◆第20話「復讐の引き金」◆ (監督:冨田卓 脚本:内田裕基)
見所は、終始やたらと理性的なメトロン星人。
「君には関係のない事だ。気にするな。そんな暇があるなら、この星の雲行きについて考えたらどうだ」
崩壊した惑星侵略連合の復讐の為に舞い戻ってきたメトロン星人が、ジャグラーにトドメを刺そうとしている所に行き合うガイ、それを止めようとして正論を返される(笑)
「それに、ジャグラーを野放しにして、手を焼くのは君自身だぞ」
「…………生憎、手ならとっくに焼いてるよ」
苦笑して変な間で返すガイですが、ジャグラーが追い込んで追い込んで追い込んだ末に、地獄の淵から立ち上がったガイに叩きのめされて惨めに這いつくばるのが最高に快感なのに対して、ガイはガイでそんなジャグラーに粘着されながら、ジャグラーの仕掛けてくる数々の嫌がらせと陰湿な企みを乗り越えて夕陽に向けてハーモニカを吹く俺が好きなのか。
逃走したジャグラーが偶然ナオミに助けられて介抱を受けている頃、街ではジャグラーの行方を追う為にメトロンが放った円盤が次々と目撃されていた。ガイは円盤とキャップを探すSSP&一徹とバッタリ出会い、一徹に向けては「お疲れ様です」と相変わらず笑顔で敬意を払います。
「私の目的はジャグラーを倒す事。他人の星に興味は無い。だが、邪魔をするなら、君とて容赦はしない」
「理由はどうあれ、この星の平和を脅かそうというなら、俺は戦う。どんな相手だろうとな」
3人が円盤を追って去った後にメトロンが姿を見せ、ここで改めて、過去のトラウマを乗り越えた後、ウルトラマンオーブとしてのガイの地球に対するスタンスを確認。
「素晴らしい心構えだ。まさか……君は本当に気付いていないのか? 黄昏美しいこの星を覆わんとする、暗雲に」
メトロンは不穏な言葉を残して姿を消し、その頃ジャグラーに引き留められたキャップは、ガイとの関係を問い質していた。
「ガイより俺の方が勝っていた」
「え?」
「……かつて俺とガイは、同じ勢力に身を置きながら、腕を競い合ってお互いを高め合っていた。……実力なら俺の方が上だった。だが――光はあいつを選んだ」
あくまでジャグラー(信用できない語り手)の自己申告ですが、ガイとジャグラーはかつて、強敵と書いて「とも」と呼ぶ仲であったと明かされ、ドラフト指名漏れで就職に失敗していたのは、ジャグラーだった!
「光から見放された俺は、銀河を彷徨い、そして気がついた。闇こそが光に勝る力だという事を。俺に光など必要なかった」
ウルトラ甲子園に捧げた青春はなんだったのか……夢も希望も失い、裏社会に落ち着いたジャグラーはガイへのストーキングを開始。やさぐれている男を見るとタコ焼きを恵まずにはいられないナオミは、どんな人間も闇を抱えているというのなら、闇を求めるジャグラーの中にも光があるのではないかと《説得》コマンドを使用するが、そこに現れるメトロン星人。
「そこをどけ。地球人を巻き込むつもりはない」
あくまで復讐の対象外には理性を持って接するメトロン星人だが、キャップはジャグラーをかばって手を広げる。
「怪我している人を見捨てるなんてできない」
「なぜかばう? そいつは正真正銘の極悪人なんだぞ」
「極悪人なんかじゃない。だって……」
ナオミに向けられるラウンドファイヤーの銃口だが、間一髪、ガイが駆けつけ、もはやキャップ、ガイが宇宙人と組み合っていても平然と受け止めていますが、わかっていても口に出さないのが女の度量です!
「離せ! 私の忠告を忘れたのか!」
「たった一人でも、誰かの平和が脅かされるなら、俺は戦うっ」
ここで言う「たった一人」とはナオミの事なのでしょうが、話の流れからはジャグラーの事にも聞こえるし、恐らくその要素がガイの心情として0%ではないのが困った所。
もともと惑星侵略連合に所属して地球を狙っていたわけですし、悪い宇宙人なのは間違いないのでしょうが、メトロン星人があくまで宇宙人同士の諍いとしてフェアに決着を付けようとしているのに対し、地球(人)の平和を明確に脅かした前歴を持つジャグラーをガイが一方的にかばう形になっているのは、筋が通らずどうも納得が行きません(^^;
悪の宇宙人による私刑は見過ごせないし、悪人に人権と理屈と弁解の余地は無いというなら、いみじくもメトロン星人が指摘するようにジャグラーも条件は同じですし、ジャグラーが怪獣を放っている事までは知らないキャップはまだともかく、ガイの行動にはかなり問題を感じ、せめてもう少し、やむにやまれぬ成り行きに見えるように演出した方が良かったのでは。
……もっとも、ガイは基本的に私情で戦っているので、ジャグラーに対する複雑な感情は選択の揺らぎにはなりうるのですが、これまではともかく、今後劇中でジャグラーが(間接的に)被害を出した場合、ガイは私情で筋を通さなかった事に責任を取れるのか。
せめてここまでの物語の中で、ガイがジャグラーに落とし前をつけさせようとする描写があったならまだ良いのですが、基本的に劇中でそういう描写がされていない(SSPに不在の時にジャグラーを捜し回っている可能性はありますが)上で、ガイは基本、突っかかってこない限りはジャグラーを放置しているように見える為、どうにも引っかかってしまいました。
「こんな形になって残念だよ! ウルトラマンオーブ!」
メトロン星人は巨大化し、ガイはオーブ嵐に変身。竹槍を振り回してまさかの大活躍を見せるオーブ嵐だったが、背後から宇宙船の攻撃を受けてしまい、大爆発。
あ、死亡フラグだったのか……と思ったら、ダメージを受けながらオリジンを発動したオーブは、挟撃を跳ね返して、宇宙船にウル仮面ソードを振り下ろすが、両断……できない(笑)
オーブオリジンの戦い方、どう見てもカリバーに振り回されている(使いこなす力量が足りていない)感じなのですが、これは意図的な描写なのでしょうか(^^;
気を取り直して放った俺の必殺技・ウィンドによって巻き起こした竜巻によりメトロンと宇宙船が衝突し、宇宙船の爆発に巻き込まれるも執念で炎の中から躍りかかってきたメトロン星人に、俺の必殺技・振りかぶってストレートのカウンターが炸裂。
「……なんと美しい……この夕陽も、闇に呑まれてしまうのか……っ!」
愛する黄昏の中、夕陽をバックに末期の台詞を残して、メトロン星人は大爆死するのであった。
以前に出た時はもっと小物めいた印象があったメトロン星人ですが、夕陽も含めて原典オマージュという事か、オーブと地球人に対して理知的な対応を取り続けた末、執念を見せるも無念の爆死を遂げる姿はなかなか印象的になりました。
「ありがとう、オーブ」
「……俺からも礼を言うぜ、オーブ」
の直後にジャグラーが勢いよく右手を突き上げるので、また、ガイとジャグラーの間だけで通じる、二人の絆のポーズかと思ってドキドキしたのですが、その手の中に戻ってくる日本刀。
キャップに日本刀を突きつけたジャグラーは、ひきつるような笑みを浮かべながら、キャップを利用してオーブにメトロン星人を倒させた、と説明する。
「私を騙して、ガイさんやオーブを利用したってこと」
……これを聞いて愕然とするキャップは、さすがに頭悪すぎませんか(^^;
「弱った男の身の上話を聞かされれば、おまえみたいな女はイチコロさ。……おぉぉーおぉ俺を必死でかばった場面は――傑作だったぜ」
ジャグラーさん、演技に気合い入りすぎて、発声が表記不能に(笑)
「最っ低」
……ええとキャップ、面と向かって何度かジャグラーに殺されそうになっている筈なのですが、そういう人だとわかっていて、敢えて助けたのではなかったのか。
キャップの“愚かだけど尊い善意”の話なのかと思っていたら、“愚かなだけの頭脳”の話になってしまって、愕然。
「お陰でこの剣を取り返す事ができた。サイコウの気分だ。じゃあね。うひゃ、うひゃははははは」
ジャグラーの役者さんに罪は無いのですが、キャップの頭悪い加減とガイの責任問題に関して物語が破綻気味になったので、ジャグラーの気持ち悪い演技で誤魔化して一点突破を計ろうとしているのが、どうも露骨に過ぎていただけません。
「この星の奥底に……まだ闇の力が眠っていたとはな。ふは、ふふははははは、はっははははははははは!!」
愛刀を取り戻したジャグラーは、夜に沈んだ街を見下ろしながら、何かを感じ取って喜悦の表情を浮かべる……で、つづく。
エピソードテーマの掘り下げ不足はしばしば感じるものの、話の構成という点に関しては大きな崩壊はあまり無い今作なのですが、今回は過去の因縁と最終盤への伏線を盛り込むのが大事で、他はだいぶ雑になったという印象。特にナオミの扱いは酷くて、前回今回でナオミの株がストップ安に転じて上場廃止になりそうな勢いなのですが、残り話数でミラクルは起きるのか。
次回――怪奇大作戦?