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『タイムスクープハンター』「追え!ピストル郵便配達人」の巻

〔『タイムスクープハンター』/NHK公式〕
久々に『タイムスクープハンター』を見た。
今回取材するのは、明治維新後の新しい郵便制度。
その中でも特に、郵便脚夫と呼ばれた配達人。
彼等は郵便物を賊から守る為(当時、今で言う現金書留を狙った郵便に対する強盗事件が多発していた)、拳銃の訓練を受け、所持していた。密着取材の対象は、そんな脚夫の一人、維新前は農民だったという阿部正太郎さん。
例の如く極秘の交渉術で密着取材の許可を得た沢嶋(タイムスクープハンター/しゃくれ)、弾丸がどんな感じに出るのか見たいとピストルにマイクロカメラをつけたり、郵便物がどんな風に配達されていくかを見たいと、正太郎の友人の女性が東京の婚約者に宛てた恋文にマイクロカメラを付けたり、と好き放題。
新しい郵便システムや、それにともなう郵便ポストの存在が物珍しかった事、「ここ(確か箱根のあたり)からなら東京まで二日で届く」などを紹介。
ちなみにその時一緒に郵便局の前でブラブラしていた、正太郎の男友達が当時のリアルヤンキーみたいな感じで物凄く汚らしいのが、『タイムスクープハンター』クオリティ。並の時代劇の悪党よりよほど悪そうな感じですが、ごく普通の村人です、たぶん。
歴史的背景などを適度に挟みつつ順調に取材の続いていたその日、山道で病人の振りをしていた強盗に、拳銃を奪われてしまう正太郎。
強盗は翌日逮捕されたが、彼の手元に既に拳銃はなかった!
なんと、東京の不平士族の依頼で、奪った拳銃を大金と引き替えに郵便で送っていたのだった。普通の郵便では拳銃など送れない筈だと詰問する局員達に、分厚い本の中身をくりぬいて隠した、と答える強盗犯。宛先を書いた封筒は先方から送られてきたもので、よく見ていない為に東京以外の詳しい住所などはわからないという。
既に集配は終わってしまっているが、今から山道を抜けていけば、次の中継地点(確か三島?)で止める事が出来るのではないか、と正太郎は走って拳銃入りの郵便物を追いかける事を決意する。
というわけで、当時の集配システムとルートを辿りつつ始まる追走劇!
一方、恋文につけたマイクロカメラの存在を思い出した沢嶋は、ちょうど一緒の集配で集められた筈の問題の郵便物がカメラに映っているのではないかと映像を確認すると、確かに不自然に分厚い封筒が映っていた。間違いない、拳銃はその中だ。
山道を夜通し走り抜けて中継局にたどり着いた正太郎であったが、その日に限って便が早く、15分前にその次の中継地点に向けて出発していた!
次の中継局(確か小田原)からは、人間の足ではなく郵便馬車を使う為、追いつく事は不可能になってしまう。慌てて追いかけ、何とか道中で追いつく正太郎であったが、突然現れて郵便物を確認させてくれと言う正太郎は、脚夫達に不審者扱いされてしまう(それはそうだ)。
同業の証明に脚夫の半纏を見せようとする正太郎であったが、なんと、山道を駆けている途中で落としてしまっていた!
確かに取材カメラに落下の瞬間が映っていた、とわざわざ確認する沢嶋。しかし彼は、歴史への影響を最小限に抑える為、取材対象の行動に干渉する事は出来ないのだ。
もはややむなし、と強引に脚夫に襲いかかる正太郎(おぃ)
無理矢理に郵便行李の中身を改めようとした事で完全に強盗だと思われ、遂には拳銃を向けられてしまう。
響き渡る銃声。
慌てて逃げ出す正太郎(&沢嶋)。
奪われた拳銃を取り戻そうとして、逆に身内から拳銃を向けられる辺りの展開は、普通に面白い。
弾丸は太股をかすめただけで大事に至らなかったが、それでも脚を負傷し、郵便物を追いかける事がますます困難になってしまう。もはや郵便物が東京の本局に辿り着く前に止めるのは不可能に近い。
だが、拳銃が不平士族の手に渡る事は阻止しなければならない。
満身創痍の正太郎はそれでも諦めず、追跡を続行する事を決意する。手段はただ一つ、夜明け前に東京に辿り着く事。郵便物そのものは今日中に東京に着いてしまう。しかし、仕分けと配送は夜間には行われない筈。つまり、翌朝の業務開始前に東京の本局に駆け込めば、配達前に間に合う筈だ。
負傷し、息も絶え絶えになりながら、一縷の望みに賭けて必死に郵便物を追いかけようとする正太郎に対して後ろから「大丈夫ですか?」と何度か声をかける沢嶋。
正太郎はそろそろ、「大丈夫に見えるか!?」と叫びながら沢嶋を殴っていいレベル。
疲れた体にむち打ち、東京を目指す正太郎。だが肉体はもはや限界、ひたすら首ちょんぱフラグが立ち続けるその時、正太郎は街道で人力車と遭遇する!
これしかない。
土下座の勢いで東京まで乗せてほしいと頼み込む正太郎。距離が距離だけに渋る車夫であったが、正太郎の勢いに押され、「行ける所までですよ……」と承諾する。
「そちらの変な格好をした旦那も乗るんですか?」→沢嶋
「私は走って追いかけるので大丈夫です」
沢嶋△!
この時点で、人力車でも無理だ、みたいな距離だったのですが、この車夫さんがハイパワー&超いい人で、なんと翌日未明に東京に到着する事に成功。
慌てて郵便本局に駆け込もうとすると、通りすがりの警官に、「東京府内ではふんどし禁止! 罰金だ!」と危うく捕まえられそうになる。実際にそういう法律が施行されていたという事ですが、いよいよ追走劇クライマックスという辺りで、そんなネタを放り込んでくるのが実に素晴らしい(笑) 慌てて股引をはきながら、こけつまろびつ本局へ駆け込む正太郎。
事情を説明すると「先に電信で連絡してくれれば良かったのに」と冷静に突っ込まれる。えげつない、えげつないぞ『タイムスクープハンター』。
過ぎた事は仕方がない、とどういうわけか本局の人達は正太郎の言う事を信じてくれて協力的に問題の郵便物を探してくれるが、だがしかし! なんと問題の郵便物は、朝一の配達ルートで出発済みだった!
またしても、ああ、またしても。
本局の人間を一人つけてもらって、配達員を追いかける正太郎だったが、追いついて話を聞くと、なんと拳銃入り封筒は既に配達されてしまっていた! 配達員から配達先の住所、その屋敷の下宿人だという受け取り相手の人相風体と、小野寺という名前を聞き出し、そこへ乗り込む正太郎と、本局局員。
下宿先で掃除中の、聞いた人相風体そっくりの男を見つけ、背後から二人がかりで抑え込む(この辺り、やや暴走気味)。他の下宿人も駆けつけ、ちょっとした騒ぎになる中、屋敷の主人らしき女性が登場したので事情を説明すると、
坂井! なんて事を!?」
坂井?!
男は、小野寺では無かった!
慌てて沢嶋が拳銃につけたマイクロカメラの映像を確認すると、折しも別室で一人の男が封筒の中から拳銃を取り出す所だった。小野寺は、別にいる! そして、こちらの背を映すカメラの映像。
慌てて飛び伏せる沢嶋。
響く銃声。
悪事が露見した事を知った沢嶋が、拳銃を手に飛び出したのだ。
路地裏で、その前に立ちふさがる正太郎。
「その銃は、郵便物を守る為の銃だ!」と無駄に格好いい展開が入って、本局員と協力して、小野寺を組み伏せる事に成功。
ここに、約二日間に渡る、長い追走劇は終わりを告げたのでありました。
最後は、拳銃入り封筒と同じ便で送られていた、婚約者宛の手紙が無事に相手の所に届きました、という映像を確認して終了。
……というわけで、当時の郵便システムと配達員を紹介するだけなのに、この物凄く無駄なスペクタクル!
チェイスストーリーのお約束を押さえつつ、興味本位で他人の恋文につけたマイクロカメラが伏線として機能するという鮮やかさ。
最後に美しいオチまでつけて、いや、お見事。
面白かったです。