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『ウルトラマンオーブ』感想・第16話

◆第16話「忘れられない場所」◆ (監督:市野龍一 脚本:三浦有為子)
キャップの見舞いに訪れたシンとジェッタは、もしかしたら過去にもウルトラマンと怪獣の戦いがあったのかもしれない……と、1908年に起き、人類史上の大きなミステリーとして今も原因不明の大爆発、ルサールカ大爆発について言及。
以前に、かつてのオーブとゼットンの戦いが、この世界におけるツングースカ大爆発の原因なのでは? と推測しましたが、名前は違うものの明らかになぞらえた出来事が登場。そして、ルサールカの地はナオミのひいひいお祖母ちゃんの故郷であり、曾々祖母は生まれ育った地から日本に渡ってきたのだった……と血の因縁が語られ、これまで匂わされてきた幾つかの要素が形に。
一方、世間ではウルトラマンオーブに対する批難が巻き起こり、事件の被害者であるナオミは知らぬ間に、渦中の人となっていた。
vsギャラクトロンでの大暴れを踏まえて、オーブを巡る社会情勢の変化が盛り込まれるのですが、ここまで15話、“オーブに対する社会の反応”というのは基本オミットされていた要素なので、急に持ち出した感は否めません。
またそれを持ち出すと、マガオロチやギャラクトロンはもっと洒落にならない被害を引き起こしているわけで、怪獣の破壊活動による社会への影響は描かれないけれど、ウルトラマンがビートルを撃墜した社会への影響は描かれる、というのはやや全体としてバランスを欠いているように思えます。お約束として怪獣被害の影響が出ていない(事になっている)のではなく、出ているけど描かれていないだけ、と捉えた上でなお。
これをやるならせめて、今作におけるウルトラマンの立ち位置の定義付けを明確にしておかなくてはいけなかったと思うのですが、実は今作、SSP主観を重視するあまり、世間のウルトラマンへの反応、がほとんど描かれていません。予知夢回でゲストが「救世主」扱いしていたのは劇中の積み重ねがなくて唐突でしたし(そしてその後も特に補強されない)、馬場先輩回で子供達が応援していたのは演出上、今作としての定義付けになりえませんし。
そして前回の小舟社長も、あれだけ語っているのにウルトラマンについてはほぼ言及していないわけで、言ってみれば物語の中で蜃気楼のような存在だったウルトラマンオーブが急に「世間の悪役」になる事に、違和感。
この先、物語として集約されるのなら良いのですが、従来シリーズの多くにおいては防衛隊ポジションが担保してくれていたこの“ウルトラマンの立ち位置の保障”を、曖昧なまま進めてきた今作にとって、相性の悪い要素を持ち込んでしまったように思えます。
それこそ逆に、SSP主観というのが今作の特性にして独自の強みなわけで、もっと別のアプローチがあったのではないかなと。最終的に上手くまとまって、おお成る程、と思うかもしれませんが、現時点ではこの要素の持ち込みは少々不満。
「ビートル隊内でも、彼への批判は高まってる。次に、ウルトラマンオーブが、我々の前に姿を現した時、ビートル隊は、彼を攻撃する事になるかもしれない」
だがナオミは、ギャラクトロンのコアに囚われていた自分同様、オーブも何か抗しがたい力に振り回されていたのではないか……とオーブへの恨みや憎しみを否定。ナオミも隊員も無事だったのだし、これまでオーブに助けられてきた事を忘れてはいけない、とナオミ母もそれを指示する。
「あのウルトラマン、日頃の行いがいいんじゃなーい?」
……いや、良くはないような。
「でもね、ガイくんの事は、すっぱり忘れなさい」
「え?」
「こーんな大事な時に頼りにならない男なんて絶対駄目!」
それは是非、本人の目の前で言ってあげて下さい、お母様。
「若い娘はねー、みんなガイくんみたいな、つかみ所のない男に惚れるもの。だけど、退屈でも、地に足ついた男と一緒になった方が幸せなの」
キャップの周り、地に足の付いた男いませんね……。
騒がしい面々を追い出した病室で、ナオミは曾々祖母の幸運のお守りだったというマトリョーシカを見つめながら、かつてのガイとのやり取りを思い出す。
「ガイさん……あなたは、だぁれ? ……どこに居るの?」
その頃、焼きそば好きの風来坊は日本から遠く離れたルサールカの地に居た。
「ルサールカ……あれから100年か」
ガイは、森に倒れていた自分を、ナターシャが拾ってくれた日からの出来事を思い出す……。





(しばらく、いちゃいちゃ回想をお楽しみ下さい)



だがゼットンの登場によって安らぎの日々は終わりを告げ、ガイはオーブに変身。オーブは辛くもゼットンを倒すが、戦いに巻き込んだナターシャを喪ってしまう(これはつまり、「居るべきじゃない所で居合わせる。不注意の固まりみたいな女」の血統なのか)。そしてその死闘の中で放出されたエネルギーこそが、ルサールカ大爆発の原因であった……と、第1話冒頭と接続。
……これ見るとガイさん、ベリアル先輩と関係なく、昔から力のコントールが下手な人だったのでは。
ナターシャに預けていたハーモニカだけを、草木の根こそぎ吹き飛んだ荒野で見つけ見つけたガイは失意の内に100年あまりを過ごし――現在。
「やはりここに居たか。ここに来ても失ったものは戻らない。おまえは昔の自分には決して戻れないぞ」
炎上したのでTw○tter辞めます宣言してアカウント削除した筈のジャグラス・ジャグラー、別アカで復活し、さっそく煽りまくり。
「ベリアルが新しいお前を引き出してくれたじゃないか。あれがお前の本当の姿だ」
「違う……」
「恥じる事はない。力を持った者は、己の力を試す為に、他のものを破壊し、支配したくなるのさ。ただし、おまえの場合大事なものほど壊したくなるようだな。――昔も、今も」
おまえもうブロック! ほんとブロック! とガイはジャグラーに殴りかかってしばらく光弾の撃ち合いとなるが、ガイを叩き伏せたジャグラーが先のレッドファイトで切断されたマガオロチの尻尾を召喚すると、それを触媒にゼットンパンドンを組み合わせ、自らユナイト。
「超合体――ゼッパンドン!」
マガオロチの体型をベースに、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』最終話の怪獣が合成されているという豪華な合体魔王獣ゼッパンドンは、黒・赤・黄の配色に、歪に膨れあがった背部という異形のバイオモンスター感が非常に格好良く、ここまでの怪獣の中でもかなり好き。
ガイは、オーブ光に変身して立ち向かい、八つ裂き光輪の用い方を色々と工夫している今作ですが、遂に、食べられる。
「ひゃっ! 光線技はゼッパンドンには通用しない」
ならば直接打撃だ、と最近すっかり役に立たない棒きれを振り回して至近距離で必殺技を叩き込むオーブ嵐だったが、2mの棒はとうとう、ゼッパンドンの体内に吸収されてしまう。
話数的に玩具販促が忙しい所はあるのでしょうが、集中活躍→ひのきの棒、と来て、オーブスラッガーランス、遂にお役御免?(^^;
「闇の力を頼れ。このまま滅びるか、闇に堕ちるか、お前にはそれしかないんだ!」
ジャグラーの連続粘着リプを受けるもベリアル先輩への土下座を躊躇ったガイは、オーブ炎へと変身。最後の力でストリウムダイナマイトを放つが見るからに火炎耐性を持つゼッパンドンに通用するわけもなく、北の地でまたも完封負け(2話ぶり3度目)。
「どこだ、ガイ……どこだぁぁぁぁぁ?!」
先輩達が退社し、ダイナマイトの爆炎に紛れて森を彷徨っていたガイはしばし気を失い、まるで初めて会った時のように手を差し伸べてきたナターシャから、真っ白なカードを手渡される。
「これは……」
「あなた自身よ。ありのままのあなた」
気がつけばそこに居たのは、ナターシャではなく、ナオミ。
「戻ってきて、私の元へ。私は、ありのままのあなたを受け入れる」
……クレナイ・ガイ、とうとう、ろくでなしの駄目男が女の子に言われたい台詞ベスト1を妄想に言わせてしまう。
……凄い、凄いよクレナイ・ガイ、後半戦に入っても全く衰えを見せない残念ぶりで、物凄い逸材ですよ!!
回想シーンのナターシャとの出会いでは、傷つき疲れ果てた姿で座り込んでいたガイですが、もしかして、光の国で就職に失敗した上にそれが原因で彼女を別の男に取られ、失恋した心の隙間につけ込まれてデート商法に引っかかって大量のリトグラフを購入してしまい、カードの負債で自己破産の末に組織に負われて着の身着のまま宇宙を放浪した末に地球に辿り着いたとかなのか。
朦朧とする意識の中、遠ざかり消えていくナターシャ/ナオミの姿はやはり幻影であり、しかし目を覚ましたガイの手の中には、何も描かれていない真っ白なカードが握られているのであった……。
「俺には何も見えない。……己の心も、守るべき未来も……」
一方、ガイを見失ったジャグラーは白衣コスプレに身を包み、ナオミの病室へと迫っていた。真っ暗な病院の廊下を火花を上げて引きずられる日本刀、というホラーな描写で、つづく。
……これはあれか、次回、マトリョーシカが、「普段手は隠しているだけだ!」とナオミを守るのか(おぃ)
忘れられない場所で傷つき倒れ瞳を伏せるガイは、果たして白紙の未来の中に如何なる自分の姿を見るのか。次回――自分で「数奇な運命」とか言う辺りが残念だとそろそろ気付いてクレナイ・ガイ!!