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『仮面ライダービルド』感想・第44−45話

◆第44話「エボルトの最期」◆ (監督:山口恭平 脚本:武藤将吾
見所は、スターク愛用の椅子にふんぞり返る内海。
マッドローグになってから初めて、面白かったよ内海!
冒頭、
「地球外生命体エボルトはこの国を支配する為、ロストスマッシュから精製される10本のロストボトルを集めていく」
と宣うナレーション(担当:美空)、明らかに手段と目的が逆になっているのですが、劇中人物がそう思っている、という事なのか、なまじあらすじ劇場が体半分メタ構造な為に大変わかりくく(思っているとしてもその誤解は変なんですが)、事ここにいたってOPナレーションで視聴者をミスディレクションする意味があるとも思えませんし、どうしてこんな文言になったのか、意図に困惑します。
エボルのアジトに乗り込んだジャガイモとヒゲは、抵抗せずに捕まって追いネビュラされる事で自分たちの強化を図り、さすがに無謀な突撃ではなく脳味噌が動いていて安心しましたが、根本的な所で「追いネビュラガスで強くなる」という展開が面白くないという罠。
「なあヒゲ……おまえラブ&ピースの為に命を懸けられるか? ……最初はただ故郷の為……仲間の為……そう思ってた。けど今は違う。俺は仮面ライダーになった事を、宿命だと思ってる」
「宿命……この命で何かの役に立てるんだったら、迷わず懸けてやるよ」
恋人の復讐 → 人々を守る仮面ライダーへ、という万丈の経緯を見ても、「私」の目的を持っていた仮面ライダー達がその我執から解放されて「公の大義」=「ラブ&ピース」の為に命を懸けるようになるというのが今作における最終的なヒーロー像の狙い、と捉えられるのですが、その「ラブ&ピース」を唱えている戦兎にそもそも「自分」が極端に薄いので、「個」の先に「全」があるのではなく、「全」の為に「個」を捨てるのが肯定されているようにも見えて、個人的な好みからすると正直ちょっとげんなり。
要するに「個」と「全」に区別をつけた上で、「個」を維持しながら「全」の為に戦う事を選んでいるのかという事なのですが、振り返れば第3話の「誰かの力になれたら、心の底から嬉しくなって、くしゃっとなるんだよ、俺の顔」という戦兎の発言は、「全(助けた誰か)」の笑顔と、「個(戦兎)」の笑顔の、区別がついていなかったのではないかと思うに至り、そういう人間の唱える「ラブ&ピース」って、実は物凄く恐ろしいものなのではないか、という疑念が今、私の中で急浮上。
初期《平成ライダー》には、「現代にヒーローを成立させるにあたり、その背景として無自覚ではない“正義”を再構築しよう」というテーゼとアプローチが存在していたのですが、『クウガ』から約20年経って今作が、
「公の正義に繋がる行為を支えうる個人の正義の構築」とはほぼ真逆の「個人の正義を解体する事で公の正義に統合する」
というアプローチに至っているのは、自覚的にやっているのだとしたら、大胆なリビルド。
勿論、『クウガ』には『クウガ』なりの、時代の要請やヒーロー作品の置かれた状況というのがあり、それから約20年経った現在、今に合わせたアプローチはあって然るべきですが、つまるところ今作は、「名前を自分につける物語」ではなく「名前に自分が合わせる物語」であったのだな、と諸々に納得。
だからこそ戦兎には、起点となる理屈が必要だったのであり、「“正義”の仮面ライダーになる」のではなく「仮面ライダーは“正義”」であってくれないと、戦兎のシステムは破綻を来してしまうと。
……ああそうか、つまりこれはプリンセス概念なのだな…………という方面に話を繋げるとまたややこしくなるので表現を変えると、「自分を鋳型にする」のではなく、「用意された鋳型に自分を填め込む」事をしているのが今作というわけなのですが、って、ああ! 与太話が転がりに転がって今頃気付いたけど、だからビルドの変身は、鯛焼きシステムだったのか!!
で、無意識も含めて私が今作(及び戦兎)に期待していたのって、「鋳型を作り替える」「鋳型を飛び出す」事だったのですが、むしろ、「この世には理想の鋳型があるよね」というのが今作の辿ってきた道で、そこに私と今作の不幸なズレがあったといえるかもしれません。
もう一つ別の観点としては、ネビュラガスを注入されて仮面ライダーになる、という事そのものが、個を捨てて大いなる宇宙と一体化する為のイニシエーション、なのかもですが(ガス注入で一度死亡した被験者は、子宮のメタファーとしてのカプセルから生まれ変わっているわけで)。
そんなわけで決死の覚悟で宇宙パワーを高めた猿渡とヒゲはビルドとクローズに回収され、みーたんの抱き枕欲しさに喧嘩続行を装う猿渡は面白かったですし、これ目の前でやられたら「グリス」呼びで仕方ないな(むしろ自制してさえいる)と思いましたが、根本的に、今、時間使ってやるネタだろうか、というのは深刻な疑問。20話ぐらい前にやっておけば笑える掘り下げですが、残り数話でやられると、今作が如何に戦兎・万丈・スターク以外のキャラに手が回っていないかに暗澹とします。
小林靖子虚淵玄によると、東映特撮のギャグシーンは監督の裁量である場合が多いそうですが、今作の作りがどうなのか、このシーンが演出・脚本どちらベースなのかわかりませんが、諸田監督にしろ柴崎監督にしろ山口監督にしろ、ギャグシーンはギャグシーンとして切り離し気味に描くタイプなのも、よろしくない化学反応を加速してしまった感。
第44話にして集団雑魚寝が明かされ、新装備ブリザードナックルを使いこなせない万丈、ダメージを受けすぎるとキラキラして消えてしまうヒゲとジャガイモを慮った戦兎は、一人、エボルとの決戦に赴く。だがそこに、集う仲間達。
「馬鹿ばっかだ…………へへっ、最っ高だな!」
の戦兎は大変いい笑顔で、久々に、役者さんの魅力がプラス方向に出ました。今作、キャスティングは成功しているだけに、余計にあれこれ辛い。
「やるじゃないか……だが……これで終わったと思うな!」
父ビルドの攻撃にヒントを得た戦兎の秘策により、4ライダーの連携から放たれた天才キックの直撃を受けたエボルは、死ぬ前に一度は言ってみたい台詞ベスト10の第7位と共に弾け飛ぶが、その爆死跡には何故か3つのロストボトルが残る。
「よくやった。計画通りだ」
そして、そこに舞い降りたタカガトリングがボトルを回収するのであった……で、つづく。
ちなみに前回、便利なワクチン扱いでクローズに叩き込まれたベルナージュがどうなったかについては、「さあな」で済まされました! ラブ&ピース!


◆第45話「希望のサイエンティスト」◆ (監督:山口恭平 脚本:武藤将吾
そもそも「ロストスマッシュに必要な条件」とやらがさっぱりなので、天才パンチでエボルトに人間の感情が芽生えたのでロストボトルを作れました、とか言われてもぽかーん。話の都合で一度に3つ作れてハイ解決、なのもぽかーん、で、のっけからダッシュで置いてけぼりにされる安定の『ビルド』仕様。
「設定を事細かく説明しない」のと「物語上のルールが明かされない」は別なのですが、どうも今作、「設定」と「ルール」を混同している節が随所に見られます。
葛城忍はエボルドライバーを液体窒素のタンクに閉じ込めると、エボルトを裏切って倒す唯一のチャンスを待ち続けていた事を告白。そして、黒いパンドラパネルを完成させる事で物理法則を越えた現象、ワームホールが形成可能になり、それによってワープ能力を得る事が、星を滅ぼしエネルギーにするエボルトの目的であった事を明かす。
だが同時にそれは、スカイウォールの惨劇で傷ついた世界を救済する「新世界」をもたらす手段として葛城忍が求めていたものであり、その為に忍もまた、黒いパンドラパネルを完成させようとしていた。一体その力で、どうやって世界を救うのか……それを語ろうとする忍だが、その前にエボル内海が立ちはだかる。
「俺がおまえの魂胆を見抜けないと思ったか」
以前に、妙に大事そうに回収していましたし、成る程、内海はいざという時の保険だったのか……エボルの頭脳的にも性格的にも納得、と思っていたら、爆発の直前に遺伝子の一部を放出して内海の体内に潜り込んでいたそうで、実質誰でも良かった、というがっくり感。前回の椅子ふんぞり返りも伏線になりましたし、最初から用意していました、でここは良かったような。
まあ、それやると「あれが最後のエボルトとは思えない。いずれ第二第三のエボルトが……」で、誰も知らない僻地でひっそりと孵化の時を待つ卵エンドになりかねない問題は出ますが、もはやエボルト、そういう存在ですしね……(笑)
エボル内海の変身したマッドローグにぐさっとやられた葛城先生は、戦兎の手の中でキラキラしていき、死の間際に戦兎に2枚のカード(またこれが物凄く唐突……)を託すと何かを囁き、最後は戦兎の頬を撫でながら、
「巧…………また、背、伸びたか?」
と言い残して消滅。
エボルトへの裏切りを告白し、「悪かったな。おまえを利用して。許してくれ」の時すら完全に無表情で言葉に一切抑揚のなかった父が、最後に浮かべた微笑は、過去を思い返しながらのものであり、葛城忍の人間性は幸せだった過去(スカイウォールの惨劇前)にしか無い、というのはなかなか凶悪な仕掛け。
「伸びて…………ないよ」
そしてこういうキラキラは、ここぞという時に取っておかないと、威力半減だな、と改めて。
バトルのどさくさ紛れにエボルがドライバーと細胞本体を解放して力を取り戻し、ローグは撤退を決断。
衝撃! ローグが銃から退場用ミストを振りまくと、気絶した猿渡の体が消失! ショックで座り込んだままの戦兎も消失!
……ワームホール
基本的に瞬間退場能力というのは物語の都合の具現化ですが、善玉サイドには濫用させるべきでないし、ましてや消臭スプレーのように使わせてはいけないと、心の底から思いました。
茶店に戻る一同だが猿渡は意識不明、戦兎は「徹夜続きでパソコンに向かってる」って何をしているのかと思ったら、必死にパスワードを解除しようとしていた(笑) お父さん、あの状況で、パスワードは教えてくれなかったのか……。
記憶の部屋の脳内葛城巧と問答しながら(ここでは、戦兎の中の“父を信用できない自分”が葛城巧の姿で浮上している、と考えると、妄想フレンドとして納得のいく形に……つまり、サイの意見を採用すべき)、父の遺した秘密を解き明かそうとする戦兎だが、東都をスマッシュの大軍団が襲い、仮面ライダー達は出撃する事に。
「ふはははははは、正義のヒーローを呼ぶのは容易いな」
物語には色々不満はありますが、エボルト(スターク)はホント、いいキャラ(笑)
スマッシュ軍団を蹴散らしエボルを囲む3ライダーだが、それは喫茶店から戦力を引きはがす為の罠だった。エボル細胞を注入されていた猿渡が放電すると美空が保管していた最後のロストボトルを奪ってエボルと合流。遂にエボルは黒いパンドラパネルを完成させるとそれを自らの体内に取り込み、新たな姿に変身する!
…………こちらがより本質に近い姿という事なのかもですが、なんというか、一言でいうと、怪人キングコブラ男に。
見た目はともかく、強さはこれまでとも桁違いのキングエボルは、ライダー達を蹴り飛ばす度にその威力の余波で高層ビルを粉砕し、更にはビルドを連れて異星へとワープ。
「あらゆる星を吸収して、俺だけの、宇宙を創る。それが――新世界だぁ!」
<新世界の神になる>系悪役は、終局に近づいたところで自らの卑小さを露出させる事になりがちですが、既存の物理法則(いうなれば“神のルール”)を越えて、宇宙を自分のおもちゃ箱に作り替える、という目的はこれまでの言行にふさわしく、スターク−エボルトは、非常に良いスケール感まで到達してくれました。
口八丁手八丁で立ち回る胡散臭いトリックスター〜宇宙の破壊と再生を行おうとする超生命体まで演じ切り、誰が今作のMVPかといえば金尾哲夫さんでありましょう。やるだけの事をやってしまった感も含め、流れ的に今回が最後のエボルのターンという雰囲気もありますが、後は如何なる断末魔を聞かせてくれるのか、凄く楽しみです。
一つの惑星の消滅をビルドに見せつけ、そのエネルギーで両腕が強化されたキングエボルは、完全に『ドラゴンボール』な連続攻撃でビルドを叩きのめし、変身解除に追い込まれた戦兎は薄れゆく意識の中で、一緒に地球を守る為に戦う、と、かつて冗談交じりにした父との約束を思い出す。
「最悪だ……今頃思い出すなんて。……約束したもんな。一緒に、守るって。正義の為に作ったライダーシステムは、憎しみなんかじゃ強くなれない。そうだろ……?」
子供の約束が最後の最後でヒーローを支える芯になるというのはかなり好みなのですが、これ、桐生戦兎としてではなく、あくまで葛城巧としての記憶、というのが大変気になるところで、本人の中では矛盾なく融合しているのだとしても、ではこの一年、桐生戦兎というのは結局なんだったのか? という部分が積み重ねに加わらないのが、とことん『ビルド』仕様です。
また、視聴者に対しては基本的に「この1年プラスアルファで形成された桐生戦兎」として見せているのに、話の都合により部分的に「過去の記憶を持った葛城巧」になる、というのが、混乱を避けるにしても、凄く、見せ方として不誠実。そして、実はヒーロー「桐生戦兎」の根っこには、「葛城巧」としての約束があったのだ、とするならば「葛城巧」が出てきてこそ劇的になるのに、ここで納得するのが「桐生戦兎」だけなので、私の感覚ではいつまで経っても、二人は別人のままなのです。
或いは演出として、この記憶を思い出す(或いはずっと胸にしまっていた)のが「葛城巧」で、思い出した本人は何とも思わないけれど、「桐生戦兎」がそれに刺激を受ける、というのならまた別の納得はあったのですけれども。
復讐ではなく約束の為に戦う気持ちを取り戻した戦兎はジーニアスに変身し、立ち上がったライダー達が4方向からキングエボルを囲む画は格好いい。
「地球は、俺たち仮面ライダーが守る!」
そしてようやく戦兎が国家規模から脱皮し、東西南北ライダーキックが炸裂すると、どういうわけかキングエボルの体内から飛び出す黒いパンドラパネル。そこに放たれた天才パンチにより、黒いボトルの内2本が浄化された事でキングモードを維持できなくなったエボルはパネルを抱えて撤退し、ビルドは銀色に変わったロストボトルを一本、奪い取る事に成功するのであった。
タワーに戻ったエボルに向けて、「私はキラッと閃いた! 貴方にはこの国を支配する気持ちなんてない!」と自慢げに言いに来てエボルトに締められる内海は道化役にしても出来が悪すぎますが、いっそ次回から出番が全くなくなって首をひねっていたら「ああ、内海は劇場版で死にました」と教えてもらうとかの方が面白い気さえしてきました。
劇場版の振りネタが差し込まれ、この最終局面で劇場版と連動させて下さい、というのは本当に大変だと思うのですが、そういう点でもメインライターの負担を減らす体制作りが大事だな、とつくづく。このパターンでの劇場版連動をかなり上手くやってのけた『W』の場合は、実質ダブルメインライター体制でしたし。
当面の最悪の危機を脱した戦兎は父の遺した言葉の真実に辿り着き、エボルト完全打倒の方策を遂に見つけ出す……果たして、白いパンドラパネルとは何なのか? ハザードトリガーに隠された秘密とは? そして次回、予告でばっちり殺されている猿渡は、生きて再び、みーたんの握手会に参加できるか?! もし死んだら、抱き枕が墓標代わりだ!!
今回、部分部分は面白いところがあったのですが、葛城巧の記憶をキーに戦兎がようやく「自己」を形成し始める一方で、周囲はみな「ラブ&ピース」に一体化していたり、「ライダーシステムは、憎しみなんかじゃ強くなれない」横で、暴力衝動を強化するスクラッシュドライバー腰に巻いて追いネビュラでパワーアップする二人が居たりで、今作のテーゼの散漫度合いは最終回に向けて集約されるどころか瞳孔が開いていく勢いなのですが、宇宙の大きな愛と一体化して永遠の旅路に出ないといいなぁ……!