴュルム氷期(最終氷期)に突入する事も合わせて、仮にこの時期にセントパピリアの介入があったとすると、何らかの作用でそれ以後にマザーの力が地上に及ばなくなっており、兄者が指しているのはそれ以後の特殊な性質を有した「人間」――すなわち、この世界の現生人類は、もしかしたらホモ・サピエンスでは無いのかもしれません。
宇宙からのメッセージ! 人類は、7万年前に一度絶滅していた!!
だからこそメルザード一族は、まずは現生人類(仮称:ホモ・パピリア)を絶滅させる事で状況をリセットしようとしているのかも。
まあまだ第3話ですし、個人的にもこねくり回して弄んでいるだけですが、続編としてセントパピリアの存在前提で考えると、この辺りはちょっと面白い。
メルザードは航空戦力(微妙にわかりにくいけど、芋虫メカの別形態?)も繰り出し、蘭が見落とした少女を救った男二人は、ジャミングビームを放って一時撤退。公衆電話からプログラムを修復しようとするも失敗に終わった蘭は、病院に運び込まれた少女の姿を目にして打ちひしがれる。
「まったくいい加減にしろよな! 命とプログラムとどっちが大事だと思ってるんだよ?!」
「蘭、おまえは今、ただのプログラマーでも、ゲーマーでも無いんだぞ!」
イムリーに、『エグゼイド』のドクター達に聞かせたい台詞(笑)
かなりの不測の事態でしたし、蘭はあくまで被害の拡大を止める為に自分で出来る事をしようとしていたわけなのですが、ヒーローになった身であるからこそ余計な言い訳をせず、“起こってしまった結果”に対して少女に謝る、というのは良かったです。
会話の流れからすると、蘭があまり嫌な感じにならないように演出した結果で、脚本ではもう少し、状況判断を見誤ったというニュアンスが強かったのかもですが。
「蘭さん、蘭さんって、ビーファイターだったんだ。すごーい」
「……私は今、ビーファイター。……あの時、何をおいても、超重甲しなきゃ、戦わなきゃいけなかったんだ」
「がんばって、蘭さん。みんなを助けて、守って、お願い」
パイロット版ではかなりおざなりだったヒーローの自覚を蘭が得て、ここで少女と約束する事で、BFカブトとは如何なるヒーローなのか、という位置づけが示されたのも良かったです。
力だけではなく、ヒーローとしての自覚を強くした新たなビーファイター達だが、暴れ回るディノザーラの影響はビートルベースにまで及び、火を噴く基地のコンピューター。
異常を起こしたコンピューターが爆発する、というのはまあお約束なのですが、ネットワーク回線を切断されただけで、本体が熱暴走しているわけでも何でもないので、蘭が何か仕込んでいたとしか思えません(笑)
セキュリティ! セキュリティですよ! 自爆はセキュリティの基本なのです!!
完成間近だったネオビートマシンも出撃不能になってしまうが、蘭が生き残りのコンピューターを使って即席で緊急発進プログラムを組み上げる事を思いつき、発電機代わりに変身を要求されるカブトとクワガー(笑)
変身して気合いを入れると電気が発生するという物凄い力技ですが、昆虫魂なら、ありそう。
また、蘭がプログラミングしている間に男二人がアーマーの負荷に耐えながら発電している姿を挟む事で、棒立ちになるのを回避したのは、良いバランスになりました。
サポートAIのビットにも意味が与えられ、完成したプログラムでいよいよ出撃するネオビートマシン。今回も気合いの入ったメカ特撮で、背後で流れる挿入歌は、主題歌より格好いい(笑)
よく聞くと、
地球は新しい創世記
とか、若干危ない歌詞ですが、全ては新帝国ビートルの(以下略)
新マシンはメルザードに対抗する為に先代ビートマシンに改良を加えたという事で、テントウメカが両翼にカブトとクワガタを搭載して戦場まで輸送するという新機軸を織り込み、そこから離脱したカブトメカが翼を広げて短時間なら飛行可能、というのは驚きもあって特に格好良かったです。
しかし、クワガタンクは酷くないですか。
テントウのステルスジャイロも開き直りが凄いですけど。
カブトロンだけ、主役メカという事で外さないようにした感じ(笑)
ディノザーラはステルスジャイロに撃たれて弱った所を刺殺されそうになるが、そこに立ちはだかる恐竜兄者。
「俺と勝負しろ。一騎打ちだビーファイター!」
「なにぃ?!」
「どうした。三人がかりでないと、怖いのか?」
「ふざけるな、勝負だ!」
挑発に乗った金が突撃し、性格として納得できる因縁付けに……という所でなんと、つづく!
だいぶ事故気味だったパイロット版に対して、問題点が色々と補われてかなり面白く感じたのですが、『エグゼイド』第10話の感想をまとめた直後に見た為、変なフィルターがかかっていた可能性はあり(笑)
撮影スケジュール上、通常3−4話は1−2話の完成映像を見る前に作る事になるそうですが、『特警ウインスペクター』以来のメタルヒーロー参加となった東條監督のパイロット版よりも、ローテ監督として10年近くシリーズを支え続ける三ツ村監督が、このぐらいの案配だろう、と撮った結果、『ビーファイター』らしくなった、というのはあったのかも。