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『仮面ライダービルド』感想・第25−26話

◆第25話「アイドル覚醒」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:武藤将吾

「――多くの命が生きる街、東都。1人のアイドルと、4人のライダーが出会い、一つの群れが生まれた。東都を守る為に!」
戦兎! 幻徳! 猿渡! 万丈! マスター! アイドル! かくせーーー!!
最強のアイドル isみーたん! 火星のパワーで 東都の仲間を 守ってみせる!
絶対的勝者 isみーたん! 太陽より萌える 「お願い♪」 無敵さみーたんはー

動物戦隊ジュウオウジャー』は名作。
というわけで中澤監督と入れ替わるような形で柴崎監督がライダーに帰還し、野生開放した碧の瞳の美空が腕輪から放った力を受けたローグと歯車兄弟が、その力で“変形した”スカイウォールの向こう側へ弾き飛ばされてしまう、というトンデモ展開。
「エボルト……」
何やら別人の声で呟いた美空は再び気絶し、戦兎は前回、借りた物の返却を要求されて拒否した上に本気で殴りかかったマスターへと連絡を取り、結局この二人、似たもの師弟というか、戦兎さん確実にマスターから悪影響を受けています。
「珍しいなー。おまえから連絡してくるなんてぇ」
そして勿論マスターは、久々に飲みに誘ってもらったノリでニコニコやってくるのであった。
「美空のバングルは火星から持ち帰ったものだ。それがあいつの腕に巻き付いて取れなくなった」
そしてしれっと、多分わかっていた「美空が最大のジョーカー」である事を楽しげに語る。
「美空に手出したら承知しねぇぞ」
「大事な娘にそんな事するかよぉ」
ドスの利いた声を出す戦兎に対してニヤニヤ笑うマスターは、わざわざ東都に潜むスパイと、難波によって施設で育てられ、絶対の忠誠を誓う難波チルドレンの情報を残して去り、相変わらず好き放題でさいてーです。
歯車兄弟と内海も難波チルドレンである事が説明され、ファウスト壊滅劇場の際にわけありげだった内海と難波の関係が明確に。とすると第12話で内海が戦兎へ向けた発言、


「……愚問だな。君と私は、同じ籠の中に居る」
−−−
「どこで道を間違えたんだろうな。……俺はただ、他愛の無い事で笑って、人の思いに泣いて、そうやって、普通に生きたかっただけなんだ。……俺のようにはなるなよ。――桐生戦兎」
というのが改めて非常に意味深になりますが、ハザードしすぎで脳を酷使している戦兎は、一切思い出さないのであった!
美空と腕輪の関係を調べた戦兎は、金のバングルに人工知能のような意志が宿っているのを発見。詳しく解析すると火星文明崩壊の光景と思われる映像が見つかり、それはボトル浄化時に美空の脳裏に浮かぶ映像であった……。
美空が発動した謎の火星パワーは、腕輪に宿った意志が悲劇の再来を防ぐ為にパンドラボックス開放を阻止しようとしているのではないか、と推測する戦兎だが、それだとボックス開放のキーとなるフルボトルを浄化してしまうのが矛盾している気がするのですが、この半年間でわかった事は、戦兎の分析能力と状況判断はザルなので、いつもの過剰な希望的観測です。
「おまえは俺が守る」
自己が何者であるかに不安を感じる美空を励ます姿には、久々にヒーローらしいというよりも、なんだか(マスターからの)被害者意識の共有を見ます。
スパイの存在を逆に利用した戦兎達は、偽のパンドラボックス情報で罠にはめた歯車兄弟と激突。
「俺は一度負けた相手は研究するタチでね」
とクジラ消火器からなんだか久々の気がするうさぎさんポーズもとい「勝利の法則は決まった!」で、ハザードハザードもひとつハザードの力押しから転換を見せ、それ自体はビルドの特性を活かして望ましい事なのですが、あまりにも唐突な方向転換が人格改造レベルで戸惑いを隠せません(^^;
歯車兄弟は歯車兄弟で消化剤ラッシュに苦戦した上にクローズ銀にまでざっくりやられる突然の弱体化で、これあれだ、敵の幹部が過去の戦いを如何にもいい勝負を繰り広げていたように捏造するやつだ!レベルなのですが、アイドル覚醒による火星パワーの直撃でハザードレベルドレインとかされたのでしょうか。
ライダーは「戦えば戦う」ほどハザードレベルが上昇して強くなる、という理屈はまあわかるのですが、「戦えば戦う」の内容は惨敗だろうがKO負けだろうが良かったり、レベル上昇→戦闘力向上、に劇的な盛り上がりが無いのに、「ハザードレベルが上昇しているからなんだか強いぞ!」で話が進んで行ってしまうのが、最近の今作の困ったところ。
歯車兄弟は捨て台詞を残して撤退し、実はスパイだった首相秘書官が「全ては難波重工の為に!!」と叫んで自爆し、「え? なにそれ、スパイ?」ときょとんとするだけの為に登場したヒゲパパの株価が若干下がり、子飼いのスパイにわざわざ背後関係の名を叫んで自爆するように教育している難波会長の株価がロマン方面に上がり、本物のボックスを守っていた赤羽の元にはローグが現れる。
再改造手術を受けて以来、三途の川を渡る順番待ちをしていた3馬鹿最後の1人が予定調和でファイルのクリーンアップされ、青羽はまだ劇中の意味づけが違うとしても、赤羽と黄羽は完全に香澄の二番煎じ三番煎じで、ああ結局このスタッフはあれを良しとしているわけか、と正直凄く冷めます。
失った部下の為に心火を燃やす猿渡も、相手が強敵とはいえ直後に3人並んで変身するのでちっとも格好良くならないですし、ここはかなわないまでもグリス単独で立ち向かって時間を稼ぐ事に意味が出る、ように組まないと駄目だと思うわけなのですが。
ぽんこつライダー達に替わってローグを倒そうと現れた美空を守る為、やむなくハザードを発動するというのは比較的納得の行く使い方でしたが、ほぼ抵抗できずに数秒で自我を失う戦兎は、もはやニコチン中毒の領域。
黒ビルドのキックで初ダメージを受けるローグだったが、グリスを投げつけて同士討ちをさせている間にクローズ銀をサマーソルトキック(これは格好良かった)で蹴散らし、アイドルの資格、じゃなかったパンドラボックスを回収すると派手にフェニックス退却。そしてグリスを倒した黒ビルドは、美空へと襲いかかる――で、つづく。
ここしばらくの今作で一つ意欲的な要素として、主役ライダーズが明確な敗北を繰り返すというのがあり、悪の強敵(少し前はグリス、現在はローグ)の脅威を存分に描くという点で作劇の幅は確実に広げているのですが(「敵もライダー」だから出来ている面はあるのでしょうが)、一方で今回の歯車兄弟の突然の弱体化や、合間にナイトローグを蹂躙してストレス解消、など格下の敵は一方的に叩きのめすが格上の敵には力勝負で惨敗する、という偏った展開が副作用になっているのが困ったところ。
「常に負けない」進行は面白くないのですが、一方で、「いいところなく連戦連敗」「ヒーローらしい戦いがまるで見られない」がまるで見られないのも面白くないわけで、そこのバランスを取って如何に敗北の中にも格好良さを味付けし、また最終的な勝利に説得力と劇的な盛り上がりを与えるかがテクニックの見せ所と“物語”の役割なのですが、どうにも今作、意欲的だったり挑戦的だったりする要素の“刺激”に囚われすぎて、面白さの核がどこに存在するのかを見失い気味な気がします。
故に今回も、リストラされた赤羽がグリスのスプリングボードになってローグに痛撃を与えるのかというと全くそんな事はなく、消滅も3人ライダー並んでの変身も物語として虚無という事になってしまうわけですが、せっかく「負けさせる」なら、もっと面白く負けさせてほしい。


◆第26話「裏切りのデスマッチ」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:武藤将吾
見所は、
「なーに勝手に墓作ってんだよ」
万丈、神をも恐れぬ衝撃のツッコミ。
ローグにボックス強奪を許した挙げ句、美空に襲いかかる黒ビルドだったが、バングルから流れ込んだ力を受けると正気を取り戻して変身解除され、前回「おまえは俺が守る」とか格好つけていたのに自力では何のブレーキも発動しない戦兎さん、割と駄目男なので仕様です。もう諦めました。
「おまえ何したかわかってんのか?!」
そんな戦兎をやっと万丈が怒ってくれるのですが、
「落ち着け! そんな事より……」
と猿渡によって裏切り者捜しを優先されてしまう、残念な展開。
いやホント、物語の中で一度、戦兎のハザード濫用については殴っておいた方がいいと思うわけなのですが。
パンドラボックスを手に入れた西都首相はフルボトルを賭けた代表戦を東都首相に持ちかけ、すっかりやさぐれた息子に続き、「ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」と笑いながらボックスを撫ですさる知人の姿を見せつけられたら、それはヒゲパパも「儂が踏ん張らないとマジやばい」と溜息もつきたくなるわけです。
劇中において使用前/使用後の比較が無い為に、なんだかんだと息子は可愛いが愛情の示し方が間違っていた感のあるヒゲパパだけが主張しているように見えていた火星パワーを浴びた影響というのが、西都首相の怪演でフォローされたのは良かったところ。
今度の代表戦は3本マッチという事になり、東都代表として参戦するのは、グリス・クローズ・ビルド。戦兎はバングルの力を利用してハザードトリガーが暴走しても自我を保つ為のボトルを作ってもらおうと美空を精製装置に押し込み、美空に見せている資料映像という体裁で、あらすじ劇場のノリでこれまでの戦いとフルボトルについて振り返る。
「そもそもベストマッチってなんなんだよ」
という万丈のクリティカルな疑問は誤魔化されるが、そのやり取りを耳にしながら美空はラビットタンクの特殊性に気付き、ラビット×ラビットに一つの可能性が見出される事に。
美空の見出したヒントを起点に、戦兎は紗羽と共に新アイテムの開発を始め、3馬鹿のドッグタグをスカイロードに埋める猿渡の元を訪れる万丈。
「跡形もなく消えちまうってのは、ずるいよな。……居なくなった実感がわかねぇっていうか」
からの、
「さあ……実験を始めようか」
で、俺らはガンガン殴り合って互いにハザードレベル上げようぜ、という流れは悪くなかったのですが、この期に及んで「ハザードレベルを上げる」事になんの疑問も持たないのが恐ろしいな君たち(^^;
ハザードトリガーが顕著ですが、“リスクを承知で敢えてその道を選ぶ”事の、「敢えて選ぶ」部分の描写がものすっごく雑なのが、至る所でとにかく残念。リスクを承知で敢えてやるのと、リスクを考えずにとにかくやるのでは物語の中での意味が全く変わってくるわけなので、そこは見せないといけない部分だと思うわけなのですが。
そして唐突にドラゴンボトルの中に仕込まれていた盗聴器に気付き、フルボトル、そんなぞんざいにもぎゅっと蓋を開けて良いものだったのか(笑)
残念ながらマイブームが終焉を迎えたのか、スターク師匠は万丈と猿渡の前には現れてくれなかったらしく、一週間後……戦兎はどうにかこうにか新アイテムの開発に成功し、グリスVS歯車丸刈りの一回戦がスタート。
難波チルドレンの戦士として生き残る為に一人で強さを磨き続けてきた丸刈りに対し、仲間を愛し背負っているものを強さに変えられるのが猿渡、と対比されてグリスが勝利するのですが、まがりなりにも第2部のライバルキャラとして描写を積み重ねてきた猿渡と、ほぼモブレベルの描写しかされていないので背景を強引に一人語りで埋めた丸刈りではあまりにもアンバランスで、盛り上がらない事この上ないマッチアップ。
更にこの丸刈りの独白の主題を、紗羽は難波チルドレンでした、という情報提示にしてしまった為、両者のバトルがますます蚊帳の外になる大惨事
ここ一ヶ月ほど、劇中の諸要素を持て余し気味の今作ですが、3vs3の直接対決を組んだ結果、まさかグリスの存在がまるごと余計になるとはビックリです。
そして3vs3の都合上、ほぼ負け確定の万丈は、パーフェクト歯車を目にしてのリアクションがギャグにされ、これは禁断のツッコミへの罰ゲームなのか。
ビルド強化展開を前にグリスと万丈の悲惨すぎる扱いはさておき、あまりにも怪しすぎる身体能力と情報収集能力から某国エージェント疑惑の深まっていた紗羽が、とうとう難波チルドレンだった事が明かされましたが、話は繋がったけどそれが劇的に面白いかというと特にそうはなっておらず、何事も見せ方次第だなとつくづく思う所です。
で、裏切り者が戦兎の作った新アイテムのデータをダウンロードする展開が繰り返されているのですが、さすがに今回は、警戒してタチの悪いウイルスぐらい仕込んでいるんですよね?!
データを開いた瞬間、ネットワークで繋がったPC上の全てのファイルが、みーたんへの愛のポエム(作:猿渡一海)に置き換わってしまうのだ!