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秋というより初冬の読書

◇『天地明察』(冲方丁
徳川四代将軍家綱の治世、将軍家に仕える碁打ち衆の一員であると同時に、算術に強い興味を持つ渋川春海は、800年続いた暦を改める、という巨大なプロジェクトに携わる事に……。
江戸時代初期、改暦事業に参加する事になった一人の男と、それに関わる人々の姿を描く歴史小説。まず、四代将軍の時代に、上覧碁を職務とし、算術に没頭する主人公、という造形が面白い。そして、歴史小説の魅力とは、残された記録と記録の間を想像で縫い合わせて物語とする逆算の面白さにありますが、その点が非常に良く出来ていました。
面白かったです。
◇『満願』(米澤穂信
全6編の短編集。米澤さんはもう一つピンと来ない事が多かったのですが、今作は構成の巧みな粒ぞろいの短編集で、面白かったです。全体的に重めの内容で、個人的に、これはきっと苦手なネタだ……やっぱり苦手だった、というのはありましたが(^^;
収録作の中では「夜警」が一番、お気に入り。
◇『100億人のヨリコさん』(似鳥鶏
貧乏大学生と廃墟のごとき学生寮、そして奇人変人の寮生達……と、基本の要素だけ取り上げるといかにも森見登美彦風で、若干の意識はあるように思えるのですが、森見さんがファンタジーだとすると、SF寄りに飛んでいく奇想小説。クラウド的なアプローチなどは、<戦力外捜査官>シリーズなどに見る、似鳥さんらしさ。
これまで作者が扱ってきた色々な要素が散りばめられている感じもあり、勢いのいい軽快な一作でした。