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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第36話

◆Task.36「鬼の金棒」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子
本日の名言:「学芸会ならよそでやれ」
プレシャス<山砕きの金棒>を入手し、それに見合ったクエスターロボを作ろうと浮き浮き相談するガイとレイだが、そこに襲いかかるボウケン団。
「ガイ! プレシャスは渡してもらうぜ」
「おーいおい、これじゃどっちが強盗だかわかんねぇな。こいつは俺たちが先に見つけたのー」
「プレシャスは早いもん勝ちじゃないもん!」
「そうよね〜、強いもん勝ちだもんねぇ!」
ぐうの音も出ない。
銃弾をばらまいたWクエスターは、「ロボが出来たらたっぷり相手してやるよ」と言い残して撤収。直後に激しい地鳴りが大地を揺るがし、Wクエスターにまんまと逃げられてしまったボウケンジャーの視界に入ったのは、川上からドンブラコードンブラコーと流れてくる、巨大な桃。
造形が難しかったのか凄く嘘っぽい桃なのですが、それも手伝って一気に空気がナンセンス方面に向かい、一瞬、大和屋脚本回かと思いました(笑)
「アレって、アレか?」
「まさか! ……でも、アレ、だよね」
「そんな……馬鹿な」
「ふーん……うん、美味そうだな」
平然と川に入った野菜の戦士が不滅の牙と共に桃を引き上げようとしたその瞬間、二人が手をかけた桃が割れ、おやおやなんという事でしょう、中から元気な赤ん坊と一振りの刀が出てきたではありませんか。
「おしゃぶり……よだれかけ……ガラガラ。……えー、おむつと……あと何が要るんだ?」
「おい明石! 乳母車、買ってきたぞ」
かくしてチーフと映士は責任を取り、桃から生まれた赤ん坊の面倒を見る為、前回手に入れた疑惑の秘密資金3億円により、赤ん坊に必要な物を買いそろえる事に。幾らプレシャスまがいの存在とはいえ、財団に育児経験のある職員ぐらい居ないのかと思う所ですが、「この子が俺たちにしか触らせないんだからしょうがないだろ」と理由付けして、ガタイのいい男2人が赤ん坊に振り回されて大わらわという定番ネタをしばらく。
「そうだ……名前が無いとな。……んー……太郎でどうだ」
「ああ。桃太郎にしてはべそっかきすぎるからな。太郎で十分だろ」
「よし、じゃあ、太郎に決まりだ」
男2人が雑に名前を決めたその時、おやおやなんという事でしょう、太郎が見る見るうちに大きくなって、小学生ぐらいになってしまったではありませんか。
「た、太郎……?」
「お爺さん!」
「は?! お爺さん?!」
「……ちょっと待った! やな、予感がするんだ」
「お婆さん!」
「……やっぱり?」
映士をお爺さん、チーフをお婆さんと呼ぶ、急成長した太郎はひとまず基地へと連れ帰られ、映士×チーフのカップリングを必死に否定しようとするさくらさん(笑)
気弱な太郎は腹黒い大人達の質問攻めから逃げ惑い、なんだかんだと世話を焼き始めるチーフは太郎を甘やかし、一方の映士は生のきゅうりを突きつけて闇の力による自立を促す。
「なんか、二人とも、違うものになってるような……」
すっかり親心に目覚めてしまい、行く先々で子育ての方針を巡って争う、過保護なお婆さんとワイルドなお爺さん(笑) やがて太郎は、自分は<山砕きの金棒>が盗まれた時、盗んだものを「鬼」と認定してそれを退治する為に山から送り出される存在である、と告白する。
「でも……ぼく怖い。鬼退治なんて怖い」
「心配するな。金棒なら俺たちが取り返す」
「なに甘い事いってんだ明石! 太郎、おまえ情けねぇぞ。桃太郎なら泣いてないで、きっちり鬼を退治しろ!」
神秘的存在とはいえあくまで太郎を「ただの子供」として扱うチーフと、宿命を背負った「桃太郎」として扱う映士……ここまでのギャグ展開から一転、映士が背負ってきた重荷が顔を出して油断なりません。
「本気で嫌なら、ウジウジしてねぇで山に帰れ。……やらなきゃいけねぇって思ってんだろ。ならやれよ」
「映士、太郎がクエスターを倒せるわけないだろ」
「そういう問題じゃねぇ! ……太郎、退く進むか、どっちも出来ねぇ奴は俺は大嫌いだぜ」
映士の強い口調に太郎は泣き出し、それをかばうチーフ。
「言い過ぎだぞ。太郎はまだ子供なんだ」
「……俺は赤ん坊の時から、アシュとの戦いを仕込まれたぜ」
一夜明け、更に成長した太郎は、桃の中に一緒に入っていた日本刀を手に立ち上がる。
「お婆さん……僕、鬼退治に行きます」
映士はその決意を喜び、チーフは夜なべして裁縫した陣羽織を太郎に着せ、感動……を通り越して、なんか妙な空気になるサロン。
「チーフ……」
「なんか、お母さんみたい」
「……たく、気持ち悪い」
ストレートな本音を炸裂させる真墨だが、子煩悩なお爺さんは、他人事を許そうとはしなかった。
「うるせぇ! おまえら、犬とキジだ! お供がいなきゃ格好がつかねぇ。蒼太は猿だ」
「え?! 猿?!」
「……あ、あと、きびだんご」
「お、そうか。……じゃあ姐さん、きびだんごだ」
「え?! なんであたしが!?」
さくらさん史上最高に嫌そう(笑)
まあもともと子供が苦手なさくらさんですが、太郎の世話を焼くチーフにも若干引き気味で、なるべく関与したくない、というのが凄く露骨で隠されない、というのも今作らしいとはいえますでしょうか。
「それと今回は特別。爺さんと婆さんもお供する。時代が変わったんだ。それぐらいいいだろ」
かくして、<鬼の金棒>を感知する太郎の異能により、一行は金棒ロボを起動する寸前だったクエスターの隠れ家を強襲し、わざわざ石切場ロケで学芸会を行うのも、30周年記念作品ゆえなのか(笑)
赤銀太郎はガイに立ち向かい、ロボの破壊に向かったお供の4人はレイと激突。だが戦いのさなか、わざと攻撃を受けた後で日本刀と戦意をへし折る、というエンタメ精神溢れるガイの反撃に消沈した太郎は、脇目も振らずに逃げ出してしまう。
「おーいおい、こんなオチかよー。行っちまったぜぇ」
この茶番劇に付き合ってくれるクエスターガイは、本当においしい(笑) まあ後はヤイバ先輩なら、別の方向に面白くしてくれそうですが……「さあ、こっちに来るのだ太郎……おまえの本当の心は、鬼を求めている。そう、おまえは、太郎ではない。闇太郎だ!」とか。
シルバーは太郎を追いかけようとするが、それを呼び止める赤。
「シルバー、誰もがおまえみたいなわけじゃない。おまえだってわかってる筈だろ」
赤はガイを食い止め、映士は外で泣きじゃくる太郎の姿を見つけると、駆け寄り視線を合わせる。
「おまえにそこまで惨めな思いをさせる気はなかったんだ! ……悪かった。おまえは、太郎なんだよな。赤ん坊の時からずっと。桃太郎なんかじゃねぇ。……太郎で十分……いや、それ以上だ。よくやったぜ太郎!」
映士は笑顔で太郎を抱きしめ、映士の掲げる“運命に向き合う強さ”を肯定的に描く話かと思いきや、ここまで9割方お笑い要員だった不滅の牙が、映士を諭す物語へと大逆転するのが今回のキモ。
高丘映士は自分の背負う宿命と真っ直ぐに向き合って生きてきた。
それは映士にとっての誇りであり正義であり、しかし、自分がそうであるから他者にも宿命と向き合うように要求するのは、本当に正しい事なのか?
それは、格好いい大人のする事なのか?
これは一歩間違えると、映士父に対して批判的な意味合いを含んでしまうデリケートな問題なのでチーフの言い方もどこか遠回しになっているのかと思うのですが、「宿命」以外の生き方を歩み始めた映士が、宿命を背負った「桃太郎」ではなく、「太郎」という個人を認める事で、子育てを通して映士が映士父を乗り越える話、になっているといえます。
チーフはチーフで夏休みの冒険回において菜月に対して過保護な一面を見せたのが今回踏まえられており、太郎を甘やかしすぎる姿が全肯定されてはいないのですが、それも含めて、格好いい大人とはなんだろう? というのは、小林靖子作品では後に『烈車戦隊トッキュウジャー』において結実する“昨日の自分に胸を張れる大人(ヒーロー)になれるのか?”というテーマの萌芽を感じます。
黄金の剣でブーストした赤はガイに大ダメージを与え、Wクエスターはロボを起動。ダイボイジャーも復帰したサイレンビルダーも<山砕きの金棒>の力に追い詰められるが、その危機に勇気を奮い起こした太郎は、なんと素手で巨大な金棒を受け止める!
「僕は桃太郎じゃない……太郎として今、鬼を退治する!」
宿命ではなく、個人の意志で立ち上がった太郎はクエスターロボを投げ飛ばし、ダブルロボの必殺攻撃でクエスターロボを粉砕。Wクエスターは今日もトンズラし、金棒を回収して役目を終えた太郎は桃に戻って山へと帰っていく……それを見送り、強がる映士、嗚咽するチーフ、でオチ。
菜月夏休みの冒険回とテーマ的に密接に繋がっており、子育てを通して“大人”とはなんだろう? という問いかけが成されているのですが、映士父子の問題も含めて、突き詰めていくと際どいテーマになりすぎるという判断だったのか、かなりコミカルなデコレーションをほどこして見せる、という作劇。結果として鋭さを減じた部分はあったかと思いますが、単発エピソードのバランスとして考えると適切だったのかな、と思います。
全体の要素として気になったのはダイボイジャーサイレンビルダーのバランスの悪さで、登場3話目にして、サイレンに引きずられる形で、ダイボイジャーまで苦戦してしまったのは残念。戦力比較として並んで戦わせるにはどうも難しい格差になってしまい、早急に何らかのフォローが欲しい所ですが、さて……。
次回――あの人が『ボウケンジャー』に戻ってくるのか?!