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『仮面ライダービルド』感想・第12話

◆第12話「陰謀のセオリー」◆ (監督:諸田敏 脚本:武藤将吾
前回、問題となった例の手紙については一切触れず、このまま片付けられてしまいそうな雰囲気。……まあ終盤、特大のトラップカードとしてオープンされる可能性もありそうなので、頭の片隅に留めておきたいとは思います。
ファウストを裏で操ってるのも、その難波重工よ」
紗羽は、ビルドの情報を流す難波重工のスパイであった事を告白し、その背後の繋がりを示唆。
「それがホントなら……ファウストはここを知ってる筈だ。なのに、どうして襲ってこない」
「ビルドのデータを集める為よ。難波会長の目的は、仮面ライダーを東都政府の軍事兵器にする事だから」
そして、真の目的はファウストと難波重工が繋がっているという証拠を掴む事――すなわち二重スパイ――であると明かし、囚われながらも密かに録音していた、パンドラボックスの隠し場所に関する情報を戦兎達に伝える。その場所とは、東都科学研究所の前身であり、かつて葛城巧の父が勤めていた、難波重工総合科学研究所。
今回も堂々と職場で難波重工について調べていた戦兎は、難波会長に何やら囁かれたメガネ秘書から地下3Fの存在を教えられる。
「冗談も言えるんですね。……どっちが本当の貴方なんですか?」
「……愚問だな。君と私は、同じ籠の中に居る」
一方、万丈と同じレベルの扱いで地下に縛られていた紗羽は、3年前のパンドラボックス盗難事件の際、隠蔽工作として故意に起こされた爆発事故で死亡した研究員の1人が父親である事を、美空に告白。
「私は、父の無念を晴らしたいの!」
……シリアスなシーンで割とどうでもよい点ではあるのですが、万丈の時はギャグで済んでいましたけど、人ひとりグルグル巻きで拘束できるチェーンが常備してあるのがなんだか段々不穏になっていますね!
仮面ライダー組織の不穏な活動はさておき、戦兎と万丈は、立入禁止となっている難波重工総合科学研究所に再び侵入。その途中、道具袋の中からビルドドライバーが龍我の足下に転がり落ちる。
「おい、ドライバー落としたぞ。気をつけろよ」
「おまえのだ」
背中を向けたまま、わざとぞんざいにドライバーを渡す、面倒くさい戦兎さん。
仮面ライダーは、軍事兵器じゃない」
そのまま語りモードに入るのですが、体の方は人様の敷地に無断で忍び込んで工具でドアをこじ開けている真っ最中です!!
「人を守る為にある。それだけは忘れるな」
「……そんぐらい、おまえ見てりゃ嫌でもわかるよ」
龍我と終始目を合わせない戦兎は、相手が一般人だと思うと力強くヒーローモードに移行できるけど、同じ立場だと思うと途端に照れてしまう難しいお年頃。
2人のライダー、1つの変身ベルト、という今までにない要素をどう工夫してくるのかを楽しみにしていたら、ざっくりドライバーが二つに増えてしまったのも残念でしたが、戦兎が既存のものをコピーしたのか、それとも最初から予備があったのかなど一切語られない為、けっこう雑(^^; プロジェクトビルドの性質上は、ドライバーは(将来的に)量産可能ではあるのでしょうが。
これといった妨害もなく地下3Fへの不法侵入に成功する2人だったが、そこへローグご一行が登場。万丈がクローズに変身し、それを後ろで所在なげに見つめる戦兎、一時期のたっくん(『仮面ライダーファイズ』)みたいだな……!(笑)
仮面ライダーになったといってもハザードレベルは私の方が上だ。舐めるな!」
今日は好調のローグはクローズを切り払うが、そこへやってくる劇場型愉快犯。
「まさかまさか、こんな所に隠していたとはね〜」
「何しに来た」
「決まってんだろ。倒しに来たんだよ。おまえをな!」
あまりにも堂々とした助っ人戦士ムーヴでローグに襲いかかったスタークは、戦闘中にボックスの隠し場所に気付き、壁を破壊。そこに手を突っ込んだ戦兎は、奪われたボトル一式と共に新作の電車ボトルを発見し後ろ髪を跳ねさせる。
「てことは! 俺の計算で行くとー」
テンション高く早速用いた電車ボトルは、以前から名前だけは出していた海賊ボトルとベストマッチし、“帝国の反逆者”カイゾクレッシャーが誕生。いっけん謎の組み合わせですが、戦隊ファン的には、どう考えても宇都宮Pフォームであり、これまでになく納得感の強いベストマッチ(笑) 勝利のイマジネーションで派手に行くぜ!
クローズはスタークと激突し、必殺がしゃこん剣で追い詰めるが、スタークはすっかり板についたこそ泥ムーヴでボックスを奪うと逃走。さっくり出し抜かれたローグは海賊スプラッシュ斬を浴びてこれも撤退し、加速を付けて富士山六合目辺りから転がり落ちていきます。
「おまえ、助手にしてはやるじゃねぇか!」
「は? おまえも、ど素人の割には良くやった方だと思うよ?」
かくしてパネル2枚とボトル一式の再強奪に成功した仮面ライダー組織はそれを基地に持ち帰るが、霊感にきらっと閃いた戦兎は夢中で新装備の開発をスタート。完成した錨型のボウガン・カイゾクハッシャーを、辺り構わず振り回す。
「凄いでしょ? 最高でしょ? 天才でしょ? ……早く試したい」
新たな武器を手にうっとりと微笑むその姿は、「仮面ライダーは軍事兵器じゃない」と語ったのと同一人物の言行とは思えませんが、これはもしかして、“戦兎の中の葛城巧(推定)”の部分が出てきている、という存外真面目な伏線だったりするのかも。
「ここらで手を打った方が、良さそうだな」
自分の差し金だとはおくびにも出さず、パンドラボックスを失った事を契機に難波が何やら蠢動する中、紗羽は療養中の東都首相の下に取り返したパネルの写真を持ち込み、難波重工とファウストの繋がり、更には政府の関与について直談判。
…………て、えー……一国の首相と一介のフリージャーナリストが警備も同席せずに一対一で面会してしまっており、特撮ヒーロー物としてはそこまで目くじらを立てる穴でないともいえますが、政府と巨大企業の絡む陰謀劇を描いている真っ最中だけに、あまりにもゆるゆる(^^;
やはり謎のコネクションを持っているのかと思いきや、東都政府のファウスト壊滅作戦スタートの情報がもたらされると、パネルの在処を知る怪しい女として拘束されそうになりますし。
紗羽はSPを振り払い、投げ飛ばすと、病室のガラス窓を破って脱出し、設定に基づいたアクションなのか、その場のノリなのか判然としませんが、なんとなく後者の気配を感じます。どう見ても、身を守る為に格闘技を学んだ程度の動きではなく、ジャーナリスト→スパイ→二重スパイ、と見せかけて実は某国エージェント、とでもいう方がスッキリしますが、さてどうなりますか。
「最悪だ……」
巻き込まれたけど顔は見られずに済んだ戦兎は紗羽を乗せてバイクで逃走し、急ぎ東都政府がファウスト掃討作戦を展開するダムへ。
「私が作ったファウストを、政府ごときに潰されてたまるか! ファウストは、私のものだ」
「撃てーーー!」
報道各社が見つめる中、明らかに声が違うローグと政府部隊による、パフォーマンスのようなやり取りに不審を抱きながらも戦兎はビルドに変身し、ローグと激突。
今回、年末の一山(?)前の大きなステップという位置づけだったのか、通常OP無しで始まり、ロケ地のダムを高所から広い画角で見せる戦闘の導入で盛り上げにかかるのですが、そんなタイミングで、画面下に入る番宣テロップ!
しかも、「今夜6時58分から 仮面ライダー大好き芸人!!」というよりによっての文字列で、戦兎達が泳がされているのも茶番、ファウスト掃討作戦も茶番、そのクライマックスバトルの入り口であまりにもメタ的な文字列、という茶番劇の三重奏事故みたいな事に。
激闘の末、ビルドが終電アローでローグを終着駅に送り届けると、仮面の下から姿を見せたのはメガネ秘書。わざとらしくマスコミのカメラの前に姿を曝したメガネは、それらしくテロリストめいた宣言をすると自爆しようとするが、ボトルをビルドに取り上げられて逃走。
「どこで道を間違えたんだろうな。……俺はただ、他愛の無い事で笑って、人の思いに泣いて、そうやって、普通に生きたかっただけなんだ。……俺のようにはなるなよ。――桐生戦兎」
「内海さん、俺の事知ってて……」
凄く普通に「内海さん」と呼びかけておいて、どうしてそうなるのか戦兎。
「いいか! 今ならまだ引き返せる!」
思わぬ形でビルドに強く訴えかけるメガネだったが、ヒゲ首相代行の銃撃を受けると川へと転落。ヒゲ代行はビルドに構わず黙ってきびすを返すと、スマッシュを生み出していたファウストは壊滅し、東都を騒がせる事件は終息に向かうだろうとTVで発表するのであった……。
今回ようやく、印象的に名前を呼ばれるようになって存在感が出てきたと思ったメガネ秘書こと内海ですが、敢えなくリタイア。冒頭の戦兎とのやり取りで個性を見せてきたので、てっきり難波と個人的なパイプを持っていて、ヒゲの方が切り捨てられるのかとも思ったのですが、素直にメガネの方がリタイアとなりました。まあ、撃たれたのが右肩で、川に落ちて流されたので、再登場確率85%は見て良さそうですが!
リタイア寸前のキャラクターに、それまで全く積み重ねのない内面の心情を語らせてキャラを掘り下げた気になる、というのは好きではない手法なのですが、これまた冒頭のやり取り、また難波の命令に絶対服従という姿勢を考え合わせると、内海が遺した言葉そのものが、自身と桐生戦兎の出自にまつわる伏線というのはありそう。
ガーディアンレベルに人間を模したロボットを作れるようなので、難波重工製の精巧な人造人間(に葛城巧の脳を移植したのが桐生戦兎?)など、妄想が色々と広がる所です。ガーディアンがヘルメットを外したら、中身は全て佐藤太郎の顔だったらホラーだなぁ……。
「全ての責任を、内海1人に背負わせたってわけ」
ファウストは闇の底に深く沈んだだけで、まだ存在している。難波重工−東都政府による隠蔽工作に憤りながら、事件の資料を置き土産に喫茶店から去ろうとする紗羽を、呼び止める戦兎。
「東都政府と、難波重工の繋がりを暴いて、パンドラボックスをあるべき場所に戻す。俺たちの目的は同じだ」
「それにー、ビルドの密着取材もね。紗羽さんには仮面ライダーのイメージアップしてもらわないと」
「俺の冤罪の記事も忘れんなよ?」
紗羽の行動に誠実さを感じた戦兎達3人はそれぞれの言葉で紗羽を改めて受け入れ、クローズ誕生編と並行して展開した一波乱が収まるのですが、その人、表だっても警察に追われている上に、裏では命を狙われていてもおかしくないのですが、次回からどうやって活動するのでしょうか(^^; まあファウストには紗羽も込みで泳がされているという言い抜けは可能ですが、パンドラボックスの行方を知る重要参考人扱いはかなり重く、次回普通に外で活動していたら、さすがに違和感が激しすぎます。また地下の居候が増えてしまうのか。
「さて、これからどうするかー」
「……俺がビルドになって、スタークの正体を暴いてやる」
「おまえはビルドじゃねぇよ」
「なんだよ?! まだ認めねぇつもりかよ?!」
「クローズだ。仮面ライダークローズ」
冒頭のあらすじ漫才でも触れられた龍我の変身後に正式に名前が付けられ、戦兎が龍我をビルドとは別のヒーロー、として認める意味づけは重要なのですが、名前に関しては前々回の予告で煽りすぎたために、全く劇的になりませんでした(^^;
予告は物語の外ではありますが、作品の一部ではあるので、ここはなんとか、調整してほしかったところ。
そして由来なども特に聞かずに万丈がそれを喜んで受け入れてしまうのですが、それでいいのか万丈、名付けは非常に重要なイニシエーションだぞ! ……イニシエーションといえば、怪人なり戦闘員なりを轢く日が待ち望まれますが、クローズ専用マシンは今後、出てくる事はあるのかどうか。
はしゃぐ万丈に何やらぶつぶつ呟く戦兎だが、そこへ、あの鍋島から電話がかかってくる。
「実はな……記憶が甦った。万丈龍我に、殺人の罪を着せるよう、俺に指示したのは……」
「…………なんだと?!」
意味ありげにコーヒー豆がカメラの中心に持ってこられた所で、つづく。
“スカイウォール”と“スマッシュ化と記憶のあれやこれ”は今作の二大いい加減ポイントですが、泣きのドラマにまで利用した鍋島の記憶が、10話もかからずに快復するという、大変悩ましい展開。そもそも、名前を聞いて戦兎が驚くような人物が鍋島に直接指示したの? とか、どうせスタークの能力で幾らでもミスディレクションできるし……など、ひっくり返せるポイントが多すぎて、引きとしては正直面白くありません。
ほぼ毎回の新フォームという縛りをこなしつつ、年末に想定される最初の大きな山場に向け、片付けるべき要素を急ピッチで片付けている感じですが、全体的に急ぎすぎて雑な面が目立ってしまった印象。近作よりも一ヶ月前倒しスタートだった分、立ち上がりに存在していた余裕のしわ寄せが来たというか、近作《ライダー》の初動を思わせる慌ただしさ。
今回、戦兎らが自分たちがファウストに泳がされている可能性を認識する、というのは、もったい付けた末に最終盤になって全て茶番でした、となるより遙かにマシですし、恐らくそういう作劇を狙っているのでしょうが、現状、あまりにも戦兎達の置かれた状況が仕組まれた茶番である、というのが明確になりすぎているので、どこかで大きく事態を動かしてきてほしいところです。パネルに必要なフルボトルが残り2つ、という発言を考えると、年末にその転機が来る事になるのか。
東都編が終了して、物語の中心が西か北へ動く、というのはありそうかなと思ってみたり。
ところで、こういう大がかりな茶番劇の中で、主要人物達が盤上の駒にされている事を自覚するに至るも緊張感を失わずにクライマックスまで上手く展開していった有名作品があったような……と考えていたのですが、あれか、鋼の錬金術師』(荒川弘だ。
とすると次は、北でしょうか(笑)
7−10話ぐらいまで盛り上げてきた所で、前回今回と少し微妙でしたが、なんだかんだ次回どう転がしてくるのか楽しみです。