◆『侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 −天下分け目の戦−』◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
「時は、平成21年――夏。外道衆の中の外道衆、腐れ外道衆の大軍が、此の世に侵攻。その数、およそ1万。率いるは、腐れ外道衆の頭目、脂目マンプク。此の世を守らんとするシンケンジャーは、総力を挙げて、これを迎え撃つ。天下分け目の戦いである。戦いは既に三日目。岩を削る波のように押し寄せるマンプクの大軍の前にシンケンジャーの疲れは色濃く……今や、水切れによる撤収だけが、彼らの休息となっている」
TV1.5話分の尺で劇場版的な事をしなくてはいけない……どころか、OP省いてもTV本編より気持ち短い尺(20分)しかない……という事で、冒頭から天下分け目の大ピンチ! 腐れ外道衆に追い詰められたシンケンジャー! というところからスタート。
……ただなんだか、「水切れ」の設定に関しては、全編通して最も劇的に使われた気がします(笑)
屋敷に戻り、休息と治療を行うシンケンジャーの元に、300年前、マンプク(渥美格之進)を封じた初代シンケンレッド(オーブルーにして佐々木助三郎じゃなかった渥美格之進)が残したと伝わる、秘伝ディスクの所在が判明した、という吉報が爺(やっぱり渥美格之進)よりもたらされる。
「ただ、体力温存で行きたい。流ノ介、ことは、何か思いつかないか?」
何故その二人? と思ったら……
「こういうのは、少しズレた発想の方がいい」
「え? いや、私は、それほどズレている方では」
「うち……流さんには敵わへんけど、頑張ります」
「そう?」
のくだりが、この映画で一番面白かったです(笑)
ぽくぽくぽくぽくちーん……まさかのナナシなりきり作戦で敵陣をくぐり抜けたシンケンジャーは、遂に初代秘伝ディスクを発見。勇んで秘伝ディスクをロードしてみるが……残されていたのは役に立たないビデオメッセージだけで、こんな所まで、東映の伝統に則らなくていいんですよ?!と落胆する侍達だが、神社にお祈りに来た姉弟の願いを耳にして、此の世を守る為にくじけるわけにはいかない、と改めて決意。
「いいか、侍の本分は、討ち死にに非ず。狙うは脂目マンプクの首一つ」
獲るぞ大将首、と腐れナナシ軍団に挑むシンケンジャーは馬を召喚し、個人武器が馬上戦闘で活用されたのは、劇場版らしい見応えのあるアクションで良かったです。特に本編でほとんど記憶の無いブルーの弓が大活躍。
冒頭ではロボ担当だった寿司屋はふらっと出てきた十臓の足止めを担うが、本陣に乗り込んだレッドはマンプクに苦戦。逆に大将首を奪われかけたその時、初代が残したメッセージの真実に気付くと、初代がマンプクの体に刻み込んでいたモヂカラを発動する事で初代秘伝ディスクの力を目覚めさせ、恐竜丸を解放。
もう5分ぐらい尺があれば、初代から脈々と続く戦い、という部分を掘り下げられたのでしょうが、あっさり塩味風味で香り付けに留まり、残りは劇場版フィーバータイムで腐れ外道衆を成敗して一件落着!
勝利の三本締めからエンディングは、いつものエンディング曲に各自ボーカル部分を加え、源太も乱入。最初のところで源太が姐さんの肩に手を置いてナチュラルに払われるのですが、恐らくこの時期、まだ方向性が固まっていなかったであろう源太は、“綺麗な女性に弱い”的な要素をキャラ付けに使う予定があったのかどうか(その後の本編で、たまーにそういう雰囲気を見せるが、結局、キャラ付けというほどにはならず)。
とにかく時間が無いので、劇場版スペシャル要素とアクション以外の部分は切り詰めるだけ切り詰めました、という一作。