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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第38話

◆Task.38「虹の反物」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久
ある日ボウケンサロンに、蒼太の妹を自称するセーラー服姿の少女・みゆがやってくるが、蒼太は全く覚えがない。
「あの……まだ正式には、最上みゆじゃないんですけど……蒼太さんに、一緒に住みたいって言われて……」
「え?!」
「「「「えーー?!」」」」
「いやいやいや、だから僕はこんな子、全然」
最上蒼太容疑者、容疑を否認。
「とりあえず今日は私、お礼に来たんです。初めて会ったあの日、キスして抱きしめてくれて、凄く嬉しかったから」
「え?!」
一斉に非難を浴びる最上蒼太容疑者、頑なに容疑を否認。
「いや、そんな、何かの間違いだって!」
うん、蒼太さん基本、そういう尻尾掴まれたり、後腐れのある付き合い方しないでしょうからね……。
「ねえ君、僕がいつどこで君にそんな」
「忘れもしない。11月10日の夜……代官山です」
即座にタブレットで過去のデートスケジュールを確認する最上蒼太容疑者(笑) その日デートしていたのは確かだが、相手はOLのおとちゃん(妄想でなければ)の筈……やはりみゆには覚えのない蒼太だが、初めはおどおどしていたみゆが積極的にデートに誘うと、何故かチーフがそれを許可。
「最近なにかと俺が酷い目に遭っていたから、今日はお前が存分に弄ばれるといい」
じゃなかった、
「蒼太、思う存分みゆちゃんにお礼してもらうんだ」
「チーフ!」
「彼女の何かに反応があるんです」
さくらが蒼太に見せたカウンターの反応は、なんとハザードレベル120――。
その頃DS屋敷では、刀の手入れをしながら闇の力を高めるヤイバ先輩に、ゲッコウ様が声をかけていた。
「今日はやけに落ち着いた空気だな」
「珍しくシズカが、鍛錬に出た様子で」
「ほほう。アレもやっと自覚が出てきたか」
そのシズカは街を見下ろし、光り輝く反物を手に広げる。
「さようなら、失敗ばかりの駄目な私。虹の反物を得て、今日こそ私は生まれ変わる。たった一人でボウケンジャーを全滅させてみせる!」
これまにでなく強い決意で戦いに臨む風のシズカ、「失敗ばかりの駄目な私」に自覚があった事に驚きました!(笑) てっきり、自分の粗忽さを天然で受け入れているものとばかり。
不穏な空気が渦巻く中、蒼太はEDインストをBGMに、女子高生とデート中。最初は露骨に古い装身具など(プレシャスの可能性)について聞きだそうとしていたものの、プリクラを撮影しながら肩に手を回したりなどしている内にスイッチがONになったのか、さりげなくクレープを取り出すなど、ノリノリでデートフォームを発動。
「女の子のエスコートは、僕のポリシーだから」
本気で付き合う気はどう見てもないし、泣かせる気もない、つまるところ一定以上の人間関係に踏み込む気は最初から無い上で、けれどお互い楽しい時間を過ごして笑えるようにエスコートはする、という蒼太さんはホント、タチ悪いな……!
「嫌いですか? 不思議な子は」
「いや、好きだよ。不思議マインドは冒険の第一歩、だからね」
気がつけば流れる、穏やかな時間。
(この子の正体は謎だけど、プレシャスを隠し持ってる風には、見えないな)
いつの間にやら公園で寝入ってしまったみゆは蒼太の膝ではっと顔を起こすと謝るが、蒼太は逆に微笑んでみせる。
「可愛い寝顔が見られて、僕は得した気分だけど」
蒼太の平気でこういう台詞を口にできる所はスパイ時代の経験値もさる事ながら、瞬間瞬間で相手を笑顔にしたい(そうすれば自分も笑顔になれる)という反射的な言動にも思え、それが他人に心の内側へ踏み込ませようとしない生き様と密接に同化してしまっているのが、本当にタチが悪い。
無頓着に相手を本気にさせてフォローせずに泣かせる鳥羽先輩と、手練手管で一線を引いて相手を泣かせない代わりに決して踏み込ませない蒼太と、どちらがよりタチが悪いのかは、大変難しい問題ですが。
飲み物を買いに行った蒼太は偶然シズカと遭遇してしまい、投げつけられたクナイを持っていたペットボトルで受け止めるのがなかなか格好いいアクション。肩慣らしに、と光る反物を取り出したシズカは、ハニーフラッシュ!すると早撃ちガンマンに変身し、いつものドジはどこへやら、銃撃戦でボウケンブルーを圧倒。続けてチャイナ服の拳士にハニーフラッシュすると、格闘戦でもブルーを上回る強さを見せる。
「なんなんだ、このパワーは?!」
帰りの遅い蒼太を心配してやってきたみゆが物陰から戦いを見つめる中、シズカは更にセーラー服姿にハニーフラッシュすると、ヨーヨーで攻撃(笑)
「地球一の女子高生が、ヤキいれてあげるわ!」
前回の丹波哲郎に続いて『スケバン刑事』と、煩悩と煩悩の間に東映アクションドラマネタが挟み込まれ、今作でのお仕事はやたらブレーキ弱めの荒川脚本に、竹本監督の演出もノリノリで、あっちでもこっちでも好き放題。
宇宙一のナースシズカ(もともとコスプレ担当にしても、このシーンだけで既に4回目の変身)にぐりぐりと踏まれるブルーは、巨大注射器攻撃をなんとか回避。
(なんなんだこの変身能力。ただの変わり身の術とは思えない)
更なるピンチが迫った時、走ってきたみゆが猫の姿になるとシズカをひっかくが、猫を振り払った怒りのシズカは、勢い余ってトラックに変身(笑)
ブルーはみゆ猫をかばうも思い切りトラックに轢かれて気絶し、追い打ちに迫り来るトラックで、最上蒼太、クリーン化寸前、のその時、最近失いそうになっていた《正義の味方》スキルを6ゾロクリティカルで発動したシルバーが、待ってろよ生きてろよ絶対そこに辿り着いてトラックを阻止。
「ふん、こっちもとりあえず、肩慣らし終了よ」
シルバーは蒼太と人間の姿に戻ったみゆを連れて撤退し、治療を受けた蒼太が眠る中、みゆは残り5人に、自分の正体は蒼太に助けられた三毛猫である、という正体を明かす。
11月10日の夜、代官山の路地裏で怪我をした猫を見つけた蒼太は、治療のついでに、みゆの証言通りにナンパしていたのだった。
(それから私は、ずっと考えていました……あの人素敵だったなぁ。あの人好みの女の子になって、恩返しがしたいなぁって)
そんな時、猫は夜道で七色に光る布を持ったシズカとすれ違い、シズカが鉄条網に引っかけた事で千切れ落ちた布きれに触れた事で、女子高生みゆへと変身。その布こそが、ガンマンなら最高のガンマン、拳士なら最高の拳士、持ち主が変じた姿の理想の力を与えるプレシャス<虹の反物>なのであった。
シズカの超パワーアップとみゆの正体がエピソードプレシャスで繋がり、実は“猫の恩返し”でした、というメジャーな説話・民話の構造が顔を出す流れが鮮やか。
そして、超強力なプレシャス(端布でハザードレベル120)により、かつてない力を得たシズカから挑戦を受けたボウケンジャーは、みゆと意識不明の蒼太を基地に残し、出撃する。
ボウケンジャー! 可愛い女の子を待たせるなんて、さいってー!」
風のシズカ、プレシャスは返してもらうぞ」
種明かしがされた以上、本日もナチュラルに、古代の叡知=我々のもの扱いです。
「これの事? 欲しけりゃ力尽くで取ってみな。ぜったい無理だけどねー!」
プレシャスは、強いもん勝ちだもんねぇ!
シズカは高所から飛び降りながら反物の力を発動し、まさかの着ぐるみにハニーフラッシュ!
「あたしの考えた、最強のスーパーくノ一戦士よ。どっからでもいらっしゃい。一気に片付けてあげる」
モチーフがカラス天狗(某妖魔一族バイト社員を思い出す)なのが不安を誘いましたが、<虹の反物>の力は絶大、スーパーシズカは5対1でもボウケンジャーを圧倒し、スーパーあやかし空間での連続攻撃からスーパー火炎の術で、5人をまとめて吹き飛ばす。
「私にやれる事をやらなきゃ……だって私、蒼太さんの為に、まだ何もしてあげてない。蒼太さん、私、行きます」
サロンでじっと座っていたみゆは決意を固めると、蒼太と撮ったプリクラの写真を手に走り出そうとするが、起き上がった蒼太に呼び止められる。みゆに張り付いた布きれが出来た時に生じた筈の反物の穴……猫の鼻でそれを嗅ぎ出そうとしていたみゆだが、蒼太はそれに反対。
「駄目だ! 危険な戦いの場に、君を行かせるわけには」
「でもこのまま終わりたくない!」
「え?」
「私、野良猫で、誰からもかまわれなくて、生きている意味なんか、無い子でした。でも蒼太さんは、そんな私にも優しくしてくれた。だから絶対、何かお返しがしたいんです」
「みゆちゃん……」
「それとも、やっぱり私じゃ駄目ですか?」
二人は見つめ合い、人間相手にはバリケードを築き煙幕を張り巡らせながら生き続けてきた最上蒼太というキャラクターの積み重ねに対し、ただ一つの想いだけを成そうとする動物の姿がクリティカルヒット。みゆは異種だからこそ純粋に蒼太に踏み込んでしまうし、蒼太もそんなみゆには誠実に対応しなくてはいけなくなる……という構図に至るのが、物凄く巧い。
それがたとえ猫であっても――いやむしろ猫であるからこそ――最上蒼太が“他者”と真っ直ぐに向き合えるか否かを迫られている頃、残りメンバーは絶好調スーパーシズカの攻撃で派手に吹き飛び、代表して不滅の牙がぐりぐり踏まれていた。この事実を知ったら陛下が泣きながらワンカップ大関に逃げそうなぐらい、思わぬ相手に追い詰められる不滅の牙だが、絶体絶命のその時、振り下ろされようとした剣を蒼太の放ったワイヤーロープが食い止める。
「まだ僕が居るんだけど?」
音楽の入り方といい、表情といい、蒼太さん史上、最高にヒーローっぽい格好良さ。
「誰かと思ったら怪我人じゃない」
「こんなの怪我の内に入らないさ!」
「ふーん……じゃ、かかってくれば?」
「当然」
蒼太は張り詰めたワイヤーを利用してアクセルラーを加速させ、スタートアップ。ジャイロとワイヤーを駆使した立体機動で立ち向かうもスーパーシズカの恐るべき強さに押され、激しい立ち回りの末に袈裟懸けにされるが、寸前に装着したアクセルテクターでこれをガード。某マトイ兄ちゃんを思い出させる死んだフリからの零距離デュアルクラッシャーを直撃させ、汚い、蒼太さん、汚い。
……まあ、よくよく考えてみると数時間前に、ダンプ(実質シズカ)に轢き殺される寸前だったので、これぐらいの意趣返しはアリなのか。
ひるんだスーパーシズカに飛びかかった猫みゆが、反物の穴(変身が完璧ではない箇所)を見つけだすとそこにプリクラを貼り付けて弱点を示し、劇中の小道具を余すことなく活用。テーマソング?をバックに飛び上がったブルーは、上空からの一突きでスーパーシズカの撃破に成功する、が――
「こんな事……許されないんだから! スーパー最強巨大くノ一!」
「巨大化までした!」
「凄すぎないか、虹の反物!?」
コスプレ早変わり → 着ぐるみ怪人 → 巨大化
で今、シズカのネタ度が真墨を超えた!!
代わりにシズカは、何か大切な力(ヒロイン的なあれやこれ)を失った!
冒頭では安易にセキュリティの内側に一般人を入れてしまってお叱りを受けた牧野先生、本業のメカニックでビークル10番まで修理した事をアピールし、今回はとりあえず開幕アルティメットキック。家電リサイクルに出されそうだったサイレンビルダーも登場するとジャイアントシズカに組み付いて動きを封じ、アルティメットが背中からドリルを突き刺すという、前回のマスコット爆殺以上のエグさ(笑)
「今ですチーフ! ズバーンを!」
そして遡れば自分から粉をかけておいて、最大の大技で一刀両断を奨めるブルー、ネガティブシンジケート構成員に慈悲など無用!
アルティメットゴールデンクラッシュで「ずばばばばばーん!!」(って、チーフが言ってる?)されたシズカは、反物の力を失うも、哀れ真っ二つでZ指定される事なく逃走。そろそろ敵キャラの整理も徐々に始まりだしそうな頃合いですが、リタイア第1号は辛くも回避しました。
……この後、鬼の面をつけたアルティメットシズカになる事はあるのか、ちょっぴり期待したい。
「蒼太、後は任せたぞ」
シズカの使っていた<虹の反物>は回収され、残るはみゆに張り付いた切れ端だけ。何故かニヤニヤしているチーフはメンバーを引き連れると気を利かせて一足先に帰っていくのですが……ですが……物陰に隠れて皆で盗撮しているに1票。
「なんとか、できたかな、恩返し……」
「ああ。君は僕の、最高のパートナーだよ」
「ずるい……そんな事言われたら、この布きれ、返したくなくなっちゃう。また野良猫に戻っちゃうんだもん」
「大丈夫だよ。君は野良猫には戻ったりしない」
優しく、みゆの肩に手を置く蒼太。
「サージェスの規約には、猫を飼っちゃいけないなんて、書いてないからね」
「それって……」
「おいで、ぼくんちに」
「蒼太さん、大好きです……!」
蒼太に飛びついたみゆはその腕の中で猫へと戻り、蒼太は<虹の反物>の切れ端を回収すると、猫にもどったみゆを抱き上げる。
「みゆ、よろしくな」
の上に、やたらべったりとくっついた蒼太とみゆ(人間)の姿が浮かび上がり、蒼太さんが、動物にしか心を開けない男という、完っ璧に駄目なルートにめでたく突入して、つづく。
鳥羽さん回を大きな転機として主に小林脚本で掘り下げられてきた蒼太ですが、ここまでの流れと積み重ねをしっかり踏まえた荒川脚本によるダイビングヘッドで見事にゴールイン。
色男キャラのスキャンダル勃発、という軽い笑いから始まって蒼太の人間性を炙り出していったところに、動物報恩譚と異種婚姻譚をミックスする事で、蒼太が“真剣に向き合わざるを得ない(向き合っても不自然ではない)他者”を設定したのが、重ねて実にお見事。
ネタとお約束と煩悩が絡み合う中から、しっかりとした物語が抽出され、良く出来たエピソードでした。
ゲストヒロインも雰囲気がよくマッチしておりキャストで興ざめになる事もなく、今作のゲストキャスティングは、全体的に良い感じです。
次回――歴史的和解? そして、捨て身のコスプレ、アタック!