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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第23話

◆Space.23「俺様の盾になれ!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:毛利亘宏)
 前回に引き続き、スパーダとラプターはツルギに同行。ツルギから飯を作ってくれと頼まれたシェフは、「一流のシェフには客を選ぶ権利がある」と拒否(笑) さらっと言ってのけるのは面白いといえば面白かったのですが、多少気に入らない相手でも料理の前には皆平等、ぐらいの思想の持ち主かと思っていたのでやや意外でした。というかスパーダ、ツルギとキュウレンジャーリベリオン)を結ぶ潤滑油になろう、とか、そういう意識は一切ないのか年長者。
 感情の赴くままに活動する、というのはキュウレンジャーの基本スタイルなのでしょうが、早く帰ってきて、チャンプ。
 そのチャンプとバランスは、森エルフからツルギの情報を聞き出そうとするも、交渉失敗。…………オライオン様から大事なマジックアイテムを預かり、ラッキー達を伝説の救世主と認めた筈の立ち位置なのですが、関係者も大概、感情の赴くままに行動します。
 そんな折、ドン・アルマゲの情報を掴もうとするツルギ一行は、ジャークマター放送局へと乗り込み、テロリストらしく放送ジャック。
 「全宇宙の皆さん、ご機嫌よう。俺様は不死身の男、鳳ツルギ。初代宇宙連邦大統領にして、真の救世主。そして、かつてドン・アルマゲを倒した、唯一の男だ」
 ラッキー衝撃、みたいな演出でOPに入り、その後もオリオン号メンバーが次々と驚きを口にするのですが……とにかく、ドン・アルマゲとはどんな存在かが劇中でほぼ語られていないのにキュウレンジャーサイドだけで盛り上がっている為、ぽかんとしてしまいます(^^;
 ニュアンス的にはRPGなどで言う所の“大魔王”的存在なのでしょうが、その大魔王が如何なる脅威なのかが噂話レベルでも描かれていない為、「倒した」とか「生きている?」とか「信じられない」とか言われても、驚きに全く共感できません。
 これが従来通りに現代社会を舞台にしていればまだ、「ドン・アルマゲ」という同姓同名の別人の可能性は限りなく低かろうという判断が自然に働きますが、今作の世界観ではその名前だけでは特異性が発生しないという観点がどうも抜け落ちているように見えます。
 ドン・アルマゲという存在をミステリーの核にするならば必要なのは、今作におけるその特異性の積み重ねなのですがそれが様々な点で出来ておらず、大きく変えた世界設定に対して、新たな作劇を打ち出せていない、という今作の根本にある問題点がまた顔を出す事に。
 こうなるとツルギ以前にもう少し、幕府ではなく将軍に対して因縁のあるキャラが居ても良かったかな、と。
 ツルギは全宇宙へ向けた放送で幕府を挑発し、放送局へ乗り込んでくるメディア代官。代官達と戦う為にツルギらが変身した所に、巻き込まれた民間人救出の為に赤・青・緑・銀・空が参戦するが、そこへツルギが待ちに待った大物――家老の遙か上(え……)の存在であるジャークマター最高幹部、副将軍のテッチュウが降り立つ。
 「知らなかった……ドン・アルマゲもそれだけ本気という事か」
 今日もオリオン号待機中の、リベリオンでそれなりに偉い筈の人、シリアスな口調で打破すべき現政府の権力構造をろくに理解していなかった事を告白。
 なにぶんカローの「遙か上」だそうなので、多分
 〔88人のカロー → 77人のエラカロー → 66人のツヨカロー → 55人のウタレヅヨカロー → 44人のスゴカロー → 33人のモノスゴカロー → 22人のチョウスゴカロー → 11人のフハハコワカロー → 5人だけどシテンノー → (以下略)〕
 ぐらいは存在すると思われますが、敵も味方もぐだぐだです。
 ショウ司令は民間人の救助を最優先して一時撤退を指示するが、さっそく副将軍に切りかかるマジ鳳凰。その姿にラッキーが激しく動揺するのですが、いやもうその人、方針も命令系統も違うのわかっているのだから、ひとまず放っておけばいいと思うのですが。
 そして鳳凰と鉄柱の激突において、鳳凰だけが一方的に鉄柱に見覚えがある事が伏線らしく描かれるのですが、単純に、先祖とそっくりの15代目鉄柱とかなのでは(笑) 今作の設定上、“同じ怪人”ではなく“同じ宇宙人”なわけですが、それこそ前回、色違いの同種族をやった直後なわけで、こういった所にも細かい手配の行き届かない部分が目についてしまいます。いやまあ、伏線なのでしょうが。
 そうこうしている内にキュウレンジャーは戦闘に巻き込まれ、あくまでマジ鳳凰を止めようとする獅子。
 「戦いをやめろ! 被害が大きくなるだけだ!」
 いやだから、単独で宇宙戦艦ぶった斬るヤツは放置して、早く、民間人の救出の為に動いた方がいいのでは。というかラッキーの中では、救助すべき民間人って、スタジオの中にしか居ない事になっているのでしょうか。
 無駄な問答をしている内に、何故か1人だけスタジオに残っていた民間人クルーに流れ弾が向かい、かばったワシピンクが損傷。スタジオに駆けつけた時点で真っ先にナーガと小太郎が民間人を外に逃がしているのですが、どこから出てきたのか、この人。逃げ遅れる(或いは戻ってくる)理由があったのなら絶対に描写が必要な場面であり、前回に続いて、ツルギに「いのちをだいじに」を否定させてキュウレンジャーと対立させる為だけの無理な展開と演出になっていてまごうことなき大惨事。
 皆がピンクと民間人に駆け寄った所で画面の外からナーガと小太郎がやってきて逃げ遅れた男を誘導し、「民間人の避難完了、退け」とか言い出すのですが、一人だけ取り残される状況が全く説明されていない為、言い訳にしても酷すぎる演出。せめて3人ぐらい残っている内の1人に当たりそうになった攻撃をかばって……だったらまだ納得できたのですが、加藤監督がホントずっと、『ジュウオウジャー』の出がらしみたいな状態が続いていて辛い。
 「あんた……自分が何をしたかわかってんのか!!」
 ラッキーはツルギに向けて憤激をぶつけ、自分たちのミスを他人に押しつけたぞ!!
 ツルギ登場後のラッキーがよくわからないのは、ツルギを快く思っておらず、協調性が無いのも理解しているのに、何故かツルギに対して一方的に仲間意識を求めている事。そのくせ自分はツルギではなく民間人の救出に来たと言い放っており、自分本位の言行がいつにも増して悪化しております。これがツルギはラッキーを遠ざけようとしているけど、ラッキーが一方的に(元来の依存理由だったキュータマに選ばれた救世主として)ツルギを信頼している、などという構図ならわかるのですが、前回からずっとツルギに対してしかめっ面で敵意を向けまくっているのに、どうしてツルギが自分たちに配慮した行動を取ってくれると思っているのか、人の心がわからなすぎてラッキーらしいといえばらしいですが。
 まあツルギはツルギで秘書とシェフをレンタルしっぱなしなのでその分はキュウレンジャー側に対して譲歩する余地はありますが、そう考えると大サービスのマジ煙幕脱出は秘書を救う為という事でツルギなりの一貫性は見えます。
 「何をした? 宇宙を救おうとしただけだ。小さな事に囚われてちゃ宇宙は救えない」
 ラッキーに食ってかかられたツルギだが、副将軍を倒す事こそが宇宙を救う近道だとうそぶき、怒れるラッキーを一蹴。
 「犠牲もなく宇宙を救えるなんて思うな。俺様なら、迷わず救われる命が多い方を選択する」
 「犠牲? ラプターの怪我も、必要な犠牲か!」
 怒声をあげるラッキーに対し、ツルギはあくまで飄々として悠然とした態度を崩さない。
 「俺様と一緒に戦いたいなら、俺様の盾になれ」
 「盾? 誰がお前の盾なんかに!」
 「かつての仲間は、俺様の盾になった。ある者は二度と立ち上がれぬ体となり、ある者は命を失った。それが出来ないなら、救世主の名前を返上しろ」
 為政者の心構えという事も含めてか、大を取るか小を取るか、という普遍的なテーゼで大を取ると断言したツルギは案の定、序盤ラッキーの暗黒面を煮こごりにしたようなキャラに。
 ラッキーが野生で行っている事を理屈で言語化しているともいえますが、ラッキーがやたらとツルギに苛立つのは、同属嫌悪なのではなかろうか、という気もします。
 「俺様は一人で、永遠の命を手に入れた俺様にしかできない使命を果たす」
 「永遠の命? わけわかんねぇよ!!」
 殴りかかろうとするも仲間に止められたラッキーは立ち去っていき、ツルギへの不信感を募らせながら、その後を追っていく青銀空緑…………損傷したラプターを放置して。
 「あ〜あ、頭に血が上っちゃって、若いねぇ」
 ラッキー大事のガルはわかるとして、他の3人が凄く酷いのですが、結果として、居残ったスパーダの株が急騰する事に(笑) やはり、変態の道を選んだのは正解だったのか。
 話の都合でこのパーティ分けを維持しないといけないのでしょうが、その為にはキャラクターの自然な感情も亜空間にポイ捨てされ、惨事のインフレ度合いが光速で『ブルースワット』に近づいてきました。
 チャンスコンビが森エルフとの再接触に成功し、オリオン号組はエルフから、ツルギによって修復を受けたラプターとその自称保護者はツルギ本人の口から、ツルギの過去について教えられる。
 鳳ツルギはかつて、鳳凰キュータマの力で永遠の命を得て、宇宙を統一。だがその統治に叛旗を翻す革命組織ジャークマターが出現し、ツルギは88星系から集めた勇者とともにアルゴ船に乗り込んでドン・アルマゲの元へ殴り込みをかける。しかしアルマゲの力はあまりに強大で勇士達は次々と倒れ、ツルギは永遠の命を捨ててその力をぶつける事でなんとかアルマゲを撃破。88勇士の生き残りであったオライオンは将来起こるかもしれない変事に備え、傷ついたツルギをアルゴ船の中に眠らせ、そして300年あまりが経過した……。
 ようやくアルマゲ問題が解決すると共に、ツルギのキュウレンジャーに対する悪態はかつての凄絶な戦いに起因し、アルマゲの力を知るがゆえに、ツルギはキュウレンジャーを遠ざけて一人で戦おうとしているのであったと着地。
 ツルギの言動は実はキュウレンジャーを慮っている、というのはあまり面白くはないのですが、傲岸不遜な態度を崩さなかった事と、ツルギ自身もある種の呪いを受けた被害者である、という要素を入れた事で緩和。また、生き続けなければならないのも、時に小を切り捨てる決断を下すのも為政者の責任ゆえであり、初代大統領という設定と現在の言行がしっかり繋がったのは良かったです。
 この先、推測されるラッキーの貴種流離譚的な背景が物語に盛り込まるならば、二人の王の生き方という要素が描かれるかもしれず、従来の戦隊の枠を超えたテーマ性になり得る可能性があるので、今後の光明として期待です。出来ればラッキーだけが正当化されるのではなく、ツルギがラッキーに王の道を示す姿を見たい(その場合、それなりの確率でツルギが死にそう)。
 ここまでブラックホール級の大惨事が連続していた為、アルマゲ問題がスッキリした(ようやく、強大かつ特異な存在として認識可能になった)だけで物凄い加点気分なのですが、これはきっと騙されているぞ私(笑)
 メディア代官が街で暴れ回り、ツルギ組とオリオン号組が合流。ラッキーはツルギの過去を聞いた事を告げる。
 「甘いのはあんただ! あんたは仲間を犠牲にして、永遠の命を捨ててもドン・アルマゲを倒せなかった!」
 「……おまえなら出来るとでもいうのか」
 「出来ねぇよ!!」
 「なに?」
 「俺はあんたとは違う! 一人じゃ出来ねぇから仲間が居るんじゃねぇか。仲間は盾じゃない!」
 博打のチップだ!!
 ラッキーはツルギの発言を額面通りに受け取ってツルギの「仲間の使い方」が間違っていると主張しているのですが、ラッキーの「仲間の使い方」=ハイリターンの為にハイリスクで一蓮托生も大概なので、凄く、どっこいどっこいです。
 「俺たち全員で、ドン・アルマゲをぶちのめすだけだ!」
 サソリ兄弟編でも首をひねりましたが、どうも今作、いつの間にかテーマの中心に「仲間」が来ているようなのですが、物語を通してそれについて積み重ねてきたものが特に無いので、ラッキーが「仲間」を語れば語るほどネズミ算式に疑問符が増えていきます(^^;
 これもサソリ兄弟編の際に触れましたが、今作で中心として積み上げて来た要素をあげるとすればそれは「「よっしゃラッキー!」と言い続けてやる」(運命に抗い、自らの手で希望を掴む事)であり、しかしそのモットーは特に「仲間」とは接続されておらず(第13話以降にそれを接続するエピソードを描く必要があった)、挙げ句に今回にしろスコルピオ大惨事回にせよ、大事な回では存在を無視される始末。
 まあツルギとの関係においては次回出てくるかもしれませんが(それでも今回、一言も口にしないのはよろしくない)、主人公が誰かの心を動かすに際して、主人公のモットーが関与しないのでは劇的になる筈がなく、物語の組み上げ方がどうにも稚拙です。
 キュウレンジャーは変身すると格闘しながらの名乗りを決め、ツルギも変身するが、そこに出てくるメタルデスワーム(経験値2000)。
 赤「あいつは俺に任せろ!」
 ……………………仲間?
 いや、信頼しているから背中を任せているのかもしれませんが。
 赤vsメタルに鳳凰も参戦し、行きがかり上の共闘を優先したようですが、ここはその前段階として“仲間との戦い”を鳳凰に見せつけた方が、エピソードテーマに沿っていたような(^^;
 ただ、赤とメタルの交戦とマジ鳳凰のメタルへの短距離ワープ攻撃を合成で同時展開したのと、合間にその他メンバーvsメディア代官との戦いを挟んだバトル演出は格好良かったです。……まあ必殺技の都合で、結局メタルデスワームはマジ鳳凰が一人でトドメを刺すのですが。
 メディア代官とメタルワームが巨大化、更にモアイロボも変形し、鳳凰ロボ出撃。頭数のリュウ帝王要員として司令・ナーガ・小太郎も出てくるのにオリオン号放置のスティンガーは、前回五月サツキさんにいただいたコメント通り、確かに謹慎中と考えると納得できます(笑) メタ的にはスピンオフ作品の撮影中で忙しかったのでしょうか?
 並んだ3体のロボはばったばったと幕府勢力を撃破し、これにて一件落着。チャンプとバランスもオリオン号へと帰還する。
 「で? 鳳ツルギはどうしたんだ?」
 「また出て行ったよ。どうやら単独行動が好きらしい」
 そもそも別に仲間入りしたわけではないと思うのですが、他にもショーグンの情報を持っているから身柄を確保すべき、強さは認めるが言いなりになる気はないなど宇宙のメンバーが好き勝手言う中、地球ではツルギとそれに付き従う秘書とシェフが、公園で野宿しながらシェフ謹製カレーを食べているのであった。
 ここはアバンがオチに活き、スパーダも懐の広さを見せて良かったですが、オリオン号組は本気で、スパーダとラプターにもっと気を遣った方がいい。
 仲間ってなんだ?
 こういう時に宇宙の誰か一人ぐらい、スパーダとラプターを気にする発言を入れておけば、奥行きが出るわけなんですけれども。
 予告から、ブラックホールが増大しすぎて宇宙の危機になるかと震えていたのですが、ツルギに関してはひとまず、絶望の5歩手前ぐらいで留まり、絶望の向こう側へ旅立ってしまったサソリ仮面様に続く事は今回の範囲では回避。キュウレンジャーとの対立に重点を置くあまりツルギの言行が空中分解する事を危惧していたのですが、さすがに追加戦士枠だけあって、背景はそこそこ納得できるものが用意されていました。
 ツルギが踏みとどまった分、回を追うごとにラッキーが原形を留めずブラックホールの彼方に吸い込まれて消失しそうになっていますが、次回、正念場か。
 なおマジ鳳凰の過去を壮絶にすればするほど、“今の仲間”を認めるハードルが上がるわけで、ある説得力を得る為に別の説得力を根こそぎ失う可能性もあり、作品としても崖っぷちで踏みとどまれるかどうか、一つの剣が峰になりそう。
 次回――…………キューがいっぱい。