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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第41話

◆Task.41「メルクリウスの器」◆ (監督:諸田敏 脚本:大和屋暁
前年の『マジ』では戦隊初参加にして、「実質単騎でインフェルシアにカチコミかけてあらゆる冥獣人を屠り去る大量虐殺の末にン・マ様の封印寸前までいった」勇気という名のバトルジャンキー父さんの消息が匂わされるという重要回を担当する事になった大和屋さん、今年は波乱の種だけ撒き散らされて石化で終わってしまった映士とクエスターの始末をつける、というミッションが投げつけられました!
東映特撮とはゆかりの深い浦沢先生の弟子ですし、脚本家としての実績含め信頼感のなせる技ではあるのでしょうが、前半から投入されていた実力派の脚本陣の存在が、ここでこんな形で活きるとは、プロデューサーも予想していなかったに違いありません……。
「後は奴らがうまく動いて全部が揃えば、遂に俺たちが世界を手に入れる時がやってくるぜぇ!」
西のアシュの長・オウガを上手く利用し、<メルクリウスの器>を首尾良く手に入れたクエスターは新開発の飛行メカの最終チェックを終え、根回しした他ネガティブの動きを待っていた。
一方、石化した映士はボウケン基地に運び込まれてチェックを受け、微弱な生命反応が検知されるが元に戻す方法は不明……しかし、それがわかるだけでも相変わらず牧野先生が超優秀。
「悪いけどシルバーくんの事は後回しにしてもらうよ」
ドスの利いた声のミスター・ボイスは、クロサギの森で発見情報がもたらされた新たなプレシャスの回収を命令し、真っ向から反発を見せる真墨を止めたチーフは、プレシャスの追跡調査の為に蒼太を基地へ残すと残り4人のメンバーで森へと向かう。
そこでは情報通りに存在したプレシャスをガジャ様が回収中で、産業スパイに出し抜かれたショックからようやく立ち直り、ズバーン後編以来の本格的な出番となったガジャ様、ゴードム兵に向けて「ぐっじょぶ!」するなど、ノリノリ……なのか、心の傷が深すぎて、向こう側へ行ってしまったのか。
ゴードムと戦うボウケンジャーだが、別の場所でジャリュウ一族がプレシャスを入手しようとしているという情報が入り、黒桃をその場に残した赤は黄とともにジャリュウ一族の妨害へ。
ネガティブシンジケートがまるで示し合わせたような動きを見せ、ボウケンジャーが分断を余儀なくされる中、蒼太はプレシャスの調査を牧野に任せ、クエスターの行方を追う。
「クエスターを調べれば、プレシャスの事がわかるかもしれないし、それに、奴らを見つければ、映士の事もきっと……」
そして、奇妙な光の揺らめくどことも知れぬ砂漠の真ん中で、闇の衣をまとって目を覚ました映士は、倒れ伏す母ケイの姿を発見する……。
「映士……映士なのね!」
「……うわぁぁぁぁ?! なぜあんたが?!」
「来てくれた! ありがとう!」
思いもかけない形で母と出会い、驚きのあまり尻餅をついて後ずさる映士と、その映士にむしゃぶりつくようにすがりついて押し倒す母ケイ、という対面シーンは予想外の展開でインパクト大。
「ここは次元の狭間」
「次元の……狭間……」
「私はずぅっっっとここで、あなたを待っていたの」
現実世界では、ジャリュウ一族がプレシャス<賢者のハーブ>を確保した所に赤黄が到着。
リュウオーン。プレシャスを渡せ」
いや今それ、トカゲ兵士Aがマグマの中に突っ込んで命がけの冒険で手に入れたんですよ?!
ボウケンジャー、二人か。残りはどうした?」
「おまえに心配される筋合いはない!」
宿敵のメンバー不足を気に懸ける陛下、いい人だ……(笑) いや実際は、イヤミなのでしょうが。
黒桃にゴードム兵を壊滅させられたガジャ様は、手に入れたプレシャス<カドケゥスの杖>から光線を放って逃走し、次々と奪われるプレシャスが全て錬金術に関わっている事に気付いた蒼太と牧野の元には、ダークシャドウがある博物館から<パラケルススの水銀>を強奪したという連絡がもたらされる。
牧野と蒼太は4つのプレシャスの関連をシミュレーションする事となり、サロンから研究室へ向かうために部屋を離れる間際、「ちょっと、待っててくれるかな」と映士の石像に声をかけていく蒼太さんの姿勢がだいぶ軟化。
映ちゃんの事を心配する菜月、映士の事を二の次にするボイスに反発する真墨、が繰り返し描かれると同時に、前回はプレシャス回収よりも仲間を選択するさくら、そして今回、映士を救う意識を見せる蒼太、と映士を加えたボウケンジャー6名の結束が上積みされていくのですが、やはり少々、映士と5人の距離感の変化に関しては描写不足の印象。
ズバーン編を挟んだ『ボウケンジャー』中盤戦は、力の入った単発エピソードでキャラ個人の掘り下げも進み、アベレージとしては面白かったのですが、こと“映士と5人”という要素に関して言えば劇的な関係変化が不足してしまい、欠けたピース(映士)を取り戻す為の戦いとしては集約が弱くなってしまいました。
今作における“大人の距離感”の理想としては、単発エピソードが半年分ぐらい続く中で徐々に映士と5人の距離感が縮まっていった……末の今回、ぐらいのイメージでしょうか。
そう考えると、皆に愛される途中参加の萌えキャラポジションをズバーンに奪われてしまったのが痛恨事であったのかもしれません。
「お袋……ここは寂しいな」
「この世界からは逃げる事なんてできない。辛かったけど、あなたが来てくれた。もう辛くはないわ」
映士とケイは手をつないで広大無辺の砂漠を歩いており、幻想的な映像の中で映士を絡め取っていくケイの薄暗い情念が、愛と狂気の同居を感じさせて秀逸。
現実世界ではクエスターの狙いを悟った青が赤黄と合流し陛下を蜂の巣にするが、DSとガジャからそれぞれプレシャスを受け取ったクエスターもそこに現れ、賢者のハーブを回収。
「ひゃはー、遂に揃ったぜぇ! げははははははは!!」
4つのプレシャス、ネガティブシンジケート、そしてボウケンジャーが勢揃いした舞台で、クエスターは<カドケゥスの杖><パラケルススの水銀><賢者のハーブ>を、<メルクリウスの器>に投入。
「杖は骨となり、ハーブが血となり、水銀が肉となりそして――」
物質を合成する力を持つ<メルクリウスの器>に、強力な錬金術アイテムが投入され一つとなる時……不死の生命の研究の中で生み出された巨大ホムンクルスが現代に復活。そしてその肉体にクエスタージェットが合体する時、アルティメットクエスターロボが誕生する!
……なんか、大仕掛けだったわりに、格好悪いぞ(笑)
製造時の呪文の言い回しなどまでは格好良かったのですが、水銀イメージと思われる生っぽいボディの上半身にメカパーツを被せるという造形が、スーツだともう一つしっくり融合せず(^^;
……まあ順番的には最終章の前座なので、これぐらいの方がこの後のハードル上がらなくて良いのかもですが。
「見せてやる。こいつの力をな!」
もともと封印予定だったボイジャーを勢いで使いすぎて経理部から怒られたのか、究極ダイボウケンで立ち向かうボウケンジャーだったが、究極クエスターロボは、アルティメット火の鳥の直撃にも無傷。逆に究極クエスタービームの直撃を受けたダイボウケンは倒れ、ボウケンジャーは離脱を余儀なくされてしまう。
その頃、次元の狭間の映士は、母とともに高丘家へと辿り着いていた。
「ここは……俺の住んでた家」
「そう、あなたの家。あなたはここで私と暮らすの」
幻想の中の幻想を特に奇異に思わない様子で、テーブルに花を飾るケイ。
「これからは一緒に、永遠に一緒にいてくれる。そうでしょ?」
「……ああ。……そうだな」
出口を探していた事も、仲間の事も忘れてしまったのか、映士は母に微笑みを返してしまう。
「お袋……あんた寂しかったんだな」
映士は庭を見つめ……激闘の続く現実世界では、経理部の悲鳴をよそにチーフがボイジャーをアンドック。だが究極ホムンクルスは。ボイジャーの一斉射撃さえ通用しない。
「俺たちのホムンクルスは破壊の神。かなうものか」
途中からメカニック属性のついたレイですが、ロボットに乗るとテンションが上がるのか、今回はガイに負けずと終始ノリノリ。以前にグランドを応援したいたのは、陛下との友情ではなく、単に巨大メカが好きだったからのようです。まあ二人ともメカフェチの気がありそうなので、ロボットアニメを肴に一晩カラオケボックスで語り明かせば、熱い絆が生まれそうな気も。
「負けるわけにはいかない!」
「無駄無駄無駄」
ボウケンジャーダイボイジャーに超絶轟轟合体し、ズバーンも起動して最強タッグで立ち向かうが、究極クエスタービームの一撃によりズバーンさえ戦闘力を喪失。そして必殺の冒険轢殺ナックルも正面から受け止められてしまう!
「ばーか!」
「終わりにしよう、ボウケンジャー
そのまま投げ飛ばされたダイボイジャーは強制合体解除でそれぞれ地面に叩きつけられて行動不能となり、悪のギャラリーが見守る中、完勝の高笑いをあげるクエスター
「よくやったぞクエスター。早速だが、今後のホムンクルスの使い方について、相談しよう」
そして、誰がどう見ても無理めな「君たちのプレシャスは皆のプレシャス」という歴史的な和平会談を仕切ろうとするガジャ様であったが……
「なーに言ってやがる。もう、おまえ達に、用はnaーi!」
「ようなし?」
「俺たちクエスターが人間世界をぶち壊す姿を、指をくわえて見てるがいい!」
ギャラリー一同、まとめてホムンクルスパンチを浴び、プレシャスは強いもん勝ちだもんねぇ!
「これからが厄介だな……」
「もはや、クエスターを止められるものはいないという事だ」
かくしてボウケンジャーに報復できるなら手段は問わない同盟はあっさりと瓦解し、やたら弱気の陛下のガッツが足りない!
「なんでいつもこうなるのじゃ」
もはや、いいとこなしがキャラクターになりつつあるガジャ様はぼやき、悪の組織一同の奮起が期待される中、ボイジャーのコックピットから脱出した不滅の牙ですら倒れて気を失い、そして……
母の作った料理を口にし、魂の牢獄で偽りの安息に飲み込まれていく映士を見つめるケイの瞳がアップになり、モノトーンの映像になって母さんが怖いよ! というところで、つづく。
エスターの工作により結成されたボウケンジャーに報復できるなら手段は問わない同盟の活躍により、きちっとボウケンジャー最大の危機になりましたが、巨大戦のヒエラルキーを考えると映士ひとり増えても逆転できそうにないのですが大丈夫か……?(笑)
敵がものすっごい新兵器を繰り出してきてヒーロー大ピンチ、の前編(今回は中編?ですが)は、特にロボ戦(敗北)の尺が決まってくる戦隊では似たようなパターンになってしまいがちなのを、真実の母の愛を知って映士が復活するハートフルセロリストーリーかと思っていたら何故かサイコホラーだったという映士母子の物語で変化をつけてきましたが、父の名前が一切出てきていない、というのがポイントになりそうでしょうか。
幻想的な映士パートは、ケイさんの熱演もあって心拍数の上がる展開だった一方、もう一つの特徴付けといえたネガティブ大集合があまり面白くならなかったのは残念だった点。幾ら各ネガティブがボウケンジャー憎しに凝り固まっているとはいえ、あまりにも簡単にクエスターに踊らされてしまい、腐ってもそれぞれが相応の力を持った悪の組織である、という要素が薄まってしまいました。
各自の得意分野でプレシャスを手に入れる、という要素はまさしくボウケンジャーのネガとしての立場が活き、いっそ各組織の冒険にもっと尺を取れたならネタとして突き抜けて面白かった気がするのですが、さすがにこれ以上の尺は裂けなかったか(^^;
まあこの辺りは、本来ならメインライターがまとめる予定であったのでしょうが……。
次回、ボウケンジャー最大の危機に、不滅の牙、散る?!
そしてその時現れたのは、「轟轟戦隊ボウケンジャー新行動隊長、ビィッグ・マサキ!!」(いい加減、メカマサキから離れなさい)。