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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第10話

◆Space.10「小さな巨人、ビッグスター!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)
 見所は、「さっき食べたスパーダの料理、いつもと味が違った!」とハミィから偽物疑惑をかけられ、「なんて事を! ぼ、僕の料理はいつも完璧だよ!」と血走った目で反論するスパーダ。
 ……あー、この人あれだ、
 「偉大なるシェフの料理は常に完全無欠、究極にして至高であり、僕が味付けを間違える事なんてあり得ないのだからつまり、悪いのは貴様のその舌、僕の料理を味わう刺客のない、腐った板きれ同然のその脂身が、ペラペラペラペラ回りやがって罰として根っこから引き抜いてやるよぉこの世は全て僕の厨房、さあ慈悲を乞え、泣き叫べ、許されるのはただ一言、ウィ・シェフのみだふひゃひゃはははははぁ!!」
 みたいな、追い詰めてはいけないタイプだ。
 冒頭でモアイ基地を破壊して悠々とオリオン号に帰還するキュウレンジャーだったが、モスマン代官の振りまいたミクロ細胞がボイジャーを経由してオリオン号の表面に付着し、その制御を奪ってしまう。オリオン号はキュウレンジャーを乗せたまま太陽目がけて急加速し、一挙全滅の大ピンチ!
 一方、小太郎を地球に送っていてこの難を逃れたラッキーはモスマン代官を追跡するが、同行していた小太郎に、大熊キュータマに宿っていたビッグベア総司令の幽霊が乗り移って一騒動。
 前回、ショウを信じて後を託したのかと思われたビッグベア総司令が、あんないい加減な奴に後を任せるのではなかった、とぐちぐち未練たっぷりなのですが、その場の勢いだったのか、玉砕。
 本人の目の前で「おまえはなっとらん」と言うなら“表向き”という事になるのですが、未練を残した幽霊が他人に向けて言うので本音に聞こえてしまうのが困った所。
 英雄的な玉砕を美化しない為の諧謔とも取れますが、ショウが必死に総司令の意志を継ごうとしていただけに、実はほとんど期待していなかった、というのがあまりにも残酷。
 ショウ側から語られた出来事がもう一方の視点からも語られる、という発想自体は面白かったのですが、内容の方は少々悪趣味な見せ方になってしまった気がします。
 ショウのリュウバイオレットとしての無謀な戦いを止めなかった事を悔やむビッグベアは、戦いに加わろうとする小太郎を止めようとするが、自分の故郷を自分で守る希望の星になりたいという強い思いに打たれて力を貸し、大熊キュータマから生じた小熊キュータマを用いた小太郎は、ビッグスター・コグマスカイブルーへと変身!
 リュウバイオレット及びリュウコマンダーは、司令の開発した疑似キュウレンジャーシステムという事だったのですが、小太郎はセイザブラスターで普通にスターチェンジしてしまい、加速をつけて揺らいでいく9人の究極の救世主伝説。
 早い者勝ちレベルなんですが。
 これもあって前回の「伝説を超える」という言葉だったのかもしれませんが、さすがに破壊するのが早すぎて、“ヒーローになる事”の意味まで軽くなってしまいました。
 前回、偽物であるという諦念から手段を選ばず次代の捨て石になろうしていた男が、それを乗り越えて前を向く事で、誰だって在り方次第で本物になれる、という事を丁寧に描いた直後だけに、“在り方”の重さがあまりにも違いすぎます。せめてもう少し間を空けて、しばらく一行に同道した小太郎が、色々な考え方に触れて……みたいな形には出来なかったのか。
 その距離をひとっ飛びできるのが、様々なしがらみに囚われない“子供”という事ではあるのでしょうが、実際に変身して戦う所まで行ってしまうと、物語としての質量の不足が気になってしまいました。
 「弟の次郎に、約束したんだ」の回想シーン以外、まったく次郎に触れられないので、
 それが、次郎とした最後の約束だった……
 みたいな背景なのかもしれませんが!
 スカイブルーは、さすがにあからさまな武器を持たせる事には抵抗があったのか、先に錘を仕込んだ袖を振り回す、みたいな攻撃法で、アクションはなかなか面白かったです。
 オリオン号サイドは、前回格好良く描きすぎた司令を適度に軽妙に戻す意図もあってか、名探偵パロディとか、気絶したナーガは転んで頭を打っただけだったとか、くだらない系のギャグ連発で、笑えるかどうかは好み次第といった所。
 赤&空がモスマンを倒した事で制御が戻り、オリオン号は太陽突入を回避。地球圏に帰還して一同合流、ビッグベアの幽霊は皆を激励して姿を消し、一件落着……と見えてさすがにスティンガーが小太郎参戦に納得いっていない雰囲気ですが、予告の感じだと、次回、これは拾ってくれるのか。チャンプ×スティンガーに始まり、個人間のあれやこれやをなぁなぁのまま下流下流へと押し流していく事には定評のある今作ですが、さすがにこれは拾ってほしいです。
 前回が割と好みの話作りだったのに対して、今回は色々な意味で対を為す形になってしまい、温度差を受け止めきれず。
 ビッグベアが取り憑いている時だけの一時的変身なのかと思ったらそうでもないようですし、“可能性の象徴”としての、小太郎/コグマスカイブルーはありだと思いますが、正直、このままのレギュラー参戦は個人的には全く嬉しくありません。後からもう少し補強してくる可能性はありそうですが、とりあえず次回、どういう位置づけにしてくるかを待ちたいと思います。